9枚はいかに生まれ変わったのか??四人囃子再発記念/Part-2(03.01.13)

 さて、前回は初期三枚のリマスタリング具合を中心にお送りした、四人囃子オリジナルアルバム再発記念特集。
今回は、第二回ということで、後期四人囃子、所謂佐藤囃子期の各音源のリマスタリング具合を取り上げたいと思います。
但し、今回は以前の囃子特集と違いまして、オリジナルリリース順を守っていますので、あのライブアルバムが中間に、そしておまけの一枚についても取り上げてみませう。
んでは(^^)/。


 さて当時の四人囃子と言えば、'ゴールデンピクニックス'発表、日比谷野外ワンマン、そして大規模な全国ツアーとスケジュールも目白押しでした。
'
ゴールデンピクニックス'完パケ後、メンバーはしばしの休暇、そして次のスケジュールに突入する筈でした。
ところが、この休暇中に大事件が発生します。
モリさんの脱退事件です。
当時のスタッフの方がおっしゃっていた'森園が壊れた...'の一言...
欧州に旅行に行っていた佐久間さんは、帰国後にモリさんの脱退を教えられます。
佐久間さん、実は'
ゴールデンピクニックス'レコーディング中も正式メンバーという意識は無かったという発言は後の'電子音楽 イン・ジャパン'のインタビュー中にもありましたが、事実、佐久間さんは四人囃子の事務所には所属していなかったのですから、その意識でいても不思議はありません。
ただ、さすがに'
ゴールデンピクニックス'を当時、天下のSONYレコードから発売、その後の大プロモーションもありましたから、そのスケジュールを何とかこなさなければならなかった事が、佐久間さんをバンドのフロントマンへの道に導いたのでしょう。
四人囃子は、日比谷ワンマンを多数のゲストを招いてこなし(当時のファンはモリさんの脱退をきちんと知ったのは、この時でした)、幾つかのフェスティバル形式のライブをハルオフォンのプリさん、安全バンドの中村哲っつあんを加えてスケジュールを消化していく事になります。
この編成での最後のステージは'76年夏の第二回ワールドロックフェスティバル、このステージではこの編成では数少ない新曲(佐久間さんのアコースティックギターから先導されるカンタベリー調のインストナンバー)も披露されています。
公式には8月末に放送されたフジTV/ニューミュージックフェスティバルにて公の場から四人囃子は一端、姿を消します。
そして、同年12月、NHK-FM北海道で佐藤満さんをメンバーに加え、四人囃子は再びメインステージに戻ってくるのです....


 四人囃子は、'7612月の前から満さんと連絡を取っていたのは有名な話です。
実際、満さんの他にもう一人候補が居たのですが、佐久間さん曰く'場数を踏んでいる'というのが満さん参加決定の要因だったとか...
12月のラジオ収録の後、翌年春から音固めの為の合宿スタート、お披露目の渋谷屋根裏2daysの後、レコーディングされたのが、'
PRINTED JELLY'でした。
当時、四人囃子らしくないとか、ポップになったとか、色々言われましたが、アルバム自体の売れ行きはまあまあ、そして発売に合わせた全国ツアー'
HARD UP TOUR'の集客も良かったのです。
この当時、既に四人囃子はリーダは大二さんだけど、音楽的な部分、特にプロデュース的な部分は佐久間さんが主導権を握っていました。
当時のインタビューでも、'音を固めるのは佐久間の方が早い'と大二さんが発言しています。
実際、既に歌謡曲等のプロデュースにも乗り出していた佐久間さんでしたので、そうゆう作業は佐久間さんの方が上だったのでしょう。
ちなみに、音の変化を色々言われていたのですけど、実はここで聴かれる曲は実は前作の'
ゴールデンピクニックス'と繋がっていると言う点は、意外と誰も指摘していませんねー??
四人囃子は'
ゴールデンピクニックス'でかなりポップになっていたのですけど....(曲の長さがポップじゃないのかな??)
さて、今回のリマスタリングですけど、元々
オリジナルアルバムも非常にダイレクトな音が中心で加工された部分が少なかった、非常にストレートな音作りでした。
今回のリマスタリングは、それを非常に順当に再現しているように思えます。
まあ、当然音圧は上がっているのですけど...
ちょっと違いがあるかと言えば、ベースの出音がかなり大きくなっている点、それと、ちょっと残念なのはラストの'ヴァイオレット・ストーム'のベースが歪みというか、音の芯がばらけたようになっているところでしょうか??
加えて、ラスト前のマーチングスネヤも歪みが出ている感じがしますね。
トップの'ハレソラ'のコリコリしたベースの音とか'N*Y*C*R*R*M'のドラムロールなんかは綺麗に再現されているんですけど....
アートワークの方は、ジャケやインナースリーブ共々、かなりきちんと再現されていますが、残念なのは
レーベル面。
何故か、SEE・SAW期の三枚、オリジナルのレーベル面で無いのです。
(ちゃんと、協力したのに....)
それとジャケの方も右上のSEE・SAW/VIENTOのレーベルマークがありません。
(他の二枚も同じ....)
帯の方も'
ゴールデンピクニックス'みたいには行きませんでした。
こちらはDisk Unionさんのオマケが再現版で存在しますが、実はこちらもホントのオリジナルどうりじゃないんです。
やはりSEE・SAW/VIENTOのレーベルマーク、それとレコード発売100周年記念のマークが入っていません。
(こんな細かいとこ気にするのは私だけ??)
でも、このアルバムで満さん、マルチ残っていたら、絶対にボーカル、ピッチ調整するだろーな(^^)。
前から言ってるもの、初めてのレコーディング、'ボーカルのフラットは一生後悔する'ってね(^^)。


