糖尿病について


1・糖尿病の基礎

2・血糖値が上昇してしまう理由

3・糖尿病治療

  3.1・人工甘味料がカロリー摂取量を増やす

  3.2・運動療法

   (1)太股水平足踏み運動
   (2)ダンベル体操

4・栄養素療法

5・糖尿病の改善、治療に必要な栄養素は

  5.1・ミネラルバランス

  5.2・亜鉛とクロム

  5.3・ビタミンB群

  5.4・食物繊維

  5.5・ビタミンC

6・糖尿病の合併症治療

7・グリケーション

8・分子矯正医学から薦められる食事

9・毛髪分析

10・真剣に症状改善・根治を目指すには、積極的な栄養素摂取が望まれます



1・糖尿病の基礎

 糖尿病の「糖」とはご存じ、体の中にあるブドウ糖の事です。

 食べ物(糖質、タンパク質、脂質)は消化・吸収されますと、まず肝臓に運び込まれます。ブドウ糖は肝臓でグリコーゲンという物質に再合成されます。残りのブドウ糖は血液に混じって体の中の各臓器、器官のエネルギー源として細胞に運ばれます。各器官での量が十分になると、余ったブドウ糖は脂肪細胞によって脂肪に作り変えられ体中に蓄えられる訳です。細胞まで運び込まれたブドウ糖はうまく細胞の中に入り込むことができれば細胞内のミトコンドリアという器官でATP(アデノシン-3-リン酸)となりエネルギーとして利用されることになるのです。

 われわれの生命活動は筋肉の動きから脳細胞の働きに至るまで全て、このようにして生み出されるエネルギーによって営まれています。

 このブドウ糖の血中濃度はうまく調整されていれば、空腹時で90〜100mg/デシリットルです。この量の調整にはグルカゴンやアドレナリン、コルチゾルと呼ばれるホルモンが関係してきます。

 この血糖値が「何らかの理由」により高くなってしまい、本来なら捨てられることのないはずの貴重なエネルギー源であるブドウ糖が尿に混じって捨てられてしまう現象を、一般に糖尿病と言っているわけです。糖尿病というとその名前から、必ず“尿中に糖が出る病気”と思われがちです。確かに、尿にブドウ糖がもれ出すこともありますが、その出方は人によってまちまちで、まったく出ない人もいるのです。このため、正しくは高血糖こそが糖尿病の本質なのです。


 高血糖状態が続くと、しだいに体を蝕んできます。高血糖の状態が何年も続くと、体内のブドウ糖をエネルギーに変えるなどの働きが悪くなり、またタンパク質や脂質の利用も悪くなっていきます。さらに、そうした異常による影響が体中の血管や神経にも及び、やはりそれぞれに異常をもたらします。こうして最終的には、全身のいろいろな臓器の働きが低下する事態を引き起こしてしまうわけです。

 このように、糖尿病は単に血糖値が高くなる病気として捉えるだけではなく、 高血糖をきっかけにして全身をむしばむ全身病と考える必要があります。


JDS(日本糖尿病学会)の新病型分類・診断基準について

 (1999年5月)


 (1) 空腹時血糖値(FPG 126mg/dl以上)

 (2) 経口糖負荷試験(OGTT) 2 時間値200mg/dl以上

 (3) 随時血糖値200 mg/dl以上

 以上の3項目のいずれかに該当する場合を「糖尿病型」と判定し、別の日に行った検査で「糖尿病型」であることを 2 回以上確認できれば糖尿病と診断してよいとしている。

 ただし、

 (1) 糖尿病特有の症状(口渇・多飲・多尿・体重減少)の存在

 (2) HbA1c ※  6.5%以上

 (3) 糖尿病網膜症の存在

  以上のいずれかの条件が満たされる場合は、1 回の検査で「糖尿病型」であることを確認しただけでも、糖尿病と診断できるとしている。

正常域

糖尿病域

従来

改正後

空腹時

<110

≧140

≧126

75g OGTT 2時間値

<140

≧200

≧200

75g OGTT 値の判定
両者を満たすものを 正常型とする

いずれかを満たすものを糖尿病型とする

正常型にも糖尿病型にも属さないものを境界型とする

                        (数値:静脈血漿値、mg/dl)




JDS(日本糖尿病学会)の科学的根拠に基づく糖尿病ガイドライン2004 よ抜粋

指標 コントロールの評価とその範囲
不可
不十分 不良
HbA1c(%) 5.8未満 5.8〜6.5
未満
6.5〜7.0
未満
7.0〜8.0
未満
8.0以上
6.5〜8.0未満
空腹時血糖値
(mg/dl)
80〜110
未満
110〜130
未満
130〜160未満 160以上
食後2時間血糖値
(mg/dl)
80〜140
未満
140 〜180
未満
180〜220未満 220以上

「HbA1c」の「6.5%」は、「グリコアルブミン(GA)」の20%に相当する。
「グリコアルブミン(GA)」は、過去3〜4週の血糖調整の状態を表す。
 (健常者の基準値は、11.8〜16.3%)



HbA1c(ヘモグロビン・エイ・ワン・シー:glycosylated hemoglobin)について
 赤血球には、酸素運搬を担う鉄を含んだヘモグロビン(Hb)という蛋白質が含まれています。
 ヘモグロビンにはA1,A1a,A1bなどいろいろな種類がありますが、HbA1cはグルコースと結合したものです。このHbA1cは周囲つまり血液中のグルコース(ブドウ糖)が多ければ多いほど、さらにその時間が長ければ長いほど多く生成します。
 つまり、血糖値が高い状態が長く、またその量が多いほどより多く生成されるということです。
 赤血球の寿命は約120日ですから、血液中におけるHbA1cの量を測定すれば、採血時の状態ではなく、およそ1〜3ヵ月間の平均として、どのような血糖値の状態であったか示されることになります。


アメリカにおける参考データ

 The American Diabetes Association (ADA) currently recommends that the HbA1c be maintained under 7%.

