魔法都市日記
(72

2002年11月頃


KOGEPAN
マジックをするこげぱん
シルクハットからひよこと旗が出現!(750円)

先月返ってきた人間ドックの結果が予想外によく、それを見たらいっぺんに体調もよくなってしまった。涼しくなって夏ばてが解消したこともあるのだろうが、体というのは気持ちの持ちようでどうにでもなるようだ。

先月はあまり出かけなかった反動なのか、今月はあちこち行ってきた。食欲だけは秋でなくても年がら年中あるが、今月の日記を書いていると食べ物の話ばかりになりかけてしまい、大幅にカットした。


某月某日

2年ぶりに京都大学の11月祭(NF)に行ってきた。勤労感謝の日を挟んだ11月下旬に毎年開催されている。

ちょうどこの頃、京都は一年で最も観光客の多い季節になる。京都駅のタクシー乗り場でも100メートルくらいの列ができていた。しかしタクシーも常時100台くらいは待っているため、20分程度の待ち時間で乗り込めた。乗ったタクシーの運転手は、最近ではめずらしいくらい荒っぽい運転手であったが、路地のような細い道をすり抜けながら、うまい具合に渋滞にも引っ掛からず京大まで連れて行ってくれた。近頃のタクシーは渋滞で動かなくても、メーターだけは加算されるようになっているため、いくら時間がかかっても平気な顔をしている運転手もいる。そのことを思えば、こんなときは多少乱暴な運転でも許せてしまう。

マジックキャッスル大学に着くと、構内は現在工事中のようで、ずいぶん狭くなっていた。奇術部が公演する会場も変更になっているかも知れないと思ったが、例年どおりA号館の地下に「マジックキャッスル」ができていた。

京大の奇術部は昔からユニークで、独自の路線を歩んでいる。奇術部のある他の大学では、外部の大きな会場を借り、一回だけの公演である。京大は普通の教室を使い、一日に6公演、それを大学祭の期間、4日連続で行っている。1回の公演は約50分、その中でクロースアップとステージの両方を見せてもらえる。

座ったままでクロースアップとステージが見られるのは、他ではあまり類がないはずである。それで入場料は300円なのだから安い。チケットは厚紙に「Magic Castle 整理券」と印刷されただけのもので、これは会場の入り口で回収される。数年間、使いまわしているのだろう。会場の飾り付けも廊下の壁にトランプを丸く貼り付けたものや、紙テープで少々いろどりを添えた程度である。とにかく無駄な経費は極力抑えている。会場も教室を使用しているため、ステージは教壇をそのまま使っているのかと思うほど狭く、奥行きもない。

私が見たのはこの日の3回目か4回目であった。前の回が少し遅れているようで、予定時刻を過ぎても、まだ前回の公演が続いていた。演技に50分、入れ替え時間が10分しかないため、少しでもどこかでトラブルが出ると、徐々に遅れが累積されてしまう。一日6公演もあると、すべてが順調に予定どおり進行するとは思えない。

外で待っている観客を退屈させないために、部員がマジックを見せてくれたが、これを見ることができるのは入り口に近い数名の観客だけである。列を作っているとき、私は前から10番目くらいであったたが、私のいる場所からでも見にくい。マジックのときだけ列から抜け出し、側に行って見せてもらった。やっていたのは借りたお札を破って復活させるものだが、あのような場で演じるマジックにしてはずいぶん本格的なものであった。

ほどなくして前回の公演が終わり、観客の入れ替えが始まった。会場に入ると、例年どおり左右の壁に2カ所ずつクロースアップマジックを見せてもらえるテーブルがあった。中央にもあったので、ひとつの教室で5、6カ所、同時に演技が始まる。私は右側の後方にあるテーブル前に座った。

私の席ではカードやダイス、スポンジボールを使ったマジックを見せてもらえた。そこそこのレベルではあるが、技術的にはパームをしているときの手に、余分な緊張が入りすぎている。もう少し力が抜けるようにしたほうがよい。

ステージマジックでは、シンブルやタバコ、四つ玉の演技があったあと、トリをとったのは、WEB SITE「二重落ちの暇つぶし」の伊藤仁さんであった。現在3回生で、今年度の会長をつとめておられたようだ。一昨年、1回生のときはクロースアップを見せてもらい、今回初めてステージマジックを見せてもらったが、成長ぶりにはただただ驚くしかない。伊藤さんの「日記」を読んでいると、年がら年中「青春の苦悩」に悶絶し、身もだえしながら生きている姿を思い浮かべてしまうが、実際、そのような経験が人間的な幅を広げたということもあるはずである。

見せていただいたマジックは「パラソルのプロダクション」であった。あの狭いステージに、収容人員6000名の東京フォーラムで演じてもよいほどのパラソルを出現させていた。大小取り混ぜると、100本くらい出たように見えたが、実際はどのくらいなのだろう。

傘を取り出す芸は、奇術が和妻と呼ばれていた江戸時代からあったが、昔は箱や壺などからまず”のべ”、つまり細長い布を取りだし、その”のべ”から傘を出現させるという2段階になっていた。

