<あと一週間で・・・> の巻

あき(以下A)「あら、ウエノ君いらっしゃい。遅いじゃない。もう11時半よ。」

ウエノ(以下U)「今晩は。芝居が長くて、今終わって帰ろうかな?と思ったんだけどねぇ。都営新宿線だし、 ちょっと寄って行こうと思ってさ。」

哲也(以下T)「何なのよぉ〜、そんなに遅くまでやってた芝居って?」

U「哲也さん、また酔っ払ってるんですか?あんまり飲むと体に毒ですよぉ〜。」

T「ありがとう。でも、大丈夫よ、ご心配お掛けしました。で、何なの?」

U「<エンジェルス・イン・アメリカ>なんだけどね。一部と二部を通しで観てきたもんだからね。終わったのが10時40分。 疲れたの何のって。」

T「あら、そうなの。それはお疲れ様でしたこと。で、面白ろうございましたの?」

U「最初はさ、暗いテーマだからどうかな?って思っていたんだけど、結構笑えるし、肩の力抜いて観られたッて感じかな。」

A「ウエノ君、何にする?」

U「あっ、そうだ。注文しなきゃね。ビール、黒ありましたっけ?」

A「はい、もちろんじゃない。恵比寿の黒ね。・・・・はい、お待ち。」

U「それじゃ、哲也さん、乾杯!」

T「はいはい、カンパ〜〜〜イ!」

U「アキちゃんはもう観たんだっけ?」

A「一部だけ観てきたわよ。今回は月曜日がないからさ、一週間あとに第二部を観るのよね。 来週の水曜日に行く予定なんだけど。」

T「アキちゃんも行ったんだ。で、面白かったでございますか?」

A「まあ、アッシさ、一部しかまだ観てないのよ、。これって、二部にはまだ処女っていう事ね。」

U「あら〜〜〜!処女ですって。まぁ〜、綺麗ぶって。」

A「綺麗でも何でもないじゃないよ。哲也ちゃん、大丈夫なの?」

T「大丈夫よぉ。もう一杯ちょうだい。」

A「あいよっ!」

U「アキちゃんが観てないから二部の話は今日はやめといて、一部だけどさ、どう思った?」

A「前のセゾン劇場の時より、アッシは今回の方が好きだわね。ひとつは、スターが一人もいないって事。 だから芝居に集中できた。」

U「スターがいないと集中できるの?」

A「いつもそうじゃないけど、今回は特にね。誰かのファンになってるとその人を見ちゃうじゃない。 芝居をちゃんと観る事ができなくなる可能性があるのよ。ウエノ君はそんな事ないの?」

U「あるかもね。そう言えば知っている人って少なかったかもね。」

A「アッシ、高橋和也のファンなのよね。で、彼、前にこの芝居出てたのね。」

U「どの役だったの?」

A「プライアーの役。」

U「あ〜、あの死にそうになっちゃう。」

A「そうそう。あの役。分かるでしょ、じっと見つめちゃう訳が。」

U「アキちゃん好きそうだもんね。見つめちゃうのも解るな。」

A「そう言う意味でも、今回はちゃんと観る事が出来たわけよ。約10年ぶりに観たけど、セゾン劇場で観た時よりも、 数段良かったわね。テーマは重いけど、人間の本質や苦しみ、冷たさや優しさ。 結構表現出来ていて好感のもてる舞台になったと思うのね。だから、二部を観るのが楽しみになっているのよ。」

T「ちょっとぉ!分からない話は後に回してさ、アカデミーの話しましょうよお〜。」

A「はいはい、哲也ちゃん、ちょっと待ってよね。今、ウエノ君と芝居の話をしているところなんだから。」

U「ね、哲也さん、嫌われちゃいますよ、話の腰を折る大人って。」

T「分かったわよ!静かにしてますよ。」

A「そんなにすねなくてもいいでしょ。ちゃんとアカデミー賞の話は後でするから。」

U「もう、うざったいんだから。酔っ払っちゃうとね、普段は結構紳士なのにな。でさ、話を戻してね、 あの話って実話なのかな?」

A「まあ、それに基づいてはいると思うけど。実際にいたロイ・コーンとか出てくるしね。」

U「あのジョーを演ってたあの子ってさ、去年ベントでマックスを演ってたあの子だよね。」

A「そうそうパク君ね。また体が良くなっちゃって、ジュルジュルって感じだったわよね。」

U「はいはい、アキちゃんの趣味の話じゃないんだからさ。本当におじさん二人には参っちゃうよなぁ〜。」

A「冗談よ。」

U「じゃあさ、アキちゃんから見たら誰か印象に残った役者っていた?僕はルイスを演った池下重大さんかな?」

A「ああ、状況劇場にいた。そうね、アッシは矢内文章君かな?」

U「えっ?何の役だっけ?」

A「最初に客席から出てくる黒人の旅行会社の、それに、元ドラッグクイーンで、今は看護士をやってる、あの役よ。」

U「あ〜、あ〜。良かったよね、あの人。とっても綺麗じゃなかったっけ。」

A「まあ、塗っているから素顔はわからないけど、今度二部を観に行った時にでもパンフ買ってちゃんと見なくちゃ。」

U「全体にバランスが良かったよね。すごく感じたんですよ、そうそう。」

A「そうね、舞台美術も含めてバランス良く仕上がっていたと思ったわ、アッシも。」

T「ねぇ、そろそろアカデミーの話題にしましょうよ、ね、ウエノ君もいいでしょ。」

U「はいはい。困ったおじ様だな、本当に。まあ、アキちゃんも二部は観ていないっていう事だし、アカデミー賞ももうすぐだしね。 それじゃ、話変えようか。アカデミー賞。ね、哲也さん、これでいいですよね。」

