My Favorite Tricks

Ladybug,Ladybug

 

Ladybug

1998/6/30

最初に

1974年の12月に、東京の京王プラザホテルで開かれた沢さんの「天海賞受賞パーティ」に私も出席しました。その会場で見せていただいたのがこれです。初めて見たとき、クライマックスの意外性には驚きました。全編を流れる詩的な雰囲気を壊すことなく、最後は誰もが「あっ」と言うトリックになっています。

沢さんの数あるオリジナルトリックの中でも、私が最も好きなマジックです。

現象

Dr.Sawa with ladybugs 左の写真のような、葉が数枚ついた枝があります。写真にはすでに赤いテントウ虫が写っていますが、実際は葉っぱしかありません。

枝の裏表を見せて、ただの枝であることを見せます。

風が吹いてきたようです。枝が左右にゆれています。テントウ虫のような小さい虫達は、風が吹くと、一カ所に集まりじっとしている習性があります。風が静かになりました。枝を見ると、不思議なことに葉の何カ所かに数匹の小さなテントウ虫が現れています。直径5ミリ程度の小さなテントウ虫です。これを葉から一匹ずつ取り、テーブルの上に並べて行き観客に見せます。

もう一度、数匹のこのテントウ虫を一匹ずつ左手で取り上げ、右手の中に入れて行きます。風が止むと、テントウ虫はまたどこかに飛んで行きます。右手を開けると、テントウ虫はどこかに行ってしまったようで手の中から消えて、一匹も残っていません。

空中を指さし、空中からテントウ虫を一匹捕まえます。同じようにして、二,三匹捕まえ、手の中に入れて行きます。最後に手を開くと、直径三センチほどの大きなテントウ虫が現れます。お母さんテントウ虫が、子供達を迎えに来たようです。

最後に一言

これも道具類は市販されていません。天海賞の際、出版された作品集にも収録されていません。おそらく、初めてこれが解説されたのは、1977年1月の"GENII" (Vol.41 No.1)だと思います。その後1988年に出た"SAWA'S LIBRARY OF MAGIC" Vol.1(Richard Kaufman著)にも載っています。

マニアであれば、現象から方法を推測するのは難しくないはずです。しかし、昔、初めてこれを沢さんから見せていただいたときは、最後の大きなテントウ虫をいつ、どこから持ってきたのか全然わかりませんでした。天海賞のときはその場でレクチャーをしていただいたのでわかりましたが、タネを聞いてもう一度驚きました。ここではこれ以上詳しく言えませんが、いつでも、どこでもできる本当に素晴らしく詩的なマジックです。

しかし、マニアでこれをやっている人を見かけたことはありません。ひとつは道具を自作する必要があるからと、もうひとつは、この詩的な雰囲気を壊さずに演じるだけの力と雰囲気を持った人があまりいないからでしょう。

K's Garden

今回、この「レディバグ」を思い出したのは、偶然、本物のテントウ虫を見かけたからです。私自身、少し前からガーデニングに関心があり、すでになさっている方の庭を見せていただく機会もありました。先日、庭でお茶をいただいているとき、テントウ虫が飛んできました。このとき、突然、これを思い出したのです。

先日紹介した、「ピアノトリック」のときにも言ったことですが、あるマジックを見せたとき、観客にとって最も不思議に見えるのは、観客がそれをマジックだと思わないで見ているときです。「ピアノトリック」は静かなナイトクラブで、「レディバグ」は素敵な庭で見せるといったことが出来るのは、アマチュアにだけ許された贅沢な楽しみでしょう。

魔法都市の住人 マジェイア

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