ショー&レクチャーレポート

 

'99超魔術スペシャル

Mr.マリックの大逆襲!!

1999/7/24


放送日時:1999年7月23日(金曜) 午後7時−8時54分
放送局:毎日テレビ(大阪)
タイトル:'99超魔術スペシャル・Mr.マリックの大逆襲!!
出 演 :Mr.マリック
司 会 :長島一茂・小倉弘子(TBSアナウンサー)
ゲスト :西岡徳馬、高木美保、小橋賢児、辺見えみり、デーブ大久保、三倉菜奈・佳奈


久しぶりに,Mr.マリックが2時間近く出演する特番がありました。8年ぶりだそうです。他の番組にはよく出ていますから、8年ぶりと言われても何が8年なのかよくわかりませんが、十年以上前、最初のマリックブームがあったころ、このような2時間の特番が何度かあり、それが8年ぶりということなのでしょうか。

マジックをやっている人、とりわけメンタルマジックが好きな人にとってはMr.マリックの演出は参考になります。ビデオにも録画しましたが、文書としても残しておくと、後で参照するとき便利ですので紹介しておきます。

Mr.マリックのやっているものは、昔は100%、ネタモノでしたが、今回のものは半分くらいは随分怪しげなことをやっていました。昔、お昼のテレビ番組、タモリが司会をしている「笑っていいとも」に半年くらいMr.マリックが出演して、簡単なトリックを紹介していましたが、今回はそのようなタイプのものも何点かありました。また、私が半年ほど前にこの魔法都市案内の中で紹介した確率のパズルまでやっていたのには驚きました。(笑)


OPENING

「スプーン曲げ」

どうやら最近、新しい方法を開発したようです。ほとんど力を加えなくてもスプーンが曲がります。また、真横に曲げる方法も紹介していました。これはGuy Bavli が最近売り出したものです。でもさすがにスプーン曲げは年期が入っているだけにうまいものです。マニアはミスディレクションの参考になるでしょう。

「人間の体から金が出る」

(手のひらをこすると、金粉のようなものが出る) サイババは灰を出したり、他の宗教団体でもこのようなことをやっているところがあるそうですが、マジックをこのような使い方をすると、妙なことに利用する人が現れて困ります。断言しておきますが、サイババの灰も、Mr.マリックの金も、マジックですよ。

「霧が晴れる」

森の中で、霧に包まれて立っていたら、Mr.マリックの周りだけ、突然霧が渦を巻いて晴れて行く。自然現象をコントロールするという演出。

STAGE1

「時計」

お盆に腕時計が6個ある。どの時計も同じ時刻を示している。ゲストに2個の時計を選んでもらい、1個をゲストが持ち、1個をMr.マリックが持つ。ゲストが時計の針を回して、時間を狂わせる。(この時間はみんなにも見せる)Mr.マリックが持っている時計を見ると、それも同じ時刻になっている。

"Watch & Wear"という商品名で販売されている時計です。

時計の第2段
ゲストの時計を裏向きにして持ってもらう。Mr.マリックは時計の文字盤に念を送ると、針がすごい早さで回転する。止まった時間を確認してもらい、ゲストの時計を表向きにすると、それもほぼ同じ時間を示している。

(Watch & Wear の種明かしかと思うような使い方でも、見せ方次第ではマジックになることがわかる。この時計を持っている人には、これで使えるようになったはず。)

「サイコロ」

透明なグラスと、アクリル製の透明なダイスを使って、観客が出す目をコントロールする。

3人のゲストに1個ずつダイスを渡して、3人にダイスをグラスに入れてもらい、その目の合計を予言しておく。

サイコロの第2段

二人のゲストにサイコロの目をスケッチブックに描いてもらう。その二人の描いた目が、ダイスをグラスに入れると、実際に出る。

これは大変ビジュアルでよくできたネタだと思うが、おそらく数十万円はしそう。この1/10くらいの値段で販売されている「サイコ・キネティック・ダイス」を以前、紹介したが、実際にはこれでもほぼ同じようなことが出来る。カーツの「サイコ・キネティック・ダイス」を今度、どこかでやってみたくなった。

