《アキのN.Y.お芝居観て歩記 ′02》の巻

アキ(以下A)「いらっしゃ〜い。あら、久しぶりね、ゆうじ。」

ゆうじ(以下Y)「本当に久しぶりです。実は転勤でアメリカに行っ てたんです。それであのテロでしょ、9月中には帰国予定だったんですけ ど、会社から待ったが掛かって、ようやく今月帰国出来たんですよ。」

A「あら、それは大変だったわね。でも無事で何より。」

三太(以下S)「本当ですよね。アキさんも、ついこの前ニューヨ ークに行ってきて、その日がテロ後の飛行機墜落当日だったもんだから皆 で心配しちゃって。」

A「本当にあの時はご心配お掛けしました。」

Y「な〜んだ、あの日だったんですか?大変だったでしょ。飛行機ちゃんとJFK に着きました?」

A「大丈夫だったのよ。最初はね、デトロイトに向かうっていうアナウン スがあったんで、あ〜あ、今日予約している芝居が観れないわ〜、なんて 、がっかりしてたんだけど、20分後位にJFKが再オープンしたっ て放送があってね、結局2時間遅れ程で無事着いたって分け。」

Y「芝居のチケット、予約してたんですね。ミュージカルですか?」

A「そうよ、《ユーリンタウン》っていうね。」

S「あ〜、アキちゃんがこの前のH.P.で書いていた、とっても面白 かったっていうやつですね。」

Y「そうか、失敗したな。観ようかどうか迷っちゃっている内に帰って来 ちゃいましたからね。」

S「そう言えば、あの記事の最後に面白くて退屈しなかったミュージカル について今度聞かせてくれるって書いてありましたけど。」

A「そうだったわね。」

Y「そのミュージカルって何なのですか?自分も結構向こうにいる間は観 ましたよ、ミュージカル。」

A「そうなんだ。アッシが面白かったって今回思ったのは、さっき言った 《ユーリンタウン》でしょ、その他に《プロデューサーズ》と《バット・ ボーイ》の二つなのよ。」

Y「えっ!《プロデューサーズ》観る事が出来たんですか、凄いですね。 もうチケットが手に入らなくて、自分なんかは結局取ることが出来なかっ たんで観てないんです。それに《バット・ボーイ》。オフで話題を独占し てましたけど、これも観ないまま帰ってきちゃったんですよね。で、どう だったんです?」

S「そうそう。聞かせて下さいよ。」

A「そうね、それじゃまず、《プロデューサーズ》の方から話そうかしら ん。」

Y「何しろダフ屋で$700で出てるんですよ。グレン・クローズが主演 して話題になった《サンセット・ブールヴァード》の時だって$300だ ったのに、本当に凄い人気ですよね。」

S「え〜!!!$700?ヒャ〜僕だったら破産しちゃいますよぉ。」

A「ちょっと、アッシはちゃんと普通の値段で買ったのよ。」

S「普通はいくらなんですか?」

A「$100なのよ。これでも他のショーと比べると非常に高いんだけど ね。」

Y「でも正規の価格で観る事が出来て良かったですね。」

A「N.Y.に住んでいる友達が取ってくれたのよ。本当に感謝だわ。 今回もね、この《プロデューサーズ》が取れたからN.Y.に行ったの よ。」

Y「で、聞かせて下さいよ、どうだったのか。」

A「そうだったわね。如何にもっていうオーヴァーチュアーから舞台が開 くのよ。もうそれだけで舞台に引き込まれちゃうのよね。で、舞台が開い てみると、これが結構チープな装置なのよね。ゥワ〜〜って感じじゃない のよ。」

S「最初がちょっとがっかりだと不安になりますよね。」

A「でも、そんな事はすぐに解消されたのよ。主役の一人、ネイサン・レ インが出てくるともう観客は拍手の嵐でね。次のシーンでもう一人の主役 、マシュー・ブローデリックが登場するとさらに拍手拍手。もうカーテン コールみたい。」

Y「雰囲気、解るな。悔しいですね、無理しても観るべきだったかな。」

S「でも、主役二人の人気で終わっちゃう芝居も良くありますからね。で も、そうか、そんなに人気なんだから、そんな事はありませんよね当然。」

A「そうよ。本当に面白かったわ。何しろ、あの二人の芸、それが全てね 。」

Y「何これ?って思った所はなかったんですかね。」

A「う〜む、アッシ、ちょっとイヤだった事があったのよね。」

S「聞きたい、聞きたい。何だったんです、それ。」

A「まあ、仕方ない事なのかも知れないけど、マシューのあのカマトト風 な声の出し方。アッシにはチョットね。普通の声でいいのにな〜、って。」

Y「カマトト風?」

A「そうよね、観てないんだもんね。解らないわよね。何手言ったらいい のかしらん。っあ、そうそう。マリリン・モンローの真似を男がした時の 声色とでも言えばいいのかな?」

S「あ〜、なんとなく解りますよ。」

A「それとね、舞台監督のゴウジャスなリヴィング・ルームのシーンがあ るんだけど、その場面に出てくる舞台関係者の面々がみんなゲイなんだけ どね、実に色々なタイプのゲイが出てくるのよ。でもさ、一般的に見たら 、とても楽しく写るんだろうけど、アッシにはチョットね。もっと、心の 中でニヤってできる演出にしてほしかったわね。」

Y「でも本当に面白そうだな〜。」

A「たいしてコレという音楽もないのにね。でも舞台にのるとそのたいし た事ない音楽も凄い輝きを放つのよね。それに、役者陣のレベルの高さ。 夫々の役者の芸で観せている、とでも言ったら良いのかしらん。」

