たばこの害を考える_1

  怖いのは肺癌だけじゃない:間接喫煙が心臓に悪い理由


●短時間の間接喫煙で抗酸化剤の量が激減

 周りにたばこを吸う人がいると、どうしてもその人の吐く煙を吸い込んでしまうことがある。これを間接喫煙、あるいは受動喫煙と言うが、体にいいはずがないことは誰が考えても明らかだろう。

 最近、あるフィンランドの医学者が、実際に間接喫煙が体に与える影響を調査したところ、やはり次のように、 かなり気になる結果が得られた。

 それによれば、間接喫煙は、体内にあるビタミンEとC、それにベータ・カロチンといった「抗酸化剤」を枯渇させ、心臓病に対する大切な防衛機能を骨抜きにしてしまう、というのだ。予防措置としては、抗酸化剤を含む栄養補助食品を摂取するなどの方法が考えられるが、それで間接喫煙によるダメージを帳消しにできるかどうかは、科学的に証明されてはいない。

 今回の調査を行ったのは、ヘルシンキ大学病院医学部に所属するティモ・クウス医師。クウスは、ボランティア の被験者を募って、30分間だけ、たばこの煙が充満した部屋に入ってもらう実験を行った。すると、それほどの短時間でも、被験者の血中にあったビタミンCなどの抗酸化剤の量が激減したのである。 「最近、たばこの煙が充満した環境は、体に害があることを裏付ける報告が相次いで発表されている」とクウス は言う。「今回の調査でも、間接喫煙が心臓発作の主要な原因となる冠状動脈性心臓病のリスクを高めることが証明された」

 抗酸化剤には、体内で暴れまわる不安定な酸素原子によるダメージを中和する作用がある。これらの破壊的な原子は「活性酸素(フリーラジカル)」と呼ばれ、通常は2個1組で対をつくっている電子の1つが遊離したために、きわめて不安定で反応しやすい状態になっている。

 フリーラジカルは、細胞内でエネルギーを生成する過程で生み出される副産物だが、それ以外にも、空気汚染、感染、紫外線(太陽光線)、ストレス、それに各種の病気によって増えることが明らかになっている。

 

 ●非喫煙者の方が煙の害を受けやすい?

 通常は、健康体の人間なら、食べ物から取り入れられる抗酸化剤や体内の抗酸化酵素の働きで、有害なフリーラジカルは中和されてしまうはずである。ところが、間接喫煙でたばこの煙を吸い込むと、フリーラジカルの量が増え、体内の抗酸化剤だけでは処理しきれなくなってしまうのだ。

 増えすぎたフリーラジカルは血中のコレステロールと結合し、酸化コレステロールを生み出す。そして、この悪 玉コレステロールが、血管の内壁に蓄積し、凝結プラークとなって、動脈硬化の原因をつくるのである。このプラークが血管内部にたまり続けると、やがて血が流れにくくなり、心臓発作や脳卒中の原因になる。

 今回の研究で、クウスは、喫煙をしない健康な男女10人を被験者として採用した。そしてまず、血中の抗酸化剤の量を測定し、たばこの煙で充満した部屋に30分間いてもらってから、再び測定を行ったのである。その結果、間接喫煙は、血中の抗酸化剤がフリーラジカルを中和する能力を31%も低下させることが明らかになった。(この測定には、TRAPと呼ばれる検査法が用いられた。)

 この研究成果は、全米心臓学会誌『循環(Circulation)』の最新号に掲載される予定だ。

 「今回の調査で明らかになったのは、短時間の間接喫煙でも、コレステロールの変化に影響を与えるということだ。その結果、アテローム性動脈硬化症が進行しやすくなった」と、クウスは言う。「心臓血管系は、空気中のたばこの煙に含まれる化学物質にきわめて敏感に反応するのだ」

 クウスによれば、喫煙者の心臓血管系は、非喫煙者の場合よりも、たばこの煙による影響に順応してしまっている。そのため、彼は、いつもたばこを吸っている人よりも、そうでない人の方が、間接喫煙の害を受けやすい、と いう仮説を立てている。

 そこで問題は、他人の吸ったたばこの煙による害をどう防ぐかだが、周りの人たちに禁煙させることが無理なら、別の方法を考えるしかない。たとえば、ビタミンCのような抗酸化剤を飲むことにより、ダメージを防げるかもしれない−−次の課題は、それを科学的に立証することだ、とクウスは語っている。



「健康が一番!」トップへ




 美容と健康のための“活性酸素対策”には、これがお勧め!