<あなたはいったい誰なのよ?>の巻

あき(以下A)「いらっしゃ〜い!」

光ちゃん(以下K)「寒いねぇ〜。」

サクラ(以下S)「何いっとんとぉ〜!今は冬ですから、寒いの当たり前じゃぁございません?」

A「また、最初から。少しは優しさってもんが無いのかしらん、サクラちゃんには。」

S「ありませんのよ、あたくしには。」

K「まあ、それがサクラちゃんだからね、仕方ないと言えば仕方ないじゃない。」

A「光ちゃんも優しすぎる。でも、サクラちゃんから、これを取ったらな〜んにも残らないからね。仕方ないかぁ〜。」

S「おだまり!ビールお替わりよ!」

A「あいよっ!光ちゃんは、何にしよう。」

K「ウーロン杯で。」

A「あいよっ!」

S「あら、光ちゃん、今日はおめかしして、映画でも行ってらっしゃったのかしら〜ん?」

A「いやだ、サクラちゃん、今どきおめかしして映画なんか行かないわよ、ねぇ〜。」

K「それがさ、行ってきたんだよ。」

A「あらら。それじゃ、デートかなんか?は〜い、お待ち!」

K「そうじゃないんだけど、今日休みだったのね、だからたまにはお洒落して街にでも出ようかなって。」

S「いい事じゃございませんか。今どき、そんな事思って街に出る男、少なくなったもんねぇ〜。良い事でございますわよ。で、何、見てきた?映画は。」

K「マット・デイモンの<ボーン・アイデンティティー>なんだけどさ。」

A「あらっ!アッシのマット様の映画ね。」

K「あきちゃんは見たの?まあ、マットのファンだから、当然見たよね。」

A「もち、見てきましたよ。アタシのマット様ですも〜ん。」

S「何馬鹿な事、いっとんとぉ〜。で、どうだったのかしらん?」

K「話は面白かったんじゃないの?と、思いますけど。」

A「まあ、そうね。アッシは、最後がいまいちだったけどね。」

K「え〜、そう?僕なんか、結構良かったけどね。」

S「そんな、二人だけで分からないで、僕にも教えてよぉ〜ん。」

K「ごめんね、サクラちゃん。」

S「あら〜ん、教えてくれるの?光ちゃんて、本当に優しいのねぇ〜ん。」

A「サクラちゃん、気持ち悪いから、それ。」

S「おだまり!はははは。気持ち悪かったわよね、僕も多分そう思ったでしょうね、きっと。」

A「いきなり変わるんだから。」

K「まあ、そこがサクラちゃんじゃないの。」

S「流石は光ちゃん。良くお分かりです事。で、映画よ、映画。どんなストーリーなのかしら?」

K「最初ね、嵐の海で漁船が発見するんですよ、死体を。でもね、まだ死んでないの。」

S「それじゃ、死体じゃございませんのよ。」

A「もう、サクラちゃんたら、チャチャ入れないで聞きなさいよ。」

S「あら、失礼いたしました。ビール!」

A「あいよっ!」

K「で、いいかしら?まあ、死ぬ寸前を助けられたっていうの?それでさ、船員の中に、医者みたいな人がいてね、体に撃ちこまれた銃弾と、お尻に埋め込まれたチップみたいのを取り出すわけ。」

A「その時、そのチップから何かが浮かび上がってくるのよ。」

K「スイス銀行の口座番号なんだけどね。そこから始まる分けなのね、この映画。」

S「何か面白そうじゃございませんの。で、話さないで下さいませよ、まだ見ていないんだから。ねぇ、ぜ〜んぶ言っちゃう人いるでしょぉ〜、困るのよねぇ〜。まだこっちが見てもいないのに、ぜ〜んぶ言っちゃうのよ。だから、光ちゃん、言わないで下さいませねぇ〜。」

K「大丈夫、大丈夫。それから先は詳しくは言わないから。」

A「はい、サクラちゃん、ビールお待たせ。それにしてもさ、話の展開は面白かったわよね。映画でさ、ドキドキする時って、同時進行で、何かが起こってくる事が結構ない?」

S「あ〜ります、ありますわよ。僕なんかで言えば、<ゴッド・ファーザー>のパートいくつだったかしら?まあ、その映画でね、オペラの進行と同時で暗殺行動が進んでいくのよ。まあ、あたくしドキドキもので見てましたわ。」

A「あったわね、あれはドキドキしたわ。でもね、この映画の同時進行って、あれとは少し違うのよ。」

S「どう違うのかしらん?」

K「主人公が記憶を無くしているからね。自分自身を探していると同時に、秘密組織と自分の関係とが浮かび上がってくるって言うの?」

S「あら、よろしいんじゃありませんのぉ。」

A「そして、映画だから当たり前と言えばそうなんだけど、その二つが結びついてくるのよね。」

S「良くある展開だわね、それは。でも、面白そうじゃありませんのぉ。」

K「カーチェイスも凄かったよね。」

A「そうよね、アクション映画って感じが本当にしたもの。最近はアナログ的な物が少なくなっているじゃない。だから、久しぶりに、ウォ〜!ってな感じで見ちゃったわね。」

K「共演の女の子も可愛かったよね。」

A「あ〜、あの子ね。去年<ラン・ローラ・ラン>で主役だったフランカ・ポテンテね。彼女、とっても良かったんだけど、アッシとしては、もうちょっと美人の子を使ってもらいたかったわね。」

K「でも、良かったじゃん。僕はすきだけどな。」

S「まあ、相手役は美人がよろしいんじゃありませんかぁ?」

A「って言うかさ、アッシのマット様って、そんなにハンサムじゃないじゃない。だから、相手の女優さんは美人をね、って思っただけだったんだけどね。」

S「あきちゃん、ビール。」

A「大丈夫?サクラちゃん。今日はもう6本目よ。」

S「映画の話で飲まないわけいかないじゃないの。早くビール!」

A「はいはい。はい、ビール。」

S「まぁ〜、美味しい。あたくしも久しぶりに映画に行ってこようかしらん。」

K「そうですよ、さくらちゃん。楽しいもの、映画って。その中の役にもなりきれちゃうしね。」

A「まあ、サクラちゃんの場合は、何時でも誰かになりきっちゃってるけどね。」

S「おだまり!はい、そうですの。あたくし、映画のヒロインになりきってますわよ、何時も。」

A「あら、失敗。本当になりきっちゃいそう。ビール6本ぐらい昔は大丈夫だったのにね。今は危ないかぁ〜。」

K「でも、面白いじゃん。サクラちゃん見ていると、映画を見ているより面白いかもね。」

S「あきちゃん、ライト当てて!あたくしは大物でございますわ。映画が小さくなりましたの。クローズアップ、クローズアップ!」

A「んもう、始まっちゃったわ。」

K「でも、楽しいじゃん、本当に。」

A「まあ、光ちゃんたら。アッシの身にもなってちょうだいよ。本当に、サクラちゃんたら。あなたはいったい誰なのよ?」

S「はい、あたくしは、新宿のノーマ・デズモンド、サクラでございます。」

A「あ〜、やってられない。」

K「はははは・・・・・・・。」

おわり


*登場人物は全て仮名です。

*今回紹介した<ボーン・アイデンティティー>は、ユニヴァーサル系の映画館で上映中です。どうぞ足をお運び下さい。



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