「スタジオパークからこんにちは」  (2000年05月 放映)

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上田:やっぱりそういうメッセージ多いですよね。
関口:そうなんですよね。
上田:このニヒル、陰があるっていう風に言われるというのはご自身ではどうなんでしょう。
清水:あのね、40ぐらいまでは自分は暗い人間だと思い込んでましたね。
関口:すなわち、そういわれることと自分の中でもイメージがマッチングしていたと
清水:ええ、もう暗かったですね。暗さに自信を持ったのか・・・
上田:(笑って)それはどういうことでしょう。
清水:あ、俺は暗いんだと思ってから、楽になって少々人とお話ができるようになったんですけれども。
      だいたい人といても黙って、ていう、ちょっとそういうタイプでしたね。
上田:周りの話を聞いていて、僕は違うんだけどな・・・と思いながらずーっと黙っている?
清水:そうですね、なんてしゃべっていいのかわからないっていう・・・
上田:でもその青年が芝居をやりたいって京都から東京ってのはすごいエネルギーじゃないですか?
清水:まあ、でも生まれつき役者、みたいには思っていたので。床の間でいろんな役やらされて。
      親父が親父ですから「お前やれ」って言われて。それで「由良の介はまだか」「いまだ参上仕りませぬ」というのをやれって言われて、
      ある時、なんでしたっけエノケンの眼鏡の・・・エノケンじゃないや、えーと・・・
上田:チョビヒゲの・・・
清水:クリスマスに売ってるような眼鏡の・・・それかけてやれ、とか言って。それで・・・エンタツだ。
     「由良の介はまだかいな」とかやりながら。アチャコでやれ、「めちゃくちゃでござりますがな」なんて、子供の頃からやらされてましたからね。
      だからそれは役者しかないんですよね。生まれつき役者だって思っていたりはするんですけれども。
上田:お父様としても、おばあちゃまとしても――阪妻さんからそういわれたんですから――役者にしたいって思ってらしたのかもしれませんね。
清水:そうですね、それはまぁ好きでしたからね。鞍馬天狗やるのに――まぁ皆さんそうでしょうけれども――風呂敷かぶって、
      このへんが丸くなっちゃって鞍馬天狗みたいに三角にならないと、どうしたらいいんだろうって、ボール紙で三角作ってね。
1,関口:へぇ・・・。
清水:そういうのやってましたからね。まぁ皆さんそうでしょうけれども。
上田:その少年が俳優座にお入りになった。
清水:そうですね。
上田:新劇の世界ですよね、まずは。どういうお芝居をイメージなさっていたんですか?
      <写真>
      おぉー、白い歯が爽やかな
清水:今だったら売れるのになぁ、こうなっちゃったらダメだな・・・(笑)
上田:トレンディ系の・・・
関口:そうですねぇ。
上田:どういった・・・さっきも悪役ですとかニヒルな役が多いですよねって、この時には二枚目の方を狙ってらしたんですか。
清水:狙いも何も、何も狙ってませんよ。ただ好きなことをやりたいというだけで。
      だから狙いも何にもないですね。
上田:ではその好きなお芝居というのは・・・
清水:どうだったんでしょうね、まぁ三年間、俳優座養成所ってところにいて、それもぼーっとしていて。
      みんなはこうやったら、こうしたらってきらきら輝いていたんですけれども、僕は京都から出てきてぼんやり・・・。
      わー、すごいなと思って。だからあんまりこれをやりたいというよりも、こういうのはあわないな、こういうのは違うんじゃないかな、
      ということで選んできたような気がするんですよね。
      だからあんまり派手な場所行くと落ち着かないな、それでまぁ、文学座に一年いさせてもらったんですけれども
      すぐ自由劇場ってのを作りまして、僕達で自分達でやったほうがいいんじゃないかなって思って、自由劇場を作って、
      これも後から考えたら非常に生意気なことなんですよね。
      この業界でこうやって色々なものをあって。二十歳そこそこだったらそこに入って修行して、っていうんだけど。
      あんまり面白くないから自分達で作ろうかって感じで作っちゃって、
      その時の仲間が吉田日出子とか串田和美とか佐藤信とか色々いるんですけれども
関口:錚々たる・・・
上田:そのときにさっきちょっと出たんですけれども、黒テント。どんどんアンダーグラウンドに
清水:そうそう、地下に地下に・・・。テントっていうのは――ここもテントですけれども――面白いんですよ。
      全然街角の建物のないところにテントができて、昔のサーカスとか小屋掛け芝居と同じように、そこでお芝居がばーっと始まって
      それであくる日見たらテントが何もなくなって、あれは夢か幻かってそういう状態になるでしょう?
