《正月早々......。》の巻

まこと(以下M)「今晩は。あれ?どうしたんですか?今日はクラシ ックなんかかけちゃて。」

あき(以下A)「あら、まこといらっしゃい。はい、御しぼり。」

M「これチャイコフスキーの《くるみ割り人形》ですね。」

A「あら、良く知っているわね。まこと、クラシックとかバレエとか好き だったっけ?」

M「そうでも無いんですけど、小さい頃親によく連れて行かされたんです よ。」

A「へ〜ぇ。まことの家って英才教育の家庭だったのね。」

M「えっ!!そんな事ないんですけど、親はそのつもりだったかも知れま せんね。」

A「そうでしょ、きっと。小さい頃からクラシックだのバレエだのって、 それ英才教育に決っているわよね、純ちゃん、そう思わない?」

純(以下J)「そうですかね。親の趣味だったんじゃないんですか?」

A「まあ、そうとも言えるわね。」

M「まあ、それはどうでも良いじゃないですか。ビール下さい。」

A「あいよっ!」

M「それより何で今日は《くるみ割り人形》なんですかね。」

J「まことさ、それが今日は験(げん)直しなんだよね。」

M「験直し?何ですか?それ。」

J「まあさ、あきちゃんのお薦めもあってね、昨日あきちゃんと行ったわ けさ、ミュージカル《くるみ割り人形》。」

M「ミュージカルもあったんだ。知らなかったなぁ。」

J「前からあったんじゃなくて、今回が世界初演。で、演出が宮本亜門で 、作詞(英語詞〜勿論舞台では日本語訳ー橋本邦彦ーになっています〜) ・作曲がブロードウェイでも幾度もトニー賞にノミネートされた事がある マイケル・ジョン・ラキューザだって言うからさ、期待膨らんじゃって。」

A「だからさ、しゃぶしゃぶおごったじゃないよ。」

J「はい、そうでした。ご馳走様です。」

M「そんな事言っている所をみるとあんまり良くなかったんですか?もし かして。」

J「それが良くないなんて物じゃないんだよね。」

A「だからおごったでしょ、しゃぶしゃぶ。」

J「はいはい、ゴチでした。で、正月早々、何だこりゃ、ってな感じよ。」

M「純さん、相当怒ってません?」

A「まあ、解らなくもないのよ、あれじゃ。」

M「それじゃ、あき様も認める失敗作?」

A「まあ、失敗作というよりは、馬鹿にするなぁー!!!ってかんじかし らん。」

M「そんな作品観てみたいですよね、逆に。話しはホフマンの童話と同じ なんですかね。」

J「まあ、似てると言えば似ているし、似ていないと言えば似てないんだ よ。」

A「そのホフマンの話しはつまらない、って所から始まるわけだからね。」

M「じゃあ、ホフマンの童話を基にして作られているんですね。」

A「そうじゃなくてね、ホフマンの童話を基に作られた人形アニメーショ ン《くるみ割り人形》〜サンリオの社長、辻信太郎氏の原作〜に基づいて 作られたミュージカルなのよ。」

M「何だか複雑ですね。」

J「僕はね、話し自体はそんなにつまらないとは思わなかったんだけど、 ミュージカルとしてはね、って事よ、結局は。」

A「う〜む、解るけどそれも。確かに訴えようとしている事は良く解るし 、悪くはないと思うんだけどね。」

M「じゃあ、何がいけなかったんですかね。」

J「まず、自社製品の宣伝紛いの事を芝居の中に採り入れちゃったのがイ ヤだったよね。キティちゃんとか、DVDの宣伝とかさ。」

A「あれは白けるわね、実際。」

J「それにダラダラした話しの展開。特に1幕目は眠くなっちゃったもん 。」

A「そう言えば純、寝てたわよ、少しの間。でも、正直言って、アッシも 眠気が襲ってきちゃったもの。」

J「それから役者陣も何だかねぇ。」

M「パッとしなかったんですね。」

J「音楽もね、それに何と言っても演出が。宮本亜門は去年やった《太平 洋序曲》で復活したかと思ったのになぁ。がっかりしちゃったよ。」

A「アッシはね、前から言っている様に亜門の作品で良かったなと思って いるのは今でた《太平洋序曲》と、勿論《アイ・ゴット・マーマン》、そ れに《エニシング・ゴーズ》の3本。あとは悪いけどどうでも良い作品だ ったわね。日本の演劇批評家はやたらと彼の演出を褒め契っているけど、 ちゃんと観ているのかしらん、って感じよね。まあ、今回もアッシにとっ ても新年早々観る物間違えたかな?って思ったわね。」

M「じゃあ、全く救いはなかたんですね。」

J「あれじゃな、仕方ないんじゃないのぉ。」

A「勿論、サンリオ・ピューロランドでやってなさい!って感じだったけ ど、でもね、アッシには灯が見えてる物もあったのよね。」

J「何?何処?」

A「出演者の中で、意外に使える!って思ったのが、中山エミリ。彼女、 もっと芝居の勉強したらいいミュージカル女優になれると思ったし、20 年位前にヒット曲を連発していた麻倉未稀もすっかりミュージカル女優と して成り立っていたし、マイケル・ジョン・ラキューザの音楽も全体とし ては聴くべき物もなかったけど、唯一、1幕の初めの方で中山エミリが唄 う《Something too beautiful》なんていい曲もあったしね。」

J「確かに中山エミリは良かったよね、それに麻倉未稀も二役をちゃんと こなしてたなぁ。エミリのソロで良い曲があったのも、なんとなく記憶に あるってばあるし。」

M「まあ、験直しにチャイコもかかっている事だし、新年だからここでワ インでも飲みません?あき様、赤1本下さい。あとグラスを3つ。」

A「あら、新年ね。まことったら気前が良いじゃない。それじゃっと。」

M「新年だけじゃないんだけど....。」

J「まあ、いいじゃん。新年なんだからさ。」

A「イヤ〜ァん。」

               パリィ〜ン

M「あらら。新年早々。」

J「縁起でもないなぁ。」

A「本当よね、新年早々。まっ、しょうがないわね。また新たに行きまし ょ!」

J「そうそう。」

M「その意気で!」

A「そうね。」

M「それじゃみなさん、今年も宜しくお願いしますね。乾杯!」

一同「かんぱ〜い!ワハハハハ...。」


おわり


*登場人物は全て仮名です。

*今回紹介したミュージカル《くるみ割り人形》は昨年の12月25日〜 本年1月14日まで赤坂ACTシアターで上演されました。


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