<なんでやねん!>の巻

正ちゃん(以下S)「いらっしゃ〜い!あら、早いじゃないですか?アキ様。」

あき(以下A)「以外に早く終わっちゃってね。」

クロちゃん(以下K)「何処かいっていたんですね。すっと待っちゃいましたよ。」

S「ここの所、アキ様ったら芝居ばっかりみたいなのよね。いったい誰と行ってらっしゃるのかしら〜ぁん?」

A「芝居じゃないわよ。ライヴ。音楽のね。」

K「へ〜、誰のですか?」

A「日曜日が綾戸智絵でしょ、月曜日が…」

K「綾戸智絵ですか。行きたいんだよォ〜。券取れないんだよね。」

S「という事は、あの男(こ)と行ったのかしらぁ〜ん?」

A「まあ、どうでもいいじゃないよ。でもクロちゃん、今は前ほどチケット取るの、難しくなくなったわよ。」

K「そうなんですか?一度行ってみたくて。」

A「そしたら、機会があれば一緒に今度いきましょうよ。正ちゃんにお店任せるからさ。」

K「本当ですか?楽しみにしてますよ。」

S「あらあら。分かりました。絶対に、1ヶ月前には言って下さいよね。それにしても毎回チケット取りにくいって言うのも問題ありだよね。」

A「そうなのよ。アッシはさ、ライヴハウスにしか行かないから、よけいに取りにくいのよね。」

K「それは何でなんですかね?」

A「ほんとに<なんでやねん!>って言いたくなっちゃうのよ、ったく。」

S「アキ様、まあ、興奮しないで。」 K「何か原因があるんですかね。」

A「アッシね、普通のコンサート会場でする時は良いと思っているんだけど、まあ、今回は ”SWEET BASIL139”っていう六本木のライヴハウスだったんだけど、ファン倶楽部が半分取っているのよ、予め。」

S「まあ、何時もありますよね、ファン倶楽部の優先予約みたいなものが。」

K「そうそう。」

A「そこに問題があるわけよね。アッシみたいにさ、ライヴハウスに行って、お酒飲みながらの雰囲気を楽しみたいっていう人っていると思うのね。そういう人達って、そのライヴハウスでの自分の席ってあるわけじゃない。」

S「そうそう。朝の電車や、銭湯なんかでも座ったり、乗ったりする位置が決まってたりするもんね、自分のさ。」

K「分かるわかる。」

A「アッシはさ、いつもの席が一般用の席だからいいんだけど、…。」

S「つまり、アキ様が言いたいのはこれでしょ。勿論ファンも大切だけど、そこの空間を何時も利用している人をもっと大切に思いなさいよっ!て事よね。」

A「そうなのよ。流石は正ちゃんね。任せてる事あるわ。」

K「そうだよね。大体そういう所は自由席だから、無理してでも早く行くわけだからね。折角早い順番で並べたのに、席の区分けがしてあったらガッカリしちゃうもんね。分かるなぁ〜。」

