The Collector's King Crimson Volume 3(2000.08.31 2000.09.17加筆追伸)

 DGMの会員向け配布音源が日本でのみ正式リリースされて、早三作目のボックスセットまで来ました。
随分前に筆者も入手済みではあったのですけど、どうも聞き込む暇がとれませんで、ようやく今回このサイトに掲載する運びとなりました。
既に色んな雑誌やサイトの書き込みで紹介済みではありますが、筆者なりの見解を加えてみませうと言うことで行きます。
では。


The Collector's King Crimson Volume 3 さてさて、今回の日本向けボックスセット三作目は、先に発売された二つと比べると、いささか趣が違う感じがします。
まあ、DGMで配布された順番がたまたまそうさせたとも言えなくもないのですけど、ご存じのように、今回のボックスセットに収録された音源はある意味バラバラの時期の音源であり、しかも内一枚はリハーサルテイクで、これまでと違ってライブ音源では無いのです。
Fripp翁、ブート対策として始めたこの仕事、今後発表される音源(今問題になっているHydePark音源も含めて)では、ライブだけでなくてリハーサルテイクやアウトテイク音源の公開にまで進めるつもりなのか、ちょっと興味が湧きます。
(それなら是非フルハムパレスロードのカフェの地下室でのリハーサルが是非聞きたい!!!)
まあ、この間まで行っていたツアーや今後のツアーもBootleg TVKing Crimson TVで音源やら映像、全部公開するはツアー中に公演の音源を申し込めば購入出来るはと、もう何でも持ってけ!!!!状態なんですから、今後過去の音源に関しても歯止めが無くなるかも知れません。
(ただ、だからこそ第一期のメンバーが第一期の音源の公開に反対してるのかも知れませんねー。)
まあ、そんなこんなの問題は置いといて、今回公開された三枚の音源についてご紹介しましょう。


The Roar Of P4 1998 まず一枚目は、Crimsonっていう名前の問題から言えば、この音源が入るのはどうかな??って気もしないではないのだけど、まあFripp翁としては現在のCrimsonの実験って事でこのProjeKctシリーズの音源を入れたくてしょうがないんでしょうね.....
さてさて、収録された演奏は、一部は'west coast live'でも使用されたものなんだそーです。
まあ、元々ProjeKct Fourもそんな長い期間活動したわけでもないわけだし、実際ライブもコロラドとサンフランシスコでしかやらなかったわけですからね。
収録内容としては、まあ早い話がいわゆるProjeKctシリーズの鬼子であるProJeKct Oneを別とすれば、ProjeKctシリーズの流れな訳で、Vドラムを使用したデジタル系の音が中心となっているのですけど、まあProjeKct Fourの場合、Tonyがいるのでアナログの力強さが少しだけ加わっているんですね。
それと、ここでの演奏はそれなりにアレンジされたもので即興では無いわけです。
やはり、デジタル系のリズムを使用する場合、その偶発性では無い部分とリアルに演奏している部分でどれだけ折半するかという問題がある訳で、その部分がいわゆるBillの不満を呼んだのかな??とも思えたりして。
この後に成立するダブルデュオのミレニアムCrimsonの場合、逆にデジタル系のリズムとともにアナログな部分を両立させるような努力が見えたのは、筆者の気のせい???
実際、ProjeKctシリーズの存在意義は、その元々の意義の実験にあったのかも知れませんね。
そんなことを感じさせる一枚なのでありました。


The VROOOM Sessions 1994 さてお次が、ある意味問題の'The VROOOM Sessions 1994'なのであります。
この音源、その内容がリハーサルもしくはレコーディングセッションなわけです。
で、おもしろいのは後の'VROOM'や'THRAK'で発表されたものよりも、まさにスタジオでのリハやセッションという生の素材を紹介しているところでしょう。
後の'Sex Sleep Eat Drink Dream'や'One Time'のベーシックな素材が聴けるのも貴重ですし、何といっても'Monster Jam'のような殆どアウトテイクになったのが不思議な音源も聴けるわけです。
まあ、当然、Fripp翁のフィルターがかけられた、つまりそれなりに聴ける音源を選んでいたのも当然なわけなのですけど、それでも、これらのテイクは興味深いものであることには間違いありません。
考えてみると、Beatlesとかと違ってCrimsonのリハーサルテイクってブートでも殆ど出回ってませんよね??
ほんと、こうなったらフルハムパレスロードのカフェの地下でのリハーサル音源とか、Keith Tippet Groupとのリハーサル音源とか、Jamie Muirの自宅でやったセッションとか、色々聴きたくなるってのがファンの心情というものでしょう。
そう言えば、'97年春の破綻となったダブルトリオCrimsonのリハ音源が出るとか、これも楽しみな話であります。