それを今から30年ほど前に、日本のプロマジシャン、島田晴夫氏が独自の方法でパラソルを出現させる演技を構築し、海外でも大きな成功をおさめた。島田晴夫氏の方法は、何かの陰からパラソルを出現させるのではなく、手に持っているシルクが突然パラソルに変化するという見せ方が中心になっている。少し小さいパラソルでは、空の手からトランプを取り出すときのように、何もないところから突然出現させる方法も使っている。伊藤さんのパラソルも、この島田氏の流れをくむものであった。

演技のオープニングは、「ミッキーマウス・マーチ」の曲にのって始まった。この曲と演者の雰囲気もよくあっているため、見ていても軽快で楽しい。観客も出現のあざやかさと、パラソルの量に驚いていた。ただあの狭い場所では、出現させたパラソルをすべて並べることはできない。一部は台にぶら下げていたが、私が見ていた右端の席からでは、カーテンの陰になり、つり下げられたパラソルが見えない。あの狭い舞台では少々気の毒であった。

技術的には本人はまだ不満な面もあると思うが、アマチュアらしい清潔感があり、一生懸命やっているその姿に、感動した観客も少なくなかったはずである。私の周りに座っていた人たちもみんな心底驚いていた。それになんと言っても特筆すべきことは、笑顔が素敵なことである。プロマジシャンのマーカテンドー氏も甘いマスクだが、それにもう少し知的でシャイな部分が加わり、とてもよい笑顔になっている。

この種のマジックは準備だけでも時間を取られる。おまけに各パートごとの練習はできても、本番と同じように、完全にセットをして、全体を通しての練習は難しい。そのため、これを生涯の芸とするのは大変だろうが、何とか維持できる程度にはこれからも練習を続けて頂きたいと思っている。

今回のマジックキャッスルに関して、ひとつ苦言を呈しておく。300円で楽しませてもらったのに、文句を言うつもりなど全然ないのだが、クロースアップマジックを見せるときの口の利き方はもう少し何とかならないか?以前はこのようなことは感じなかったのに、今回は気になってしまった。

観客に対して敬語で喋れとは言わないが、若い男性に話しかけたり、何かを手伝ってもらったりするときは、「そこのかっこいいお兄さん」、少し年配の方であれば「そこのお母さん(お父さん)」と呼びかけていた。しかし観客に向かってこんな言い方はない。本人はおそらくこれが失礼な言い方だとはまったく気がついていないのだろう。

30代後半以上の女性であれば確かに「お母さん」である可能性は50%を越えているかもしれないが、独身の女性だっていくらでもいる。50代、60代であっても、「お母さん」ではない女性も少なくない。飲み屋のママじゃないんだから、年配の女性であれば何でもかんでも「お母さん」という言い方はやめたほうがいい。

クロースアップマジックは同時に5、6カ所で演じられているため、私が見ていないところではどうなのか知らないが、少なくとも私が席では先のセリフを連発していた。

またこれはマジックキャッスルではないが、外でやっている屋台でも同じセリフを何度か聞いた。そしてこれが決して杞憂ではない場面も目撃した。

焼きそばを買うために待っていた中年の女性に向かって、男子学生が「お母さん、もうちょっと待ってね」と言った瞬間、「だれがオカンやねん。あんたみたいなぶっさいくな息子を持った覚えはないわ」と怒って、このおばさんは去っていった。現実にこんな人もいるのだから気を付けたほうがいい。それといくらお年寄りであっても、「おばあちゃん、おじいちゃん」という言い方も厳禁である。適当な言葉が見つからないのであれば、すべて「お客様」で通してもおかしくないだろう。

最近は教授に対してもタメ口で話しかける学生もいるそうだから、本人もどう喋ればよいのかわからないのかも知れない。マジック以上に、このあたりの練習もしておかないと、場末の芸人のようになってしまう。

もうひとつ、マジックキャッスルに使われていた教室の机は、普段の授業では三人掛けになっているはずである。そのため観客も三人ずつ座っていたのだが、クロースアップマジックが始まってしばらくしてから、突然もう一人、端から割り込んできた。詰めたら座れないことはないのだが、演技の最中に入ってきたため、先に座っていた人たちはそちらに視線が移り、席をずらせているうちに、マジシャンが何をやっていたのかわからなくなってしまった。

立ち見席が出るのは仕方がないとしても、いったん公演が始まったら、席を詰めるようなことはさせないで欲しい。今回は、立っていた人が強引に割り込んできただけなのかも知れないが、三人掛けということをはっきりと明記するなり、放送で案内をすれば済むことである。とにかく演技中にゴソゴソと動くのだけは勘弁してほしい。

