“ガン”の基礎知識

 ガンのことを良く知ってはじめて、有効な対策が見えてきますね。
ということで、以下、“ガン”についての基礎知識です。


 “ガン”とは、もともと自分自身の細胞です。

 正常だった細胞が“なんらかの理由”によって勝手に増殖を始め、場所を選ばずあたりかまわず増え続けてしまうものです。その固まりは表面がデコボコになっていますので、たとえば乳ガンではカニがくっついているような外見になることから英語では“cancer”(カニの意味)と表されます。

 では、なぜ勝手に増殖をはじめてしまうのでしょうか?

 それは、“遺伝子(DNA)の損傷・コピーミス”に他ならないと言えます。

 特定の化学物質ウイルス放射線紫外線活性酸素などの直接的、間接的な作用で正常だった細胞のDNAは損傷を受け、細胞分裂の際にコピーミスをしてしまいます。

 人とチンパンジーのDNAの違いは1%もないと言われるように、DNAの持つ超大な情報のほんのわずかなコピーミスでも、それはもはや自分自身の細胞ではなくなってしまうのです。正常な細胞を“自己”とすれば、ミスコピーされた細胞は、“非自己”となります。

 細胞には、そんなDNAの損傷、コピーミスから身体を守る機能がいくつも備わっていますので、簡単にはミスコピーされた細胞が増殖してしまう、つまりガンに侵されるということにはならないのです。
 遺伝子の損傷を受けた細胞やミスコピーされた細胞がガン細胞とすれば、実は全ての人はガン細胞を持っていることになるのです...!


DNAの損傷から身を守る機能

 それは、“免疫機能”に他なりません!

まずは進入を防ぐ!

 DNAを損傷してしまうウイルスなどの進入を防ぐ機能としては、皮膚や粘膜や粘液(目、のど、胃、腸などの)があり、食べ物に含まれるウイルスなどは強力な胃酸によって死滅してしまいます。さらには皮膚や粘膜に住む常在菌などがウイルスなどが体内へ進入してくるのを防いでくれています。

 ビタミンAは、皮膚や粘膜を正常に保ち、粘膜のガンを抑制、免疫機能維持、生殖機能維持といった作用があります。
 βカロチンは必要に応じ、体内でビタミンAに変わります。変換しないものは、抗酸化作用があります。


進入したウイルスなどは、

 進入してしまったウイルスに対しては、リンパ球や白血球の各種免疫細胞にて駆逐されます。

 ウイルスに感染してしまった細胞も破壊してしまいます。

 免疫に関係する細胞も含め、血液中を流れる全ての細胞は“造血幹細胞”から生まれてきます。造血幹細胞は胎児のときは肝臓ありますが、生後は骨髄中に存在します。

 造血幹細胞は骨髄細胞の10万個に一個の割合で存在し、数週間に1回程度の割合で分裂します。分裂した細胞はリンパ系幹細胞マルチ幹細胞へと分かれていきます。

 リンパ系幹細胞は免疫系の細胞ですが、一部は胸腺に入りT細胞となり、他は抗体を作るB細胞となります。

 胸腺は免疫のエリートを育てる大切な教育機関であり、ここで“自己”と“非自己”を見分ける特別な厳しい訓練がなされ、耐えることができるのは1割以下しかありません。合格しない細胞は容赦なく捨てられてしまいます。

 この免疫の教育機関である胸腺は、思秋期が最大で、その後次第に縮小し、60才ではほとんど機能しなくなるようです。しかし、小腸の壁(腸管)に存在するリンパ節の“パイエル板”にはたくさんのリンパ球が集まっていて、ここでT細胞の教育を受け持つようになります。

 リンパ系の免疫細胞としては、他にNK細胞(ナチュラルキラー細胞)があります。
 このNK細胞は“非自己”と認識したガン細胞にパーフォリンという物質で穴をあけて、処理してくれます。

 マルチ幹細胞は単球、マクロファージ、好中級、好酸球、好塩基球、赤血球、血小板に分化していきます。

 T細胞には、ヘルパーT細胞、キラーT細胞、サプレッサーT細胞、そしてNKT細胞(ナチュラルキラーT細胞の4つがあります。

 ヘルパーT細胞には、幼若なTh0(ナイーブT)が分化したTh1細胞とTh2細胞という二つの種類があります。

 Th1細胞は、細胞性免疫と言われ、抗原がウイルスやガンなどの細胞に由来するときに働きます。

 Th2細胞は液性免疫といい、抗原が寄生虫やバクテリアなど血液と組織に関係するときに働きます。

 Th1やTh2は花粉症などにも深い関係があります。

 腸内環境が悪い状態ではTh2が活発化し、全身の粘膜部分でもTh2が活発化しますが、こうなるとガンなどに対して有効な戦いをするTh1の働きが抑制されてしまいます。未消化物や腸内の細菌バランスの乱れによる腸の刺激によってTh1とTh2のバランスに影響してきますので、腸内環境維持は非常に大切になってきます。