      そういうのが唐十郎さんの赤テントを見た時に、こんなに面白い世界があるんだということで、
      まぁ仲間と一緒にそういうものをやりたくてやってみたんですよ
関口:どうもお話を伺っていると温和なというか、のんびりというか、そういう感覚の中で好きなお芝居をやってらっしゃるというイメージが
      あるんですけれども、その黒テントのポスターを拝見しましたら、そのイメージの全く逆でしてね。
上田:燃え滾っている感じがするんですよね。
関口:宣戦布告というか戦っているイメージがものすごい・・・
<黒テントのポスター>
清水:ははは・・・懐かしい・・・
上田:貴重ですよね。これはパンフレットではなく・・・
清水:ポスター、チラシとポスターですね。
       この時代はいろいろなことを考えて、世の中のことを考えよう、色々な形で芝居というのを考えてみようということでね。
上田:「コミュケーション計画」!
清水:舌噛んじゃいますね。
上田:「拠点劇場、移動劇場、壁面劇場、教育、出版・・・」ある種アジビラに近い感じの。
関口:そうですね、時代もそういう時代でしたから。
上田:なんかやらなきゃみたいな焦燥感がおありだったんでしょうか
清水:いや、それが面白かったんですよ。
      それとなんていうのかな、ぼんやり・・・まぁ性格はぼんやりしているんですけれどもやることは過激なこともあるんです。
      なんていうのかな・・・まぁ自分たちの思いをどれだけ伝えられるかっていうのが芝居なら、
      とことんまでそこで頑張ってみようじゃないかということで。面白かったですよ。
上田:僕達の思いを伝えようじゃないか・・・というのはどのあたりの人たちに向けてのどういう思いだったんでしょうか。
清水:その頃は・・・フォークが出てきた頃だったし、アングラ、アンダーグラウンドというのが出てきた頃だし、
      この世の中はこれでいいんだろうか、お芝居はこれでいいんだろうか、劇団ってこんなものでいいんだろうかという気分ばかりが
      先走っていた部分がありまして、だったら一度そこを突破してみようという風に思っていたんですよね。
上田:既成のものを何かこう、つつきたいと。
清水:だから、その時には、まぁ・・・色々、あの失礼なことをしたと思いますけれども(頭を下げて)
上田:そんなそんな(笑)
関口:ここで謝らなくても・・・(笑)
清水:若気の至りで・・・
上田:そういうのを歴史を紐解くように私達の世代が読んで、こんな熱い時代があったのかって。
      私達はその後のよく、しらけ世代と言われた時代ですよね。
清水:その時代がよかったか悪かったかはともかくとして、結果がどうだったかということも、ともかくとして、
      また僕達がやったことがどうだったかというのもともかくとして、
      あれだけ熱い思いで色々なことを思っていたというそれだけは知って欲しいという気は、ありますね。
関口:なるほど
清水:だから「いいじゃねえか、食えれば」とか「いいじゃねえか、有名になれれば」とかいうんじゃなくて
     違うよ、有名にならなくたってやらなきゃいけないことはあるよって・・・。
そのテントの頃はもうどろどろですからね。雨降れば雨の中で芝居しているし。
上田:そうですよね、テントっていっても・・・
清水:地べたですからね。
      ある時、河川敷でやっていたら「プー」ってサイレンが鳴って、何だろうって思ったら、水がひたひたひたひた・・・。
上田:お客さんたちはもう・・・
清水:こうやって中腰になりながら、見てて・・・そういうことが楽しかったわけですよ。
      雨が降ったら雨の中でやる、風が吹けば風の中でやる、雪が降ったらテントがこんなになって・・・
上田:雪で潰されそうになってる中で・・・
清水:だからゆったりした椅子であったかくも寒くもなく芝居して、
      楽屋で物思いにふけりながら化粧をしてすっとと出て行くっていうんじゃなくて。
     「うわ、雨だよ、冗談じゃねえな」って芝居の中に入っていったから、
      存在感ていう風におっしゃっていただいたことがあるんですけれども、芝居のテクニックよりもそこにいることの方が・・・あ。
<「黒テント」の映像>
上田:これですね、貴重な映像・・・清水さんにお持ちいただいたんですけれども。
関口:さっきも思ったんですけれども、これなんでビラに6869って?