某月某日

IBM大阪リングの例会に、埼玉の田代茂氏が高尾晃市氏をお連れくださった。

高尾晃市氏
高尾晃市氏のコイン形名刺

高尾さんは今年の9月、東京の三越劇場で開催された第44回テンヨーマジックフェスティバルに出演されていた。また、昨年ナポレオンズの司会で半年間続いたテレビ番組「マジック王国」の全出場者の中で、人気投票4位にも入っていた。あの番組は私も見たが、高尾さんのことはそれまでまったく知らなかったのだが、軽やかであかぬけしたセンスで繰り広げられるマジックは強く印象に残っている。

また高尾さんはTBS系列で昼間やっていた帯ドラマ「天までとどけ」に91年から99年まで出演されていたそうである。最近ではサントリーの清涼飲料水「ダカラ」、これは小便小僧が出てくる例のCMであるが、あの声を担当されたり、モーニング娘とホンダのCMにも出演されている。これからもわかるように、お仕事の範囲が広く、役者、声優、マジシャン他、その他の分野でもご活躍である。

マジックの分野しか知らない人にはあまり知られていなかったかも知れない。しかし長年役者として培った演技力がベースになっているため、どんなマジックを見せていただいてもとても楽しい。

高尾さんご自身、「マジックの仕事をしているときは、マジシャンの役を演じている役者としてマジシャンになっている」と仰っていた。

昨今、マジックにも演技力が必要であるとよく聞くが、中途半端な演技を行うと、小学校の学芸会レベルになってしまい、見ている側が恥ずかしくなるものも少なくない。演技なのかそれが地なのかわからないくらい自然に振る舞えるようになるには、やはり実際に役者として舞台に立ったり、基礎訓練を受ける必要があるのだろう。

IBMの例会ではクロースアップマジックを2、3見せて頂いたが、実際の仕事はイリュージョンが中心だそうである。何を演じても大変軽やかに演じておられた。クロースアップマジックではあまり難しいことはしなくても、演技力と話術で引っ張って行けるだけの力がある。しかしあまりにも演技力に頼りすぎてしまうと、マジックそのものはつまらなくなることもあるので、そちらの方面の研鑽(けんさん)も怠らないで頂きたい。

いつも厳しい批評をされる松田道弘さんまでが高尾さんの演技や話術を高く評価されていた。このようなことは10年に一度あるかないかのことである。IBMのメンバーが特に感心したのは、マニアを相手にしても、ごく普通に、一般の観客を相手に見せているときと同じように演じられる点である。これは簡単そうで、実際には難しい。

見せて頂いたマジックで松田さんが絶賛しておられたのは「エースオープナー」である。適当に四つにカットしたデックのトップからエースが出現する。基本的な原理は昔からあるが、パケットの置き方と、観客に示すまでの時間の遅らせ方が自然かつ巧妙なため、観客は矛盾点があるのに気がつかない。ほんとうにちょっとしたことではあるが、これだけで観客に感づかれる確率がオリジナルよりずっと減っている。

浮かぶ地球儀

田代さんは新ネタや、奇妙な玩具をお持ちいただき、楽しませてもらった。上の画像は浮かぶ地球儀。上下左右どこにも支えがないのに地球儀が浮かんでいる。

例会が終わってから、大阪駅構内にあるホテルグランヴィア19階のパブレストランab(アブ)に行く。ここで田代さん、高尾さん他、梅田、神戸方面に帰るメンバー10名ほどで2次会をおこなった。

ここでは六人部君がむちゃくちゃ不思議な「コイン・スルー・ザ・テーブル」を見せてくれた。たった1枚のコインしかか使わないのに、本当にテーブルを溶けるように通り抜けてしまった。

アブのオムライス

この店は食事もできる。オリジナルとして、変わったオムライスがあった。たまごで巻いてあるのではなく、上に半熟のたまごが乗っていて、ご飯の表面は春雨を揚げたようなもので包まれている。これをぐちゃぐちゃにして食べるのだが、まぜてしまえばチャーハンとしか思えない。オリジナル料理としてはおもしろいが、これにオムライスという名前を付けるのはどんなものだろう。私のような、昔ながらのオーソドックスなオムライスが好きなものには不満が残る。

高尾晃市さんのサイト Koichi Takao's Line

某月某日

東京での授業を終えた後、日曜の午後3時ごろからTDL(東京ディズニーランド)に行った。

まだ11月中旬ではあるが、TDLの飾り付けはすでにクリスマス仕様になっているそうだ。デパートや商店街なども、クリスマスの飾り付けは年々早くなっている。昔は12月に入ってからいっせいに模様替えをしていたはずなのに、最近はずいぶん早い。世の中が不景気なため、盛り上がるイベントがあるのなら何でも利用したいということなのだろう。

TDLができた20年くらい前までは、動物園や遊園地は、12月といえば決まって閑古鳥が鳴いていた。どこもガラ空きであったのに、TDLが1983年から始めた「クリスマス・ファンタジー」はそれまでの常識をくつがえしてしまった。クリスマスシーズン専用のパレードや催しをすることで、今では年間を通しても12月が最も集客力のある月になっている。

私はこれまでクリスマス仕様のTDLを生では見たことがないため、今回は楽しみであった。午後遅くから行ったのも、アトラクションに参加することより、クリスマスの飾り付けや雰囲気を楽しむことが目的であったからである。

ワールドバザールのツリー

舞浜駅に着き、ゲートをくぐるとワールドバザールの中心には大きなクリスマスツリーが輝いていた。それを見ているだけで、いっぺんに気分は高まってきた。11月というのをすっかり忘れ、すでに12月24日、クリスマスの中にどっぷり浸かっている気分になり、何でも買ってしまいそうになる。これがディズニーの魔法か?

