<もう止めて〜!>の巻

あき(以下A)「いらっしゃ〜い!」

オサム(以下O)「今晩にゃ。」

A「なによ、オサムちゃんたら、今晩にゃ?」

ヨッシー(以下Y)「はははは。オサムさん、今晩にゃ。」

A「気持ち悪いからさ、止めなさいよ。ヨッシーまで。それより何にしよっ?」

O「え〜っと。今日はカシス・ソーダで。」

A「あら、今日は軟弱ドリンクね。飲みすぎかしらん。」

O「違うんだよ。今さ、確定申告の真っ最中でさ、疲れきっちゃているだよなぁ〜。」

Y「それは大変ですね。ぼくなんか会社員ですから、そういう点では楽ですよね。」

O「あきちゃんは?大変じゃない?」

A「アッシはもう出してきちゃったもの。軽くなったわよ、背中が。」

Y「流石ですね。あきさん、何時も早いですよね。準備ちゃんとしているんでしょう。」

A「そんな事ないけど、計算だけすれば良い様に、毎日整理はしているけどね。」

O「偉いよなぁ〜。僕はそういう所が駄目なんだよぉ〜。詰まっちゃうしね。」

A「あら、アッシだって詰まっちゃうわよ、時々。」

O「そういう時さ、どうしてるの?あきちゃんは。」

A「結構あるんだけど、今年の場合はね、映画観たり、あらかじめ芝居を観る予定を計画の間に入れたりしたのよ。」

Y「へぇ〜。何をご覧になったんですか?」

A「芝居が<青ひげ公の城>でしょ、それと<ジョセフィン>。映画が<銀幕のメモワール>だわね。」

O「そうかぁ〜。それで、捗ったの?」

A「随分違ったわよ。まあ、気分転換っていうのかしらん。」

O「そうかぁ〜。でもさ、良かったんだろね、観たものも。」

A「それはあると思うわよ。」

Y「<青ひげ公の城>って、バルトークのオペラの芝居版ですか?」

O「ヨッシー、結構知っているじゃありませんか。あきちゃん、そうなの?」

A「原作はそうなんだけど、寺山修司の作品でね、<青ひげ公の城>という舞台を上演しようとしている所に訪れた一人の少女が、 幻想と現実を、そして、その舞台も幻想と現実をさ迷うといった、まさに、迷宮の物語なのよ。」

O「面白そうじゃないの。で、あきちゃんは、そのどんな所が良かったと感じたのかな。」

A「今回のこの舞台、<青ひげ公の城>はね、アッシにとって、初演から数えると三回目なんだけど、 今回の流山児が演出したこの舞台が最高だったわね。」

Y「勿論、脚本自体が素晴らしいって事もあったんでしょうから。」

A「そうね。バルトークのオペラ台本に、シェイクスピアや、ジャン・アヌイ、それに、 テネシー・ウィリアムズの戯曲の中からの台詞が散りばめられていて、そして、それが芝居の中に溶け込んでいっていて、 そして、構築しなおされていくのね。本当に素晴らしいわ。」

Y「ぼくには、少し難しいかもしれませんね。」

O「僕は何となく面白そうだなって思ったね。つまり、二重構造の芝居と現実。 それをちゃんと見極められる芝居だったってわけでしょ〜ぅ。面白そうだよ。でも、役者連中は大変だよな。 自分たちまでもが迷宮の世界にはいちゃいそうにならないのかな?まあ、プロだものね、そんな事はないだろうけど。」

A「役者達はね、そうそう、そこに置いてある4月にやるPARCOの<青ひげ公の城>が大劇場のオールスターだとしたら、 今回の<青ひげ公の城>は小劇場のオールスターってな感じで、一人一人が本当に良かったの。」

