◆ 槍ヶ岳 ・2日目◆


〜北鎌尾根よりアプローチ〜



2日目。尾根の取り付きのところで最後の徒渉が予定されていたため、沢靴で
スタート。昨日は雨だったから一度も出さなかったデジカメを、雨具のポケッ
トにスタンバる。



自分のデジカメの最期のショット(涙)

雪が解けたばかりの、掴まる物すべてが動くような脆い急斜面を微妙なバラン
スで、ときどき指を土に突っ込みながら登り、薮をかき分け雪の斜面に出る。
朝イチで雪が締まっていて、蹴り込みの弱い沢靴では心もとない。 先を行く
リーダーが、時折ピッケルでステップを切っている。尾根の取り付きには赤い
テープ
が目印にあるということだから、対岸にそれを探しながら歩く。赤テー
プは、対岸からでもばっちり見えた。テープの向かいから徒渉を始める。リー
ダーが渡りきり、自分も続く。水量は膝くらいで、見た感じ問題なさそうだっ
たのに。。。水圧に負けて半身水没

カッパだったから、服の濡れは少なかった。がっ!ポケットの中のデジカメが
びっしょりになっていた。なんで防水しとかないよ!というリーダーの呆れ
た声も耳に入らない。とりあえず拭いておき、足回りを沢靴から登山靴に履き
替える。ふと見ると、対岸で人が手を振っていた。黄色いカッパだったので、
昨日の2人組のうちの一人だと思ってこっちも手を振る。やがてその人が別の
所から沢を渡ってこっちに来た。初めて見る人だった。単独で、貧乏沢を下っ
てこの取り付きまで来たということだった。北鎌沢から尾根に取り付くルート
から他に3組くらい行っているという情報を残して先に尾根に上って行った。

その人はプラ靴+アイゼンで沢を渡っていた。もう少し上流だったら、水没し
なくても済んだのかも。。。とリーダーが呟いた。遅いっつーの!

沢で行動用の水を充分に補給して出発。ここからP2までの上りは、通称「
登りピッチ
」というらしい。どんなんですか?って聞いたら、木に掴まりなが
らよじ登るような急登らしい。踏み跡はしっかりしてるけど、とにかくいきな
り最初から急傾斜だった。こんな所、そんなに速く歩けないから、自分のペー
スで歩いていると、リーダーと少し間が空いた。荷物を少し分けるように言わ
れて、荷物減らしてもそんなに速く歩けないですよ、と言いながら、共同装備
の食料を持ってもらう。すぐに雪が出てきて、しばらくそのまま歩くが、傾斜
もきつくなり、アイゼンを装着、足が重くなったけど、登りやすくなった。

やがて樹林帯の中にいきなり岩場が現れた。アイゼンも着けてるし、ミスッた
ら下まで滑り落ちるような岩場だったので、リーダーがロープを出す判断をす
る。ハーネスを着けて支度して、まずリーダーが登り自分が下で確保。ぅわ、
めちゃ足あげて登ってんなーと思う。(身長差は20cmくらい)で、リーダー
が上に支点を作って確保、自分が登る。。。足あがらん。でもロープで確保さ
れてるので、えぃえぃと登って行く。そんなうちに、昨日の2人組が追いつい
てきた。彼等はロープなしで登ってきた。こちらがロープの回収作業をしてい
る間に追い越して行った。

そこからも急な傾斜を登り、やがて少し緩やかな場所に出た。ここがP2のテ
ント場かなと言いながら休憩。計画書では、1日目でここまで来ることになっ
ていたのだが。。。無理!2人組(親しみ?を込めて、「おっさんら」と呼
ぶ)も少し先で休憩してた。この辺りは雪がなかったので、一旦アイゼンを外
す。その先、P2と思われるピークを踏んで、下りに入った。再び上りに入り
雪が出てきたので、アイゼンを着ける。天気が良くて暑い。日焼止めも塗る。
大休止になった。ここで試しにデジカメの電源スイッチを入れてみたが、反応
はなかった(涙)。反対に、身体の調子はよくなってきたので、ここらで朝に
渡した食料を引き取る。おっさんらが先に行った。ここらからヘルメットも被
る。再び歩き始めると、おっさんらが前方の雪壁に取り付いてるのが見えた。

