実は、昨日、ついにCaravanのステージを見る事が出来ました。
ここ数年、往年のバンドが'80年代の復活ブームとは違う形で、ステージに戻って来ています。
我らが四人囃子もそんなバンドの一つとも言えましょう。
ただ'80年代の復活ブームはある種、商業的なにおいがかなりしたのですが、昨今のそれは、確かに再発ブームがきっかけになっているのは同じとは言え、バンド側にも余裕のある形で進んでいる事もあり、聴く側も肩肘張らずに迎える事が出来ているのが大きな違いじゃないでしょうか??
さて、そんなCaravanの来日ステージは後日レポートするとして、ここのところ続いている'From the Vaults'レビューシリーズ第三弾をお送りしましょう。
そう、'How To Make The Nessy'を含むDisk 3のレビューをお送りします。
但し、これが、これまでで一番の難物でして、申し訳ありませんが、今回はDisk 3の前半部、つまり'ゴールデンピクニックス'期までの'森園囃子'期、そして次回は後半の所謂'佐藤囃子'期分の二回に分けてお送りします。
んでは(^^)/
今回レビューするのは、先にも紹介した'How
To Make The Nessy'を含むDisk 3です。
このDisk 3はこのBoxセットの中でも、かなり異色な一枚と言えます。
これまでのDisk 1及びDisk 2は'ゴールデンピクニックス'発売前までのライブトラックで全てが構成されていました。
今回レビューするDisk 3は全てスタジオ録音のトラックです。
ただ、正規トラックではなく、デモやベーシックトラックがその大勢を占めている訳です。
そんななかでも、殆ど正規トラックのラフミックスやテストミックスで構成されているのが、後で紹介する'ゴールデンピクニックス'版の'泳ぐなネッシー'、その録音パート毎のパーツが公開された所謂'How
To Make The Nessy'が特に注目されるところでしょう。
そんななか、このCDのトップはやはり'泳ぐなネッシー'からスタートします。
収録時期的には、'ゴールデンピクニックス'の録音は、そのライナーノーツによると'76年の1月19日からONKYO
HAUSの第二スタジオでスタートしています。
しかし、'From the Vaults'の記載によると、この'泳ぐなネッシー'は'76年のSONYスタジオでのテイクとなっていますので、同年の2月1日にONKYO
HAUSから場所を移しての録音再開時にレコーディングされたものとも推測出来ます。
このトラック自体は完全な一発録りのようで、多分本格的なレコーディングを行う前に行った曲構成の作り込みの為のスケッチとしてレコーディングされた可能性が高いと思われます。
イントロは、やはり'ゴールデンピクニックス'で付け加えられた印象的なテーマメロディを使用していない、つまり'75年のライブスタイルと同じものです。
実は、これが重要な点で、つまりあのテーマメロディが付け加えられたのは'ゴールデンピクニックス'のレコーディング作業中の事であり、このテーマメロディを使用した演奏はライブでは行われていなかったという事なのです。
そのほかの部分は、以前Disk 1の俳優座音源でも書いたように、曲構成自体はかなり固まっており、遊びの部分はブレークパートで坂下氏が弾くスタンダードナンバーのメロディの借用やテーマに戻る前のコミカルなコーラスパート部分なのですが、さすがに一発録りと言うことで殆どライブスタイルの演奏を確認出来ます。
但し、前半にギターで水音のようなものを森園氏がSE的に出しているところ等、ところどころに後の'ゴールデンピクニックス'版レコーディングで使用される効果音のアイディアを聴く事が出来ます。
ちなみに、後半のコミカルなコーラスパートは、多分当時のスタッフ総出演でやってるんでしょうね???
一番声の大きなのは、多分やはり岡井氏でしょうな??
それと、この部分、後の'パ'行ではなく'タ'行で唄われているのは岡井氏の趣味でしょうか(赤塚不二雄状態....)???
加えて、もう一つ、歌詞もDisk 1やDisk 2と同じで、その部分も'ゴールデンピクニックス'版レコーディング中に末松氏とともに行った作業の結果なのかもしれません。
最後の'なに??'は森園氏の声か???