私はTDLの中がいまだによくわかっていない。今回も行き先は子供達にまかせておいたのだが、ゲートを入ってすぐのところにあるマジックショップだけは先に寄っていくことにした。


マジックショップのウィンドーにいるミッキー

一般的なマジックショップに行くと、客が一人か二人、店によってはいつ行っても誰もいない店もあるのに、ここだけはTDLの他の店同様、大変な混雑ぶりであった。

このショップはテンヨーが経営をしている。同じテンヨー系列であっても、デパートにあるマジックショップと比べて、桁違いの売り上げだそうである。確かにこの人の数を見ているとそれも納得できる。一日の来客数など、デパートにあるマジックショップと比べたら数百倍、売り上げも二桁くらいは違っているかも知れない。

ここで販売しているものはデパートにあるテンヨーの売り場でも大抵手にはいるが、一部、ここでしか買えないものがある。今回私は「ダンシングケーン」、マニアの間では通称「ダンケン」と呼ばれている踊るステッキが欲しかった。これは長さ1メートルくらいの杖が体の前で浮かび、飛び回る。アマチュアの発表会では必ずといってよいほど演じられる、ステージマジックの代表的なものである。

最近マジックの専門店で販売されている「ダンケン」はライトが組み込まれていて、光ながら飛び回るなど、ずいぶん派手になっている。そのようなものは1万円を超えるが、ごく普通のものでもショップで購入すれば5000円以上はするはずである。TDLのは1000円ちょっとで買える。

30年くらい前、私はジョニー広瀬氏が手作りしたダンケンをゆずってもらった。当時は軽くて丈夫な素材が限られていたのか、グラスファイバー製の釣竿をつぶして作ってもらった覚えがある。重さや長さなどを考慮すると、当時はこれが最もダンケンには適していたようだ。釣竿から作るので、そこそこの金額になっていたはずである。そのことを思えば、TDLで売っているものは安い。

ただこのマジックは買ってすぐにできるようなものではなく、かなり練習が必要なのと、実際に上手な人の演技を見ないことには練習もできないだろう。一般の人が買って帰っても実演不可能なマジックとして、「チャイナリング」といい勝負かも知れない。どちらも大変すぐれたマジックではあるが、買った人のうち、99%の人はだまされたと思うかも知れない。売り場の人があざやかにやっているのを見ても、あれは違う道具を使っていると思う人も少なくないようだが、実際にはまったく同じもので演じている。

ダンケンには微妙なバランスがある。それを確かめるために売り場で実際に試してみたかったが、タネの部分はしっかりと紙で固定されているため、できなかった。さらにステッキの先にミッキーがついているので、私が使うには可愛すぎる。まあ練習するにはこれで十分だろうと思い、購入することにした。

ホテルの部屋に戻ってから試してみると、以前使っていたものと比べれば少し軽いのと、長さも少し短いため使いにくい。しかしこれは慣れの問題だけだと思うので、しばらく振っているうちに慣れてくるはずである。

余談になるが、これをホテルの部屋で練習した後、隅に立てかけておいたら、帰り際、鞄に入れるのを忘れてしまった。スーツケースの対角線に置けば入る大きさなので、最後の最後に入れるつもりにしていたら、すっかり忘れていた。

ダンケンの先帰ってから気がつき、すぐにホテルに連絡を入れた。説明するとき、あまり細かく言うとタネがばれそうで、何と言おうか言葉に詰まったが、1メートルほどの黒い棒(実際は約83cm)と言っただけで気づいてくれた。このホテルはゴミ箱に捨てたものでも、部屋ごとに1週間保管してくれている。それを知っていたので、捨てられている心配はなかったが、奇妙な棒を見て、何に使うのか怪しまれないか、不安であった。幸いにも先にミッキーがついているので、子供のおみやげと思ってくれるだろう。

すぐに発送してくれたようで、次の日には届いた。わずか1000円程度の物なのに、空気の入った梱包用のシートで何重にもグルグル巻きにしたうえ、丁重に包まれていた。お年寄りで、何万もする高価なステッキを忘れる方がたまにある。それと同じ梱包にしてもらったようだ。

マジックショップではこのダンケン以外に「お化けハンカチ」と、カードマジックを解説した小冊子があったのでそれも購入してきた。

マジックショップを出た後は、どこに行くか決めていなかったが、食事だけは前日から午後7時に予約を入れておいた。まだ3時間ほどあるので、それまでに行けそうなところを適当に連れて行ってもらうことにした。

