3 品詞

エスペラントの単語のうち名詞, 形容詞, 動詞は,それぞれ -o, -a, -i という固有の語尾を持っています。副詞の大部分も-eという固有の語尾を持っています。

英語のようにひとつの単語が語形を変えずにいくつかの品詞の働きをするということがないので,文の意味を理解するのが容易です。

名 詞 -o pezo (weight)
形容詞 -a peza (heavy)
動詞 (不定形) -i pezi (weigh)
副 詞 -e peze (heavily)

(注 1)単語の不変部分(上の例では pez )を語根といいます。

(注 2)副詞の中には hodiau~(today), nur(only), tro(too much) などのように, -e の語尾を取らないものや,ne(not), tre(very)などのように不変部分が -e で終わっているものもあります。


3-1 名 詞

名詞には単数形複数形とがあり, それぞれに主格目的格があります。

複数形は単数形に -j をつけ, 目的格は主格に -n をつけて作られます。

主格は文の主語呼びかけに使われます。英語と違って, 前置詞のあとにも主格が置かれることに注意してください。 (移動の対象を示すときには,前置詞のあとに目的格が使われることがありますが,それについては
後述します。)

monto 単数主格 山(は, が)
monton 単数目的格 山
montoj 複数主格 山(は,が)
montojn 複数目的格 山々を

辞書には単数主格で掲載されています。(複数形でしか使われない名詞は複数形で掲載されています。)


3-2 形容詞

形容詞にも単数形複数形があり,修飾する名詞の数と格に一致させます。複数形と目的格のつくり方は名詞の場合と同じです。

形容詞と修飾されている語が離れている場合でも, その関係がはっきりするという利点があります。

alta monto (単数主格) 高い山(は,が)
altan monton (単数目的格) 高い山
altaj montoj (複数主格) 高い山(は,が)
altajn montojn (複数目的格) 高い山々を

上のように形容詞が名詞を直接修飾する場合には, 名詞の直前に置かれることが多いのですが,リズムなどの都合で形容詞が名詞のあとに置かれることもあります。

フランス語のgrand homme(偉大な人), homme grand(背の高い男) のように語順によって意味が変わることはありません。

internacia lingvo = lingvo internacia (an international language)


エスペラントの形容詞は英語と同じように, 名詞に直接ついてその名詞を修飾するだけでなく, 間接に主語や目的語を修飾することができます。

La libro estas interesa. (The book is interesting.)

Mi trovis la libron interesa. (I found the book interesting.)


3-3 副 詞

副詞には
語根-e をつけてつくれるものと,そうでないものとがあります。

副詞の働きは英語とほとんど同じです

Li kuras rapide. (He runs fast.)

La bildo tre plac^is al mi. (I like the picture very much.)

上の例文に見るように, tre(very)は, 英語の very と違って動詞を修飾することができます。


英語では形容詞を使うのに, エスペラントでは副詞を使うのは次のような場合です

Nag^i en la rivero estas dang^ere. (To swim in the river is dangerous.)

上の文のように主語動詞の不定形(3-4参照)のときは,エスペラントでは副詞で修飾します。 この文は英語では It is dangerous to swim in the river.というのがふつうですが,エスペラントでも語順を変えて Estas dang^ere nag^i en la rivero. の形がよく使われます。この場合, 英語の形式主語 itにあたる語はエスペラントにはありません。


また次のような節を修飾するときにも, エスペラントでは副詞を使います

Estas certe ke li sukcesos. (It is certain that he will succeed.)
(ke = that)


賛同, 満足, 感情などを表す 1語か2語の単語を発するとき

Bone! (Good!)

Nekredeble! (Unbelievable!)

Ne mirinde! (No wonder!)


3-4 動 詞

動詞語尾
には-i(不定),-as(現在),-is(過去),-os(未来),-us(仮定),-u(命令)の形があります

(注) エスペラントの動詞は自動詞他動詞の区別がはっきりしていて, 英語のようにひとつの動詞が自動詞とても他動詞としても使われるということはありません。

La s^tormo dau~ris dum la tuta nokto. (The storm continued all night.)
Mi dau~rigis mian penadon. (I continued my efforts.)

辞書には不定形(-i)で掲載されています。

-iは英語の原形不定詞とtoつき不定詞の両方にあたります。

Li lasis min iri tien. (He let me go there.)

Li permesis min iri tien. (He permitted me to go there.)


不定形の動詞は英語の不定詞と同じように, 主語や目的語, 補語になることができます。

Instrui estas lerni. (To teach is to learn.)