Live at Summit Studios 1972 さてさて、最後に登場は、あの有名な'72年のSummit Studios音源であります。
ご存じのとおり、この音源は元々ラジオ放送用に録音された音源でありまして、故にブートの世界では非常に色んな形で出回った音源でもあります。
筆者も、ご多分にもれずアナログ盤を持っていたりしますが、ところがこの音源、市場に出回ったブート盤はアナログ、CD問わずかなり問題の多い音源だったのも事実です。
ピッチは低いは分離は悪いは、音はこもるは三重苦状態なのです。
しかも筆者の持っているアナログ盤なんざ、ブートのくせにご丁寧にもカラーレコードだったりするのですから、そりゃもうひどい音でありました。
しかし、今回DGMから出たこの音源、素晴らしい音で収録されており、ホントあのSummit Studios音源なのかいな???と逆に疑いたくなっちゃったりして(^^)。
低域があんまし出てないのは残念だけど(うーん、Ianの強烈なバスドラが.....でもBozの情けないベースがマスキングされて良いかな???)、この時期のIsland Crimson音源としては、多分一番状態が良い音源だと思います。
(まあ、比較対照がEarth Boundあたりだとねー^^)
でも、何故かクレジットが入っていて、しかも使用する楽曲が収録されているのに、mellotronが聞こえないのは何なんでしょ??
まあそんなこんなですが、この音源、二つの驚くべき事柄を含んでいるのです。
一つは、これまでのブート音源では出回っていなかったインプロナンバー'THE CREATOR HAS A MASTER PLAN〜including IMPROV:SUMMIT & SOMETHING ELSE'が収録されている事です。
途中音切れ(多分テープが終わっちゃったんでしょう)がありますが、イントロのBozの即興の唄と言い、中間部のColtrane丸出しのMelSaxソロ、Fripp翁のLarry Coryellばりのソロ、そして何よりこれまでのブルースジャム的な即興しか行わなかったIsland Crimsonがポリリズムでインプロビゼーションを展開しているのであります。
まさにこれだけでも、この音源は意義深いものとなったと言えるでしょう。
この音源はまさに初出の音源でありますが、多分Summit Studiosでの放送用録音の終了後に、スタジオに居たファンの為のファンサービス向けにアンコールで演奏したものでは無いか??と思われます。
そしてもう一つはIanがライナーを書いている事、そしてそこにCrimson参加のいきさつの多分ホントの話が載っている事でしょう。
これまで、Ianはボーカリストとしてオーディションを受けたけど落ちた、けどFripp翁と話をしていると実はドラマーだっった事が判り、それでAndy McCullochが首になったというのが一般に流れていた話でしたが、実はボーカリストのオーディションなんか受けちゃいない事、Andy McCullochの首を切る事は既に決定事項で代わりのDrumsを探していたところEL&PKeithFripp翁にIanを推薦し、The Worldのギグを見て参加が決定したこと、そして何より首が飛んだAndyIanが同じ建物に住んでいた友人同士だった事等々....
こんな話、ホント当事者じゃなきゃ知り得ない事実ばかりであります。
こんな事、知らなかったよ、実際.....
(でも、一層Andyが何で首になったのかが良く判らなくなったりして....)
(以下、2000.09.17加筆)ちなみに、'THE CREATOR HAS A MASTER PLAN〜including IMPROV:SUMMIT & SOMETHING ELSE'では、Lark'sPert-Tのリフが中間部で登場します。
これは確かに珍しいのではありますが、実は既にインプロで'Lark's Pert-T'のリフを使用するってのは1971年には行われていたのですね。
しかも何と'Lament'で使用されたリフもやはり'71年に演奏されたという事実もあります。
(1971年のIsland Crimsonの英国お披露目ツアーでの事でした。音源もMARQUEE公演のものでその事実を確認出来ます)
そうやって考えるとFripp翁の頭の中にはLark's Crimsonのプロットは意外と早い時期に出来上がっていたのでしょう。
ただ、Island CrimsonLark's Crimsonに変化するには、その資質(うまいヘタではなくて、メンバーの資質という意味で)に違いがありすぎるとFripp翁は判断したから一端バンドを解消したんでしょうな....
有名なポーンマスでのMel Collins涙の逃避行事件の際、Fripp翁はMel Collinsのアイディアを頭ごなしに否定しました。
そしてIanのライナーにもあるように'このアイディアを使おう'と示したのが'Lark's Part-T'のリフだったのですから。