Y「たとえば、誰か知ってますかね、ぼくでも。」

A「そうね、まず、流山児といえば、この人、塩野谷正幸。舞台上で本当に格好イイ役者さんよ。それに、李 麗仙。」

O「おいおい、寺山の芝居だろ、彼女って、状況劇場じゃなかったけ?」

A「そうそう。でも、今は状況劇場もないし、彼女が寺山の芝居に出るってだけで面白そうって気がするじゃない。」

Y「あとはどんな?」

A「篠井英介、松本紀保、池田友希子、小須田康人、平栗あつみ、海津義孝、観世栄夫、悪源太義平・・・・・。」

O「凄い面子だね。」

Y「ぼくには数人しか分かりませんでしたけど。」

A「凄いでしょ。でもね、一番感動したのは、最後のフィルムに映した寺山の顔。流山児の演出がにくかったわ。」

O「分かる、分かる。所でさ、さっき出てた<ジョセフィン>って、ジョセフィン・ベイカーの事?もしかして。」

A「流石、オサムちゃんね。そうよ、ジョセフィン・ベイカー。」

O「やっぱり。それで、芝居だっけ?」

A「これは、ミュージカルね。彼女の生涯を綴った物語り。」

Y「ぼくは知らないんですけど、どんな人なんですか?」

O「アメリカ生まれなんだけどね、彼女。でも、フランスをはじめ、ヨーロッパで人気があった人なのよぉ。 第二次世界大戦中なんか、フランスのスパイとして活躍するし、戦後は、 人種の差別がない世界を目指していろいろな人種の子供を養子として迎入れちゃうし、急に貧乏にはなっちゃうし、 最後には復帰公演中に死んじゃうんだぜ。まったくドラマチックな人生だよなあ〜。」

Y「へ〜。凄いですね。そんな色々盛り沢山の人生を舞台にするって、とても大変でしょうね。」

A「そうね。でも、そこは舞台よ。所々抜粋してさ。でも、ちゃんと生涯が分かるようになってるのよ。」

O「行きたかったぁ〜!良かった?良かった?」

A「そうね、ここは前田美波里の一人舞台。彼女、やっぱり素敵!」

O「僕ね、ニューヨークに居たとき、<シェ・ジョセイフィン>って店にも行っちゃったんだよ。」

A「ファンか誰かが経営してる店?」

O「違うんだよ。彼女の迎えた養子の一人がやってるんだよなぁ。もう結構前だけどさ。いろいろ話ちゃった。」

A「ヤァ〜、アッシも行ってみようっと。今度教えてね、行く前に。」

O「いいよぉ。行く前に言ってよ。今、あるかないか、それは分からないけどね。」

A「よろしくね。」

Y「それはそうと、さっき言っていたもう一つのやつ、何でしたっけ?そうそう<銀幕のメモワール>でしたっけ。 何かタイトルに引かれますよね。映画ですよね?」

A「そうよ、映画。」

O「誰が出てるの?」

A「オサムちゃんの大好きなジャンヌ・モローよ。」

O「あ〜、あれかぁ〜。観たいと思ってたんだよ。良かった?よかった?」

A「やっぱりヨーロッパ映画は違うわよ。アメリカ映画のアメリカ万歳はもううんざり!って、改めて思ったわね。」

Y「良かったんですね。」

O「ジャンヌ・モロー。いいねぇ〜。音楽が<ベティ・ブルー>や<イングリッシュ・ペイシェント>の ガブリエル・ヤーレでしょぉ〜。監督が、ピエール・グランブラって言って、TVなんかで有名な人なんだよぉ。」

Y「共演が、<王は踊る>のブノワ・マジメルなんですね。」

A「そうよ。結構豪華でしょ。それにね、シャンソンファンの人は良く知っている、 ミシェル・ジョナスも出ていて、いい味出してるのよ。」

O「あきちゃん、言わないで下さいよ。つまんなくなるからさ。」

A「分かってますよ。」

Y「でも、サワリだけちょっと。」

A「まあ、ある若い映画監督が戦前の映画スターの消息を追っていくことから始まって、 当時彼の恋人を捜し出したところから始まる、悲しい恋物語りと、現在の監督の家庭の出来事が同時進行して行って、 その監督が何かを感じとる、って話よね、簡単に言っちゃえば。」

O「だからさぁ、言わないでって言ってるじゃないよォ〜。もう言わないでよ、絶対。」

A「はいはい。この辺りで止めときますよ。」

Y「でも、良い息抜きでしたよね。」

O「そうだね、僕も息抜きに早速えそれ観に行こうっと。」

A「息抜きにペンギンもお忘れなくよ!」

Y「忘れちゃいけませんよね。」

O「そうだね、息抜きにまた来るだす。」

A「来るだす?もう止めて〜〜〜っ!」

一同「はははははは・・・・・。」

おわり


*登場人物は全て仮名です。

*今回紹介したお芝居、映画は、
1)流山寺事務所<青ひげ公の城> 終了しました
2)<ジョセフィン> 東京公演は終了。3月8日まで地方公演あり。
3)<銀幕のメモワール>シネ・リーブル池袋にて絶賛上映中。

どうぞ、足をお運びくださいね。


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