二曲目からの数トラックは所謂'How To Make The Nessy'、つまり'ゴールデンピクニックス'版レコーディング時のテストもしくはラフミックスが聴けます。
最初に'間奏 Part B'。
ここでは岡井、佐久間氏のリズム録りが中心で坂下氏がピアノでサポートをしているのでしょうか???所謂スリーリズムの録音です。
そして'間奏 Part C'は、多分ほぼベーシックトラックとSEを入れ終わってのダビング作業中のものでしょう。
森園氏のギターソロの録りだと思いますが、多分一部を除いて、本編では使用されなかったようです。
いずれにしても、カウントや演奏直前の音まで納められており、研究材料としては事欠かない素晴らしい素材です。
そしてこの曲の性格を一変させたと筆者が信じているあの印象的なメロディーを含む'Intro〜Theme〜間奏 Part
A'。
ここでは、殆どベーシックトラックや囃子サイドのダビングやSEもほぼ入れ終わっており、多分中村哲氏を招いてのSAXのダビング作業だと思われます。
(ギターは後で差し替えられた可能性もありますが....)
まだ、演奏内容が固まっていないようで、'ゴールデンピクニックス'版とはテーマのメロディーを除いて試行錯誤の段階だったのでしょう。
ただ一つ不思議なのは、この当時はコンピュミックスの卓は無かった筈ですが、ミックスの雰囲気が'ゴールデンピクニックス'版に極めて近い事。
この辺はまだまだ深い謎に含まれた部分(所謂、沼尻マジックか???)です。
この後の'Theme〜Ending'も中村氏のSAXダビング作業。
後のむせび泣くような素晴らしいテナーソロは、このような作業の果てに生まれたのだと思うと、感慨深いものです。
この録音後、いくつかのダビングも行われたのでしょうが、基本的にはここにボーカルがのると'泳ぐなネッシー'の完成版が出来るのでしょうか???
最後は、コミカルなコーラスパートの'間奏 Part C'、頭の部分はテストミックスと言うことでテープの巻き込み音が入っています。
また、岡井氏のカウントの声も確認出来ます。
このテイクはかなりベーシックなもので、その後にかなりの数のダビングが行われたのでしょう。
ただ、コミカルなギターメロはこのテイクが'ゴールデンピクニックス'版でも使用されたのかも知れません。
'泳ぐなネッシー'は、既にご存じのとうり、そして今回公開されたラフ及びテストミックスでも判るように、かなり細かくパート毎の録音が行われ、後にテープ編集で再構成されたものです。
この当時、このような形で一曲を構成する録音は、日本ではそれほど無かった事だと思います。
その点でも、時代の先を行くものだったと言えるのでは無いでしょうか??
ちなみに、これらのラフやテストミックスのテープは録音の節目毎に確認用に行われたものだと思われます。
しかし、これでマルチがもしももしも残っていたら、もっと凄い事になるんですがね.....
さて、CDのトラックリストとは異なりますが、曲としては三曲目の'なすのちゃわんやき'。
こちらは一曲目の'泳ぐなネッシー'と同様のSONYスタジオでのスケッチ的な録音でしょう。
ただ、前回のDisk 2で書いたようにDeep Purpleサポーティングアクト時とまったくアレンジが異なります。
言ってみれば、中村氏在籍時のオリジナルに近いアレンジとなっています。
最終的にはリズムやメロディ構成を含めてDeep Purpleサポーティングアクト時のアレンジがベースとなり、リフ部分にリコーダソロがのって'ゴールデンピクニックス'版が完成したのでしょう。
四曲目の'羊飼いの唄'はクレジットにベーシックトラックとありますが、これは100%、'76年2月1日からのSONYスタジオでのレコーディング作業中のものと言えましょう。
実際、一曲目の'泳ぐなネッシー'、三曲目の'なすのちゃわんやき'のような一発録りと異なり、完全に完成したベーシックトラックです。
佐久間氏のベースがかなりドライブして音の感じやフレーズの端々がYesチックなのは印象的。
ただ、残念ながらご存じのように'ゴールデンピクニックス'に'羊飼いの唄'は収録されず、結局公式にはこのBoxセット発売まで幻となってしまったわけですが、何故、これを外したのか????ここにも大きな謎が....