 HbA1cと血糖値の関係

4%

60 mg/dl

8%

180 mg/dl

5%

90 mg/dl

9 %

210 mg/dl

6%

120 mg/dl

10%

240 mg/dl

7%

150 mg/dl

11%

270 mg/dl

12%

300 mg/dl

13%

330 mg/dl



2・血糖値が上昇してしまう理由

 細胞にまで運ばれたブドウ糖ですが、正常ならすんなりと細胞に入り込める訳ですから、よほど大量にブドウ糖が運ばれて来ない限り血液中の濃度が極端に高くなる事はないはずです。ブドウ糖が細胞に入り込むためには、ご存じインスリンが必要となってきます。細胞にはブドウ糖が入ることができる鍵の掛かったドアがありますが、その鍵を開けるのがインスリンなのです。細胞に入り込むことができるブドウ糖は必ずインスリンが一緒でなければならないのです。

 インスリンがほとんど作れない場合は「インスリン依存型」で、これは先天的なことが多く子供のかかる糖尿病はほとんどこの型ですが、患者数全体の約1割程度でしかないようです。

 残りの約9割は「インスリン非依存型」と呼ばれ多くの場合、中年以降に発病する成人病(生活習慣病)としての糖尿病です。一次性糖尿病や二次性糖尿病といった分け方もあるようです。


 細胞膜にある、インスリンのカギを受け付けるカギ穴(インスリン受容体=インスリンレセプター)ですが、近年の研究ではこのカギ穴の数やその感度が問題となっておこる場合が考えられてきました。


 糖尿病が起こる要因を考えますと、 

 1.インスリンの量が絶対的に不足の場合。

 2.インスリンの量が不足ぎみになる場合。

 3.インスリンの量は十分であるが、うまく働けない場合

となります。

 まず、インスリンの量が絶対的に不足している場合は、膵臓の障害などでインスリンを製造する能力がほとんど無い場合です。これはインスリン依存型ということになります。

 次ぎに、インスリンが不足ぎみになる場合とは、インスリンの製造能力は正常でもせっかく作られたインスリンが膵臓から出にくくなっている場合が考えられます。膵臓のランゲルハンス島というおもしろい名前の組織にあるβ細胞は、食事をして血液中の血糖値が高くなったと感じると、速やかにインスリンを分泌します。しかし、β細胞の反応が悪いとインスリンの分泌が遅くなってしまうために、結果的に不足している状態になるのです。

 最後に、インスリンがうまく働けない場合ですが、細胞にあるインスリンのカギ穴(インスリンレセプター)の数が少なかったり、カギ穴の感度が悪い場合、カギ穴が見つけずらい場合、またはカギが差し込まれてもドアが不調でなかなか開かない場合などであり、これらを「インスリン感受性の低下」、あるいは「インスリン抵抗性の増加」と呼んでいます。

 実際に糖尿病になるには、このような要因を起こしやすい素質があった場合これに糖尿病になる誘因が重なったとき、初めて糖尿病になると考えられています。その誘因とは、肥満、ストレス、妊娠、加齢などが考えられます。肥満になると、体脂肪が増え、インスリン抵抗性の増加を起こしてしまいます。ストレスを受けると自律神経系や副腎などからグルカゴンやアドレナリン、コルチゾルなど様々なストレスホルモンが分泌されますが、これらのホルモンは血糖値を上げる働きがあります。妊娠した場合には、ビタミンB群のなかでもとくにB6が不足する傾向にあります。B群は連帯して糖分を分解する働きがありますが、どれもある程度の量が必要なのです。妊娠してB6が不足気味になると、糖分を分解する働き全体に影響してしまいます。こうしてうまく糖分が代謝できなくなった場合にはブドウ糖が余ってしまうことになります。

 さらに、糖尿病を引き起こすインスリン抵抗性増加の原因は、糖尿病ばかりか本態性高血圧、肥満、冠動脈硬化などの原因とも共通しているということが考えられます。インスリン抵抗性の増加にその原因があると考えられる、これら4つの病気を「インスリン抵抗性症候群」、または「X症候郡」と呼ばれたりします。X症候郡とは「原因がわからない」という意味です。本態性高血圧の「本態性」の意味もやはり「原因がわからない」という意味なのです。

 インスリン抵抗性増加の状態では、食事をして血糖値が上昇したときに、膵臓はひたすらがんばてインスリンを生産し、感度の悪い細胞になんとかブドウ糖を入れようとします。このため、血糖値も高いがインスリンの値も高いという状態になります。インスリンが多いと食欲が強くなり食事の量が増えその結果ますます血液中の糖分は多くなり、余ったインスリンはやがて肝臓で分解され中性脂肪になるため、なおさらインスリン抵抗性増加に働きます。この状態が長く続くとやがて膵臓は疲れ果て、こんどは正常にインスリンを生産することさえできなくなってしまいます。こうなってしまうとインスリン依存型の糖尿病と同じで、インスリンの投与なしては危険な状態になってしまうのです。

