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<東京もブロードウェイ>の巻
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あき(以下A)「あら、久しぶりねサブちゃん、いらっしゃ〜い!」 サブ(以下S)「今晩は。ほんと、久しぶりですね。元気そうで何よりです。 あっ、こいつ、今のです。キヨシって言います。よろしくしてあげて下さいね。」 キヨシ(以下K)「よろしくです。いや〜、聞いてたけど本当に狭いね。」 S「おいおい、いきなり何だよぉ〜。」 K「でも、好きだよ、こんな店。」 A 「本当に狭いでしょ。世界一狭いのよ。」 K「そうなんだ。本当に狭いよね。」 S「あんまり言うと嫌われちゃうぞ。」 A 「いいのよ、好きだって言ってくれてるしねぇ。」 S「俺はビール。キヨシは?」 K「ワインあるのかな?」 A 「あるわよ。白がマコン・ヴィラージュ、赤がサンタ・ヘレナ。」 K「それじゃ赤で。」 A 「あいよっ!」 S「ワインなんて飲んだっけ?」 K「ほら、今日はミュージカルの帰りだもん。気分的にね、 やっぱワインでしょ。」 A 「ミュージカル?何観てきたのかしらん。」 S「今来日公演している<クラス・アクト>ですよ。 あきちゃんはもう観たんだよね、きっと。」 K「何で?久しぶりに来たのに。知ってるの?」 S「あきちゃんてさ、ミュージカル大好き人間なんだよ。毎年、 ブロードウェイに行って観て来るんだから。勿論普通の芝居も好きらしいけど。」 K「そうなんだ。いいなぁ〜。オイラも行きてぇ〜!ブロードウェイ。で、 あきさん、観たの?<クラス・アクト>は。」 A 「勿論です。あっちで観ようと思っていたんだけど、 丁度クローズしちゃってて。そしたら来日でしょ。 すぐチケット手配したわよ。…はい、おまたせ。」 K「イヤ〜ッ!いいグラスだね。益々気に入っちゃったよ。ねえ、 あきさんもどうです?」 A 「はい、頂くわね。」 K「乾杯!ほら、サブ兄も。」 S「あ〜、乾杯!なんか、ウキウキだな、キヨシ。とっても気分良いみたいだね。」 A 「本当ね。」 K「でぇ、あきさん、<クラス・アクト>はどうだったんです?」 A 「ちょっと淋しかったわね、客席が。半分位しか埋まってなかったのよね。」 S「今日はそこまでじゃなかったけど、空席は目立ってたね。」 K「そうだよね、ちょっとオイラ寂しかったな。とっても良かったのに。ねぇ、 あきさん。」 A 「まあ、アッシはね、やっぱりオフの作品かな?って思ったんだけどね。」 K「オフの作品?」 S「ほら、ニューヨークのブロードウェイにはその規模によって、 オン、オフ、オフオフって分かれてるだろ。そのオフだよね、あきちゃん。」 A 「そうそう。元々<クラス・アクト>って、 オフ・ブロードウェイで上演していた物をオンに持っていったものでしょ。 特に今回の劇場が、史上最悪の赤坂ACTシアターじゃない。 この作品をあんな幅の広い劇場で上演させる事自体に疑問は感じていたんだけど、 現実に 観てみると、やっぱり広すぎるのよね。」 K「あ〜、なるほどね。 もう少し狭かったら客席もあんなに寂しくなかったかもな。」 A 「そうでしょ。作品にあった劇場から選んでいかないとね。」 S「まあ、それは仕方ないとして、出来はどうだった? 俺もキヨシと一緒に観て結構良かったんだけどね。」 A 「そうね、まあまあかな?勿論、役者は充実していたしね。 まあ、満足のいく作品、てなところかな?」 K「結構厳しいねぇ。いろいろ観ているんだろうな。 最近では他にどんな芝居観たの?」 A 「そうね、まず、オフ的劇場では、下北沢にある本多劇場で、 宇宙堂の第二回公演<詩のしの詩>でしょ、小さめのオン的劇場では、 渋谷のシアター・コクーンで<リトル・ヴォイス>。