<歴史は繰り返される>の巻

ヨッシー(以下Y)「こんばんは。寒いですねぇ〜。」

あき(以下A)「あら、ヨッシーいらっしゃい。はい、おしぼり。本当に寒くなっちゃったわね。今日は、何にしようか?」

Y「今日は、菊水で。」

A「あいよっ!」

スターちゃん(以下S)「君は本当に菊水好きだよね。僕も好きなんですけどね、最近めっきり弱くなっちゃってねぇ。 やっぱり若いっていうのは羨ましいよ、ねぇ〜、あきちゃん。」

A「それはそうよ。アッシ等だって若い時はあったんだし、あの時、スターちゃんは本当にスターだったじゃないの。」

Y「え〜〜〜!本当ですか?」

A「そうよ、スターちゃんたら、何時も回りに何人か連れて飲み歩いていたわよね。」

S「いやいや、そんな事もありましたかね。まあ、いいじゃないですか、私の事は。」

Y「もっと聞きたいよぉ〜。」

S「はははは・・・・。まあ、いいじゃないですか。ところで、君の持っているパンフレットは何?」

Y「ああ、これですか?今日ですね、<エレクトラ>に行って来たんですよ。」

A「あら、行ったの?」

Y「あきさんも行ったんですか?」

A「うん。先週の木曜日のマチネにね。」

S「<エレクトラ>と言うと、ギリシャ悲劇のエレクトラかな?」

Y「はい、そうですよ。」

S「ギリシャ悲劇か。良く読んだものです。<トロイアの女>、<王女メディア>、<オイディプス王>、<アンティゴネ>、 <イフィゲニア>、そして勿論<エレクトラ>。」

A「スターちゃんは何が好きなの?その中では。」

S「そうですねぇ、僕の大好きなマリア・カラスが主演した映画もあったんで、<王女メディア>って、言いたいんだけど、 やっぱり、とても分かり易い<エレクトラ>かな?と、言っても、僕はエウリピデスの方しか読んでないんですけどね。」

A「なによ、それ。アッシ、作者なんか気にした事なかったわ。ギリシャ悲劇はギリシャ悲劇だからさ。色々いるわけだ。」

Y「そうですね。スターさんが言っていたエウリピデスの他には、今回の舞台の原典を書いたソフォクレス、そして、アイスキュロス。 この三人が古代ギリシャの三大悲劇詩人と言われてますね。」

A「あららら・・・。お勉強になったわよ。はずかしながら、初めて知ったかも。で、今回の<エレクトラ>はソフォクレスなんだ、 作者は。」

S「ソフォクレスか。あれですよねぇ、彼は確か90歳位まで生きていた人なんですよね。」

Y「そうですね、紀元前496年ころから406年ころまでですから、90歳ですね。」

A「すご〜〜〜く長生きじゃない?ねぇ。作品もさぞかし沢山あるんでしょうね。」

S「たしか、120本以上あったと思いますよ。」

Y「そうですね。130本位だと言われてますね。」

A「はぁ〜〜〜。すごいわね、アンタたち。で、ヨッシーはどうだったのよ、この舞台は。」

Y「そうですね、僕はですね、やっぱり大竹しのぶさんが何といっても凄かったですね。」

A「そうよね、また狂ってたし。」

Y「台詞が凄いですよ、彼女は。まず、はっきり聞こえますね。動いていても、後ろを向いていても、台詞がはっきり聞こえるんですよ。 平静な時も、狂気な時も。これは凄い事ですよね。」