うわぁ、あんなとこ登るのかー。。。と思ったけど、歩いて行けば自分らもそ
こに至る。右手ごとピッケルのピックを雪に突き刺しながら登る。でも気温が
上がって雪が柔らかくなってきてて、足元が崩れやすい。最後は木に掴まりな
がら上りきると、日当たりのよい岩の前でおっさんらが靴を脱いで休憩してい
た。こちらも休憩して、先に出発。左のスラブを登るか、右に巻くか。。。右
に巻いた。

P3ぽい所で休憩を入れる。リーダーが雪をペットボトルに詰めて、消費した
分の水を補充してる。自分も真似する。ペットボトルの口を直接雪に突き刺す
と効率がいい。天気がいいからザックに入れておいてもすぐ水になる。斜面の
凍った嫌な草つきを登ってP4を過ぎ、岩場を通過し、左手に雪の斜面、目の
前に岩の上りが現れた。

厄介そうな岩場に、リーダーはロープもなしに取り組もうとしている。えー、
無理!って思って周りを見ると、左手の斜面に下りて行く踏み跡が。解説書の
要点をぐしゃぐしゃと書き込んだ地図を確認すると、P5は天上沢側を巻くと
あった。ここから巻きに入るのだろう。リーダーが先に斜面に下りる。もうだ
いぶ雪が緩んでいて、慎重に斜面を向いて、キックステップ&ピッケルでの確
保。下を見ればざぁっと斜面が落ちている。滑落厳禁の箇所だ。ときどき足を
置いたステップが崩れてひやりとする。

しばらくはバックステップのトラバースを続け、その先、踏み跡は、遥か上へ
と向かっている。おっさんらが後に追いついてきていて、途中から、ちょっと
疲れてきたリーダーに替わって先頭に行ってくれた。踏み込んでも崩れる斜面
にステップを一歩一歩蹴り込んで、やっと鞍部に登り切った。休憩ー。おっさ
んの一人がコーラのグミをくれた。懐かし。

そこから千丈沢側にP6を巻いて、P7を超えると北鎌のコル。リーダーの
中では今日の行動は北鎌のコルに決まっていたようだ。しかしP7の下りが悪
いと言っていたとおり、雪も腐ってきているし、慎重にも慎重にバックステッ
プで下っていたが、ちょっと傾斜が緩くなってサイドステップに切り替えよう
とした途端、足元が崩れて倒れた。滑落ーっと思ったけど、ピッケルがしっか
りと効いていたので、それに掴まり体勢を立て直す。あー、びっくりした。

北鎌のコルも一応テント場適地ということになってたけど、おっさんらが言っ
てたように、広くはなく、雪があるので、傾斜は緩くなってるけど平坦な場所
はない。しかしリーダーはもうそこと決めて荷を下ろした。おっさんらはまだ
先へ進んで行った。もう少し上がった所の平地まで行くんだろう。


とりあえず休憩したけど、リーダーがいつまで経っても動かない。スコップは
どっちみち共同で1本しか持ってきてないし、ぼちぼち整地してますよ、と、
立ち上がって整地を始める。リーダーも手伝いにきたけどなんかしんどそう。
疲れて気持ち悪くなったらしく、休んでてもらって、一人で整地した。テント
場の整地ってわりと好きなんだ。トレースの横に斜面を切って、最終的に片側
は自分の身長くらい斜面を削った。テントを張るとリーダー、ダウン。トイレ
作りから水用の雪集め、テントに入ってお茶の準備。。。我ながらよく働いた。

(タイム)

04:56千天出合発〜05:56P2取付〜07:20Rest〜 08:33P2の肩?〜
09:23P2?〜09:39Rest〜10:33Rest〜11:44Rest〜
12:21P4通過〜13:20P5巻き終わり〜14:07P6〜14:46北鎌のコル



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