さてさて、URCとんでもないもんシリーズとでもいいますか、前回は安全バンドのライブ集を紹介しましたが、今回は、URC四天王の中でもエンターテイメント部門を一手に引き受けるなんて言うとなんですが、そう、近田春夫氏が率いたあのハルヲフォンと行きませう。
しかし、ハルヲフォンの真の姿は、そんなエンターテイメントなパブリックイメージではなく、もっと奥深いものだったのです。
日本ロック界のヤン衆、ハルヲフォンの真の姿とわ??
そんなこんなで行ってみませう(^^)/
ハルヲフォンと言うと、どんな姿を思い出すでしょうか??
あのTBSの'銀座NOW'の姿か??はたまた東京12チャンネルの'ロックおもしロック'の姿か??
それとも、営業バンドとして活躍する姿か??
ハルヲフォンの真の姿は....余りの多面性を持ちながら、自分たちのオリジナルを真摯に、でも客とともに騒ぎまくり、客をいじりまくる、そんなライブの姿が本当のハルヲフォンだったんではないかと、今回のライブを聴いて、それを強く感じたのです。
オープニングの'76年田島ヶ原ライブ、元々クールスに提供した曲'シンデレラ'から始まるステージは、まさにノリの良い演奏、そして素晴らしいコーラスワークを聴く事が出来ます。
ホント、モニターの返しがまともだろうが、どうだろうが、関係無しです。
今回のライブの音源の殆どはPAからのライン送り音源なのですが、時折リードボーカルが引っ込んだりとかも聞き取れますが、そんな状態でもハルヲフォンはビシっとした演奏をしてるんですから、こりゃ凄いと。
ライナーのインタビューで、恒田さんが'電気がなくても45分、やれるよ'って発言は、まんざら嘘では無いでしょうし、この発言からも、実はハルヲフォンが職人気質のバンドだった事が良く判るというもんです。
メジャー団体のプロレスラーがほうきと勝負出来るとか、地震があろうがそれを擽りにする落語家と同じようなもんなんだわいと思うのです。
'75年の田島ヶ原ライブも、ある意味同じようなもので、何故か一時脱退してしまったプリさんの代役を四人囃子のモリさんが努めているわけですが、それだって、何事もなかったようにライブをこなしてしまうのがハルヲフォンなんであります。
ちなみに未発表曲の'愛なんて'は、人を食った曲だよなー??歌詞が'愛なんて'だけだもんな(^^)。
'77年の田島ヶ原ライブは、セカンドアルバムの頃、既にサードの'電撃的東京'のアイディアをちりばめたライブ。
んで、ここの白眉はやはり'秘密のハイウェイ'でございましょう。
以前にも書いたのだけど、この曲、イントロから続くAメロはツーコード、そこに乗るメロディーの豊かなこと。
そしてBメロの盛り上げとサビの見事さ。
ライブではオミットされていますが、ブレイクパートの構成も含めて、まさに良くもここまで練られたという名曲。
恒田さんが、よく'曲の構造'という話をしますが、それが良く判ります。
どうしてもハルヲフォンというと、思いっきりポップなバンドだと思っていたら、大間違い。
複雑そうに見える演奏ではなく、簡単に見せる演奏が実は無茶苦茶複雑な構造をしているわけで、単なるグリッターポップなんてのは大間違いなんであります。
ちなみに'十年早いぜ'なんかも、こんだけ凝ったメロディーがてんこ盛りなのに、きっちりはまっているのが凄いわ、ほんま。
実は、当時、筆者はハルヲフォンのボーカル、特に近田さんの無理矢理なビブラートが苦手だったのですけど、あんだけ動いて唄えるってのは、やっぱ凄い事なんですよ、恒田さんの立ちドラムボーカルも!!
それと、タマさんのベースって、所謂ルートと五度だけで弾かせても、グルーブがその辺の小僧のベースじゃ太刀打ち出来ません。
そんで自由自在に上モノを構成するプリさんのギター、困ったもんだ、こりゃ(^^)。
さて、'77年の'にんじん'のライブ。
実は、これ、以前ある秘密のリハーサルにお邪魔した時にあるお方から聴かせて頂いた事があったので、免疫が出来ていたんで、そんなに驚かずに済みましたが、こちらは、ある意味営業バンドもやっていたからか、どんな曲も自分の曲にして演奏してしまうハルヲフォンの奥の深さを知る事の出来るライブです。
GSを取り上げて、こんだけロックコンボで聴かせてくれる姿、そして問題の'日本のROCKメドレー'、これ初めて聴いた時は、その場に居た全員が一瞬唖然としながら、その後、大笑いしていたのを良く覚えています。
確かにカバーでしかないのだけど、'一触即発'(ちなみにエレピでやる'即発'は坂下さんより近田さんの方が先??)の次にキャロルが繋がるは、その後が紫ですよ??紫よりメンバー少ないのに、何故、ここまでやれるか??ってその後が'港のヨーコ、ヨコハマ、ヨコスカ'で、チャーを続けるってのも....と思うとミカバンドが来ると....んでマキ&OZ、その後がクリエイション、ツインリードをギターと鍵盤でやっちまうと...んでオーラスは'SATORI
PART-2'。
確かに、こんだけのバンドを同じまな板に乗せるのもどうかと思いますが、それを余裕でやってしまうのがハルヲフォンなんでしょうな??
そんな職人的/営業的な姿の後は、オリジナルなハルヲフォンの姿、'グローリアのうわさ'、'プラスチック・ムーン'のドライブ感とボーカル、そんでコーラスの見事さに唖然としましょうや...
'にんじん'音源のラスト'こんなに愛しているのに'は、残念ながら最後まで聴けませんが....
ボーナストラック扱いになっている'78年の'屋根裏'音源は、'ブルドック'と'ロキシーの夜'が収められていますが、困ったことに、この日のこのライブ、筆者も現場に居たんだよ....
この頃のライブは'電撃的東京'の準備中の頃かね??、'電撃的東京'の曲もかなりやっていた記憶があって、んで、この時一番ぶっ飛んだのがプリさんの'東京物語'だったと思うんですがね??間違ってるかね??
ライブハウスで聴いたハルヲフォンは、多分、これが最後だったんだな??多分....
さて、ハルヲフォンの真の姿は、このライブのライナー、そして恒田さんのサイトにも書いてあるように、営業によって鍛えられ、どんな曲でも'ううん全然へーき'って顔で演奏してしまう、まさに職人だったのであります。
実際、以前恒田さんとお話した時、常時キングレコードのスタジオに楽器を置いてあって、いつでも好きなようにリハ出来る環境を持って、曲をドンドン練っていった姿を聞く機会がありました。
ホント、ポンと出たポップバンドなんかでは、無かったのです。
パブリックイメージとバンドの真の姿のギャップの大きさ....
んで、ハルヲフォンの解散というか、恒田さんがハルヲフォンを止めた真の原因が、今回のライナーのインタビューにありますが、これってまさに'74年にFripp翁がCrimsonを止めた時の理由とまったく同じではありませんか??
そう、リハで曲を練り、ライブで曲を練り、アルバムを発表するロックバンドのスタイルが、業界の中で滅び行く恐竜となりつつあった時代の話なんであります。
しかし、この恐竜は、手を変え品を変え、再び我々の前に戻ってくるかもしれませんな??
それはもしかしたら今年の夏かも知れませぬ.....