清水:68年に始まって、69、70と・・・
上田:毎年、毎年更新していかれた・・・・このテントの立て方がまた、芸術的なんですよ。
清水:すごいんですよ、これ重いんですよ。トラックで張ってばっとたてちゃう。
上田:「第一革命」ですよ。
関口:「我々は排他的である」!。なんか僕たちの世代の、今の僕たちの年代の人たちがやっていたわけでしょう?
清水:そうですね、20代ですからね。
関口:別世界ですね。
上田:これが清水さんです。
清水:これはね 「マラー、サド」というお芝居でね、サド侯爵をやっているんです。
上田:色っぽいですよね。
清水:(笑ってる)
<「余は人類の精神から余の記憶が消し去られることを望む」のモノローグ>
上田:思わず裾を整えながら・・・
関口:最後、お客さん笑いが・・・
清水:そういう時にはね、やってる人数より客のほうが少なかったりするんですよ。
      一日500円でね・・・たばこかってコーヒー飲んだらおしまいで。寝袋で寝て。
     まあ、みなさん色々な苦労してらっしゃるんですけれどもね
上田:でも空き地を見つけないとテントが建たないじゃないですか
清水:そうそうそう
上田:空き地見つけてさまよっていたりするとお客さんも大変ですよね、次はどこの空き地に行くんだろうって。
清水:だからね、有明の方の埋立地に行ったりしてね、面白かったですよ
     もっと面白いことを探すためにお客さんも色々な所で色々なものを探しながら、というのも一つの見方ですから。
     いつも家でテレビ見てゲームやってなんていうだけじゃなく、色々なところに行って、
     こんなところにこういうものがあるんだって発見するのも一つだな、楽しみ方だよなと。
     そういういうどきどきを ――別に我々が面白かったか面白くなかったかは置いておいて――そういうどきどきを
     若者達はもっと自由に奔放に楽しんでもいいんじゃないかなとは思います。
上田:今、逆に何でも・・・チャンネルも増えてますしね。どきどきっていうのはなかなか・・・
清水:そうわくわくしながらね。
上田:その点は羨ましい時代かもしれませんね。
関口:そうですね。
上田:今はなかなかあそこまでできませんが。
      清水さん、何故あそこまでできたか、という清水さんの20代30代のあたりを3つの「超」で。
      これ若者言葉ですね。ちょっとここ、これ私も若くないんで。
関口:そんな。
上田:任せたね。はい、1番。
関口:「超生意気だった20代」
上田:あ、「チョー」って言うんだ?チョーナマイキ?