A「ほんと、<なんでやねん!>って感じよ。」

S「イヤァ〜、分かるわね、はははは…。」

A「今週はそんなのばっかし。」

K「そんなのって、<なんでやねん!>系がですか?」

A「そうなのよ。さっき途中だったけど、月曜にはね、横浜にある<Ocean Blue YOKOHAMA>っていうライヴハウスに行ったのよ。」

S「それは誰のライヴだったんです?」

A「ケニー・ランキンのライヴだったんだけど、ま〜〜〜、遠いのなんのって。」

K「横浜ですよね。まあ、東京から約20分位じゃないかなぁ〜。」

A「クロちゃん、違うのよ、説明が悪かったわね。横浜って言っても桜木町なのよ。」

S「あ〜ぁ、もしかしてあの赤レンガ倉庫の所ですぅ〜?」

A「そうそう、あそこよ。」

S「あそこだったら遠いですわ、本当に。でもさ、アキ様、あの辺り、大概の人は車で行くんですよ、えっ!まさか、今回電車で、な〜んて事ないわよねぇ〜。」

A「おだまり!電車だったのよ、電車。」

S「あらあら、うふふふ。」

A「時給下げるわよ!」

S「あら、それは困った。ごめんなさぁ〜い。で、どうだったんです、ライヴは。」

K「たまにかかってますよね、ここで。」

A「そうそう。アッシのお気に入りのアーティストだからね。」

K「雰囲気も良さそうだしね、赤レンガ倉庫のライヴハウスだったら。」

A「本当に雰囲気は最高よ。中央にステージ、サイドがカウンターでさ、客席の中央がテーブル席になってるの。後ろには二人掛けのソファーがあってね。」

K「恋人同士にはムード満点だよねぇ。」

S「キャ〜!アキ様、誰と行かれたのかしらぁ〜ん?うふふふ。」

A「本当に時給下げるからね!」

S「怖い怖い。で、…。」

A「雰囲気は最高にいいし、ちょっと声の調子が良くなかったものの、ケニー・ランキンのライヴは十分に堪能できたのよね。」

K「良かったじゃないですか。僕も恋人が出来たらいきたいなぁ、そんな所。」

A「いいでしょ、本当に。でもね、ここでも<なんでやねん!>と思う事があったのよ。」

S「何があったのかしら、まさか、アキ様が厭らしい事でも…?」

A「いい加減にしなさいよ!」

S「はいはい。失礼しました。」

A「何がってね、お客様の数なの。」

K「キャパはどれ位なんです?」

A「そうね、150人位かしら。で、そこに30人程しか入ってないのよ。本当に<なんでやねん!>て叫びたくなっちゃったわよ。」

K「何でなんですかね。」

A「原因はいろいろあると思うけど、一番の原因はお客様の事をあんまり考えてないんじゃないか、って事なのよね。」

S「と言うのは?遠い所に作ちゃったとか、…でも、そんな事はないわよね、ちゃんとマーケッティング・リサーチだってしているだろうし。」

A「その後よ。場所だって遠いけど悪くない。アーチストは有名。じゃあ、なんで?って事になるでしょ。」

K「何でなんでしょうね。」

A「アッシが思うのはね、その場所に合った時間の設定をライヴハウス側がもっと考えるべき、と言う事なのよ。」

S「まあ、そうよね、近辺に住んでいる人だけを対象にしているんだったらともかくね。」

A「流石、正ちゃん。売上の事を考えているのかもしれないけど、かえって逆効果よ。これがさ、8時位から始まる一度のステージだったら、東京で仕事が終わってからも来る事が出来るし、終わってからも余裕をもって帰る事が出来るじゃない?」

S「そうですよ、そうすればそのアーチストの方だって、ノリが違ってきますよね。」

K「なるほどね。」

A「それとはチト違うんだけど、今日のステージも主催者側にもっと考えてもらわないと、アーチストが可愛そうだと思ったのよね。」

K「今日はどんなステージだったんですか?」

A「今日はね、赤坂にあるジャズのライヴハウス、Bフラットという所で、オフ・ブロードウェイのミュージカル<レディー・デイ>を観て来たんだけど。」

S「それ聞いた事ありますよね、なんだったっけ?あっ!そうそう、ビリー・ホリデイのやつでしたよね。前にちあきなおみが演って凄く話題になったやつでしょ。」

A「そうそう。正式には<Lady Day at Emerson's Bar & Grill>っていうんだけど、これが凄く良い舞台というか、ライヴだったのよね。」

K「まさか、ちあきなおみが出てたわけじゃぁないんですよね。」

A「勿論よ。もう一度彼女で観たいけど。今回のは来日公演なのよ。といっても2回しか公演しないんだけどね。」

S「前からアキ様その公演には力入ってましたよね。」

A「そうね、アッシがオフ・ブロードウェイで観たのがもう十数年前でしょ。その時は、ロネット・マッキーという人が演ってて、とても感激して帰って来たんだけど、その後、日本でもちあきなおみの主演といっても一人芝居なんだけどね、で公演して、これがもう、オリジナルより良くてさ、ちあきが数回演じた後は、LNTの阿知波さんや、田中利花さんが演ったけど、決定版は、やはりちあきなおみだな、と思っていたのよ。」

K「それじゃ、今日のはそれを越えたんですか?」

A「そうじゃないのよね、越えたとか、越えてないとかの問題じゃなくて、ただ、とっても素晴らしかったって事なのよ。」

S「比べる事自体がナンセンス、ってな事かしらねぇ。」

A「あら、正ちゃん、流石ね。そういう事よ。」

K「でも、アキさんは、主催者側にもっと考えてもらわなきゃいけない事があるって言ってましたよね。」

A「そうなの。あんなにいい舞台なのに、お客様の数、40人程度なのよ。<なんでやねん!>ってここでも言いたくなっちゃってさ。」

S「ちあきなおみの時には、チケット取るの大変でしたよね、確か。」

K「何処が違ったんですかね。」

A「アッシもね、考えてみたのよ。丁度、帰り道の途中に、ちあきが<Lady Day>を演った劇場があったからね、なおさらあの時の事を思うと、何が悪かったのかな、ってね。」

S「で、何か分かったんですか?」

A「そう、分かったのよ。」

K「それは、なに?」

A「今回は宣伝の問題だと思ったわね。」

K「宣伝の問題?」

A「そうなの。だってさ、正ちゃん、あなたの様に、いつも<ぴあ>とか見ている人でも、見なかったんじゃない?この公演に関するもの。」

S「そういえば、いつも演劇欄は必ず目を通すんですけど、気が付かなかったわね。」

A「でしょ。このシアター・ガイドにも載ってないのよ。アッシがこの公演に関する記事を見たのは、会場からの案内と、スウィング・ジャーナル誌だけ。」

K「じゃあ、限られちゃうよね、知っている人も。」

A「そうなのよ。主催者側も、今までの事を考えて、演劇畑の方にも宣伝すべきだったわね。本当に、あんな良い舞台を見逃しちゃう人が多いって、とても不幸な事だと思うわ、チト大袈裟だけどね。」

K「演ってる方も可愛そうだし。」

A「本当よね。今回ビリー・ホリデイを演じたキム・ゾムビックという歌手を、是非見てもらいたいわよね。」

S「まだ一日残っているんですよねぇ。オイラも行ってこようかな。」

A「是非行ってらっしゃいよ。アッシが振り込んでおくからさ、チケット代。」

S「え!!!本当ぉ〜。アキ様、感謝感激雨霰。」

A「今日の給料から引いておくから、心配しないで!」

S「え〜っ!<なんでやねん!>」

A「そんなに甘くありません、世の中は。」

K「本当だよね、あはははは……。」

S「なんでやね〜〜〜〜ん!」

おわり


*今回紹介したライヴ等は…

1)綾戸智絵    12月23・24日
                 東京国際フォーラム ほか
2)ケニー・ランキン   9月9〜14日
                 ブルー・ノート東京
3)Lady Day <レディ・デイ>   9月10日
                 赤坂 Bフラット
以上です。どうぞ足をお運びくださいね。


Back Number!