<長くやっている人って・・・>の巻

敏夫さん(以下T)「お〜〜〜寒ぅ〜!」

あき(以下A)「あら、敏夫さん、いらっしゃい。今日は本当に寒いわよね。」

マコトちゃん(以下M)「夏がなかったと思ったらいきなりこれだもん。体調壊しちゃいますよぉ。」

T「何を言っとんとぉ〜。マコトちゃんみたいに御若い方々が。僕らの若い時なんてねぇ〜、あきちゃん、 このくらいの寒さでは半ズボンに半袖のシャツでございましたのよ。」

A「ちょっと待ってよ。敏夫さん、今、僕らの若い時って言ったわよね。すみませんけど、アッシ、 敏夫さんより10歳以上若いんですけど。」

T「あら、そうでしたわね。それより、お酒ちょうだいよ。ビール、ビール。」

A「あいよっ!(独り言でブツブツと)まあ、寒い寒いって言っているのにビールなのね。」

T「何か言いました?悪かったわね、寒くてもビールで!」

A「あら、聞こえちゃったかしらん。いいのよ、敏夫さん、沢山飲んで頂戴ね。」

T「ま〜〜〜ぁ、いやらしいわぁ〜。飲みますよ、たくさん。はい、アキちゃんも。」

A「はい、いただきま〜す。」

M「ちょっと怖いからさぁ〜。喧嘩しないで下さいよ、折角良い気分で来たんだから。」

T「な〜んにも喧嘩なんかしてないわよ、ねえ、アキちゃん。」

A「そうよ、安心してちょうだい。これさ、会話で遊んでるだけなのよ。」

T「まあ、今の子はねぇ、こんな事も分からないんだから。」

M「そうなんですか?でも、本当に喧嘩が始まるかと思っちゃいましたよ。」

A「お遊びお遊び。でもね、初めて見た人はさ、みんな喧嘩だと思うらしいのよ。」

T「時代が変わっちゃったのね。このような会話の遊びが出来ないなんて、 なんて寂しい世の中になっちゃったのかしらねぇ。」

A「まあ、仕方ないじゃないの。時代がそうさせたのよ。ところでさ、マコトちゃん、 さっき折角良い気分で来たって言ってたけど、何があったの?」

M「今日ですね、市村正親さんの30周年リサイタルに行って来たんですよ。」

A「ああ、<オモチャ箱>ね。」

M「そうです、そうです。て言う事はアキさんも行ったんですか?」

A「モチよ。アッシさ、今回分かったんだけど、市村さんの舞台、彼のデビューから観てたのよ。」

M「へぇ〜、それは凄いですね。」

T「僕はね、どうも気に入らないのよね、市村って。何か気持ち悪じゃないねぇ。」

A「まあ、個性あるからね、敏夫さんと一緒で。」

T「お黙り!何をおっしゃいます。アキちゃんには負けますわよ。」

M「ほらほらまた。敏夫さんもぉ、アキちゃんも。」

A「だから、お遊びよ。流してちょうだい。」

M「分かりました。でも、良かったです、俺には。オモチャ箱から出てオモチャ箱に帰って行く演出も良かったし、 何より、2時間で彼の軌跡が観れるんだもん。」

T「それじゃ、パァ〜ッと流しちゃうんだ。」

A「パァ〜ッとじゃないけど、回り灯篭の様だったわね。」

M「構成が良かったです、なんと言ったって。」

T「どんな風にしてたの?あれだけいろんな役を演っているからさ、回り灯篭の様って言ったってねぇ。」

A「部門別っていうのかしらん。始めはミュージカル。そして、自分の生い立ち。これには普通の舞台の話も入ってたわね。」

M「そして、ダンス。最後に、再びミュージカルから。」

T「てんこ盛りだわねぇ。まあ、彼だったら仕方ないとは思うけど。ジーザス、ウエスト・サイド、 アプローズ、エヴィータ、コーラスライン、エクウス、Mバタフライ、オペラ座、・・・。」

A「なによ、敏夫さん、結構知ってるじゃないの。」

M「それ、みんな観たんですか?」

T「観ましたとも。まだまだ観たわよ、かもめでしょ、それに、ラ・カージュ、カッコーの巣を越えて、 蜘蛛女のキスにミス・サイゴンに・・・。」

A「ちょっと敏夫さん、さっき気持ち悪いって言ってなかったっけ?市村さんの事。」

T「言ってたわよ。でも仕方ないじゃございませんか。他に誰かが演ってればそっちを観るんだけど、 演ってないでしょぉ。それじゃ、観るしかないからね。まあ、そんなに下手でもないし。」

M「アキさんはどうなんですか?」

A「そうね、アッシはさ、好き嫌いは別にして、この30周年リサイタルには絶対に行こうって思ってたのよ。」

M「何でなんです?」

A「やっぱりね、アッシが高校から大学にかけて、一番芝居を観ていた時に、何を観ていたかな?って思うとね、 唐十郎、寺山、早稲田小劇場、歌舞伎、能、つか、自由劇場、それに劇団四季があるのよ。」