スターツアーズ

まず最初に行ったのが「スターツアーズ」。30分程並んだが、今ではこのくらいの時間待ちはどうってこともなくなっている。

ここは12人くらい乗れる小型の宇宙船スタースピーダー3000で宇宙ツアーに行くという設定になっている。快適な旅行のはずが、新米のパイロットのせいで、死ぬかと思うような乱暴な運転でひどい目にあう。

実際に動いているのは前後左右、上下とも数十センチくらいのものなのだろうが、前面に見えるスクリーンと連動しているため、体感的には本当に何メートルも急降下、急旋回をしているように感じる。

本物のロケットで大気圏を抜け出すとき、宇宙飛行士は自分の体重の数倍のG(重力加速度)を感じる。物理で出てくるF=maという運動方程式によると、力は質量や加速度に比例することを示しているが、これを身をもって体験できる。ジェットコースターよりも急激に運動の向きが変わるため、質量の大きい人、つまり体重の重い人ほど衝撃も大きい。私の半分くらいしかない子供達は平気な顔で乗っているが、私は振り回されてしまう。とにかくかなりの横揺れがあるので、腰の悪い人は避けたほうがよい。

ロジャーラビットのカー・トゥーン・スピン

ここを出ると、次は「ロジャーラビットのカー・トゥーン・スピン」に向かった。スピンという名前がついているくらいだから、今度は目が回るような乗り物かとビビったが、小さい子供用の自動車と聞いて少しホッとした。

カー・トゥーン・スピン

ここではロジャーラビットの妻、ジェシカが悪いイタチにさらわれ、それを2、3人乗りのイエローキャブに乗って、トゥーンタウンの中をロジャーと一緒に助けに行くという設定になっている。

悪党がゴムを溶かす液体を流したため、タイヤが溶けてしまい、ハンドルの自由が効かない。イエローキャブに乗ると、コースは決まっていて勝手に進んで行くが、ハンドルの切り方で360度スピンしたり、逆にスピンを押さえられたりもする。コースの途中、車の回転の仕方や止まる位置でさまざまな場面に出くわす。これは乗った車によって異なっている。このあたりのちょっとしたことで、リピーターでも何度も楽しめるようにしてあるところがうまい。やはり観客を驚かせるためには意外性が不可欠なのだろう。

何度も来ている人たちは、さらに細かい部分までよく知っている。自動車のタイヤの跡がミッキーのシルエットになっているとか、一度や二度くらいでは気づかないような細かい部分を発見しては楽しんでいる。

小さい子供向きの乗り物だから待ち時間はほとんどないのかと思っていたら、これでも土曜日曜は1時間近い待ち時間があるのだそうだ。私が行ったときは団体客が帰った後の時間帯であったからか、20分くらいで乗れた。

列を作って待っているときに見える展示物も凝っていて十分楽しめる。ある程度英語が読めると、看板にちょっとしたジョークが書いてあったり、なぞなぞがあったりするため時間待ちも気にならない。乗り物そのものは対象年齢4歳以上となっていたはずだから、目が回ってフラフラになるというほどのこともない。

無事にジェシカを助け出し、トゥーンタウンに出ると、辺りすっかり暗くなり、シンデレラ城がくっきりと夜空に浮かび上がっていた。お腹も空いてきたが、食事までもう少し時間があるので、近くの売店で「骨付きソーセージ」を買って、腹の虫を抑えておいた。

夜景を楽しみながら会場を半周ほどしている途中、プーさんの店や、ウエスタンランドにある店「トレーディングポスト」に寄る。ここは西部開拓時代、アメリカ先住民族と白人が交易をした場所で、私の興味を引く物がいろいろとあった。

例えば、昔のアメリカ先住民族が天気を知るのに使っていた「天気石"Weather Rock"」という奇妙な物がある。これは下の画像のように、3本の棒を組んだものに、革ひもで石が吊されている。これを家の外に出しておくと天気がわかるのだそうだ。湿度や気温によって、色が変化する特殊な石なのかと思ったが、台に書いてある説明によると次のようになっていた。

Genuin Old Indian Weather Rock

1.石が濡れているときは雨が降っている。
2.石が白くなっているときは雪が降っている。
3.石が激しく揺れているときは強風が吹いている。
4.石が見えにくいときは霧が出ている。
5.石の下にくっきりと影ができているときは日差しが強い。
6.触ってみて、石が冷たいときは寒い日である。
7.触ってみて、石が熱くなっているときは暑い日である。

ウーン、確かに当たっているというか、そのままというか、これならはずれようもない。

あと、この店ではバックスキンの革のケースに入ったトランプも買った。ケースはMade in U.S.A.となっているが、トランプはMade in Chinaとなっている。アメリカ先住民族は中国とも交易があるのか?

