<やっぱり楽しいわ!>の巻

ユキ(以下Y)「ま〜、いまいちだったよね、前回に比べたらさ。」

あき(以下A)「そうだったわね。お客さんもたくさん入っていたし、 どこがどうって言うんじゃないんだけどね。ユキもそう思った?」

Y「そうそう。ほら、フリンの役、何だっけ?昔のアイドルみたいな、あ〜〜〜〜うぅ。」

A「ウエット・ウエット・ウエットでしょ。マーティ・ペロウね。」

Y「そうそう。あれだって何かピンとこなかったもんね。」

ナオちゃん(以下N)「それに主役の二人。ロキシーとヴェルマ?だっけ。映画のほうが断然カッチョいいって思ったよね。」

A「今回の<CHICAGO>は相当前評判が良かったじゃない。だから、余計にイマイチって思ったのかもね。」

Y「前売りがさ、馬鹿みたいに売れてたって言うじゃん。それに追加公演も2回もあってさ。」

N「でも、やっぱり面白かったですよ。俺、あんまり観た事なかったからね。 5月に映画で初めてミュージカルっていうやつ観たんだよね。へ〜って思ったけど、今度のライヴって言うの?、 生のミュージカルって映画よりカッチョいいかもって。」

Y「ちょっと、ナオちゃん、君さ、さっきロキシーとヴェルマは映画の方が格好良いって言わなかったっけ?」

N「あの二人はね。でもね、全体を通して観たら、バンドは生だし、あの作り、 舞台の作りっていうの?、とっても興味沸いてきちゃいましたよ。」

A「ナオちゃんは、初めてだったんだ、ミュージカル観るの。」

N「初めてですよ。ミュージカルっていうより、生の舞台観るのが。」

N「でもさ、面白いよね、生の舞台。やっぱりライヴに限るよ。だってさ、映画は何回も撮り直しして完成させてるじゃん。 それだからいい物が出来て当然と言えば当然なんだよね。でもさ、舞台はさ生じゃん。一回一回がさ。だから失敗する事があっても、 それはそれでラッキー!なんて思ちゃったり出来る訳よ。」

A「そうね、そこが舞台の面白さの一つだものね。」

Y「だけどさ、今回のはさ、何つーの、役者がさ、いまいちだったじゃん?それだとさ、良いんだけどさ、 自分なんかからすると、すごく感動したまではいかないんだよ。」

N「へ〜、そういうものなんだ。俺なんか、あんまり分からないから、ただスゲー!とか、カッチョいい!とかなんだぁ。 でもね、エイモスだったっけ?あのロキシーの旦那。彼は個人的に印象に残ったよ。」

A「ああ、彼ね。アッシも今回のキャストの中では一番良かったかなって思ったわ。」

Y「歌が上手かったよね、まあ、当然なんだけどさ。他の人たちがちょっと弱かったじゃん。だから目立ってたかもね。」

A「そうそう。他の役者さん達がね。特に、ママ・モートンと記者のメアリー。この二人、勿論主役じゃないけど、 結構重要な役じゃない。メアリーは女装だから元々は男でしょ。だからね、解るのよ、ファルセットで歌うの大変だって。 でもさ、彼女というか、彼というか、何しろ弱いのね、声が。同様にママ・モートンもそう。彼女の役って、 何か凄みみたいな物を感じさせなきゃいけないじゃない。でも、今回の彼女にはそれを感じなかったのね。」

N「言われてみたらそうかも。映画の看守役は凄かったよね。だけどさ、映画じゃ、あの記者女じゃなかったっけ?あの人女装?」

A「何いってんのよ。ナオちゃん、ホームページ見てないでしょ。前に書いたわよ、ちゃんと。」

N「ゴメン、最近見てないかも。」

Y「映画では本物の女。まあ、女装っていわれたらそうかな?って思うかもしれないけど。はははは。 クリスティ・バランスキーだったよね。あと、あのママ・モートン。ブロードウェイじゃさ、ドリーム・ガールズの ジェ二ファー・ホリデイが演ってた事もあるんだってさ。」

A「そうよ、一昨年だったかな。アッシは丁度その時には行っていないんだけど、その時だったら絶対に観に行ったわよね。 観たかったぁ〜。まあ、今回は映画の影響が凄くて、会場も異様な盛り上がり方してたじゃない。 結構それが今回の舞台のひ弱さをカヴァーしてたと思うんだけど、どうかしらん。」

