(この記事は、米国LPI社のヘルス・リサーチ・レビューという健康新情報紙を翻訳したものです。)
通常私たちが食べているアミノ酸はタンパク質(プロテイン)の構成物で体をつくるものですから体に良いという認識があります。ホモシステインは必須アミノ酸の一つ「メチオニン」の体内代謝過程での不完全な代謝や平衡状態(バランス)の乱れから作られます。 「メチオニン」は健康に欠かせないことと体内で合成できないことから「必須アミノ酸」と呼ばれています。 正常な代謝が体内で行われていれば「メチオニン」は部分的に、有害な「ホモステイン」に変わっても、また「メチオニン」や有害でない他のアミノ酸“システイン”に変わるのですが平衡状態が乱れると体内や組織に「ホモシステイン」が蓄積されるのです。 これは様々な健康上のトラブルを起こします。 特に心臓、血管系の疾病に関連します。
「ホモシステイン」のレベルは血液検査で判断できますが、確かなことは加齢と共に増えるという事です。 一般的に理解されていることは心臓、血管系の病気の主な原因は「ホモシステイン」の高い数値による動脈へのダメージです。循環器系の病気は「ホモシステイン」の高い数値に関連している事が分かっているだけでなく、他の多くの病気も「ホモシステイン」に関連しているのです。
心臓、血管系の病気はコレステロールが原因というのはもう常識となっています。 しかし、心臓、血管系の病気で亡くなった人の半分以下が高コレステロールとは関係が無いというのも事実なのです。コレステロールの高い食事を避けることだけが心臓発作を防ぐ方法ではないということが現在分かっています。 もちろん、コレステロールが高い食べ物は体に害を及ぼすものが多く、コレステロールの低い食べ物は体を守ってくれる栄養が多いのも事実です。
1992年に発表され論議を巻き起こした、心臓発作を予防するために毎日アスピリンを飲む有効性を証明する為に「ホモシステイン」の数値を紹介していたことからも心臓、循環器系の健康に大いにこの数値が関係していることがわかります。
その研究では緩やかな「ホモシステイン」値の上昇でも心臓発作に関連があるばかりでなく、他の循環器系の病気にも関連があります。 具体的には脳血管系、抹消動脈系の状態に関連しています。 「医者の健康研究」として知られる14,915人の医者を対象にした身体検査が行われました。
「ホモシステイン」値のレベルが高い医者はその数値が低い医者よりも3〜4倍も心臓発作の危険性が高いという結果が出ました。 この数値は喫煙による心臓発作のリスクに匹敵するものです。 明らかに「ホモシステイン」値に気を配ることは体全体の健康を守る意味で大変重要なことです。 健康診断を行うとき「ホモシステイン」値を見てもらってください。 心臓病だけの数値として見ないでください。
現在ではこの「ホモシステイン」値は糖尿病、妊娠合併症、アルツハイマーなどの病気にも関連があると言われているのです。 「ホモシステイン」をコントロールするには体内の正常な代謝反応のために必要な、十分な「メチレーションプロセス」が重要になってきます。 この事は次号さらに詳しく説明しますが。とりあえず今理解して欲しいことは、あなたの食事に十分な「メチレーションドナー」を含む食事を心がけることです。 具体的には、ビタミンB12、ビタミンB6、コリンと共に葉酸等が大切です。 食材で言えば野菜、特に緑の葉を持つものが良いです。 また、煙草、加工食、高飽和脂肪分、極端なプロテインの高摂取を避けてください。これらは体内の、メチレーションプロセスを減らすからです。
有害なアミノ酸物質ホモシステインについて説明しましたが、重要なことはホモシステインのレベルが様々な病気と関連している、という事実です。 糖尿病、アルツハイマー病、妊娠中の病気、リューマチ、また早産の女性にはこのホモシステインは体内で無毒化されますが、加齢と共にこの反応は鈍ります。
加齢以外にこのメチレーション反応を鈍らせる要因として喫煙、ピル、高脂肪食や野菜の少ない食事、バランスの崩れた食生活などが考えられます。新鮮な野菜をふんだんに取りいれ、適切な量のタンパク質を含んだ食事が大切になります。 前回にも紹介したとおり、特にビタミンB6,B12とコリン、葉酸を含んだ食事が大切になります。
体の免疫を守る重要性が近年では様々な形で報道されていますが、体の酸化を防ぐことが大変重要な鍵となっています。 フリーラジカルから細胞を守り、免疫を落とさないようにし、循環器系の病気に気を付けることが大切です。 このホモシステインレベルは循環器系の病気に関連していますから特に注意が必要です。 どのビタミンが、どのファイトニュートリエントが、どのミネラルが有効かを知ることよりも全体的にバランス良く栄養を補給することが一番重要と言えます。
ホモシステインの悪い作用をまとめてみました。
1・活性酸素が発生
血中濃度が増加したホモシステインは、酸素や水と反応し活性酸素が発生します。
これが諸悪の根元とも考えることができます。
2・血管がかたくなる
発生した活性酸素による作用に加え、血管拡張物質の働きを抑えることから、血管の柔軟性を奪い血管がかたくなってしまいます。つまり動脈硬化、高血圧を招いてしまいます。動脈瘤などがあれば事態はさらに深刻です。
3・血小板の凝集機能異常
血管は絶えず高速な血液の流れにさらされているため、削られてしまい破れて出血する場合もります。打撲などの外的要因によっても出血する場合があります。さらにLDLなどがこびりつき(LDLがこびりつくのも活性酸素の仕業です)アテローム(粥状突起)ができるときがありますが、それがときたま破れることもあります。この時には通常なら適量の血小板が集まり、その穴を修復するのですが、ホモシステイン濃度が高い場合、過剰に血小板が凝集し血管内壁を埋めてしまう場合があります。こうなると血液は流れることができませんので、かたくなった血管では破裂する危険も生じてしまいます。心臓の血管が詰まれば、心筋梗塞、脳の血管が詰まれば脳梗塞という、とても危険な状態を招いてしまいます。
葉酸について ・ 葉酸はまだまだ不足 ・ 女性は葉酸を摂らなければダメ ・ 高血圧の原因_4を参照。
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