STAGE2

「♪♪糸巻き巻き♪♪」…… (汗)

二人のゲストに出てきてもらい、向かい合って立ってもらう。一人の手首に、見えない糸を巻き付ける。(実際は何もない)巻き付けたら、いったん手を体の側面に垂らしてもらう。もう一人の人が、糸巻きのように、見えない糸を巻き付けると、向かいの人の手が上がってくる。

数組のゲストにやっていたが、成功したのは3割くらいか。

子供の頃やった遊びで、手のひらをピンと伸ばしてもらい、そこを上から強く何度かこすった後、手を見えない糸でつり上げる動作をすると、相手の手が自然と上に上がってくる遊びがあったが、あれを思い出してしまった。しかし、こんなものをわざわざテレビでやるかな?(笑)

「体を柔らかくする」

まっすぐ立ってもらって、膝を曲げないようにしながら腰を曲げて、手の指先を床につけることで体の柔らかさを計る方法がある。体の硬そうな人にそれをやってもらってから、その人の脚を数度こすってからやってもらうと、さっきより体が曲がっている。

「卍(まんじ」

これは初めて見た。背もたれのない丸いイスが4つ、ほぼくっつくくらいの間隔で正方形に並べてある。そこに4人が座る。座る方向は外向きに90度の角度になるように腰掛ける。図がないと分かり難いが、私が体を倒して行くと、後の人のももの部分に背中かがあたる。4人がお互いに、相手のものの上に自分の背中が乗るようにして、寝る。

この状態で、イスを取り除いて行くが、4人は落ちないで、そのままの姿勢が維持できている。見ると、なかなかおもしろい。宴会芸としてやればウケそう。

STAGE3

「500円硬貨がグラスを貫通する」

10枚の500円硬貨がある。年号は、平成元年から10年まですべて異なっている。適当に混ぜた後積み上げてもらい、ゲストに中央辺りから適当に持ち上げてもらう。残った500円玉の山の一番上を使用する。それは平成7年の刻印がある。さらに、そのコインにだけ赤いシールを貼る。

細長いグラスを取り出し、赤いシールを貼った500円を他の2枚の500円で挟んだ状態にして、3枚のコインをグラスに入れる。観客の手の上にグラスを持って行くと、赤いシールを貼ったコインだけが、底を貫通して下に落ちる。

(これはマニアが喜びそう。「フォース」、「シェル」、「スティールコイン」、「マグネットコイン」の使用方法の勉強になる)

「コインが人体を貫通して、缶詰の中に入る」

テーブルの上には6個、キャットフードとドッグフードの缶詰がある。(猫用3個、犬用3個)

まず、犬、猫の好きなほうを言ってもらう。仮に犬と言ったする。犬用の缶詰を1個取り上げてもらい、缶詰のふたを開けて、中身を確認してもらうと、普通のドッグフード用の缶詰である。

残っている2個の缶詰から一つ選んでしっかり持ってもらう。

別の観客に先ほどの赤いシールを貼ったコインを手のひらの上に置いて、Mr.マリックがコインの上に手をかざすと、突然、観客の手のひらの上からコインが消える。缶詰を持っている観客に缶詰を開けてもらい、中身をよく調べてもらうと、赤いシールが貼ってあるコインが出てくる。

(これも缶詰のフォースなどマニアは参考になるはずである。コインの消失もおもしろい)

「白紙に書いた絵が紙幣や体の一部に転写される」

メモ用紙の紙を渡して、適当な絵を描いてもらう。観客に紙幣を借りて、表裏よく調べてもらった後、紙幣を額に押しつけてもらう。しばらくして、紙幣を見ると、そこに観客の描いた絵が写っている。また、Mr.マリックの手首にもその絵が現れる。