      さっきもちらっと出てましたけど。
清水:そうですね。あの、だから映画のお話があったりした時に、俺はこういうものはやりたくないとか平気でやってましたね。
      今思うと20代それでやって、30代過ぎてくると、おっと俺は何をしてきたんだろうって思って、
      お金は必要なんだな、霞だけじゃ生きていけないんだなって思って・・・失礼しました(また頭を下げる)
上田:でもなんか何にでもなんていうんですか、抵抗したいような気分だったんですか。
清水:そうですね、それとまぁ・・・
<写真>
上田:20代ですよ・・・
清水:・・・困った、困ったな。何の為にやっているのか、好きなことをやらせてもらってる。
      それで何かっていうと有名になることじゃないだろう、目的は。
      勿論結果として有名になってお仕事をいただくというのは嬉しいことだけれども。目的はそうじゃないはずだ、と。
関口:なるほど
上田:すごい突き詰めて・・・
関口:これこそがやりたいことだというはっきり答えがあるというよりは「それは何だ」って探しているという。
清水:そうそう、そうですね。それはその時にいいお話戴いたのに、今は興味があるのはそれじゃない・・・
上田:今はそれじゃないんだって。
清水:そう言ってしまう生意気さ、というんでしょうか。
関口:確かにそれが生意気に映っちゃう・・・
清水:結果的にね。
上田:さあ2番。
関口:その結果、貧乏だったんですかね。
上田:「超貧乏」
関口:超なんですか
上田:35歳で四畳半一間のアパート。
関口:裕福では確かにないですね。超貧乏かどうかはわかりませんけれども。
清水:超貧乏かどうかはわからないですね。それで35歳で四畳半一間のアパートというのはですね。
      黒テント時代に結婚していた女性がありまして、その頃生意気で「こんな仕事しない」おれはこういう芝居しかしないって言っていたのを
      ずっと支えてくれた方がいらっしゃいまして、その方が本当に素敵な方なんですけれども。
上田:いい女性ですよね。
清水:今思うとね・・・
上田:20代の生意気だった清水さんを支えて・・・
清水:家では暗く本読んでいて「うるさい」とやってたんですもんね。
      それがですね、「何でもいいからお仕事してくれないか」って言って、それではたと気がついて、ああヤバいなと、
      その頃ちょうど黒テントもそろそろ終わりだなって、何にもすることなくなっちゃって、四畳半の木造アパートにいたんですけれどもね。
      その時に「あ、いけないいけない」って、あんまりバイトしたことはないんですけれども、
      バイトでいろんな――ドカタとか――たくさんバイトなさってる方もいるんですけれど、僕はあんまりバイトは好きじゃない・・・
関口:好きじゃない(笑)
上田:それはなぜですか?
清水:それで、その頃、デパートの宅配をやりまして、その頃運転もできなかったので自転車で行って、
      ピンポンってやったら、少々昔からテレビには出てましたんで、「何とかでーす、宅配でーす」「あら」って
関口:あら、清水さんだわ、みたいな。
清水:そうそう、「あら」って言われて、あらーこの仕事も恥ずかしくてできないなぁって。
上田:そういうのって俳優さん、タレントさんだったら「見てくださってます?」ってそういうふうにはなれない・・・
清水:なれない性格なんです。
関口:あ、なるほどね。
清水:プライドばっかり高かったんでしょうね、そういう意味じゃ。
関口:プライドが高いだけじゃなくてシャイだってこともあったんでしょうかね。
清水:まあね、そうですね・・・今日は、おかげさまで喋らしていただいてますけれども。
上田:いえ、喋っていただいて安心してます・・・ていうのも変ですね(笑)
清水:おしゃべり・・・ちょっと暑くなってきたな・・・
上田:あ、どうぞどうぞ。
清水:(いきなり上着を脱ぎ出す)
上田:ちょっとここ照明が近いんですよ、仮設のようなテントですから・・・
関口:どうぞ、置いてください。
清水:(上着を持ってうろうろしている。上田キャスターとこちらにどうぞ、とかやりとり)
関口:つまり人と比較した時に超貧乏かどうかはわからないけれども、これからどうして行こうかという危機の時代だったんですかね、
      この「超貧乏」というのは。
清水:そうですね・・・それで、普通の人っていうのは色々なことを考えて生きていらっしゃるんだな、と。
      僕は特にそういうのは音痴で、子供の頃からなんか夢みたいなことばっかり考えてた質なんで、
      この間、ちょっと病院に入院しましてね。
上田:はい。
清水:まぁ、たいしたことはなかったんですけれども
上田:それは何よりです
清水:その時に、健康保険は・・・あれ?って色々考えて、と思ったら何にも考えてないんですよ
上田:清水さーん(笑)
関口:じゃあ、この時代に普段の色々変わらなきゃ変わらなきゃと思っていた時代だったんですよね、
      その時に一般の変わらない生活をしてらっしゃる方に少し尊敬の念を・・・。
清水:そう。本当にそう思う。芝居をやっている時にはもう行くぜ、行くぜ、行くぜっていう芝居をやってたし、
      それなりにインパクトのある仕事ができていたと思うんですけれども。ぱたっと芝居もやめて、前の結婚が終わった時に、
      あ、誰が僕たちの芝居を見に来るかっていえば、普通こうやってやっている人達が、何か違うものを見たいと思ってくるわけでしょう。
      何か自分とは違うことを考えている、自分がやれないことをやっている・・・そういうものを見に来るわけです。
      その時、あ、お客さんてこういう気持ちを大事にして芝居とか音楽とかを見に来るんだっていうことにはたと気づいたわけです。
      これを大事にしないことはいけないことだと気がつきましたね。

<次のキーワード「超もてもて?でも同棲は苦手」)
上田:これはね、クエスチョンマークは必要ないなってぐらい。
関口:先程写真見ていれば「超もてもて」っていうのはすぐにわかりますよね。
清水:えー、いえー。
関口:違うんですか?