そして、完全な大劇場、 新橋演舞場では、藤山寛美の十三回忌追善公演の<桂 春団治>かな。」 K「いろんなジャンル観るんだね。それぞれ簡単に批評してよ。」 S「おいおい、……。」 A 「いいのよ。キヨシも好きそうね、お芝居。何か合うような気がしてきたわ。」 K「そうだろ。オイラもそう思っちゃってさ。」 A 「それじゃ、<詩のしの詩>からね。まあ、 渡辺えり子が宇宙堂を旗揚げしたのが丁度1年前位なんだけど、 旗揚げの作品はただ長すぎて、お世辞にも成功したとは言いがたかったのね。 で今回はというと、旗揚げ公演よりは随分と良かったんだけど、 渡辺えり子と深沢敦の演技が、他の役者の芝居を邪魔しちゃてるのよね。」 S「それってどういう事?」 A 「ほら、例えば、舞台上手で結構マジに芝居してるじゃない、その時に、 下手にいるあの二人が余計な演技で笑わせちゃうのよ、客を。 あれが無ければもっと良かったのにって、一寸残念ね。」 K「オイラとしては<リトル・ヴォイス>が気になるんだけど、…。」 A 「<リトル・ヴォイス>は期待していなかった分、良かったわね。 池田有希子のLV(リトル・ヴォイス)は、 歌は似ているとは言えないまでも確かな歌唱力で合格点。 翻訳と演出も兼ねたレイ・セイ役の江守徹は新劇くささが少し残るものの、 まあまあってな所かな?母親を演った山本陽子は頑張ってはいたものの、 膨大な台詞をこなすのが精一杯ってな感じで、いまいち。そんな所かしらん。」 K「映画が大好きだからさ、観たかったんだけど、時間がなくてね。 来日しないかな?」 S「なかなか難しいでしょ、それは。ねえ、あきちゃん。」 A 「そうね、アッシもそう思うけど、この夏は来日ラッシュだものね、 分からないわよ。」 S「来年以降に期待って感じですかね。」 K「ところで、オイラは丸っきり初めて聞いたんだけど、 藤山なんとかの何だっけ?」 A 「藤山寛美の十三回忌追善公演<桂 春団治>ね。」 K「それそれ。藤山直美だったら知ってるんだけどなぁ。」 S「そのお父さんだよ、寛美っていうのは。」 K「へぇ〜、そうなんだ。」 A 「この芝居は正に<芸>のオンパレード。その<間>が抜群の直美をはじめ、 <達者>な勘九郎、笹野高史、<上手い>土田早苗、波野久里子。 松竹新喜劇時代の花紀京、大津嶺子、小島慶四郎、秀哉。 芸達者の役者が揃うと、あっと言う間に時が過ぎちゃうのよね。」 K「いままでそういう芝居観た事なかったんだよね。今度連れてってよ、 あきさん。」 A 「そうね、何か面白そうなのがあったら行きましょうか?」 K「やったね!」 S「おいおい、俺もお忘れなく。」 K「それにしても、大劇場から本当に小さな劇場まで、 東京もブロードウェイに負けず劣らずだよな。」 A 「そうね。劇場の数ではブロードウェイを凌いでいるかもね。 それにさっきも言ったけど、来月は来日公演ラッシュでしょ。 <東京もブロードウェイ>ね。」 K「ねえ、サブ兄、早速来月行く芝居決めなきゃね。あきさん、 情報誌あったら見せてよ。」 A 「はいはい。そこにぴあかシアターガイドがあったと思ったんだけど。」 K「あった、あった。あ〜、それからワインもう一本!」 S「おいおい、大丈夫なんだろうね。面倒見るのは俺なんだからな。」 K「大丈夫、大丈夫。はいはい、みんなで乾杯だ〜。あきさん、早くはやく。」 A 「あいよ!」 おわり *登場人物は全て仮名です。 *今回紹介したお芝居などは… 1)<クラス・アクト>28日まで。 赤坂ACTシアター 2)宇宙堂<詩のしの詩>公演終了 3)<リトル・ヴォイス>公演終了 4)藤山寛美十三回忌追善<桂 春団治>公演終了以上です。8月も来日公演をはじめ、沢山楽しいお芝居が公演されます。 どうぞ足を運んでくださいね。 |