(このタイプのネタが市販されているのかどうか知らないが、よくできている。数年前、スパイ用の道具として開発されたもので、相手のサインをそっくり転写するものがマジックの世界に出回ってきたが、それを改良したものだろうか。時間も短縮され、道具もコンパクトになっている)

「体から金が出る」

観客の手のひらから金粉が出る。実際に出たのは20人に一人くらいか。オープンニングでやったものと同じ。

STAGE4

「愛のパワーが見える?」

6本の紐を使う結婚占い。以前"something interesting"で紹介した「結婚占いMatimony」である。5組にさせて、2組成功していたから、確率的にも順当な結果になっていた。

「紐がつながる」

先の続きで、2本の紐を1本のつなぎ目のない紐にするマジックをやっていた。これも初心者用のセットに入っているマジックだが、先の占いの後に続けると、それなりのマジックになる。

STAGE5

「色を当てる」

4色のパネルがあり、観客の選んだ色を当てる。これは100%当たる。(ハイテクネタ)

また、Mr.マリックが念じた色を観客が当てるという実験もやっていたが、これの成功率は確率的な数値とほぼ同じ。今回の中では一番退屈なもの。

「金魚」

金魚を2,30匹水槽に入れて、1匹金魚を指定してもらう。その金魚の上に手をかざすと、手の動きにあわせて、左右、前後に動く。最後はすべての金魚を一斉に同じ方向に泳がせる。

(タネを知っていると、ちょっとイヤなマジック)

STAGE6

「人間の体から金が出てくる」

2時間ほどの番組の中で3回もやるか?!勘弁して欲しい。方法はいくつか推測できるが、やり方を教えたら、それこそインチキ超能力者や怪しげな宗教団体に利用されそうなので言わないが、くれぐれも一般の方は引っかからないように。

「1円玉を曲げる」

ゲストや観客全員に1円玉を渡して、こすってもらうと、柔らかくなってきて反ったり、直角に曲がってくる。握力80というデーブ大久保もいたが、普通はそれくらい握力があっても1円玉を指先で曲げることはできない。しかし、今回は小柄な女性をはじめ、多くの人が曲がっていた。 とはいえ、これも昔からある「ディーラーズアイテム」(売りネタ)で、マジックショップなどで販売されていた。

「ペンが空中に浮かぶ」

普通のボールペンを机の上、5,6センチのところに浮かべる。浮かんだ状態で、上も下も横も何も支えがないことを観客にも確認してもらう。 1,2年前から海外で販売されているネタ。私は購入していないが、日本では4,5万円で販売されていた。

★総括:

私が一番気に入ったのはSTAGE3で演じた、コインがグラスを貫通するものです。これはハンドリングの隅々までよく考えられた大変完成度の高いマジックです。このようなものをきちんとマスターすると、他の多くのマジックに応用が効きます。

Mr.マリックの功績は、マニアでも見捨てていたネタでも、演出次第で見違えるようなトリックになることを示してくれたことですが、今回もサイコロのコントロールなど、やってみたいマジックも出てきました。

ただ、金粉を手のひらから出すものを何度も見せるなど、マジックとしてはほとんど評価の対象にもならないようなことをしつこいほど繰り返していました。マジックとしては全然おもしろくないものでも、宗教団体や怪しげな人物があのようなことを利用して、多くの人をだましている現実があります。インドの怪しげなオヤジより、Mr.マリックのほうがずっとうまいのですが、あれにはまったくトリックがないような雰囲気を強調するのは危険です。メンタルマジックはこれに限らず、使い方を一歩誤ると、人心をコントロールする道具としても利用できますから、演出には慎重になって欲しいと、老婆心ながら一言苦言を呈しておきます。



backindex 魔法都市入口へ魔法都市入口へ
k-miwa@nisiq.net:Send Mail