T「はい、良く出来ましたこと。」

A「あらら、現金ね。酔っ払ってたと思ってたのに。」

U「そういえば、今年も予想クイズしてるよね。でも、何で今年は助演賞と外国語映画賞にしたのかな?」

A「簡単な理由よ。助演賞に渡辺謙、外国語映画賞に<たそがれ清兵衛>がノミネートされたじゃない。だから。」

T「作品賞はさ、絶対<王の帰還>だよ。僕は絶対そうだと思ってる。」

U「揺るぎないかもね。3部作の最後だし、前の二つと合わせて評価されるかもしれないしね。」

A「そうね。アッシは、心情的には<ロスト・イン・トランスレイション>にあげたいんだけど、ちょっと作品賞には小ぶりだからね。 丁度11月に行った時、上映していて、何しろビル・マーレイが素晴らしいのよ。あんな彼を観た事なかったから。だけど、 やっぱり作品賞には小ぶり過ぎるかな?アッシはやっぱり<王の帰還>かしらん。」

U「僕はみんなとはちょっと違いますね。アメリカってサクセスものが好きじゃない。だから、<シー・ビスケット>かな? トビーも良かったし。」

A「なるほどね。でも、それだったらサスペンス物も好きだから<ミスティック・リバー> なんかの方がインパクト強いと思うけどな。」

T「ちょっとアキちゃん、今月のお勧めドリンクにして。」

A「あいよっ!キューバ・リバーね。・・・はい、お待たせ。」

U「それじゃ、助演賞にいきましょうよ。」

T「あら、これはもう渡辺謙、といきたいんだけど、やっぱり無理よねぇ〜。ミスティック・リバーのティム・ロビンスだわね。」

U「でも、渡辺謙の評判高いらしいよ、アメリカでは。獲ってもらいたいじゃない。 僕は渡辺謙と女優は去年シカゴで獲れなかったレニー・ゼルヴィガーかな。この前試写会でみて、今度はいけるって。」

T「まあ、試写会にいらしたのね。ずるいけど、まあ仕方ないわね。僕はやっぱりミスティック・リバーの マルシア・ゲイ・ハーデンね。」

A「アッシは助演の男が<21グラム>のべネチオ・デル・トロで女がレニー・ゼルヴガーかな?」

U「それじゃ、ペンギンの予想クイズの最後、外国語映画賞は、う〜〜〜む、全く分からないから、って言うよりも観た事ないから、 <たそがれ清兵衛>。」

T「そうよねぇ〜、観た事ないもんねぇ〜。僕もやっぱり<たそがれ清兵衛>しかないでしょ。」

A「あらら。確かに失敗よね、出題者としては。まるで分からない物ばかりだからね。アッシもこのジャンルはお手上げ。 でも、当てずっぽうでオランダ映画の<トゥイン・シスターズ>にしとこうっと。」

T「これでクイズの予想は終わったわね。一体何になるのか、楽しみよぉ〜。」

U「哲也さん、さっきまで酔っ払ってたのに、自分の好きな話題になると、嘘のように起きちゃって。 さっきのはオヤジの狸寝入りだったんですか?」

T「おだまり!興味ない話の時は誰だって同じじゃありませんこと?でもさ、さっき本当にうとうとしてたんだけどさ、 話してた芝居、なんだっけ?」

U「<エンジェルス・イン・アメリカ>ですよ。」

T「そうそう。それも観たくなったわね。アキちゃん、まだやってるのかしらん。」

A「まだやってるわよ。是非行ってよ。あと一週間。」

U「それじゃ、アカデミー賞の日と同じだよね。」

A「あんた何言っているのよ。向こうは約一日遅いんだからね。アカデミー賞をやっている時間は、 こっちではもう次の日になっているのよ。」

T「まあ、どっちにしたって後一週間よねぇ。楽しみだわね。」

U「それじゃ帰って予想クイズにでも応募しようかな?」

A「そうよ、応募してちょうだいよ。全問が当たるとお店からプレゼントがあるからね。」

U「何くれるんですか?」

A「ヒ・ミ・ツ。教えちゃうとね・・・。」

T「僕はもう出しちゃったわよ。ねぇ、アキちゃん。ちゃんと受け取ってくれてますわよねぇ。」

A「勿論よ。すごく早く送ってくれたもんね、哲也ちゃん。ありがとうございますね。」

U「それじゃ、お会計お願いします。」

A「はい、有難うございます、お疲れのところ。ウエノ君は1200円です。」

U「はい、丁度で。それじゃ、お休みなさ〜い。哲也さん、あんまり飲み過ぎないで下さいね。」

T「分かってるわよ。でも、有難う。またね。」

A「それじゃ、お休み。ありがとう!」

T「じゃあ、僕も帰るとしましょう。いくら?」

A「哲也ちゃんは、たくさん飲んでいただきました。3900円です。有難うございます。」

T「はいはい。こちらこそね。早速来週行ってみるわ、そのエンジェル何とかっていうの。」

A「<エンジェルス・イン・アメリカ>よ。ここにチラシがあるから持って行ったら。はいどうぞ。」

T「ありがとう。行ってみるわね。それじゃ、おやすみ。」

A「お休みなさい。有難うございました。」

おわり


*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介したお芝居などは、
1)エンジェルス・イン・アメリカ
          2/29まで。ベニサンピット
2)王の帰還、ミスティック・リバー、シービスケット、ラストサムライ、たそがれ清兵衛は公開中。その他は情報誌等を参照して下さい。

以上です。どうぞ足をお運び下さいね。


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