《あっという間に...》の巻

あき(以下A)「いらっっしゃ〜い!」

ケイ子(以下K)「あら、お母さん、久しぶりです。」

A「ケイ子さぁ、そのお母さんって、止めてくれないかしらん。」

K「あら、お母さん、それはそうと水割り下さい。」

A「あいっよっ! あら、ヨッシー いらっしゃいっ!」

ヨッシー(以下Y)「こんばんわ。あれ〜、ケイ子さん、お久です。」

A「はい、ケイ子、お待たせ。ヨッシーは何にしよっ?」

Y「あっ、そうでした。え〜と、ビールで。」

A「あいよっ!」

Y「ケイ子さん、本当に久しぶりですね。元気そうで安心しました。今何 やっているんですか?」

K「あたい?あたいねぇ、何だと思う?」

A「はいヨッシーお待たせ。」

Y「え〜?何だろうな。前はショーの振付けでしたっけ。」

K「そうよ。で、今はね、タップダンス教えているのよ。」

A「あら、そうなんだ。タップダンスね。」

K「お母さん、あたいの生徒にならないかしらぁ〜ん。」

A「だからケイ子さあ、そのお母さんって止めてってば。」

K「あら、失礼しました。」

Y「タップって言ったら、この前あきさんと行ったのもタップのショーで したよね。何でしたっけ?」

A「あ〜、《Shoes On!(シューズ・オン) 3》ね。」

Y「そうそう。そのシューズ・オンね。とっても楽しくて、あっという間 の2時間でしたね。」

K「あらシューズ・オン?あたいも観に行ったわよ、銀座の博品館。」

A「あれは良かったわね。久々の快感だったわね。」

Y「あんな風に踊れたらなぁ〜って、僕思っちゃいましたよ。」

K「あら、ヨッシー、それじゃあたいの教室に通ってみない?」

Y「イヤぁ〜、今の所、そんな時間もないし.....。」

K「あっそう。」

A「で、ケイ子はどうよ、プロからみたシューズ・オンは。」

K「あたいが観ても楽しかったわよぅん。幕開きから楽しませてくれたじ ゃない。ガンガン行く所もあれば、おとなしく進んでいく所もあって。観 ている方も飽きないしね。」

Y「僕はですね、そのケイ子さんが言っていた最初のシーンはあんまり好 きじゃなかったんですよ。でも段々と盛り上がってきて。」

A「う〜む、ヨッシーの言っている事、少し解る様な気がするな。でもア ッシはあれで良いと思ったけどね。ドカ〜ンと一発、これはタップのショ ーなんだぞ!ってアピールしてたじゃない。」

Y「そういう事だったらなんとなく納得出来ますけど、僕にはちょっとね 。」

K「お母さん、」

A「だから、そのお母さんっていうのさぁ、.....。」

K「あら、またまた失礼。あたいもお母さん、じゃなかったあきちゃんの 言う通り、最初にこのショーのコンセプトを持ってきた所が本当に良かっ たのよぅん。それにショー全体の構成も良かったし。」

Y「笑いもふんだんにあってね。」

A「役者というか、出演者の実力も相当な物だったしね。何しろ年明けか らこけちゃったじゃない。」

Y「あ〜、《くるみ割り人形》ですね。」

A「そうそう。だから余計に良く思えたのかも知れないけど、それをさっ 引いても良かったわよ。」

K「あたいはねぇ、みんなが揃ってタップを踏む所は勿論、夫々の出演者 の個性が出ていて、それがまたよかったのよねぇん。ね、お母さんもそう 思わない?」

A「だからぁ〜ん。そのお母さんっていうの...。」

K「あら、つい出ちゃうのよぉん。ごめんなさ〜い。」

A「まあ、それは良いとしてさ、アッシもね、ケイ子が言っている様に出 演者の個性がうまく演出に反映されていて、まあ、勿論アッシの事だから さ、言いたい事はあるんだけど、でも全体からしてみたら本当に良かった わよね。」