清水:もてたっていうことじゃないですね
上田:「でも同棲は苦手」ってこれがよくわからないんですけれども。
関口:強烈なカッコ内ですよね、これは。
清水:あのね・・・同棲っていうのはやったことないんですよ。前、最初の・・・
上田:先程おっしゃっていた・・・
清水:結婚2回してるんです・・・2回とも失敗してるんです・・・。同棲っていうのはなんか生臭いでしょう。
関口:生臭い
上田:はぁ。生活よりは別の部分で・・・ぐしゃっていう。
清水:最初の結婚はもう23の頃してましたからね。だからそういう意味でいえば・・・。
      えーとね、ホットなんですよ。ニヒルだっていう風にお思いでしょうが。
上田、関口:(笑)
関口:なるほど。
清水:子供が好きですし、家庭的な雰囲気も好きですし、家でなにかやることも好きなんですけれども。
      ・・・どこかに欠陥があるんですけれども。・・・で、何話そうとしてたんだっけ
上田:うろたえてましたね(笑)ホットな部分が・・・
清水:ニヒルなんていうんじゃないんですよ。
      でも芝居をやったり、考えることが色々こうじゃないなっていう思いがあったりするとそこに走ってしまう。
上田:そこにだーっといって周りが見えなくなる、生活のことを考えなくなる
清水:そうでしょうね、結果的に見ればね
上田:ではそのあたり、実際そういう青年だったのかどうか
清水:え
上田:同じ時期、青春時代を過ごして今も多分青春時代の方ですね。この方と電話が繋がっています。
清水:・・・やめて
吉田:もーしもーし
清水:おや!
上田:吉田日出子さんです。
関口:どうもはじめまして。
吉田:はじめまして。
上田:今、色々うかがっていたんですが、聞いていていただけましたでしょうか。
吉田:はい、聞いてました。
清水:すみません。
関口:謝ってますよ(笑)
清水:いや、怖いんだもん。
上田:こういう清水さん・・・今、なんか清水さん吉田さんのこと「怖いんだもん」っておっしゃってましたよ。
吉田:あの方はね、そちらの方はね、いつもそういって悪口を言うんですよ。
清水:悪口なんか言ってないよ。
吉田:うふふふふ・・・
清水:いやね、お弁当をね食べさせてもらってたの。
上田:おぉ。
吉田:食べさせてもらったって・・・勝手に食べてたんです。
清水:勝手に食べてたんです。
関口:お弁当泥棒だったんですね。
上田:(ちょっと非難がましく)え、吉田さんのお弁当を勝手に食べてたんですかぁ。
吉田:そうなんです〜。
清水:養成所の頃、出てきててさ。お金ないでしょ、そうするとお弁当があるんですよね。
関口:あるんですよねってそりゃ持ってきてますからね(笑)
清水:そうそうそう。そうすると、ついついちょこっと食べようと思ってたら段々減ってて・・・
関口:最後何にもなくなっちゃう。
清水:なくなってて、デコが「誰、食べたの。紘治でしょう」っていう話になるんですよ。
上田:もう吉田さんには最初から清水さんの仕業だなってわかっていたんですか。
吉田:いえいえいえ、そうじゃないんですよ。ね、私はすごく楽しみにしてね、お弁当食べようと思ったら空なんですよ。
関口:空っていうのもすごいですよね。
吉田:誰が食べたのっていったらえへへって笑ってるんですよ。
関口:その後ご飯どうなさったんですか?