トランプ

トランプを触ってみると、普通にトップカードを押し出しただけで2枚がくっついて出てきた。粗面液でも塗ってあるのかと思うほど、滑りは悪い。カードマジックの基本技法D.L.が苦手な人でも、これならゲットレディなしで、完璧なD.L.ができるかも知れない。

というのは冗談だから本気にして買わないように。いずれにしても滑りが悪いことは確かである。

スイスファミリー・ツリーハウス

TDLではいたるところで行列ができているが、一年に一度しか行列のできない場所があるのだそうだ。どこかわかるだろうか?正解は「スイスファミリー・ツリーハウス」である。

ここは『トム・ソーヤの冒険』に出てくるハックルベリー・フィンが住んでいそうな木の上の家である。階段を使って上まで登ると高さ約13メートル、ここからはTDLのほぼ全景が見渡せる。

年に一度だけ、ここが人で埋まるのは、元日の早朝なのだそうだ。この上から初日の出を見るため、大勢の人が押しかけてくる。元日は午前2時にゲートが開くそうなので、それから日の出まで、ずっとここで立ったまま頑張ることになるのだろうが、よほどの重装備をしてこないことには、寒さで参ってしまうだろう。また上は狭いので、実際に一番上で日の出が見られるのは2、30人程度ではないだろうか。ゲートが開く同時に猛ダッシュしてここに向かってくる人が何人もいるはずだから、無事に一番上までたどり着くのは、富士山の山頂で初日の出を見るのと大差ないくらい難しいかも知れない。

この家は、実際には1960年に公開されたディズニー映画「スイスファミリー・ロビンソン」に出てきたものを再現している。スイスに住んでいた一家が海で漂流し、無人島に住み着く話だそうである。1960年なら私が小学生のときなので、記憶に残っていてもよさそうなものだが、まったく覚えていない。公開当時のタイトルは『南海漂流』であったそうだが、これもよく覚えていない。

この木の上には昼間の明るいうちに登ると、家の造りもよく見えて感激するそうだ。私が登ったときはすでに真っ暗であったため、足元を気にしながら登るのが精一杯で、部屋をゆっくりながめている余裕はなかった。

木の上にある家というと、一部屋だけと思うかも知れないが、巨大な木なので、途中にも部屋があり、集合住宅とでも言える造りになっている。どの部屋も敷物や飾り、家具まである。実際に住めるほどよくできている。ここまで豪勢に作ってしまうと台風のときには困るのではないかと心配するが、南洋は台風が発生しても、まだ小さいので、吹き飛ばされることはないのだろうか。

『トム・ソーヤの冒険』にもあるように、男の子は小さいとき、秘密の隠れ家のようなものが好きである。私は木の上に家を作ったことはないが、小学生の頃、家の前の空き地にゴザを集めて小屋を造り、近所の友人数名と一緒にキャンプもどきのことをした。40年くらい前のことだから、今ほど物騒な時代ではなかった。場所も家の真ん前だから、子供だけで寝ても大丈夫だと思ったが親は許してくれなかった。怪しい人が来て、夜中にさらわれるかも知れないと、本気で心配していたようだ。

仕方なく、うちの狭い庭に作り直し、そこで1泊したことを覚えている。外で寝ているというだけで、みんな妙に興奮して、夜遅くまで寝付けなかった。

また、やはり近所の空き地には直径1メートルほどもある、巨大な糸巻きのようなものが山積みされていた。これは電線が巻いてあったものだと思うのだが、それが無造作に数百個積み上げてあった。よく見ると、糸巻きと糸巻きの間に、すき間ができている。中をのぞくと、子供が数名入れるほどの空間ができている。適当に積み重ねただけなのに、巧まずして小部屋のようなものができてしまったらしい。

この山は糸巻きという特殊な形のせいか、お互いが妙にしっかりとからみ合い、意外なくらい安定していた。山の上で動き回っても崩れ落ちる気配はなかった。それで中に入ってみたのだが、内側から見ても、これならくずれることはないと思えるくらいしっかりしていた。それからはここが私たちの秘密の隠れ家になった。

一週間ほど、仲間以外の誰にも知れなかったのだが、ここから出てくるところを偶然母に見られてしまった。母は糸巻きの下から、私に続いてぞろぞろと数名、近所の子供が出てきたのを見て悲鳴をあげていた。いくら安定しているとは言え、少しでも下の糸巻きが動けば上からくずれて落ちてくる。ひとつだけでも20キロくらいはあるため、それが上から数十個落ちてきたら、中にいる者は全員死んでしまうのは間違いない。親が悲鳴をあげるのはわかる。それからはその場所は柵が作られ、出入り禁止になってしまった。

木の上に登っていると、そんな昔の記憶がよみがえってきた。

ブルーバイユー・レストラン

時刻も午後7時前になり、レストランの予約時間が近づいてきた。TDLには何軒のレストランがあるのか正確なところは知らないが、数日前からでも電話予約できるのは「ブルーバイユー・レストラン」「イーストサイド・カフェ」「れすとらん北斎」の3軒だけである。ブルーバイユーは前回も行ったので、今度は違うところに行ってみたかったが、前日に電話をしてみるすでにどこも一杯で、予約が取れるのはここしかなかった。並ぶつもりならどこでもよいのだが、食事をするためにレストランの入り口で、30分も1時間も待たされるのだけは我慢できない。