 ランゲルハンス島のβ細胞はインスリンを分泌する細胞ですが、もしも薬物や細菌の侵入があったときは、強力な酸化作用をもつ活性酸素を出しそれらを消し去るように働きます。余った活性酸素はすごく危険ですので、細胞内ですばやく除去されるのです。このような一連の働きは体を守る生体防御作用の一つで、他の細胞でも同じ反応が繰り返されています。しかし、なぜかβ細胞では余った活性酸素を除去する働きが弱いのです。このため、活性酸素が継続して作られる状態になるとβ細胞は自分が出した活性酸素により傷害を受けてしまい、インスリンの元となプロインスリンの製造が損なわれたり、β細胞自体が機能停止してしまいます。



3・糖尿病治療

 以上のような糖尿病ですが現在、多くの医療機関での治療の中心は、食事療法と運動療法、そして薬物療法(飲み薬、インスリン投与)であるようです。

 食事療法は主として、

  1.動物性脂肪の摂取を減らす。

  2.炭水化物の摂取を減らす。

  3.砂糖は特に減らす。

 ということが言われています。

  つまり、カロリーの摂取量を減らすのが食事療法の中心なわけです。血液中のブドウ糖をうまく処理できない糖尿病ですから、できるだけ血液中のブドウ糖の量を増やさないということを考えれば当然の発想です。しかし、このような食事指導では対症療法的なものであり一時しのぎでしかなく、根本的な問題解決とはならないと思うのです。

 この中で「砂糖は特に減らす」と言われていますが、これは糖尿病に限ったことではなく、一般の健康維持にも非常に重要です。

 砂糖、つまりショ糖(シュクロース)ですが、これは二糖類といわれものでブドウ糖(グルコース)と果糖(フラクトース)が1:1で結合したものです。砂糖を摂取すると簡単にブドウ糖と果糖に分解され、すぐに吸収されます。このため急激に血糖値が高くなり、インスリンも急いで分泌する必要が生じ、この結果すい臓への負担が大きくなります。ブドウ糖の代謝のためビタミンB群も急に多く必要になります。問題は果糖です。果糖は果物や蜂蜜にも含まれますが、砂糖で急に摂取すると、一部はブドウ糖と同じようにエネルギーに代謝されず、グリセロール、そしてアルファーグリセロン酸に変えられ、トリアシルグリセロースという中性脂肪の合成に使われてしまうのです。このことは、果糖はブドウ糖より脂肪として体内に蓄積されやすいということが言え、つまり砂糖の摂取は中性脂肪の増加、コレステロールの増加を招き長い間には動脈硬化、心臓病などのリスクを増やしてしまうことになります。また、血液中の中性脂肪増加はインスリン抵抗性増加を招きますので、砂糖を減らす意味は非常に多くなります。麦芽糖はブドウ糖が二つ結合した形ですので、果糖は含まれません。また、黒砂糖は果糖もふくまれますが、糖分の代謝に必要なビタミンなども多く含まれますので、白い砂糖よりは良いと思われます。



 3.1 ・人工甘味料がカロリー摂取量を増やす

 最近のある研究によると、人工甘味料が添加された清涼飲料水は、カロリーの摂取を増やし、体重を増加させる疑いがあります。運動中に人工甘味料で味付けされた清涼飲料水を飲む人たちは、ただの水やしょ糖で味付けされた清涼飲料水を飲む場合にくらべて、160〜190キロカロリー多い昼食を食べていた、ということです。

 人口甘味料は、甘いですがエネルギーにならないため人体はその対処に困ってしまいます。お腹がすいたという感覚は、血糖値が低下したために起こるようですが、人口甘味料では、糖分として消化されないため、エネルギー源としてのブドウ糖を得るため、より多く食事を摂取してしまう、とも考えられます。

 この他、人口甘味料(特に非糖質甘味料)は、本来人体がもっている糖分の代謝機能を損なうおそれがある、という指摘もされています。特に子供にはあまりたべさせたくないと思います。人口甘味料の多くは、腸で吸収されませんから、甘い物を食べてインシュリンが分泌されても、肝心の代謝する対象である糖分がないという事態が生じてしまいます。甘い物は、やはり黒砂糖や麦芽糖、オリゴ糖などを適量利用するのが良いのでは?と思います。

 非糖質甘味料:ステビオサイド、グリチルリチン、サッカリン、アスパルテームなど。

 糖質甘味料:ソルビトール、マルチトール、パラチノース、カップリングシュガー

      (ソルビトールとマルチトールは、消化されずらくエネルギーとなりにくい)



 3.2 ・運動療法

 運動療法は、血液中のブドウ糖を積極的に燃焼し、血糖値を下げる向きに働きますので、重要であると思います。また筋肉がある程度維持できていれば、少ない運動でも効率良く ブドウ糖を燃焼することができます。ですが、実際に運動療法を行うときには糖尿病の程度により行うべき運動の量やタイミングがありますので、医師との相談が必要になってきます。運動のしすぎで、低血糖状態になれば高血糖より危険な状態となってしまいます。

 お手軽でそれなりに効果が上がりそうな運動に、「太もも水平足踏み運動」が良さそうです。

 これは、健康雑誌「ゆほびか」にもたびたび紹介されています。

 (1)太もも水平足踏み運動

 方法は至って簡単で、その場で(できれば両手を大きく振って)太ももを水平まで上げる足踏みを片足150回(両足で300回)を目標に行うというものです。始めは自分の体力に合わせて少しずつ目標回数まで行うと良いそうです。高齢の方は無理をしないで、半年や一年かけて目標回数までできるようにするといいと思います。毎日つづけることが大切です。