 さて、オリジナル音源の発売順からいくと、次は番外編ということになります。
そう、'
一触即発'レコーディング前、東宝レコード用の会議資料用に提出したテープが東宝レコードにより四人囃子側の許可なくリリースされたという''73四人囃子'、'73年の俳優座でのライブ音源です。
何せ、裁判沙汰寸前まで行ったという曰く付きのものですが、後の'
From The Vaults'にてこの時の'泳ぐなネッシー'が初公開されました。
このアルバム、多分'
PRINTED JELLY'で復活した四人囃子人気に当て込んだものだったようで、ちなみにアルバムに付属していた歌詞カードのバイオグラフィーも'PRINTED JELLY'からのまんまパクリでした。
当時の
オリジナルアルバムの元は先にも書いたように会議資料用に提出されたダビングテープだったようで、しかもモノラルの音源です。
当時のアルバム、一応ステレオの表記がありましたが、実際は疑似ステレオ効果を付けたものでした。
後の四人囃子再結成期に他のアルバムと同様、CDでリリースされたのですが、この時には大二さんがマスタリングを行ったそうです。
さて、今回の再発では'extended version'と言うことで、先の'
From The Vaults'収録の'泳ぐなネッシー'がこのアルバムでも当時の演奏順に従い、'一触即発'前に収録されています。
ただ、前回の再発と同様、MCがカットされているのは、ちと残念。
(というか、前回の再発のマスターしか残っていないのか??それともやっぱしMCはカットしたのか??)
音質の方は、当時四人囃子版'
Earthbound'と呼ばれていたくらいでしたが、今回のリマスタリングで歪み感、音の分離ともかなり綺麗になっています。
面白かったのは、'
From The Vaults'で披露された'泳ぐなネッシー'が、気持ち、音に汚しをかけている事。
実際、'
From The Vaults'の'泳ぐなネッシー'は完全なステレオ音源でして、多分大二さん保有のマスターだと思われます。
他の曲とのバランスを考えての処置だったのでしょうか??
でも、それなら大二さん保有のマスターを使用して、完全な'
'73四人囃子'をもう一度創るのも手だったんじゃないかなー??と無責任なファンは一人思うのです....


 話を元に戻しましょう。
年が明けて'78年、この年は四人囃子にとって、夏の''ライブに向けた動きが始まります。
'78年春にアルバム'
'を録音、そして一気に夏の日比谷野音での''ライブに進むわけです。
この
アルバム'包'では、前作と違い、かなり電子機器が多く導入されています。
前作ではストレートな音作りだったのが、'雰囲気デジタル'のようになり、ミックス/ダビングともにかなり凝った作業が行われているのです。
と言っても、'78年当時ですんで、録音自体は完全なアナログ録音、それと動員されたシンセサイザー類は殆どが日本製の民生品だったのも特徴の一つでしょう。
この頃の四人囃子の場合、シンセサイザーについてはスポンサー契約もあったためもありましょうが、日本製の民生品を多数使用していたのです。
さて、このアルバムのリマスタリングを聴いてみると、これはかなりの大成功のようです。
'雰囲気デジタル'の録音にはピッタシです。
トップの'眠朝'なんか、細かい音もキチンと音の粒が立っています。
それと、
アナログ時代、ギターのダビングが多くて、音が団子になっていた'ビギニング'の音の分離が非常に細かくなってまして、正直アナログよりも良いかも知れません。
(あの音はアナログではきちんと再生出来ないんですよー)
デジリバがちょっときつい感じもしますけど、
アナログの時はボーカルも沈んじゃってたし。
同じ事は'モンゴロイド・トレック'でも言えまして、ギターの細かいプレイが非常にきちんと、バランスを崩さずに聞こえるようになったのは、今回のリマスタリングの成果でしょう。
佐久間さんと坂下さんの8弦ベースもどきも効果がきちんと感じられます。
'ファランドールみたいに'も細かいアコースティックギターが綺麗です。
今回のリマスタリング作業でもトップクラスの出来でしょう。
まあ、デジリバがちょっときついのをどう評価するかってところでしょうかね??
ちなみにアートワークの再現についての問題点は、前作といっしょでした(^^)。