Y「それ、あるんじゃないの。それにさ、本が良いじゃん。だから結局は楽しいんだよね。」

N「そんなもんですよ。・・・・え〜と、手作り梅酒のお代わりもらえますか?」

A「あいよっ!」

Y「ところでさ、楽しいって言えば、<コクーン歌舞伎>ってどうよ。」

N「何ですか<コクーン歌舞伎>って?普通の歌舞伎じゃないの?」

A「<コクーン歌舞伎>ってね、渋谷の文化村にあるシアター・コクーンで催される歌舞伎の事よ。」

N「普通の歌舞伎となんか違うの?」

A「まあ、普段は、歌舞伎座とか、国立劇場とかでやるじゃない。あれだとね、所謂伝統芸能の域をなかなか出る事が出来ない訳ね。 まあ、色々新しい試みはしているんだろうけど。で、<コクーン歌舞伎>はね、本来あるべき歌舞伎の姿、それは、 大衆芸能としての歌舞伎ね。」

Y「あ〜、そういう事か。つまり、こうでしょ。伝統芸能として守られた歌舞伎のスタイルじゃなくて、江戸時代の、 一般大衆が町中で観ていた、見世物としての歌舞伎の再現なんだ。」

N「なんか、難しくてわからないけど。」

Y「あきちゃん、タンカレーNo.テンのロックちょうだい。」

A「あいよっ!」

N「何々、タンカレー、ナンバーテン?そんなのあるの?初めて聞いたけど。」

A「これよ。とっても飲みやすくてね。タンカレーをさらに洗練させたって言うのかしらん。美味しいわよね、ユキさ。」

Y「美味しいよ。ナオちゃんも今度飲んでみれば。でさ、話を戻すけど、今までの様式美というか、形式美ていうか、 それだけじゃなくて、要は楽しんじゃおうよ、ってな感覚なんだ。」

A「そうそう。本当に楽しかったわよ。」

N「行ったんだ、あきさん。」

Y「で、どうよ、今回は。」

A「そりゃもう楽しかったわよ。今回の出し物はさ、<夏祭浪花鑑>っていうんだけど、これね、<コクーン歌舞伎> では初の再演なのよ。でさ、行こうかどうしようか考えたんだけどね、勘九郎としては最後の<コクーン歌舞伎>になるじゃない、 だからやっぱり行こうって。」

Y「何よ、最後の勘九郎って。」

A「さ来年、襲名するのよ、勘三郎をね。」

Y「あらら、そうなんだ。」

A「だからさ、観たくなっちゃったのよ。」

N「で、どうだったんですぅ?」

A「まあ、楽しいの何のって。泥は客席まで飛んで来るは、桟敷の真中を掻き分けて役者が通るは、 舞台の奥を開けて外まで走りまくるは、おまけに本物のパトカーは出て来るは・・・。」

N「楽しそうじゃないですか。観たくなりましたよ。」

Y「じゃあ、行かなきゃね、やっぱり。役者連中はどうよ。」

A「それがさ、またいいのよね。橋之助なんか、普段はあんな顔しているのにさ、化粧すると、これがまたいい男になるのよ。 惚れぼれしちゃうわね。久し振りの扇雀のお梶も、少しオリジナルとは違う話を上手く演ってたわよ。」

Y「獅童、ねえ、獅童はどうよ。」

N「ユキさん、獅童好きなんですか?力入ってますよ。」

A「獅童ね、綺麗だったわよ。難しい役だったけど、及第点だわ。勿論勘九郎も何時も通りの大げさな演技。 これがまたコクーンでははまるのよ。何しろ楽しかったわよ。」

Y「ほんと、歌舞伎座で観ているのとは大違いって感じだね。」

A「そうよ、あんた。歌舞伎座でスタンディングオベイションなんか無いでしょ。」

Y「スタンディングオベイションなんだ。」

A「そりゃそうよ。楽しいんだからさ。あんな事されたら役者連中も大喜びだわよ。」

N「行きましょうよ、ユキさん。俺、観たくなっちゃったよ、本当に。」

Y「行こうよ、行こうよ。やっぱり立見かな。立見でもいいよね。」

A「あのさ、言いにくいんだけどさ、<コクーン歌舞伎>ね、今日で終わっちゃったのよ。また今度の機会だわね。」

Y「え〜〜〜!終わっちゃったのぉ?」

N「なんだ、残念。でも楽しそうだから、次の機会には絶対観に行くよ。ね、ユキさん、行きましょうね。」

Y「そうだね、行こうね。」

A「あら、ユキ、何だか意気消沈よ。パ〜っといかなきゃ。」

Y「そうだね、パ〜っといかなきゃね。パ〜っと。」

N「そうですよ。じゃあ、俺は、このタンカレーのナンバーテンをロックで。」

Y「じゃあ、自分もお代わり!」

A「あいよっ!」

一同「ははははは・・・・・。」

おわり


*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介したお芝居は、
1)CHICAGO〜THE MUSICAL
    東京追加公演 8月16、17 
    東京国際フォーラムA
2) コクーン歌舞伎     公演終了
以上です。歌舞伎座では8月に野田秀樹演出の<鼠小僧>もありますので、どうぞ、足を運んで下さいね。


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