 詳しくは「ゆほびか」などの紙面をご覧になって頂ければ幸いです。

 いろいろな効果が言われていますので、試して見る価値は十分にあると思います。


 このほかに有効性を確認できているものに、”ダンベル体操”があります。

 (2)糖尿病とダンベル体操

 50歳を越える熟年者の5人に1人、総計で1千万人が糖尿病に悩まされているとの推計発表がありました。中年を過ぎると糖尿病が発症する主因は、筋肉の現弱化にあります。

 体内で血中ブドウ糖を取り込んで分解する中心的な組織は、脳と筋肉です。脳は全身が消費する血糖の25%前後をエネルギー源として分解しています。一方の筋肉は安静下で経口摂取したブドウ糖の70%前後を数時間で取り込み代謝します。

 その筋肉は、中年から始まる体タンパク質合成力の低下によって減弱化していきます。飲食物から取るデンプンや糖分の処理能力が低下して、高血糖・糖尿病へと進んでいくわけです。

 したがって糖尿病を改善するには、体タンパク質合成を活発化して筋肉の増量と代謝活性を高めればよいことになります。その具体策としてダンベル体操が超効果的であることが、多数の経験者によって確認されています。

 糖尿病の専門医でご自身も糖尿病に悩んでいた医師では、食事制限なしで2ヶ月間、ダンベル体操をしただけで糖尿病が解消したとの報告もあるようです。 一般にダンベル効果は2〜3ヶ月で確認されるよでうです。

 ところで、糖尿病の改善には食事制限が常識となっていますが、減食は筋肉の量を減らし、活性を低下させてしまうので問題です。糖尿病の医者が実践したように、食事をきちんと食べながら、筋肉を鍛えて血糖処理能力を増大していくダンベル体操法は、糖尿病改善の本道といえるでしょう。

 ではダンベル体操に励みましょうとなりますが、決して重いダンベルを使わないことが大切です。ウェートトレーニングで増える筋肉は白筋です。白筋は赤筋に比べてブドウ糖の分解力が弱い筋肉です。力士に糖尿病が多いのはそのためです。赤筋を増やすには、エアロビック効果を発揮する軽量ダンベル体操が役立ちます。しっかり握りしめてゆっくり動かす、動作を止めない、がポイントです。



4・栄養素療法

 普段の食事において、何をどれだけ食べればどんな栄養素がどれだけ摂取できるか、ということを考えて食事をしているわけではないと思います。ということはつまり、我々がまがりなりにも生命を維持できているということは、偶然にも必要な栄養素が摂取できているということになります。しかし、これでは必ずしも十分な量の栄養素が摂取できているかはなはだ疑問です。近年の食事ではカロリー過多といわれ食物繊維や各種ビタミン、ミネラルなどの微量栄養素は不足という偏った栄養摂取状態にあるという事実があります。

 糖尿病をはじめ肥満、動脈硬化や心臓病、ガン、アトピー、花粉症など疾病の増加は改めて言うまでも無いと思います。この原因の一つに栄養摂取状態が深く関係していると考えても無理はないと思うのです。


 栄養素療法とは、分子矯正医学に基づく療法であり人工的に化学合成された薬品などを用いるの対症療法ではなく、本来人体が必要とする栄養素(特にビタミンやミネラルなどの必須微量栄養素)の働きを正しく理解し、不足している栄養素を積極的に摂取し、栄養バランスを正常にすることにより、体の各臓器、器官を健全な状態にし自己治癒力を向上させることにより治療を目指すものです。治療目的でなくとも健康維持、病気の予防という意味において、これほど重要なものはないと思います。もちろん栄養素だけで健康は語れませんが、最低限どうしても必要な「必要条件」であると思います。


 分子矯正医学(Ortho-molecular Medicine)とは、ノーベル賞受賞者で今世紀最大の生化学者といわれるライナス・ポーリング博士が1968年に体系化したものです。日本では、三石巌先生らが分子生物学を基礎とする正常分子栄養学というものを提唱されています。栄養素療法で用いるものは普段食事として口にしている「栄養素」であり、副作用などもなく現代医学で広く用いられる医薬品とは根本的に違うのです。医薬品は本来人体には全く必要の無い物質を用い、そのことにより起こる生体反応を利用するものであり、いわば体をごまかしているとも言えるものです。必ず副作用が付きまといます。単なる風邪薬といえ深刻な副作用があるためその用法用量が厳しく規定されているのです。

 (余談ですが、分子矯正医学の反対に薬物を用いる現代の医学を「分子毒性医学」などと言っている人もいます。)


 分子矯正医学からの考えでは、臓器、器官の不調の原因を細胞レベルの栄養素の働きから考えます。人間の体はすべて口から摂取した食品からできています。その食品にはさまざまな栄養素が含まれています。3大栄養素と言われる、炭水化物、タンパク質、脂質は大量に必要なものであるため、古くから重要視されてきました。しかしビタミンやミネラルといった微量栄養素は、潤滑剤程度の働きしかないものと取り扱われてきたため、あまり重要視されてこなかったようです。しかし、微量栄養素は極微量でも生命のかぎを握っているもので、その必要度という意味では3大栄養素と全く同じなのです。ただその量がミリグラム、マイクログラムと小さいだけで、非常に重要であるという点では全く違いがないのです。逆に量が少ない分見落とされがちであるということから、不足してしまうこともあるのです。