 ビタミンB2は粘膜を保護し細胞の再生を助けます。
 パントテン酸(ビタミンB5)は免疫抗体の生産、HDLの増加に働きます。
 ビタミンB6は抗体の生産、免疫機能正常化、アレルギー抑制などの働きがあります。
 ビタミンB12は核酸の合成、タンパク質の合成、修復に働きます。


活性酸素

 細胞のミトコンドリアで作られるSODという酵素が、不要な活性酸素からの害を防いでくれています。このSODの合成能力も二十歳のころをピークに減少の一途をたどります。SODの合成には新鮮なタンパク質、亜鉛、セレン、マンガン、銅、などのミネラルが必要です。SODと同じように活性酸素を掃除してくれる働きのある食べ物を“SOD様作用食品”と言います。栄養補助食品、健康食品としてもさまざまなタイプのものが開発され市販されています。抗酸化ビタミン、カロチン類、ポリフェノール類、アントシアニン類などは野菜や果物などに含まれています。これらをより積極的、効率的に摂取する一つの方法にサプリメントの形で摂取する方法もあります。

 呼吸で摂取する酸素の数パーセントは活性酸素になると言われていますが、それよりも不要な活性酸素は、腸内環境が悪いと大量に発生してしまうことになります。

 抗酸化ビタミンA,C,E、カロチン、ポリフェノール、フラボノイド類(ビタミンP:フラボノイド化合物)、アントシアニン、OPCなどなど植物の赤や黄色、紫、黒など色の付いた野菜、果物、お茶などは抗酸化作用が強い。ニガミやシブミなどの味がするものにも抗酸化作用が強いものが多いです。ミカンやオレンジ、グレープフルーツなどの柑橘類の皮の内側の白い部分はニガイですが、ここにも抗酸化作用が強い成分が豊富です。ブドウの皮や種には特に優れた抗酸化成分、アントシアニンジン(オリゴメリックプロアントシアニジン:OPC)が豊富であり、要注目です!
 ビタミンCはコラーゲンの合成、血管、粘膜、骨の強化、抗酸化作用、抗ガン作用、抗ウイルス、解毒作用、鉄や銅の吸収を助け、ヘモグロビンの合成を助ける働きもあります。その他40種類に及ぶ重要な働きがあります。
 ビタミンEは、発ガン抑制、血行促進、男性、女性ホルモンの生成と分泌に関係し生殖機能維持に働きます。
 
ビタミンC、E、OPCは同時に摂取することで相乗効果が発生し、すばらしい働きとなります。


細胞の修復とアポトーシス

 細胞にはコピーミスが発生したDNAを修復する機能が備わっています。
 修復が困難な細胞はアポトーシス(自然死)を起こして排泄されます。

 もし、このアポトーシスのシステムが破壊してしまった場合にも、細胞はガン化して増殖を繰り返すことになってしまいます。しかも、ガン細胞はbc1-2というタンパク質を大量に生成してアポトーシスが起きないようにしてしまうこともあるようです。本来、bc1-2は正常細胞が間違ってアポトーシスを起こさないように監督するタンパク質です。

 またさらに、ガン細胞は“テロメラーゼ”という酵素を持っています。
 正常細胞なら染色体の末端部分にあるテロメアが細胞分裂の度に短くなり50〜60回分裂した時点で約半分の長さになります。そのとき正常細胞はアポトーシスを迎えるハズですが、ガン細胞の場合、テロメラーゼがテロメアを合成し、短くなったテロメアを伸ばすためその結果、いつまでもアポトーシスをすることなく生き続ける、ということになってしまいます。


ガン抑制遺伝子

 p53遺伝子から作られるp53タンパク質は、DNAの損傷や酸素の欠乏を監視しています。
 さらに、損傷を受けたDNAの修復が可能か、あるいは修復不可能かを判断するときの中心的な役目もしています。

 修復が不可能と判断したときは、その細胞のアポトーシス(自然死)を促します。

 修復が可能と判断した場合は、p21遺伝子に命令を発し、p21タンパク質を作らせ、細胞分裂を、一定のタイミングで一時停止させます。その間にp53タンパク質がDNAの損傷を修復するのです。
 修復が完了すると、p21タンパク質は、一時停止した細胞分裂のサイクルを再開させます。

 これらのガン抑制遺伝子が損傷した場合は、ガンを抑制できない、つまりガンが発生してしまうことになってしまいます。

 遺伝子は23種類の染色体を2セット持っていて、全ての遺伝子は2個づつあることになります。
 ガン抑制遺伝子の場合はその両方とも損傷した場合に、細胞はガン化してしまうことになります。
 

腸内環境

 腸内には100種類以上100兆個の細菌が住み着いています。
 腸内にさまざまな細菌が草むらのように住み着いていることから“腸内フローラ”と言われています。
 人間の細胞の数が約60兆個ですので、細胞の数より多く、重さは全部集めると肝臓程にもなるとか!
 もはや立派な臓器ですね!しかも
非常に大切な臓器ということが言えると思います。