HEAVEN AND EARTH by PROJEKCT X 今回、これだけで終わるのもなんだなーって気もしまして先日日本でPROJEKCT X名義でオフィシャルリリースされた'HEAVEN AND EARTH'についてもちょっと取り上げてみませう。
この作品は、既にリリースされた'the construkction of light'にも収録されたタイトルナンバー'HEAVEN AND EARTH'をアルバムタイトルとしているわけですが、実は'the construkction of light'が非常にきっちりと書き込まれた作品だったので、逆に'HEAVEN AND EARTH'では即興演奏を収録するんじゃーないか??なんて淡い期待を筆者は持っておりました。
実際、'the construkction of light'に収録されたボーナストラックである'HEAVEN AND EARTH'は、リズム隊こそきっちりしたリフを刻んでいたんですけど、その上を駆け抜けるFripp翁のGuitarは、テクニカルな'the construkction of light'収録曲に比べると即興の度合いも強かったし、良いトラックだな???と思っていたんですね、筆者は。
ところが、どっこい実際にリリースされた'HEAVEN AND EARTH'は、これまでのProjeKctシリーズ(つまりProjeKct Two以降)でも利用された所謂プロツールを縦横無尽に使用された、まさにカット&コラージュで創られた作品だったのですね。
まあ、昨今のクラブ系、トランス系、テクノ系で見られるカット&コラージュで様々なレコーディングセッションでの演奏を断片化し切り張りしたものがメインで、所謂即興らしさよりもスタジオワークで創られた作品としての色合いが非常に濃いのです。
筆者は、先のProjeKct Fourでも書いたように、実際ダブルデュオ/ミレニアムCrimsonProjeKctシリーズで行った作業の一連の結果から、よりアナログ且つより造り込まれた作曲/演奏スタイルに戻したんだと思うのですよ。
だけど、この'HEAVEN AND EARTH'の場合は、ProjeKctシリーズで行った実験を極限まで持っていった結果なんじゃないかな???と思うのです。
良く、'ProjeKct 0 ≒ King Crimson'というのがFripp翁からも語られた事を考えると、'HEAVEN AND EARTH'はPROJEKCT X名義ということで、Crimsonの極北に位置するのかも知れませんねー????
それとも、プロデュースを担当したPatの趣味なのか????


 いずれにしても、まもなく始まるJapan Tourでは既報のとうり現在進行形のCrimsonの姿が見られると思います。
でも、PROJEKCT Xの姿は、比較的Crimsonに近い'HEAVEN AND EARTH'のタイトルナンバーのみが見られるだけであっても、それは不思議な話じゃありませんよね??

PS: さてさて、DGMクラブリリースですが、やはりHydePark音源の発売はまたもや見送られてしまい、一応20009月と言うことになってしまいました。
どーも、この音源をきっかけとした騒ぎはなかなか収まりそうもありません。
このままいくと、DGMクラブリリース音源のシリーズの存続まで危うくなるかも知れませんね....
PS2: やっぱ、HydePark音源は遅れに遅れそうですね。
何と、第13集の'97年のダブルトリオ崩壊リハーサルが先に配布され、その後にうまくすればクラブメンバーのお手元にお届けするとか.....
DGMサイトを見ると、ついにはっきりと'著作権問題で遅れてます'と書かれておりました。
さてさて、反対しているのは誰なんでしょう??
(多分、あの人だろーな....)
このままお蔵入りの可能性ってのもあるやも....
(2000.09.17追記)

To Crimson