ところが、、、、

 現代医療法に根ざした本による糖尿病の説明では、その原因をインスリンの生産能力が低い、インスリン抵抗性の増加などである、とする説明に終始しています。なぜインスリンの生産能力が落ちるのか、なぜインスリン抵抗性増加がおきるのかといった説明はほとんど無なのが現状です。その治療方針にしても、「血糖値のコントロール」ということに主眼が置かれ、決して根本的な事態の解決にはなっていないと思うのです。


 薬物療法では、スルフォニル尿素剤やビグアナイド剤などの経口血糖硬化剤などを使い、無理にインスリンの分泌を促したりブドウ糖を細胞に押し込んだりします。この場合は胃腸障害や低血糖などの副作用が起こることがあります。またインスリンそのものを使う場合がありますが、インスリンの生産がほとんど期待できない場合はインスリンの投与はどうしても必要になります。ブドウ糖を細胞に押しこむ働きのある薬品を使うというのは、細胞のインスリンレセプターの数が少ない、感度が悪いなど、糖尿病の原因となる細胞のインスリン抵抗性増加に対する対症療法であるわけです。


 多くの医者は治療の最終目的を「血糖値を下げること、コントロールしてくこと」、として治療を行うようです。このため、健康診断などで糖尿病の傾向が見つかると「あなたは糖尿病です。一生付き合っていかなければならなりません。」ということになり、患者の不安感をひたすらあおることになります。これでは患者はあまりにかわいそうです。


 糖尿病の治療でこれまでその最終目的としていた血糖値のコントロールは、実は糖尿病治療のひとつの手段にすぎず、本当の治療は実はもっと根本的なところにあり、その根本的な問題をひとつづつ解決することができれば、これによって劇的な改善、根治を目指すことが可能であると思えるのです。



5・糖尿病の改善、治療に必要な栄養素は、

 まず、第一にミネラルバランスです。とくに細部のイオンポンプ作用を正常に保つために重要なカルシウムとマグネシウムのバランス。次ぎに、すい臓でのインスリン生産には無くてはならない亜鉛。インスリンレセプターを正常に保つ働きに重要なクロムです。そして、ブドウ糖をエネルギーとして利用するために必要なビタミンB群です。さらに、インスリンレセプターの感度を低下させてしまう血中脂肪値を低下させる意味で食物繊維(特に水溶性)が重要です。ビタミンCも重要で血中脂肪を効率よく排泄させたり、後で述べる合併症の問題を低下させる等の意味で積極的に摂取すべきであると思います。



 5.1・ミネラルバランス

 ミネラルバランスを考えるとき、まず第一にカルシウムマグネシウムのバランスが重要になってきます。カルシウムマグネシウムはその作用が拮抗していることが知られています。拮抗とはお互い反対の働きをするということですが、細胞の働きを正常に維持するためには両方とも重要なものなのです。その所要量も成人男性でカルシウムが600mg、マグネシウムが300mgと、ほかのミネラルに比べかなり大量に必要とします。

 細胞のイオンポンプ作用の不調というイオンレベルの代謝異常こそ、糖尿病をはじめ、高血圧、肥満、冠動脈硬化の原因であるという説が発表されています。イオンポンプの不調を招くのは、細胞レベルでカルシウムイオンの増加に対してマグネシウムイオンの不足であると言われています。

 日本ではカルシウム不足という言葉は良く耳にしますが、マグネシウム不足という言葉はあまり耳にしません。ごく最近になってTVコマーシャルでやっと「カル2、マグ1」という言葉を聞くようになりましたが、カルシウムマグネシウムをバランス良く十分に摂取するという事の重要性は、突然死を含め成人病(生活習慣病)予防におても非常に重要な意味があるのです。この事を裏づける話はたくさんあるのです。

 また、カルシウムの摂取不足という言葉は聞きまますが、カルシウム不足に追いやる、ビタミンの摂取不足と甘いもの(砂糖)の捕りすぎなどは、残念ですがほとんど問題提起さえていません。

 カルシウムは、良く知られるように血液中のpH値を保つという働き以外にも細胞間の信号伝達において重要な働きがあります。筋肉を動かすにも神経細胞においても信号伝達の重要な役目を担っています。

 カルシウムが極端に不足すれば神経細胞の働きにも深刻な影響が出て、思考力、判断力の低下、道徳性の低下などいわゆる「脳髄変質症=エンセファロバチア症候群」として現れます。最近問題になっている青少年の道徳心の低下と思えるさまざまな事件も、糖分摂取過多などの食生活の問題によって引き起こされるカルシウム不足が原因かもしれません。

 筋肉を動かすときには、細胞にナトリウムイオンやカルシウムイオンが入り込むことによって筋肉を収縮させなさい、という命令が伝わります。このときは細胞外液の濃度のほうが細胞内の濃度より高いため、細胞膜にあるそれぞれのチャネル(通路)が開くだけで簡単にそれらのイオンが入り込むのです。この信号が続けざまにやってきた場合、一度入り込んだイオンをより濃度の高い細胞外液に運び出すことができなければ、細胞内にはナトリウムイオンやカルシウムイオンが増えてしまうことになります。こうなるとその細胞には新たに信号が伝達されずらくなり、濃度を下げようと水分が増えたり無理が働いてしまうことになります。特にカルシウムが細胞内に増えることにより深刻な影響があるのです。細胞内にカルシウムが沈着してしまえば、もはやその細胞は新たな信号を伝達することはできなくなり、このことは細胞の石灰化つまり細胞の死を意味します。このような細胞の石灰化が冠動脈で起きた場合は血管の弾力を失なうことになり、つまり冠動脈硬化の原因の一つとなっているのです。