吉田:あの、その後はどうしたかは忘れちゃいましたけれども。
      でもあの時のえへへって笑ってる紘治は、あ、この人はどんなとこに行っても生きていける人だわって思いました。
<場内で爆笑>
清水:いえいえ、とんでもございません。
上田:でもその後ずっとお付き合いが続いてらして、清水さんてずっとこういう風なシャイでニヒルで芝居のことに関しては熱いって感じなんでしょうかね
吉田:そう、よくわかりませんけれどもね。目が大きくってね、のほほーんとした人のように思いますです
上田、関口:(しきりに笑ってる)
上田:結構さっき、熱っぽく芝居のこと語っていらしたんですけれども、実はのほほーんと・・・
吉田:のほほーんとした人です。・・・でも時々難しいこと言ってみたり・・・
清水:いやいや・・・日出子さんほど難しくは・・・
吉田:私はあの、アホなもんですから
清水:とんでもございません。
吉田:何言ってるのかよくわからない・・・状態です。
清水:いえいえ、とんでもございません。
上田:ずーっと長いお付き合いで、清水さんももう五十・・・
清水:六
上田:今の清水さんに吉田さんからメッセージございますか?
吉田:(即答)元気ですか?
清水:この前、あのね、胃癌だって言われてね。
吉田:うん。
上田、関口:え!?
清水:いや、言われたんですけれども
上田:それはさっきの・・・
吉田:いやあのね、紘治のね、顔色はね、誰が見ても癌みたいだよ。
      <場内爆笑>
      だからね、顔色で先生もそう思ったのかもよ。
清水:うん、そうなんだ。それで、デコは元気なの?
吉田:うん、元気
清水:あぁ、そう。
吉田:今はね、犬がいるのよ。
清水:あぁ、そう。
吉田:大型犬でね、イビザンハウンドでね、すごくね、かわいいの。
清水:あぁ、そう。
吉田:今度会いに来て?
清水:はいはいはいはい・・・・あんまり風水に凝らないように。
吉田:あ、あれはもう終わったから大丈夫
清水、吉田:(笑)
上田:いいですよね、50越えてこういうふうにお話ができるって・・・。どうも吉田さんありがとうございました。
関口:ありがとうございました
吉田:じゃあ元気でね。
清水:うん、またね。
<拍手>
関口:なんかすごい丸くて温和な会話ですね。
上田:ねえ。
清水:大人になりましたね(笑)
上田:やっぱり50を越えて、ご自身20代のとがってた時代、30代の生活を考えずに夢を作りたいという思い、そういうのを越えて50代になってどういう・・・。
清水:今、楽しいですね。
上田:楽しい。
清水:まぁシャイというか、内向的というか、自分が窓を開けなくちゃ他人も窓を開けてくれないんだっていうのを・・・。
      とにかく窓の隙間から覗いていたら、相手は何だ窓閉めてるじゃないかと思われてたんだろうと思うんですけれども。
      まぁいいや、窓開けちゃえって思った時になんだ紘治そこにいたのかって声をかけてくださるようになったし、
      だからそういう意味じゃ、色々な人が・・・。懐かしいって言葉がすごく今大事だなと思ってるんですよ。
上田:大事というのは・・・
清水:初めて会った人でも懐かしいと思える人と懐かしいと思えない人――それはまぁ色々な出会いでしょうけれども――あるでしょう。
      だからまぁ惚れたはれたは置いといて、いじらしいとか懐かしいとかそういう気持っていうのは非常に大事だなと思ってるんですよね。
      だから懐かしいよっていったら、別に初めてでも「お前、懐かしいよ」っていうね。
上田:なんかその感じを相手に持っていたりとか、思われたりとか。なんか安心、通じるものがある・・・
清水:そうですね、すごいねとかかっこいいねとか言われるよりも、懐かしいねって言われる方が・・・
      それは古さも含んでいるわけだから。今の時代っていうのは・・・いいですか、喋り続けて
上田:ええ、どうぞ。・・・どうぞっていうのも変なんですけれども
清水:喋り続けてるから。今の時代っていうのは今というのは平面になっていて一瞬じゃないですか
上田:なんでもそうですよね
清水:でも懐かしさってのはその時間があるわけですよね
上田:深さというか・・・
清水:今の若者達っていうのは平面の今を一生懸命生きなきゃいけないしんどさっていうのがあるんだけど、
      我々はまだ時代が古いせいか、今っていうのが時間として盾に流れていたみたいなものがあって。
      平面の中で「今はどこだ、今はどこだ」っていらいらして探す必要はなくて、ということがあると思うんですよ。
関口:すごく安らげるような気持の中で
清水:今は全てが平面になっちゃってて、悪口じゃないんだけど、インターネットとかテレビとか
      今をどこに探すかという作業ばっかりをやっているような
上田:すぐつなげられますし・・・。そうではないと。
清水:通じなくたって、昔、一緒だったかもしれないね、という思いを大事にした方がいいじゃないかって気がするんですよ。
上田:いやぁ、なんか
関口:いいですね・・・
上田:でもね、質問もたくさん集まってきているんですよ
関口:そうなんですよ、そろそろね
上田:この質問にもお答えしていただきましょうよ
清水:はい
古谷:清水さん、それでは一問一答で参りますので、それではどなたか選んで下さい
清水:はい・・・じゃあ、右上から行きましょうか
古谷:では順番に行きましょうか。岡山の君島さん「作る方と演じる方とどちらが楽しいですか?」
清水:作る?