Y「僕はやっぱり【ジーン・ケリーの世界】が良かったですね。この前映 画の《雨に唄えば》を観たばっかりだったし。」

K「お母さんは?」

A「だから、さっ。」

K「あら、またまた失礼。で、どこの辺りがお気に入りだったのかしらぁ ん。」

A「アッシはね、ショーの順を追って言ったらね、まず、玉野和紀のソロ で【アクシデント!】。タップと寸劇をうまく組み合わせてとてもお洒落 だったでしょ。それと川平慈英、藤浦功一、シルビア・グラブ、吉岡小鼓 音がマンハッタン・トランスファーのようなハーモニーを聴かせる【ルー ト66】。そして、何と言っても今の4人に高谷あゆみと玉野君を加えた 7人で贈る【ミスター・ボージャングル】だわね。何手ことない、ありふ れた演出なんだけど、まあ、これはこの曲の内容が素晴らしいって事なの かしらね。」

K「あたいはね、言わせてもらっていいかしらぁん。最後の盛り上げ方、 【タップメドレー】と【スウィングしなきゃ意味ないね】の二つ。本当は あたいも舞台に上って一緒にタップ踏みたかったもの。あ〜あ悔しい〜ぃ 。」

A「アッシもついつい踊りたくなっちゃったけどさ、あの振付けはブロー ドウェイでやった《ウィル・ロジャース・フォーリーズ》の一場面とそっ くりだったのがチト残念だったわ。」

K「あらっ!驚きぃ〜い。まぁ〜あ、知らなかったわ。でもよかったわよ ぉん。」

Y「僕も最後まで来ると乗っているんでガンガン来られても平気になっち ゃって、ほんとに楽しい時間が過ごせましたよ。あっと言う間の2時間で した。」

A「それは言えたわね、あっと言う間に過ぎた2時間だったって。」

スターちゃん(以下S)「こんばんわぁ〜〜〜ぁ。」

A「あらスターちゃん、いらっしゃい。どど、どうしたのよ、そんなに酔 っ払っちゃって。」

S「白ワインくださぁ〜〜〜い。」

A「あいよっ!お待たせ。」

S「あのぉ〜。僕帰ります。いくらですかぁ〜〜〜ぁ。」

A「えっ!?ホントに帰るの?それじゃね、お通しはサービスしておくか らね、2千3百円。」

S「はい、じゃあこれで。それじゃみなさん、さ・よ・お・な・らぁ〜〜 。」

K「何なのぉ〜?」

Y「あっと言う間に帰っちゃいましたねぇ。」

A「大丈夫かしらん。ちゃんとタクシーに乗れるといいけど。でもあっと いうまに帰っちゃったわね。」

K「あらやだ、お母さん、もうこんな時間。」

A「だから、.....。」

Y「あ、本当だ。話していると時間て本当にあっと言う間に経っちゃいま すね。それじゃ僕この辺りで帰ります。ご馳走様でした。」

K「お母さん、あたいも帰るわ。おいくらかしらぁん。」

A「二人とも1200円です。有難うございます。」

K「はいご馳走様でした。ねぇん、ヨッシーさぁん、良かったらあたいの タップダンス教室、本当に来ない〜ん?」

Y「はぁい。考えておきます。それじゃさよなら!」

A「あらら、逃げるように.....。」

K「それじゃお母さんお休みなさいねぇ。」

A「はい、お休みなさい。気を付けてね。そうそう、今度教室のパンフ、 置いとけばいいじゃない、ここに。」

K「あら、お母さん、お願いするわぁ〜ん。それじゃぁねぇ。」

A「ありがとね!あ〜あ、最後までお母さんか。全然変ってない。さ、ま だまだ2時間。あっと言う間に経ってくれれば良いんだけどねぇ。」

お客さん「こんばんわ!」

A「あら、いらっしゃ〜い!」

おわり


*登場人物は全て仮名です。

*今回紹介した《Shoes On 3》は、東京の博品館劇場での公演は終 了しましたが、2月3日(日)に亀有にある「かめありリリオホール」で 公演されます。見逃した方はどうぞ足を運んで下さい。



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