沖縄の自然には神々と精霊達が宿っている。
沖縄南部の知念村にある斎場御嶽(せいふぁーうたき)は島内最高の聖地であり、首里王家の女性・ 聞得大君(きこえおおきみ)を最高の神官とする神女(ノロ)組織が維持し祈祷を捧げてきた場所である。 男子禁制であり、国王といえども入口から奥には立ち入れなかった。
1999年2月の温暖なよく晴れた日に私はこの場所を訪れた。 入口からすぐに亜熱帯の樹木が覆う神域になっており、琉球石灰岩で造った白っぽい石畳道が ほの暗い林のなかを縫うように各拝所に通じている。
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| 入口 | 樹木の下の石畳道 | 拝所に近づく |
大庫理(ウフグーイ)、寄満(ユインチ) といった巨大な岩の窪みに鍾乳石が垂れる拝所を経て、巨岩と 巨岩とがもたれあった隙間 ーー 三角形の入口を入って行くと最後の聖域サングーイに到達する。 ここは3方を巨岩に囲まれた空間である。
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久高島を望む面が開けており、遥拝場所に 座ると樹木の飾り窓の中に、久高島が遥か に浮かんで見える。(左写真)
天空の彼方のニライ・カナイから、久高島 を経由して神々が訪れる聖なる回廊の終端 がこの場所である。 森閑とした聖域でしばらく時を過ごした。 長い歳月の間、この拝所でノロ達により 祈願されてきた祈りが、周囲の岩盤に 染み入り、周辺に木霊しているかのよう であった。 |
次は久高島に行かねば、と思った。
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3月初めの週末に馬天港から連絡船に乗り久高島に渡った。(注1)
久高島は知念沖6キロに位置し、青い海原のなかで珊瑚礁に囲まれた小島である。 全島が神域であり、島そのものが結界のなかに位置しているかのように思われる。 琉球料理の最高級食材であるイラブー(海蛇)の漁が行われる島としても有名である。
面積は1.4平方キロ程で全く平らな島である。南北に細長く、人々は南の端に集落を造って住んでいる。 戸数115。住民248人(平成9年)の過疎の島である。 12年毎の午の年に行われる「イザイホー」の神事で有名であるが、前々回の1978年に最後に行わ れたときは、人口は579人であった。前回1990年は中止となったが、この人口ではもう2002年 のイザイホーも無理であろう。 この島は、島開祖を出自とする二つの家系のノロが神事などを司どっている。久高ノロと外間ノロである。 島は男は漁業、女は農耕にいそしんでいる。久高の漁師は糸満の漁師とならんで、沖縄の代表的な 海人(うみんちゅ)である。
島の集落は港から近いところにあり、台風除けなのか、石垣を高く組上げ、道路は狭い。 風除けのフクギが植わっている個所もある。 昔ながらの風情のある集落の姿を留めている。
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集落風景(1) |
集落風景(2) |
フクギの防風林 |
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神アシャギに辿り着いた。集落の奥にあった。(左写真) 島の女達によりここで行われるイザイホーの儀式はあまり に有名で、比嘉康雄氏の写真集などで紹介されている。 今日の神アシャギは、イザイホーの際の神事用のクバの 葉の装いもなくごく平凡でかつ平穏なたたずまいであった。 ノロ達の歌う讃歌 ”てぃるる” はいつ聞けるのだろうか。 |
村を後にして、細長い島の北の先端 カベール(神屋原)を目指して歩き始めた。 途中、神事で使われる泉ー イグルガーの拝所、フボー御嶽(フボーうたき)を経由した。
フボー御嶽は久高島最高の聖地である。 男子禁制の場所であり、今でも島の男達は立ち入らないそうである。 薄暗い樹木の密生した入口から、トンネル状に林の中を進んでいくと、前方に円形の開けた場所が現れる。 そこだけ日が射し込んでいるため明かるい。クバの木が茂っている。
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| 農道からの入口 | 前方に明るい広場 | クバに囲まれた広場 |
拝所があり、広場には何かの神事を行った跡であろうか、柔らかな草が拝所に向かって半円形に敷かれ ていた。その上でしばらく横になったが、神域の覆い被さってくるような気配を感じ、早々に立ち去った。
海の彼方に斎場御嶽を望む場所を経て、島の北端のカベールに着く。
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(左写真) |
神はカベールに降臨しフボー御嶽に渡り、そこから知念・斎場御嶽を経由して沖縄中に広がっていった。
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帰路は海岸の東側の女達が耕作する畑地を通った。所々、浜へ下りる横道があると、ウパーマの浜、 イシキ浜などへ下りていった。
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どこかにノロが手掴みでイラブーを捕らえる、イラブーの産卵洞窟があるのだろう。 海岸には強風が吹き寄せていたが、アダンとフクギの林に遮られ畑地には届いていない。これらの樹々の 逞しさと有用性には感嘆した。
1999.3.24 宇田川 東
注1:久高島行の港は、2000年(平成12年)春より、馬天港から、知念村・安座間港に変更になった。 注2:斎場御嶽は、2000年12月に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一つとして、世界遺産に登録された。