上田:演出とか・・・
古谷:演出する方と演じる役者さんの方と
清水:それはもう、作るのは色々な才能が必要ですけれども。
      演じるのは何とか自分の気持と、自分の考えと、自分の体をなんとかできれば何とかあれですから。僕は演出はとても無理ですね
古谷:演じる方ということですね。神奈川の田中さんです「落ち込んだ時の対処法は」
清水:・・・うーん(頭を抱える)
関口:今、落ち込んでらっしゃいますね?
古谷:さあ、どうするんでしょう清水さん。
関口:対処法はないみたいです・・・
清水:対処法はないじゃないでしょうか。
古谷:福岡の柚木「趣味は何ですか」
清水:趣味はね・・・本を読むにしても、お芝居絡みで読んでいて・・・、最近ちょっとお休みしているんですけれども焼き物を。
上田:焼き物ですか。
清水:はい、陶器を。あれはちょっといいなぁと思って。今、また再開したいなと思っているんです。八ヶ岳の方に先生がいらっしゃるんですが。
関口:いいですね、八ヶ岳の・・・景色もいいんですよね。
清水:そこでやっていたら・・・。焼き物やってらっしゃる方はたくさんいらっしゃいますからね。
古谷:では続いての質問。北海道の吾妻さん「初恋はいつ、どこでですか」という突っ込んだ質問ですが。
上田:きゃー(笑)
清水:初恋はですね、高校ぐらいでしょう。
関口:遅いんですね、結構。
清水:僕は遅いんです。
関口:僕は遅いんですって・・・(笑)自称されてますが。
上田:高校時代・・・
清水:京都ですからね、みんなが女の子とデートしたりしてる時に、竹藪の中を一人で散歩していたっていう。
関口:もともと、やすらぎ系っていうのがあるんですね。
清水:そのへんがね・・・「遠き遠き初恋の・・・」俳句作ったんです。「遠き遠き初恋の日を春の雷(らい)」雷ですね。
上田:春雷ですね。
清水:「遠き遠き初恋の日を春の雷」ていう、そんなもんですかね。
上田:そういう思い出があるそうですよ・・・。
古谷:続いての質問です。東京の水木さん「お酒はどんなものをどのくらい飲みますか」
清水:お酒はですね、そんなに強くないんです。今はね、ビールをこのくらい出されても真っ赤になります。
上田:でもあの雰囲気はお好きでしょう?
清水:ええ、雰囲気は好きなんですよ。・・・なんか言わせようとしていることがある?(笑)
上田:いえいえ(笑)・・・本当はもっともっとお話を伺いたいんですが・・・
清水:あ、もう時間ですか。
上田:私、また舞台の清水さんを観たいんですが、近々舞台のプランとかないんでしょうか。
清水:今のところ、ありません。・・・あんまりうるさくいいませんので呼んで下さい(笑)
上田:また舞台の上の清水さんにお会いできればと思います。今日は本当にありがとうございました。
      清水紘治さんにお越しいただきました。
清水:少し、しゃべり過ぎました。
<拍手>
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