S「益々観たくなっちゃいますけど、いかんせん$700じゃな。」

A「主役2人が変ったらもう少し安くなるとは思うんだけど、あの2人を 観なきゃ意味無いわよ。そうだわ。レコーディング風景を撮ったDVD が売っていたからそれでも見たら少し内容が解るかもね。」

S「アキちゃんそのDVD買ってこなかったの?」

A「ちゃんと買ってきました。今度家で食事会でもみんなでする時にでも 観ましょうか。」

Y「自分も呼んで下さいよ。」

A「勿論。みんなで楽しみましょうよ。」

Y「ところで、もう1本の《バット・ボーイ》の方の話しも聞きたいです ね。あっ、話しばっかりで注文しなきゃね。まあ、これからも御世話にな る事だし、ハーパー1本入れて下さい。」

A「あいよっ!水割り?それともロック、ソーダ割りかしらん。」

Y「勿論、ロックでお願いします。それとアキさん、三太君にも。」

S「え〜、いいんですか?遠慮無く頂きます。」

A「はい、お待たせ。」

Y「で、その《バット・ボーイ》なんですけど。」

A「もうB級もいいところだわね。」

S「B級ですか?」

A「そう。もう超B級作品。」

S「アキちゃん、超は止めて下さいよ、超は。」

A「あら、それは失礼しました。でも、本当に超超B級なのよ。」

Y「自分そういうの凄く好きかもしれないんだけど、何がB級だった んですか?」

A「何もかも。ははははは。今思い出しても笑っちゃうのよ。」

S「どんな話しなんですかね、興味ありますけど。」

A「まあ、洞窟でコウモリ少年を見つけた所から始まるんだけど、町の医 者家族の所に預けられるのね。当然初めは言葉も話せないし、徐々にそこ の奥さんや娘に言葉や作法を教わっていくんだけど、そのうちに、娘に恋 しちゃうわけ。」

S「そこで出来ちゃうんですかね。」

A「それを知ったダンナが怒ってそのコウモリ少年を抹殺しようといろい ろ企むんだけど、それからが、はははは...。」

Y「やだなぁ、アキさん思い出し笑いしないで早く言って下さいよ。」

A「ゴメン、ゴメン。でもね、本当に馬鹿らしいのよ。そこで、ダンナが コウモリ少年を殺そうとするんだけど、そこに奥さんが割って出て、その コウモリ少年が、実は自分達の子供なんだ、って打ち明けるのよ。」

S「え〜〜〜っ!何なんですか?それ?」

A「だからさ、超B級だって言ったじゃないのよ。」

Y「それじゃ、ハッピー・エンドなんですね。」

A「そこがまた超B級なのよ。昔やっぱりオフ・ブロードウェイで大 ヒットした《リトル・ショップ・オブ・ホラーズ》って憶えているかしら ん。あれもそうだったけど、この《バット・ボーイ》もめでたし、めでた し、で終わらないのよね。」

S「早く言って下さいよ。」

A「結局、コウモリ少年とダンナは対決するのよ。そこにその奥さんが入 り込んで、ダンナ、奥さん、そしてコウモリ少年の3人が敢なく死んじゃ うのね。そこで幕になるっていう本当に超B級作品。」

Y「役者や音楽はどうなんです?」

A「あっ、そうだ。CDがあったはずなんだけど。え〜と、見当たら ないわね。まあ、今度聴かせるけど、音楽はとっても素晴らしいのよ。《 プロデューサーズ》とはちがって、良い曲ばっかり。っていうか、アッシ の好きな曲が多かったわ。役者はね、B級っぽい人が多かったわね 。」

S「B級っぽい?」

A「そうなのよ。1幕では、何?この役者?って感じだったのが、2幕に なると打って変って凄く良くなったりするわけね。全体を通しては、勿論 言うまでもなく、コウモリ少年を演ったディヴェン・メイと奥さんを演っ たカイリン・ホプキンスの二人が唄も演技も大変素晴らしかったわね。」

Y「日本でもやってほしいですね。」

S「僕も日本でやったら絶対観に行きますよ。」

A「そうね、だけど日本では結構難しいかもしれないわよ。」

Y「それはまた何でですか?」

A「コウモリ少年のセックスを連想させる動きを初め、日本の舞台上です るにはどうかしらん、って思う演劇関係の人が沢山いそうな位、ちょっと エッチでヒワイなのよ。でも、うまくいったら、さっきも言った《リトル ・ショップ・オブ・ホラーズ》の様なお化けヒットになるかもね。アッシ 何しろ惚れちゃったわ、この作品。」

S「益々日本でやってほしいですよね。アキちゃんがそこまで言うんだか ら。」

Y「もっと観れば良かったな、向こうに居る時に。」

A「また行く機会があるでしょ、きっと。その時にまだやってたら観てき なさいよ。」

Y「そうですね。その時、何時になるか分らないけど、やってる事を祈る ばかりですね。」

S「僕も行きたくなりましたよ。今、安いしねぇ。行っちゃおうかなぁ。」

Y「行っちゃおうかな、って、自分はもう行かなきゃいけない時間になっ ちゃいました。ご馳走様でした。とても楽しい話し有難うございました。 また寄らせてもらいます。」

A「はい、こちらこそ有難うね。今日はボトル入れてもらったんで960 0円になります。」

Y「じゃ、1万円からお願いします。」

A「はい。400円のお返しです。有難うございます。おやすみ!」

Y「お休みなさい。」

S「ゆうじさん、ご馳走様でした。また今度。お休みなさい。それじゃ僕 もそろそろ帰ります。」

A「あいよ!三太は1200円ね。ありがとう。」

S「お休みなさ〜い。」

A「お休み!」

おわり


*登場人物は全て仮名です。



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