ちなみに、信濃町のSONYスタジオと言えば、当時アルファレコードのスタジオAと並ぶ、もっとも注目されたレコーディングスタジオでした。
しかし残念ながら、昨年信濃町SONYスタジオは閉鎖されてしまいました。
演奏者本位のスタジオが次々と閉鎖されていくのも、時の流れなのでしょうか......
五曲目から七曲目は'空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ'レコーディング前のデモトラック。
つまり、短期間だったツインキーボード編成期の囃子です。
ベースも佐久間氏に交代していた'75年4月から6月頃の録音ではないでしょうか??
この時期、セカンドアルバムレコーディングの話もあったのですが、結局四人囃子はCBSソニーへの移籍を選び、そのバータのような形でシングル'空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ'を発表したのですが、ここで収録された三曲のデモは、セカンドアルバム向けなのか、シングル向けなのかは、はっきり判りません。
時期的にはやはりシングル向けのものだったのではないでしょうか??
'羊飼いの唄'は間奏のシンセサイザー(多分、茂木氏でしょう)や、ところどころで聴かれるワウを効かせたエレピなどに前述のSONYスタジオテイクとの差が見られますが、アレンジ自体は殆ど完成していたのでしょう。
このワウを効かせたエレピのアイディアは、次に納められた'Buen Dia'で使用される事になります。
ただ残念なのは結局、SONYスタジオテイクを含めてボーカルが収録されたスタジオテイクが存在していないらしいという事。
Disk 2は歌詞聞き取り不能ですし。
'Buen Dia'のほうはイントロのベースとワウをかけたエレピ、白玉のハモンド、そして印象的なドラムを含めて、イントロがちと長いですけどほぼ完成形です。
この曲は、元々囃子向けではなくてCharとのセッション向けに書いたと岡井氏が以前話していましたが、実際スモーキー・メディスンのメンバーから借りたA.C.Jobinの'Wave'に触発されて書かれたという事で、当時の囃子の色合いとは異なる曲調と言えます。
この時のフュージョン的な色合いは、後の'ゴールデンピクニックス'での'レディ・バイオレッタ'で一端の完成を見るわけですが....
そして'カーニバルがやって来るぞ'。
もともと、茂木氏や佐久間氏が居たミス・タッチのオリジナルで、それを森園氏が気に入って囃子として取り上げたとの事ですが、ここで聴ける演奏は、この年の8月に行われた'WORLD ROCK FESTIVAL EASTLAND'のアレンジとほぼ同じです。
後半のドラムブレークがちょっとおもしろいか???。
それと、後半テーマ前のビャンビャいっているのは、多分KORGのシンセ、茂木氏のMini KORG 700Sの音でしょう。
今回はDisk 3の所謂'森園囃子'期までをお送りしました。
'ゴールデンピクニックス'は、大手メジャーのCBSソニーからの発売、しかも300時間のスタジオ作業を経て制作され、当時かなり話題となりました。
当時の話では、CBSソニー側のプッシュもかなりの力の入れ方だったそうで、その後もCBSソニーから数枚のアルバムを出す筈の契約であったという話も漏れ聞いています。
しかし、残念ながら森園氏の脱退により、四人囃子の勢いが一端止まってしまったのは致し方無い事でしょう。
ただ、メンバーに話を聴くとメンバー自身は、'ゴールデンピクニックス'にはそれほど満足していなかったそうです。
この'From the Vaults'発売に併せての雑誌'DIG'のインタビューでも、岡井、佐久間両氏はやはり同じような発言をしています。
しかし、'ゴールデンピクニックス'の制作を通して、'泳ぐなネッシー'は完成したのだと筆者は思うのです。
特に、テーマのメロディー、そして歌詞の練り直しが、この作品を本当に完成させたのだと思います。
そうゆう意味でも'ゴールデンピクニックス'はやはり重要な作品だったのではないでしょうか??
さて、次回は'佐藤囃子'期のデモテイクが収録されたDisk 3後半レビューをお送りします。
それまで、しばしご猶予をm(_ _)m。