 冠動脈の硬化ばかりか、細胞内にカルシウムイオンが増えるということは、ひとつ一つの細胞の働きが弱るということですから、細胞の固まりである人体にも深刻な影響が出てくることになります。成人病(生活習慣病)の多くは、細胞内にカルシウムが増えてしまうということが原因とも考えられるのです。細胞内にカルシウムが増える原因には他に、活性酸素により細胞膜が破壊されてしまう場合もあります。

 細胞内のカルシウムやナトリウムを細胞外へと運び出すにはイオンポンプ作用が必要です。このイオンポンプ作用に重要な役目をするのがマグネシウムなのです。

 イオンポンプ作用とは、濃度の低い細胞内液から濃度の高い細胞外液へとナトリウムイオンやカルシウムイオンを運びあげる働きのことで、ポンプですから当然エネルギーを必要とします。このエネルギーも食品から摂取したブドウ糖を原料にして作られるATPに依存しています。ナトリウムやカリウムを運ぶイオンポンプに使われるATPの量は、人体で作られるATPの総量の1/4もの量が使われます。このことから判断してもイオンポンプのもつ重要性がわかります。このイオンポンプのエネルギーを得るには、ATPを「ATP分解酵素」によって分解しなければなりませんが、このATP分解酵素はマグネシウムと結びついてはじめて働くことができる「マグネシウム酵素」のひとつなのです。このため、いくらブドウ糖が十分にあり、ATPがたくさん作られても、マグネシウムがなければイオンポンプが働くことができないということになるのです。

 糖尿病ではないのですが、突然死の原因もマグネシウム不足が疑われます。心臓は休み無く緊張と収縮を繰り返しています。つまり、ここでもカルシウムとマグネシウムが無くてはならないのです。マグネシウム不足から心臓の冠動脈が痙攣し血流が停滞すると、心筋への酸素や栄養補給が滞るため心筋梗塞となってしまいます。マグネシウム不足による痙攣の例は、目蓋がピクピクと動く軽い痙攣を経験したことはないでしょうか? また、マラソン選手に代表される長時間の筋肉の運動が要求されるスポーツにおいてもカルシウムマグネシウムは非常に重要なミネラルであると言えます。


 5.2・次に重要なのは亜鉛とクロムです。

 亜鉛は、すい臓でのインスリン生産にはなくてはならないミネラルです。不足すれば当然インスリンの量が少なくなってしまいます。また、人の成長や男性機能にも大きく影響していることから、ビタミンではないにもかかわらずビタミンI(愛)などと呼ばれています。人の成長に大きく係わることから、身長が伸びない子供の場合は、まずこの亜鉛不足が問題となっていると考えられます。亜鉛は亜鉛酵素という形になって働きます。酵素は体内でさまざまな化学反応を助ける、いわば触媒の役目をします。その数、実に約1000種類以上はあると考えられているようです。この中で亜鉛酵素は約80種類以上あるようですが、主な働きはタンパク質の合成に関係してきます。食品を分解してできたアミノ酸から各部位に必要なタンパク質を再合成するときに無くてはならないのです。骨の成長や肝臓、腎臓、インスリンを作るすい臓、網膜、前立腺、舌、筋肉、皮膚、そして精子を作っている睾丸など、常に新しい細胞を作る必要がある器官に特に必要になってきます。

 亜鉛不足になる原因は、もちろん第一に摂取不足がありますが、その他に他の金属、たとえばカドミウムと水銀汚染による亜鉛不足ということもあります。亜鉛酵素は亜鉛とタンパク質が比較的弱い結合をしているおかげで、「触媒」として働けるわけですが、ここにもし、カドミウムや水銀の分子が来ると物理的性質が亜鉛と似ていて、しかも結合力は亜鉛より強力であるため、亜鉛を追い出しカドミウムや水銀が結合してしまうのです。こうなるともはや亜鉛酵素は無能となり、必要なタンパク質合成も出来なくなってしまいます。

 鉛はまた、免疫作用で重要な働きをするマクロファージの活性を低下されてしまうため発ガンなどの危険性が増大してしまうということにもなります。

 有害ミネラルを排除する方法は、アミノ酸の一種であるシスチンやメチオニンという二つの含硫アミノ酸による「キレーション反応」によって排除されます。キレートとは「カニのはさみ」という意味があります。含硫アミノ酸の「ジスルフィド結合」という、硫黄同士で結合した特殊な結合がありますが、カドミウムや鉛などの有害ミネラルは、結合力が強いため硫黄同士の結合に分け入り、ちょうど硫黄分子で挟み込まれたようなかたちになり、無害化され体外に排泄されます。カドミウム汚染の水俣病や水銀汚染のイタイイタイ病などの有害ミネラルの汚染、放射性金属汚染などの治療ではEDTA(エチレンジアミン4(テトラ)酢酸)というキレート作用のある合成アミノ酸を用いる方法があります。


  ・クロム

 クロムというと、何年か前の6価クロム事件(鼻中隔欠損症の原因)を思いお起こしますが、人体に有効なのは三価クロムです。6価クロムは酸化力が大変強く有毒物質です。三価クロムは、肝臓に蓄えられていて、年齢を重ねるほどに減少してしまう性質があります。肝臓に蓄えられている三価クロムの量によってその人の年齢がわかるほどです。
逆に言えば、三価クロムが足りないと年齢のわりに老化が進むということです。

 クロムは、インスリンが正常に働くことを助けるミネラルです。実際に働くことができるの
は、クロムにナイアシンと、グリシン、グルタミン酸、シスチンなどのアミノ酸が結合した耐
糖因子(GTF)と呼ばれる分子になっている必要があります。

 GTF(グルコース・トレランスファクター)は腸内細菌によって合成されます。
 年齢を重ねると、腸内環境も悪玉菌が徐々に優勢となってきますがこれも、糖尿病を進行させる原因の一つと見ることもできるのではないでしょうか?