ブルーバイユーというのは「青い入り江」という意味だが、その名前のとおり、天井には星がきらめき、年中ホタルが飛び交っている。料理はニューオリンズのクレオール料理がベースになっているそうである。純然たるアメリカ料理……、そんなものがあるのかどうか定かではないが、植民地風フランス料理ということらしい。

メニューを見るとすでにクリスマスディナーというセットができていた。いくら魔法に掛かっているとはいえ、本当のクリスマスまでにはまだひと月以上ある。今からクリスマスディナーは早すぎると思ったが、メニューで見る限りおいしそうなので、注文してみた。

メインディッシュはステーキの下に、黒い米に味を付けたものが敷いてある。これまで食べたことのないものであった。

この店は普段でも比較的入りやすいので、もしレストランをどうするかで困ったら、ここを予約しておくとよいかも知れない。

食事が8時過ぎに終わり、シンデレラ城の前でパレードをほんの少しだけ見ることができた。そのすぐあと、「ファンタジー・イン・ザ・スカイ」、つまり花火が始まった。

花火

オーケストラが演奏するイッツ・ア・スモールワールドやミッキー・マウス・マーチなどの曲にのって、約300発の花火が夜空いっぱいに咲き乱れる。時間にして5分程度のものかも知れないが、夏に海辺で見る花火とは趣が違い、幻想的な世界を作り出していた。

ミクロアドベンチャー

このあと、3Dの眼鏡を掛けて見る映画、「ミクロアドベンチャー」に行く。ディズニー映画『ミクロキッズ』や『ジャイアントベイビー』でお馴染みの発明家ウェイン・ザリンスキー博士が今年の発明家大賞に選ばれ、その授賞式がイマジネーション研究所で開催されるという設定になっている。

詳しいことを書いてしまうとネタばれになり、実際に見たときの楽しみが減るので書かないが、3Dの映像以外にも、ネズミや犬を「体感」できるとだけ言っておこう。ここまでできるのなら匂いのする映画なんて簡単なものだと思うが、ゴミ箱のシーンでゴミの匂いがしてきたら映画どころではないかも知れない。私は「体感」できる部分の仕掛けに興味があり、どうなっているのかしばらく考えてみたが、よくわからなかった。子供達はすでに原理を知っていたため教えてもらったら、予想に反してずいぶんシンプルなものであった。

ネズミや犬を感じているうちに、すでに9時を過ぎていた。この日は10時で終わりとなっていたので、もう乗り物関係は無理だろうと思ったが、ファストパスなどのチケットを持っている人のためにも、10時ギリギリまで受け付けもやっているようだ。実際には11時ごろまで動いているらしい。

スプラッシュマウンテン

私はもう十分堪能したが、子供達が最後にもうひとつだけでも行きたいというので、滝から落ちるスプラッシュマウンテンに向かった。こんな時間だから待ち時間はゼロかと思ったが、これは人気があるアトラクションのため、この時間でもまだ20分程並んだ。日曜の昼間などは2時間近く待つこともあるそうだから、それを思えばこれくらないなら待ち時間はないのと同じである。

上から落ちる瞬間、昼間と比べると暗くて下が見えないため、私はあまり恐怖心がなかったのだが、見えないほうが恐いという人もいる。この時期に、頭からたっぷり水をかぶると風邪をひくかと心配したが、たいしたこともなく着水できた。USJのジュラシックパークでも、このスプラッシュマウンテンでも、はじめて20数メートルの上から真下に落ちるときは、衝撃がどの程度のものなのか予測できない。そのため恐怖心があったが、数回経験するとそれもわかってくる。私もこれで3、4回経験したので、だいぶ余裕が出てきた。今度乗るときは落下の瞬間、両手を上にあげて、ばんざいをする例のポーズを取ってみよう。

某月某日

TDLに行った翌日、代官山にも行って来た。ここは雑誌やテレビなどではよく取りあげられているが、関西に住んでいるとどのようなところなのかよくわからない。

東横線の代官山で降りて辺りを見渡すと、ずいぶん落書きの多い街というのが第一印象である。駅周辺は電柱、看板、ビルの壁にまで、スプレーで落書きされている。お洒落な街というイメージがあっただけに、その落差に驚く。駅から5分ほど歩いて、広い通りに出ると落書きもなくなり、雑誌などで見かける洒落た店が現れ始めた。

昼食はまだだったので、これからこの近辺をうろつくにはお腹が空いてきた。とりあえず、ヒルサイドパントリー代官山という店に入ってみる。ここは焼きたてのパンがあり、店の中でも食べられる。輸入食材も数多くそろっていて、オリーブオイルなど20数種類、パンにつけて試してみることもできる。気に入ったものを購入できるので、これはありがたい。