Mi volas lerni Esperanton. (I want to learn Esperanto.)


不定形の動詞は, 英語の不定詞と同じように, 名詞の後に付いてその名詞を修飾することができます。

Mi volas ion por mang^i. (I want something to eat.)

Mi persistos je mia decido studi eksterlande. (I'll stick to my decision to study abroad.)

Mi admiras lian kapablon administri organizon. (I admire his ability to manage an organization.)

上の用例に見るように, 名詞, 代名詞の後に por -i が置かれる場合と, por の付いていない不定形(-i)が置かれる場合とがあります。この区別についての詳しい説明は
ここをクリックしてください。

不定形の動詞は, また英語の不定詞と同じように, 「〜するために」という副詞的な用法があります。

Ni mang^as por vivi. (We eat to live.)

Mi ellitig^is frue por trafi la unuan trajnon. (I got up early to catch the first train.)

不定形の副詞的用法についての詳しい説明はここをクリックしてください。


-as, -is, -osは, ある事柄を事実として述べる文に使われます。

Mi log^as en Nara. (I live in Nara.)

Mi log^is en Nara. (I lived in Nara.)

Mi log^os en Nara. (I will live in Nara.)

-as, -is, -os の用法についての詳しい説明はここをクリックしてください。


英語では現在形や現在進行形で未来を表すことがありますが, エスペラントでは未来はすべて-osで表します。

La ekzameno komencig^os la venontan lundon. (The examination begins next Monday.)

Ni prezentos koncerton postmorgau~. (We are giving a concert the day after tomorrow.)


「時」や「条件」を表す副詞節の中でも, 未来は-osで表します。

Se pluvos, mi ne iros tien. (If it rains, I will not go there.)

Mi transdonos al li vian mesag^on, kiam li venos. (I'll give him your message, when he comes.)

英文法でいう「意思未来」, 「単純未来」の区別は, エスペラントにはありません。


-usは事実と反対の仮定, 条件, 願望を表すときや丁寧な表現に使われます。

Se mi scius lian adreson, mi povus skribi al li. (If I knew his adrress, I could write to him.)

Se mi estus sur via loko, mi akceptus la proponon. (If I were in your place, I would accept the proposal.)

Se mi estus sana, kiel felic^a mi estus! (If I were healthy, how happy I would be!)

Mi volus iri kun vi. (I would like to go with you.)

Mi konsilus al vi akcepti lian proponon.(I would advise you to accept his proposal.)


-uは命令, 依頼など話し手の意思を表します。

*聞き手にに対する場合(主語を付けないのがふつうです。)

Venu al mi. (Come to me.)

*話し手自身や話し手を含む人たちを主語にして, 「〜しよう」を表します。

Ni iru. (Let's go.)

*話し手や聞き手以外を主語にして, 「〜させなさい」,「〜させよう」を表します。

Li atendu. (Let him wait.)

英語の「現在進行形」, 「過去進行形」, 「未来進行形」に当たる形はエスペラントにもありますが, ふつうは -as, -is, -os で表します。

つまり, -asは「〜する」と「〜している」を,-isは「〜した」と「〜していた」を,-osは「〜する(つもり)」と「〜している(でしょう」を表します。

ただし, 次のような場合は esti -anta(be -ing)で表します。(主語が複数の場合は esti -antaj)

Li estas mortanta. (He is dying.)
Ili estis mortintaj. (They were dying.)

比較: Ili mortis. (They died.)
〜〜- Kiam mi vizitis lin, li ludis gitaron. (When I visited him, he was playing the guitar.)

(注) mortisestis mortanta の意味で使われることができないのに, ludisestis ludanta の意味で使われるのは, このふたつの動詞の相(aspekto)の違いによります。
動詞の相について, 詳しく知りたい方はここをクリックしてください。


英語の現在完了形は, エスペラントではたいてい -is で表します。

Li venis. (He has come.)
Li ankorau~ ne venis. (He has not come yet.)

ただし, 発話の時点以降も続く状態を表す現在完了形は, -as で表します。

Mi log^as c^i tie dum dek jaroj. (I have lived here for ten years.)

比較: Mi atendis vin dum du horoj. (I have been waiting for you for two hours.)
〜〜〜(あなたが来たので, もう待たなくてもよい。)
〜〜〜Mi atendas lin dum du horoj. (I have been waiting for him for two hours.)
〜〜〜(彼はまだ来ないので, このあとも待つつもり。)

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