A「台詞がはっきりしているっていうのはとても大事な事よね。そういう意味で、岡田君は、 台詞が口に篭っちゃったのが残念だったっわね。」

Y「そうですよ。V6の人だったんですね。僕には全く分からなかったんですよ。で、あんなに女の子が多かったんだ、って、 後でこのパンフレットみて知ったんです。」

S「僕は知ってたよ。V6の岡田君、可愛いもんねぇ〜。ちょっと、パンフレットいいですか?」

Y「はい、どうぞ。」v S「へ〜。波野久里子さんも出てたんだ。彼女は滑らかでしょ、台詞が。」

A「アッシはね、実は今回の舞台で気に入らなかったのが、波野久里子の言い回しなのよ。」

Y「そうですか?僕は結構良かったですけどね。」

A「アッシが思ったのはね、今回の舞台の台詞って、割と現代に近い言葉で進んでいるじゃない。」

Y「そうでしたね。普通ギリシャ悲劇って言うと、古典的な言葉、って言うんですかね、何か重苦しいじゃないですか?まあ、 今回はちょっと違いましたね。」

A「でしょ。そこにもってきて、波野久里子の台詞回しが歌舞伎調というか、新派調というか、何だか耳についちゃって。 それが良いって言う人も多いとは思うんだけど、アッシにはちょっとね。」

S「じゃあ、あきちゃんは、今回の舞台、何が気に入ったの?」

A「この舞台で何が一番だったかって、それは、何といってもコロスたちね。」

S「コロス?ギリシャ悲劇では必ずといって良いほど出てくる、あのコロスだよね。」

A「そうよ。今回の舞台で、演出の蜷川幸雄は、久しぶりにオーソドックスな演出を見せてくれたと思うのね。ここの所、 奇を衒った演出が続いていたから、半ばうんざりしていたんだけど、今回は、それがなくて、これぞ、 蜷川!ってな演出だったと思うのよ。」

S「その代表格っていうのがコロスの演出だと思ったんだ。」

A「そうなの。コロスの動き一つ一つに細かい演出が施されていて、コロスを演じる女優達も、それに答えて素晴らしかったのよ。」

Y「なるほどね。僕なんかは、やっぱり主役級の人達に目が行っちゃって。コロスとかはそんなに気にしてなかったですね。 でも、言われてみると、色々思い出してきました。確かにエレクトラが城門の外に出てから最後の場面になるまで、 コロスがいなかった時を考えると、何かが足りない様な感じがしたかもしれませんね。」

S「まあ、コロスは単なる大衆だけではないからね。特にギリシャ悲劇においては、とっても重要な役割を果たすわけだからね。」

Y「そうですよね。すっかり忘れてしまってましたよ。もう一度行って良く観てこなくちゃ。」

S「でも、V6の岡田君が出ているんでしょ。そう簡単にチケット取れないんじゃないですか?」

A「そうよ。アッシが行った日なんかね、当日券が取れなくて泣いていた女の子がいたもの。」

Y「でも、頑張ってみます。」

S「頑張って下さいね。で、その他に感じた事とかはなかったの?」

A「それがさ、良く考えてみるとね、ギリシャ悲劇を観る度に思うんだけど、結局、復讐劇が多いでしょ。これって、 現代、というか、今に似てない?前に野田秀樹の<オイル>を観た時に言ったと思うけど、復讐するってどうなのか?って事よね。 2500年ほど前から分かっている事を今の世界でも繰り返しているんだな、って思うとね。」

S「歴史は繰り返される、と言う事なんだよね。」

Y「僕らの世代が何とかしなきゃいけませんよね。悲惨な歴史は繰り返しちゃ駄目ですよ。」

S「それじゃ、あきちゃん、僕はそろそろ行こうかな?チェックして下さい。」

Y「それじゃ、僕も。お願いします。」

A「あら、二人とも?明日も仕事だもんね。・・・え〜と、スターちゃんが丁度3000円、ヨッシーが1400円ね。 有難うございます。」

S「はい、これで。」

Y「僕は丁度です。」

A「それじゃ、スターちゃんは2000円のお返しです。ありがとね。」

S「それじゃ、おやすみぃ〜。」

Y「お休みなさ〜い。」

A「ありがとう!気を付けてね。おやすみなさ〜い!」

おわり


*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介したお芝居は、渋谷の文化村、シアターコクーンで上演中(9月30日まで)の<エレクトラ>でした。 みなさん、是非足をお運び下さいね。



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