 人体のクロム含有量を年代別に見てみますと、生まれたばかりの赤ちゃんがもっとも多く、年をとるごとに減少してしまい、中年以降ではかなり少なくなっているようです。肝臓に含まれるクロムの量からおおよその年代も推定できるほどです。このクロムの減少がインスリン抵抗性の増加を招き、その結果、中年以降に糖尿病を発病してしまう人が多くなるという見方もできます。このクロムの吸収率ですが、すごく悪く数%しかないともいわれています。

 事実、クロムの量と糖尿病の関係でこんなデータがあります。

 日本など東アジアの人々とアメリカ人の、加齢によるクロムの減少率を比べると東アジアの人々のほうがかなり小さく、成人の体内のクロム含有量は、アメリカ人は東アジアの人々の約1/5程度でしかないのです。さらに糖尿病の発生率を比較しますと、最近まで日本人の糖尿病発生率は、アメリカ人の約1/5であったということです。クロムの量と糖尿病の関係を考えるうえで実に興味深い数値です。

 糖尿病患者の場合は、最悪の場合、尿にブドウ糖が混じって出てしまいますが、実はブドウ糖だけではなく、ミネラル分も排出されやすくなっているのです。このためクロムをはじめ、亜鉛、マグネシウム、カリウム、銅、マンガンなど重要なミネラルの血中濃度が低下していることが多いのです。ミネラルの血中濃度は通常であればごく狭い範囲で一定の濃度を保とうとする性質があります。これは人体のもつ生命維持能力のひとつですが、糖尿病が進んでしまうとミネラルの血中濃度まで低下してしまい、いわば悪循環に陥っている可能性も指摘されます。



 5.3・ビタミンB群

 ブドウ糖分を分解しエネルギーとして代謝させるためには、ビタミンB群の働きが必要です。

 ビタミンB群とは、B1、B2、B6、B12、ナイアシン、ビオチン、イノシトールなどです。これらは細胞内のミトコンドリアという器官にて連帯して、ブドウ糖からATPを作りだします。この作業では、足りない栄養素を他の栄養素で補うということはしません。一つの役目に対してひとつのビタミンBと役割が決まっているのです。つまり、どれかひとつでも不足してしまうと、ATPの生産能力が落ちてしまいます。つまりはブドウ糖の利用率が下がってしまうことになります。そして細胞の重要な働きであるイオンポンプ作用のエネルギー源が不足し、うまく働けなくなってしまうのです。

 不足しやすいのはB6です。妊娠中は特に消耗が激しいと言われています。このため、妊娠するとATPの生産が落ち込み、ときどき糖尿病のような症状が出ると考えられます。

 イノシトールはビタミンB群の仲間ですが、体内でも合成されるため正確には「ビタミン様物質」と分類されています。イノシトールは神経細胞同士の隙間に多く存在し神経間の信号伝達を助けています。

 糖尿病の場合、まず、はじめにイノシトールの量が減少し、やがて神経の異常として手足のしびれや最悪の場合、壊疽といった表面的な現象として現れてきます。糖尿病の一般的な治療である「血糖値のコントロール」を目的にしていては、このイノシトールの量は回復しない場合が懸念されます。血糖値が安定しているからと言って、食品から偶然にも得られる栄養素だけでは心配が残ります。必要な栄養素の補給を積極的に考え実践しないと、思いもよらない症状に悩まされることも有り得るのです。



 5.4・食物繊維

 インスリン抵抗性を増大させる原因の一つに、血中脂肪値が高い場合があります。

 これは、インスリンレセプターの感度を低下させるためと考えられます。食物繊維には、水溶性と不溶性の2種類があります。糖尿病と関係が深いものは、水溶性食物繊維です。

 ネバネバ成分である水溶性食物繊維には、コレステロールの排泄を促し脂肪の吸収を抑制する働きがあります。コレステロールは胆汁となって小腸内へ分泌(排泄)されますが、食品から摂取した脂肪とミセルダンゴを作ります。小腸はミセルダンゴの形になった脂肪しか吸収しないため、コレステロールの再吸収と脂肪の吸収が起こることになります。水溶性食物繊維はミセルダンゴとくっついて、一緒に排泄する働きがあるため、コレステロール値が高い場合や血中脂肪値が高い場合は、水溶性食物繊維を積極的に摂取することにより、これらの改善が期待できます。つまり、インスリンレセプターの感度低下をおさえる働きも期待できるのです。

 そのほか、不溶性食物繊維についても言えますが食物の胃から小腸への移動が緩やかになることにより、糖分の吸収が緩やかになりますので、血糖値の急激な上昇が抑えられることによりインスリン生産・分泌の負担が軽減されることにもなります。

 ライ麦粉や干し柿、ゴボウなどは水溶性と不溶性のどちらもバランス良く摂取できます。
 



 5.5・ビタミンC

 何は無くともビタミンC、という気がします。

 詳しくは、ちょっと長くなりますので、こちらをご覧ください。

 



