<終わり良ければ>の巻

智君(以下T)「良かった良かった!」

アキ(以下A)「そんなに喜んじゃって。」

T「そりゃそうですってば。やっと手に入ったんですよ。勝さんに感謝感謝。」

A「本当に良かったわよね。勝ったら、前日になって行けなくなるだもの。平日休みの人なんて、そうザラにはいないしね。」

T「まあ、代役でも何でも良いんですよ。とにかくラッキー!ってか〜〜〜ぁ!」

A「ホントに良かったわね。」

T「あれ〜〜〜!アキさん、何か浮かない顔してますよ。もも・・・もしかして俺と行ったのが失敗だった、 な〜〜んて考えてませんかぁ〜?」

A「そうじゃないんだけど。・・・まあ、取り合えず食事しましょうよ。」

T「へぇ〜。こんな遅くまでやっているんですね、このレストラン街。」

A「そうなのよ。とっても便利。ほら、日本てさ、芝居が終わってから食事する所を見つけるのって、とっても大変だったじゃない。 それがここは深夜の12時までやっているのよ。」

T「凄いっすね。それじゃぁ、ラストオーダーも11時半位だ。それはいいな。」

A「ここにしましょ。」

ウェイター(以下W)「いらっしゃいませ。ご注文がおき・・・。」

A「はい、決まってます。このしゃぶしゃぶのコースを二人前。それに、飲み物は、智ちゃんは何にする?アッシは生ビール。」

T「俺はグラスワインの赤を。」

A「じゃあ、それで。」

W「かしこまりました。」

T「で。、アキさんのその浮かない顔には何か原因が?」

A「ありありよ。」

T「何なんです?その原因って。」

A「アッシにとっては、あんまり面白くなかったのよね。」

T「え〜〜っ!あんなに皆も笑い転げてたのに。」

A「おかしな所は幾つかあったんだけどさ。」

T「そりゃそうですってば。<おかしな二人>ですよ、ってか?」

A「寒ゥ〜。」

T「失礼。でも、小林聡美も小泉今日子も良かったじゃないですか。」

A「そうかな〜?」

T「そうですよってば。小林聡美=オリーブの何処か、っていうか、全部女からかけ離れたズボラな感じ。 小泉今日子=フローレンスのジトジトした感じの潔癖症。それにあのスペイン人の兄弟。良かったけどなぁ〜。」

A「アッシはね、まず、オリーブだけど、男っぽ過ぎちゃって。やっぱり女ならではのだらしなさ、ってあると思うんだけど、 それが演出されてなかったと思うのよ。」

W「お待たせいたしました。ご用がありましたらまたお声お掛けください。」

A「はい、ありがとう。さあ、食べましょう!」

T「男っぽ過ぎるね。俺にはいまいち分からないけどなぁ〜。いただきま〜す。」

A「はいどうぞ。逆にフローレンスは女っぽ過ぎちゃって。ただのネトネト女にしか見えなかったわけね。あの身のこなし、喋り方。」

T「可愛いかったけどなぁ〜、きょんきょん。」

A「アッシが言っているのはさ、出演者の問題じゃなくて、演出の問題ね。」

T「それでもスぺイン人兄弟は面白かったんじゃないんですぅ〜?」

A「最低ね。男編の時のイギリス人姉妹も最低だったけど、女編でのスペイン人兄弟も、ひどかった。」

T「でも、みんなも相当笑ってましたよ。俺はとっても面白かったと思うんだけどなぁ〜。」

A「翻訳は大変だったと思うけど、何しろ、兄貴の方は英語があんまり、というか、殆ど駄目なスペイン人の役でしょ。 英語が駄目なスペイン人が喋る日本語の翻訳。すごく大変だったと思うのよ。でも、あれはひどい。アッシには、 お茶ら気だけを前面に出している様で、やっぱり<笑い>の本質というか、それが欠けている様でね。今の若い観客は、 あれでも面白いって思うのかもしれないけど、アッシには少なくとも、残るのは不快感だけだったわね。」

T「おれなんか、ただ可笑しかったら、それで良いって柄だからな。」

A「それはそれで良いんじゃないかしらん。」

T「アキさん、さっき演出の問題って言ってましたよね。具体的に言うとどう言う事なんです?」

A「自転車キンクリートを演出している時から思っているんだけど、鈴木裕美の演出って、ドタバタしてるだけ、 っていう感じなのよね。というか、そのドタバタ感が長すぎるのよね。たとえば、同じドタバタでも、唐十郎のドタバタは違うのよ。」

T「俺にはあんまりよく分からないですね。」

A「切り替えのタイミング、っていうのかしらん。言葉では説明がチト難しいんだけど、ドタバタの間に、 す〜っと切り替えた台詞があって、またドタバタっていうの?ドタバタばかりを続けないっていうの?分かり易く言ったらなんだろう? そうだ、呼吸かな?呼吸。呼吸だわね。」

T「ひと呼吸おく、っていうヤツですね、きっと。」

A「そうそう。その呼吸が鈴木裕美の演出には足りないような気がするのね。」

T「キャストが変わったら、また違っていたかもしれませんよね。」

A「そうね。アッシはね、オリーブを小泉今日子、フローレンスを小林聡美にやらせたかったわね。」

T「それ面白いかも。」

A「まあ、今回は期待が大きすぎて、男編も女編も、いまいちだったかな?」

T「損しちゃいましたかね、それじゃ。」

A「損はしなかったわよ。観なきゃ良かったなんて、まったく思っていないからね。」

T「それよりアキさん、このゴマダレ、美味しっすよ。初めてだよ、俺。こんなゴマダレ食ったの。」

A「そうでしょ。ここのゴマダレは他所とちがって、美味しいのよ、チト辛いけどね。」

T「お代わりしちゃおっと。」

A「沢山食べてよ。」

T「観終わった後の時間も大切ですよね、こうやって食事していると、そう思います。」

A「良かった良かった。アッシにとっては終わり良ければ全て良しって言う事かしらん。」

二人「ははははは・・・・・。」

T「すみませ〜ん。お代わり二皿お願いしま〜す。」

おわり


*今回紹介したお芝居は、<おかしな二人〜女編〜>でした。東京公演は終了しましたが、大阪公演は、10月30日まで、 梅田のシアター・ドラマシティーで行われています。どうぞ足をお運びくださいね。


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