ガラス越しに見える調理場では、一日中パンが焼かれている。パンはなんといっても焼きたてがベストなので、焼き上がったばかりのものが食べられるのはうれしい。

このあと別の店でケーキを食べる予定なので、ここは軽くパンとコーヒーだけにして出る。

途中、一年中クリスマス用品を販売している店や、実用的で洒落た海外の食器などを扱っている店などがあり、一軒ずつ覗いていたらすぐに時間が過ぎてしまった。

今回代官山に行った一番の目的は「イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ」という洋菓子屋のケーキである。

以前、ここのオーナーである弓田亨氏のケーキ作りに関しての哲学にふれる機会があり、ぜひ一度食べてみたいと思っていた。弓田氏は「謎と迷信のないフランス菓子」をテーマに、数多くの過激な発言がある。

とにかくこれまで料理人は、弟子に何かを教えるとき、ただ見て覚えろとしか言わなかった。教えようにも教えられない部分もあるのは事実であるが、大半は教えられるものである。それをしなかったのは、要するに教え方の方法論に関して、まったく無頓着であったからだと私は思っている。きちんと最初に教えてあげれば済むことを、ことさら秘密にしたり、また自分でも計量化、計数化したことがないため、伝えようがないというのが実際のところなのだろう。勘に頼るより、温度計、ストップウォッチ、精密な秤(はかり)を駆使し、マニュアル化できる部分は徹底してやってみないことには先に進めない。勘やセンスはそれから先の部分である。

このあたりの指導方法は、私が勉強を教えるときとまったく同じであるため、弓田氏の言いたいことはよくわかる。とにかく指導者が方法論を持っていないと、「根性」を生徒に押しつけてしまう。勿論、習う側にもガッツはいるが、それは生徒側の問題であり、指導者の側の怠慢を生徒の根性で補おうとするのは本末転倒である。弓田氏のことを書き出すと止まらなくなりそうなので、いずれどこかであらためて書いてみたい。

イル・プルーの店でいただいたのはシブースト・ポム(リンゴのシブースト)とオレンジのショートケーキであった。

まず最初にオレンジのショートケーキを一口食べたが、それだけで弓田氏が常日頃から言っていることが真実であり、またそれを実践されていることがわかった。とにかく素材がすべて生きている。これはケーキ類だけでなく、クッキーも同様である。素材を厳選し、それがベストの状態で保たれるように管理されている。

リンゴのシブーストは上の面に砂糖をかけ、焼ごてでをあてキャラメル状にしてある。砂糖が焦げて飴になり、日本でお馴染みの、べっ甲飴のようなパリパリとした食感になっている。表面は飴でコーティングされているが、下の部分はクリームで柔らかいため、これを食べるのは難しい。ナイフで切るにしても、表面に力を入れると下がつぶれてクリームがはみ出てしまう。

どうやってもきれいに食べられそうにない。私はわからないことはすぐに質問することにしているので、店の人にどうやったらうまく食べられるのかたずねてみた。すると、ナイフでキャラメル状の表面をポンと軽く叩くとキャラメルの層が簡単に砕け、大きくひびが入から、そこから下を軽く切ればよいと教えてもらえた。確かにこうすれば食べやすい。言われてみればどうってこともないのだが、ベッコウのようにつややかなキャラメルを叩いて割るとい発想が思い浮かばなかった。

また今回は食べなかったが、ミルフイユもパイの生地と柔らかいクリームでできているため、普通は大変食べにくい。知り合いの若い女性も、ミルフイユは好きなのだがお見合いの席では絶対に食べられないと言っていた。イル・プルーでは、これも食べやすいように専用のナイフで3つに切って、手でつまんで食べられるようにして出してもらえるそうである。このようなことでも一事が万事であり、常にどうすればベストの状態で食べてもらえるかという心配りがうかがえる。

さすがに徹底した合理主義の弓田氏の影響なのか、スタッフも、何をたずねても的確な答えが返ってくる。これは特筆すべきことである。東京で店の人に何かを質問すると、大抵しどろもどろになり、まともな答が返ってくることはめったにない。質問をされるということを何か糾弾されているとでも勘違いしているのだろうか。それか、ただ単に知識がないため、あたふたしているだけなのだろうか。

弓田氏はすぐそばにある教室で、毎日プロのケーキ職人に指導しておられるが、店にもときどき戻ってこられる。そのときご挨拶していただいた印象は、意外なくらい腰が低く、やさしそうな方であった。

イル・プルーのケーキは、店に行かないことには食べられないが、クッキー類は地方発送もしてもらえる。このクッキーにしても、一口食べただけで、どうしてこんなに味や香りが違うのか、驚嘆するしかない。アーモンドにしても、素材が生きている。

イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ
〒150−0033
東京都渋谷区猿楽町17−16  代官山フォーラム2F     
Tel  03−3476−5211     Fax  03−3476−5212
営業時間 午前11:30 〜 午後7:30    定休日 毎週火曜日
※祝日の場合は休まず営業。 翌日水曜日が振替休日。


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