 さて、オリジナル音源の発売順となりますと、当然次ぎはシングルになります。
そう、'
拳法混乱'なのです。
当時、既に坂下さんが脱退、四人囃子は元メンバーの茂木さんをヘルプに迎え、あの映画'酔拳'の日本公開用テーマソングのレコーディングを行ったのでした。
一応、当時も''ライブ後、シングルを作成するスケジュールはあったそうですので、これがそれに当たるのでしょう。
曲の方は、まさに発注されましたんで創りましたって感じなんですけど、音の方は後の'
NEO-N'の前哨戦のような録り方がされているのです。
まあ、B面の'酔いどれの伊達男'の方は、この頃ポップだと言われた四人囃子とは言え、なんか後のペグモあたりを感じさせたりしまして。
(一応、洒落っぽい部分は大二さんかな???)
さて、でも、こちら、実は正式リリースされたものでなくて、Disk Unionで今回の再発盤をまとめ買いした方に付いてくるおまけなのです。
一応、聴いて見ると細かいリマスタリングとまではいかなかったようですが(若干ヒスノイズがあります)、それでも今回のSEE・SAW再発系と同じような音になっています。
ジャケットもきちんと再現してありまして、
レーベル面も当時のSEE・SAWのものを使用しています。
これを見るとSEE・SAW三枚が何故、レーベル面を使えなかったのかな??と思わせてしまいます。
まあ、一応非売品だから出来たのかも知れませんが....


 さて、最後に紹介するのは、後期四人囃子最後の作品、坂下さん脱退で三人となった四人囃子が茂木さんをサポートに迎えて'79年に録音した'NEO-N'。
このアルバム、四人囃子がSEE・SAWに残した最後のアルバムとなります。
既にメンバー達も個人的な活動が始まり、四人囃子として一端ピリオドを打つ気でいたのは、みなさんもご存じのとうり。
当時のテクノ、ニューウェーブ的なアプローチを四人囃子的に解釈した音作りは非常に緻密で、また殆どマニュアルで演奏されているという演奏力もこのアルバムの完成度の高さを示しているでしょう。
四人囃子史上初のコンセプトアルバムとして世に出され、発売初回プレスはクリスタルレコード仕様というのも、四人囃子らしい凝り方だったのですが、いかんせん本人達が殆どプロモートする気が無かったのか、当時たった二回の渋谷屋根裏のライブを最後に四人囃子は一端、眠りについたのです。
さてさて、今回のリマスタリングの方はと言いますと、これまでのSEE・SAWの二枚と同傾向かというと、ちょいと違う感じです。
というか、実は
アナログ盤の'NEO-N'って、初回プレスがクリスタルレコード仕様であるにも係わらず、非常にクリアな音だったんです。
(というか、もしかするとクリスタルレコードのために音が細かった??)
で、今回の
リマスタリング盤では、非常に音が太くなっているんです。
音の迫力が非常にあるのですけど、逆に
アナログ盤のような音の繊細さが無くなったように思えます。
確かに、佐久間さんのベースのドライブ感は心地よいのですけど、
アナログ盤のちょっとチープなはかなさが当時で言う未来志向的な音だったように思えて、この部分、ちょっと違和感があります。
今回のリマスタリングで、オリジナルのテクノ的な感じが、逆にドライブ感のあるハードロックに変わったってのは言い過ぎでしょうか??
'NEO POLIS'のアコースティックギターの低音弦の刻みなんか、非常に図太い音に聞こえますし、'NERVOUS NARRATION'なんかベースはハードロックです。
'N・P・K(4:4:2)'のイントロもちょっと歪みっぽい...
一番残念なのは'NATURAL'のピアノが何か音の膜をかぶったようで、
アナログ盤のような響きじゃない....
残念ながら'
NEO-N'のリマスタリングはうまくいってないなって筆者は残念に思ってしまったのでした....


 今回は後期四人囃子の三枚とライブ、そしてシングル一枚のリマスタリング具合を紹介しました。
やっぱし、アナログ録音をデジタルメディアに置き換えるってのは、ホント、一筋縄では行かないものです。
と言っても、前回もお話したように、日本の古い音源は皆オリジナルのアナログマスターやマルチからデジタル用にリマスタリングやリミックスが出来なくなっているのも事実です。
今回のような作業が行われなければ、これらの音源を後世に残す事もままならないのです。
そういう意味でも'70年代の日本のバンド達の音源の再発がこの時期に行われた事で、間に合ってよかったのかも知れませんね???

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