◆ 明神岳東稜・2 ◆


= 3度目の正直 =




【明神岳東稜へ】

すっきりと晴れているわけではないが、降ってない。それだけでも嬉しい。
なにより、今日こそはひょうたん池から先へ進めるのだ!

テント場からは薮こぎのスタート。すぐに軍手が朝露でびっしょりになる。
足場の悪い斜面をだましだまし登って尾根に乗る。尾根上も薮、やぶ、ヤブ…
そして、顔の周りを飛ぶ虫。……不快。

ひと登りで「第一階段」と呼ばれる岩場に出る。そのまま登ろうとしたが、
うまく登れず、早々にロープを出す。ロープを着けると不思議にあっさりと
登れてしまうから不思議だ。出だしを越えれば問題なく、50mいっぱいで
ピッチを切る。振り返ると不快な薮尾根とは思えないきれいな尾根。


その先も出だしの岩場を越えるのにロープを出していき、傾斜の強い草付に
刻まれたステップを50mロープいっぱいに登り、一旦ロープを回収する。
ガスが上がってきて、辺りが白く包まれはじめる。その先も薮こぎしながら、
やがてハイマツ帯に出て、小ピークに上がると、ガスの切れ間に本峰が姿を
現し、思わず歓声が上がる。


目を凝らすと、東稜のハイライトのバットレスも確認できた。小ピークから
いったん鞍部に下る。取り付き部分が崩れていたため、ここからロープを
出し、もろい岩場を微妙なバランスで越える。この部分を過ぎるとフィック
スロープのあるトラバースと薮こぎの登りで、50mいっぱいでピッチを切る。

ロープをフィックスして、2番手が登っている間、すぐ上のバットレスを偵察
に行く。ガスの中にちょっとした迫力だった。2番手が登ってくると、3番手
の確保は任せ、バットレスを登るラインを観察に行く。バットレスの基部に
出てやっと薮から解放された。


いよいよバットレスの登り。ガイド本のとおり、残置支点に導かれるように向
かって右の凹角にルートを求めて登る。持参したカムも役に立った。凹角沿い
に登りたかったが、思いきれず、右のフェースに一部ルートを求めてロープが
屈曲する。でもロープ半分くらいの短いピッチだったので、それほどロープた
ぐりに苦労はしなかったが、2番手の人はその支点を回収しなければならず、
苦労していたようだった。

バットレスの上でロープを回収し、ひと登りで明神岳の山頂に出る。山頂標識
などもないがれきの山だった。




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