空と文字(SKY)

インドで必要な予防接種
2002年10月2日改訂

この情報は主にインドに長期滞在する方を想定して書かれたものです。しかし、短期旅行/出張を予定する方でも、予防接種を受けていれば現地での感染リスクは確実に減少します。インド行きを思い立ったら、まずは予防接種の必要性について考えましょう。


一種類のワクチンでも数回(2〜3回)接種する必要のあるものもあります。インドへの旅行を思い立ったら早い時点で(できるだけ出発3か月以上前から)、予防接種機関や検疫所で、接種するワクチンの種類と接種日程の相談をしてください。

長くインドに滞在するお子様をお持ちの方はインドでの小児予防接種もご覧ください。

インドに入国するに当たって「法的」に要求される予防接種:

 日本からインドに入国する場合特に「法的」には予防接種証明書の提示は求められません。しかし黄熱の流行国(主にアフリカの熱帯地域や南アメリカの熱帯地域の国)を経由してインドに入国す場合「黄熱ワクチンの接種済み証明書」を要求されます。いったんインドに滞在しから黄熱の流行国へ旅行されて、再びインドに戻る必要がある場合は、できるだけ経由地(パリ、フランクフルト、ウイーン、ロンドンなど)の空港クリニックでの接種をお勧めします。やむを得ずインドで接種する場合はこのホームページの黄熱病ワクチン接種可能機関をご参考ください。
 


★インドに入国するに当たって「医学的」に接種を検討すべき予防接種:
1破傷風トキソイド、2.A型肝炎ワクチン、3.狂犬病ワクチン、4.日本脳炎ワクチ、5.B型肝炎ワクチン 6.腸チフスワクチン 7.髄膜炎多糖体ワクチン(A/C型)

破傷風トキソイド
 特に、けがをするリスクの高い人、冒険旅行をする方や、けがをしても医療機関での治療を期待できない地域に出張する人には接種が勧められます。過去の接種がわからないときには以下を目安にします。
 12才〜22才:1968年から日本で始まった定期予防接種の三種混合ワクチン(DPT)を受けていれば、不要。
 23才以上(S43以降生):定期予防接種の三種混合ワクチン(DPT)を受けていれば、1回追加接種。
 S43以前生まれの方: DPT定期予防接種が開始されていないので、基礎接種(1ヶ月空けて2回、6ヶ月後に1回)。基礎接種を受けていれば、10年毎に1回接種します。

A型肝炎ワクチン
 インドに中・長期(たとえば6ヶ月以上)渡航する人にすすめられます。インドでは西欧製の小児用のワクチンも購入できます。高齢の方は既に戦中戦後に自分が気づかない間にA型肝炎に罹っている(不顕性感染)場合もあるので、時間に余裕があれば抗体価を調べてから接種を考慮しても良いでしょう。
 ワクチン接種は2〜4週間間隔で2回、6ヶ月以上滞在する場合には6ヶ月後に3回目を接種します。効果は5年と言われています。(更に長期に渡って予防効果があるとの報告もあります。)
 西欧製のワクチン(Havrix)は2回接種の場合もあります。最近は西欧製のA・B型肝炎混合ワクチン(Twinrix)も入手できます。(西欧、タイ、シンガポールで入手のこと).。かつて代用されていたガンマグロブリンの予防的投与は現在は行いません。

狂犬病ワクチン
 西欧製のワクチンが入手できます。動物を相手に活動する場合や野犬の多い地域に長期滞在する場合には事前に狂犬病ワクチン接種を受けましょう。噛まれる前の予防接種(暴露前接種)は、4週間間隔で2回、6〜12ヶ月後に1回接種します(合計3回)。その後1〜2年に一回の追加接種が必要です。3回のワクチン接種後、6ヶ月以内に咬まれた場合には0日、3日の2回の接種が必要です。また、6ヶ月経過後に咬まれた場合には0日、3日、7日、14日、30日、90日の6回のワクチン接種が必要です。
WHOでは初回接種を0日として、0,7,28日の3回接種法も勧めています。感染動物に接触した後でもガンマグロブリン接種とともに暴露後接種(合計6回)をすぐに開始すれば発症予防が可能です。暴露前接種を受けていない方は最寄りの接種可能な医療機関の連絡先を確認しておきましょう。

日本脳炎ワクチン
 日本脳炎は、日本脳炎ウイルス持った蚊によって媒介される重篤な急性脳炎です。死亡率が高く、後遺症を残す例も多くみられています。インド東部、南部で散発的流行が見られます。
 ワクチンは1〜4週間間隔で2回接種し、1年後追加接種を1回すると基礎免疫ができます。その後は4〜5年後に一回接種すると有効な免疫が保持されます。世界的には日本製、韓国製のワクチンがありますが、インドでは入手が困難です。タイ、シンガポール、日本などでの接種をおすすめします。

B型肝炎ワクチン
 B型肝炎ウイルスは、感染者の血液、精液、唾液、腟分泌液の中に存在しています。感染ル−トはHIVとほぼ同じですが、HIVより感染力が強くウイルスです。ピアスをする、入れ墨を入れる、ハリ治療を受ける、無防備な性交をする、輸血を受ける時などに感染することがあります。B型肝炎ウイルスのキャリア(感染者)は、世界中で約3億人に上ります。アジアは他の地域よりキャリアが多く、日本でも約200万人のキャリアがいると推定されています。インドに長期間滞在する人は、病院で輸血治療を受けたり歯科治療を受けたりす場合感染する可能性を排除できないので、性的に活発な年代ではなくとも予防接種を受けておいた方が良いでしょう。ワクチンは合計3回接種。初回接種から1カ月後(2本目)、更にその5カ月後に3本目の接種を受けます。2−5年間有効です。インドでも西欧製のワクチンが入手できます。

ポリオワクチン
 過去に予防接種をされている方は経口生ワクチン(OPV)を1回追加接種しておくとよいでしょう。西欧ではIPVと呼ばれる注射で投与する不活化ワクチンも発売されています。(インド、日本未承認)
 インドは世界的にみて最後のポリオ汚染地域です。不潔な地域に旅行される場合は成人もできるだけ接種をされた方が良いでしょう。
 また、日本では昭和50年〜52年生まれの人が受けたポリオワクチンの効果が低いことが分かっています。この年齢に当たる方は日本の厚生労働省も追加接種を推奨しています。また、日本での接種スケジュールは2回で他の国より少ないので、アメリカンスクール入学時などに追加接種が必要になります。

腸チフスワクチン
 インドでは西欧製Vi不活化ワクチン(商品名Typhivax)が入手できます。このワクチンは日本では未承認未発売ですので、渡航前には限られた医療機関でしか接種できませんが、インドでは前もって予約することにより接種可能です。一回の注射だけで約3年有効とされています。日本で発生している腸チフスの患者さんの半数以上がインド亜大陸からの輸入感染症発症者であることと、インドでは薬剤耐性菌が多いことを考慮すると、是非接種を検討すべきワクチンのひとつです。

髄膜炎多糖体ワクチン(A/C型)
 インドでも西欧製のワクチンが入手できます。このワクチンは日本では未承認未発売ですので、渡航前には限られた医療機関でしか接種できません。インドでは前もって予約することにより接種可能です。アフリカの髄膜炎ベルトあるいは中東との交流によりインドでも散発的ない流行が見られます。インドで必須のワクチンではありませんが、接種を考慮しても良いワクチンです。


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