T「昔は観たいものが沢山あったわねぇ。」

M「でも、アキさん、今、四季はそんなに好きじゃなかったですよね。」

A「今はね。まあ、好きじゃないって言うより本場物を沢山観る事が出来る様になっちゃったから、 四季じゃ物足りないのよ、もう。」

T「向こうの本物を観ちゃうとね。僕はわかるよ。」

A「でもね、アッシが芝居にのめり込むひとつのキッカケが四季にもあるわけね。で、その時に彗星の如く現れて来たのが彼、 市村正親だったのよ。中野サンプラザでやった<イエスキリスト・スーパースター>の衝撃。勿論彼はその頃、その他大勢だったけどね。」

M「それで今回観ようとおもったんですか。」

A「そうね。観たいと思ったの。チケット取るの大変だったわよ。シアター・コクーンでたったの6日だもの。 でも観て良かったわ。話はちょっと横道に逸れるんだけどね、アッシね、 この市村さんのリサイタルを観た週に二度同じ曲を聞いちゃったのよ。」

M「何なのですか?その曲って。」

A「マコトちゃんは<オモチャ箱>の中で印象に残っている曲あった?」

M「そうですね、ミュージカルが好きなんでやっぱりオペラ座の怪人のメドレーかな。・・・あっ、そうそう、、 美輪さんの<よいとまけの唄>も良かったですよ。ご本人のは聴いた事がないんですけど。」

A「それね、ひとつは。で、美輪さんのリサイタルでもあと一つ唄ったのよ。」

T「それじゃ、市村と美輪さんが同じ週に同じ唄を2曲も・・・。」

A「そうそう。二つ目がね、<ラストダンスをわたしと>なの。で、まるで違うアプローチで楽しめたわ。」

M「行ったんですね、美輪さんのリサイタル。一度聴きたいんですよ。今度連れてって下さいね。」

T「それじゃ、マコトちゃん、僕と行きましょう。必ず取れるから、チケット。」

M「大丈夫ですか?一緒に聴きに行くだけですよ。」

T「分かってますよぉ。ごちゃごちゃ言わないでもっと飲めば!」

A「それじゃ、敏夫さんから同じ物でいいの?」

M「それじゃ敏夫さん、遠慮なくいただきます。」

T「はいはい、飲んで。僕も最近全く舞台を観ていないから久しぶりに行ってみようかしらん、ねぇ。 何かお勧めの舞台ある?教えてよ。」

A「最近アッシが観た物で結構良かったのはね、<ブルース・イン・ザ・ナイト>かな。意外に良かったのよ。 敏夫さんはジャズとか好きだから行ってみれば。」

T「何年か前に来日公演したやつよね。行きたかったんだけど、今またやってるの。」

A「まあ、日本のキャストだけどね。勿論日本語よ、ミュージカルナンバーも。」

M「ちょっと興味がありますね。誰が出ているんですか?」

A「マリーンに中島啓江、入絵加奈子にブラザートム。」

T「マリーン。あら、久しぶりだわ。良いかもね、そのキャストなら。」

A「アッシもさっきも言ったけど、意外だったのよ。良かったの。何しろ、来日公演の時のサロンの男役がうちにも来てくれてて、 数年前にブロードウェイでかかってたミュージカル<プレイ・オン>に出ていたローレンス・ハミルトンでしょ。 ブラザートムで納得いくかどうかな、ってさ。でもね、やっぱり長くやっている人たちは実力も相当なものなのよね。」

M「市村さんもそうですよ。好き嫌いはみんな持っているんだから別にして、やっぱり凄いな、って感じるでしょうね。」

A「そうなの。マリーンの唄は抜群。中島啓江も太り過ぎを除けば本当に上手い。若い入絵加奈子も少し若過ぎるかなとは思うけど、 ちゃんと唄えてるし、ブラザートムにも驚いたしね。」

T「行ってみようかしらん。アキちゃんがそんなに誉める事滅多にないしね。何処でやってる?」

A「シアターアップルよ、コマの地下の。」

T「あ〜、分かった。行ってみるわ。」

M「それじゃ、長くこの世界で一線で活躍している俊夫さんもどこか一目置ける所がきっとあるんですね。」

T「あら、当たり前でしょぉ。」

A「馬鹿ね、俊夫さん、今のはマコトちゃんの嫌味よ、イヤミ。」

T「あら、そうなの。構いません事よ。自分で払ってね。」

M「え〜〜っ!そんな事言ってませんよ。アキさん困るな思ってもいない事をいわれちゃ。」

A「あら、それじゃ、違うのかしら?」

M「違いますよ、違います。」

T「そんなにムキにならなくてもいいのよ。ねえ、アキちゃん。はははは・・・・。」

一同「ははははは・・・・。」

おわり


*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介したお芝居は・・・
1) 市村正親30周年リサイタル<オモチャ箱>
         公演終了
2)ブルース・イン・ザ・ナイト
      19日までシアターアップル
      その後、神戸・名古屋公演あり
3) 美輪明宏リサイタル
         公演終了


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