 生まれたばかりの赤ちゃんには、腸内細菌はいません。
 このため、急に悪い菌が入ってきてしまった時には予想できない障害が発生してしまいます。
 赤ちゃんにハチミツは与えないように、と言われていますが、この理由は未熟な腸内細菌のバランスのときに、ハチミツに含まれている可能性があるボツリヌス菌が腸内で増殖してしまい、乳児ボツリヌス症が発症してしまう危険があるからです。1986年には実際に発症例があるようです。厚生省はこの事例があってから通達を出して、現在に至っています。

 腸内環境が正常な状態としては、善玉菌が80%、悪玉菌が20%の割合で存在するときです。
 もちろんその為には消化が正常であったり、腸のぜん動運動が活発であったりすることも重要になってきます。
 腸内環境が正常な状態なら、いわゆる悪玉菌としていた大腸菌などでも、ニトロソアミンやベンツピレンなどの発ガン物質や有害物質を分解したりする働きもあるのです!

 善玉菌は加齢と共に減少する傾向ですが、悪玉菌は反対に増加してしまう傾向です。
 40才以降では、積極的な腸内環境正常化を実施することこそが、成人病(生活習慣病)の予防に大きく貢献するのではないでしょうか!?

 腸内環境維持のためには、食物繊維、乳酸菌類、ビタミンC、オリゴ糖、良質な水、そして適度な運動が大切です。とくに“食物繊維”と“良質な水”は非常に大切ですので意識して考えて取り組みましょう!


善玉菌:

 乳酸菌(ビフィズス菌)、好酸性乳酸菌(アシドフィルス菌)、ブルガリア菌、ブレビウス菌、サリベリア菌、酪酸菌などなど。

 乳酸、酪酸、核酸、酵素、アミノ酸、ビタミンB1、B2、B3(ニコチン酸)、B5(パントテン酸)、B6(ピリドキシン)、B12(コバラミン)、ビタミンK、イノシトール、葉酸、などを合成。


悪玉菌:

 大腸菌、ウェルシュ菌、ぶどう球菌、連鎖球菌、シュードモナス、バチルスなどなど。

 胃では潰瘍を発症する原因として、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が有名ですが、大腸ガンの発生に関係する菌としては、スタフィロコッカス・ルドゥネンシス、ストレプトコッカス・ボビス、ラクトバチルス・プランタルム(乳酸菌の一種)などがあるようです。

  スタフィロコッカス・ルドゥネンシス、ストレプトコッカス・ボビスは、お茶の渋み成分であるタンニンを分解する働きがあり、タンニンを分解し、没食子酸に変え、さらにピロガロールというものに分解しますが、この過程でたくさんの活性酸素を放出するため、腸の細胞(DNA)を傷つけガンの発生を促すようです。

 悪玉菌は、有害物質として、インドール、スカトール、フェノール、アンモニア、フェニル硫酸塩、プトマイン、ピロール、カダベリン、イソアミラミン、エチルアミン、イドロキシル・フィネルなどを生成。


核酸

 核酸とは、DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)の核酸です。
 DNAは遺伝子そのものです。
 RNAは遺伝子の命令によって様々なタンパク質を合成します。
 核酸は細胞分裂するとき、痛んだ細胞を修復するとき、細胞を補うときに必要となります。

 肝臓では、アミノ酸などから新たに核酸を合成しますが、これは“デノボ合成による核酸”と言われます。

 一方、食べ物から得られる核酸の原料から、再合成される核酸もありますが、これは“サルベージ合成された核酸”という表現がされています。

 核酸の合成能力は20才以降、衰えてしまいます。
 肝臓で合成されますので飲酒などで肝臓が疲れたりしても核酸の合成能力は落ちてしまいます。

 ガン細胞が増殖するときにも核酸が必要になります。
 その核酸は“デノボ合成”された核酸が優先して使われます。

 正常細胞は細胞の増殖や修復のためにどちらかと言うと、“サルベージ合成”された核酸を優先して使うようです。

 つまり、核酸が豊富な食べ物を食べることによって、体内の核酸はデノボ合成された核酸よりサルベージ合成された核酸を多くすることができ、このためガン細胞より正常細胞での核酸の利用が増えますので、ガン細胞は自己増殖のための材料である核酸を利用しにくくなるのです。

 うまくすれば、ガンの増殖を抑えることもできるようです。

 葉酸(フォリック酸:ビタミンM)はタンパク質と核酸(DNA、RNA)の合成に働きます。
 パラアミノ安息香酸(PABA)は体内で葉酸が合成されるときに不可欠。腸内有用菌の繁殖を促す。
 パントテン酸の吸収促進、効果を高める、紫外線から皮膚を守るといった働きもあります。

酪酸

 腸内の酪酸菌が作り出します。

 腸内の癒しの菌とも言われる酪酸菌ですが、食物繊維を分解し酪酸を生成するのですが、この酪酸はガン細胞の増殖を抑制する優れた働きがあるようなのです!

 酪酸は現在のガン研究においても、“ガン細胞の増殖抑制の目的”で使用されています。

 赤ちゃんの整腸剤として有名な宮入菌の“ミヤリサン”はまさにこの酪酸菌であるわけです。
 酪酸菌は、腸内の癒しの菌という言い方もされているようです。


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