My Favorite Tricks

Fred Kaps 特集11

Cups and Balls

cups and balls
1997/12/8

最初に

フレッド・カップスの「カップ・アンド・ボール」(Cups and Balls)です。

カップアンドボールの手順と言えば、何と言っても"VERNON BOOK"に載っているダイ・ヴァーノンのルーティンがあまりにも有名です。いやになるほど完成されており、これ以上、付け足すものなど何もありません。特殊なテーブルも必要とせず、どこででも演じられるようにしたのが特に素晴らしいところです。

カップスの手順にも、ヴァーノンの手順が全体の8割ほど入っています。しかし、カップスの場合、使っているボールが一般的なカップアンドボールで使われるボールではなく、スポンジボールを使っているため、現象はヴァーノンと同じであっても、途中のハンドリングが随分と異なっています。スポンジボール特有のテクニックが使えるので、ヴァーノンの原案を知っている人でも、とても不思議に見えます。

現象

7段くらいに分けることが出来ます。各段を詳細に説明するのは長くなりますのでカットしますが、まず最初、ボールが出てくるところでマニアは驚きます。

第1段

3つの空のカップをテーブルに一列に並べて行きます。カップを持ち上げると、それぞのカップの下から赤いスポンジのボールが現れます。

ビデオでは、ここでバックに音楽が流れます。後は音楽にあわせて無言で演じています。

2段目以降は、それぞれのカップの下に1個ずつボールを入れたのに、他のカップの下に移動したり、手の中で消えたボールがカップから出現したりという、一般的なカップアンドボール(というより、ヴァーノンの手順)と同じです。
最後は、各カップの下から本物のレモンが4個現れます。

コメント

カップスのこの手順もPCAM東京大会のときに見せてもらいました。そのときは音楽を流さずにやっていましたが、この手順は音楽に合わせて静かに演じても魅力的です。

ただ、このカップアンドボールはカップスのマジックの中では少し異質です。おそらく、カップスはこれを一般の観客の前では演じていないのではないかと私は想像しています。見せるのは、マジックのコンベンションや、マニアとプライベートに会っているときに見せるくらいではないでしょうか。

理由は、一般の人に見せるにはこの手順は少し長すぎます。いくらテクニックを使い分けても、カップアンドボールというのは、ボールの移動現象にすぎません。ヴァーノンの手順ですら、実際にあれをそのままやっているプロはほとんどいません。みんな半分くらいの長さにして演じています。カップスの手順は、ヴァーノンのものより、さらに長く、時間もかかります。これではテーブルホッピングのような場所で、一般の人に見せるのは無理です。

これがマニアに見せるのに適しているのは、ヴァーノンのオリジナルを知っていても、スポンジボールを使うことで、全く違うテクニックが可能になっており、マニアでも引っかけることが出来るからです。たとえば、「スリーシェルモンテ」で使うロードとスティールの方法があります。シェルを前に押し出す動作で、下の豆をスティールする例の方法です。逆にやればロードも出来ます。あの技法を、カップスはこのルーティンで多用しています。これはスポンジボールだから可能です。

ボールのヴァニッシュも、「ベンソンボール」のときに使う、スポンジボールの消失を使用しています。これは大変ヴィジュアルで本当に消えたように見えます。

さらに、これがマジシャン専用だと思うのは、カップスのマジックは原則として、周りを観客に囲まれた状態でも演技可能なものばかりなのに、これはそう言うわけには行かないのです。ある程度、観客の位置が制限されます。これはカップスのマジックにしては大変珍しいことです。このようなことから、私は、このトリックはマニア専用にカップスが演じていたと思うのです。

今回、プライベートビデオで、カップスがこれを実演しているものを見せてもらう機会がありました。それで見ると、カメラの位置が正面で固定されていますから、角度としては完璧です。これを予備知識なしで見たら、相当なマニアでも、と言うより、マニアであればあるほど、驚きます。

このフィルムを日本で初めて入手されたのは静岡の蓮井氏だと思います。見たとき、あまりのすごさに興奮して、東京の小野坂東さんに、すぐに静岡まで見に来るように電話をしたという話をどこかに書いておられました。確かにそれくらい驚きます。(笑)

「カップ・アンド・ボール」については、「ラウンド・テーブル」の中でも、以前、書いたものがありますので、興味のある方は一度お読みください。

魔法都市の住人 マジェイア

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