6・糖尿病の合併症治療

 糖尿病でもっとも問題となるのが、合併症です。

 3大合併症というのは、網膜症、神経障害、腎症といわれています。これらの器官、つまり目の水晶体、神経組織、肺、血管の内壁はエネルギー源としてブドウ糖に依存する割合が高く、また傷つきやすい毛細血管も多いのです。

 これらの器官でとくに障害が出やすいというのは、エネルギー源としてのブドウ糖がインスリン作用不足が原因で、細胞の中に取り込めないというところにあるようです。

さらに、ブドウ糖が増えすぎることによる直接的な作用もあります。

 ブドウ糖でも正常な形のものは特に問題はないのですが、中には少し変わって形のものが含まれます。この変形ブドウ糖は、分子構造が正常なものは6角形をしていますが、その6角形の形が壊れています。この変形ブドウ糖は厄介な性質を持ちます。血液中にあるSODという酵素と結びつき、それを壊してしまうのです。SODとは、スーパーオキサイドディスムターゼと呼ばれるもので、余分な活性酸素を除去する大切な役目をしています。活性酸素は人体では有効な働きもしますが、余分となったものはSODなどで除去しないと、周りの細胞組織やDNAをものすごい勢いで傷つけるためガンなど疾病の約90%もの原因になるといわれているものです。この活性酸素を除去する大切な働きをするSODですが、悪いブドウ糖に結合されると単に破壊されてしまだけでなく、今度は逆に活性酸素を放出してしまうということが起きてしまいます。

 これは、悪を取り締まるはずの警官が、いきなり拳銃を無差別に乱射するようなものです。これでは回りの組織はたまったものではありません。糖尿病の本当の怖さは、この活性酸素が増えてしまい猛威を振るうことにより発生する毛細血管の破損や、血管を修復しようとしてできる血栓により血流がストップするといった事で発生する合併症であると言えます。逆にいえば有効な活性酸素対策ができ、合併症を抑えることができていれば糖尿病自体は決して怖いものでは無いとも言えると思います。



7・グリケーション

 活性酸素による合併症を「グリケーション」と言われる反応から見てみます。

 グリケーションとは、糖化(glycation)という意味です。高血糖状態が続くとブドウ糖(つまり、グルコース)が赤血球のヘモグロビンと非酵素的に結合します。これをヘモグロビンのグリケーションといい、出来たものが「ヘモグロビンA1c」です。血糖値のコントロール状態を表すものですので、ご存知の方も多いと思います。同じ検査で「フルクトサミン」の測定がありますが、これはブドウ糖がアルブミンと結合したものです。

 ブドウ糖が蛋白と結合した「糖化蛋白」を作るのもグリケーションです。ブドウ糖が酸化と還元を繰り返しているうちに生じてくるもので、「アマドリ化合物」というものを経て「終末糖化産物」(AGE)という物質になっていきますが、この過程で「活性酸素」が作り出されてしまいます。



 活性酸素の害をもう少し見てみます。

 ブドウ糖と一緒になった活性酸素は細胞の中にあるSODの働きを抑えながら、悪事の限りをしでかします。本来ならSODによってすぐに消去されてしまうはずですが、ブドウ糖によりこのSODがうまく働かないようです。赤血球はこのおかげで、もともと弾力に富んだ性質で狭い毛細血管の中を変形しながら進んでいき、そのとき細胞に酸素などを送り込む働きがあるのですが、活性酸素にて酸化させられますと、柔らかいはずの赤血球がどんどん硬くなったり、形が変形してしまいます。こうなると、もはや毛細血管の中を移動できなくなり、毛細血管が赤血球で詰まってしまうことになります。さらに、活性酸素は毛細血管も酸化攻撃してしまい、本来柔らかいはずの血管が硬くなってしまいます。これでは余計に血液の流れが阻害され、細胞には酸素も栄養も供給されなくなります。これが根本的な原因となって、「合併症」が起きるのです。傷害が起きやすい器官は毛細血管がたくさんあり、しかも大量のエネルギーを必要とする器官です。それが神経細胞であり、目(網膜や水晶体)、腎臓などとなります。その他、症状が進んできますと、至る所で傷害が発生することになります。もともと血行の弱い足先などは最悪の場合、壊疽を起こしてしまうことになります。

血液写真の(例)はこちらを参照してください。



8・分子矯正医学から薦められる食事

 分子矯正医学からみた食事を考えるには、不足していると思われる栄養素をどうしたら摂取できるかということを考えれば良いわけで、単にカロリーの摂取制限だけではないのです。そして、それはそれほど難しい事でも面倒なことでもないのです。おいしくしかも栄養豊富な食事が可能なのです。毎日食べるものですからその効果もかなり期待できるものと思います。

 まず、複合炭水化物です。複合ということは、単に炭水化物だけではなく、食物繊維やビタミン・ミネラルなどが豊富に含まれた状態の炭水化物ということです。

 これにはいわゆる胚芽米が最適となります。玄米でもいいのですが、玄米の場合、人によってはなかなかなじめないものであるようです。さらに、玄米の表皮部分に含まれるフィチン酸は鉄などのミネラルと結合し消化できなくなってしまうことから、貧血などミネラル不足になる危険性もあるとのことで、玄米食より7分つきや5分つき米といった胚芽米が良いということになります。

 反対に精白米やうどん、白いパンは、ビタミンやミネラル、食物繊維といった重要な栄養素の摂取という面から見ますと、あまり好ましくない食物であると言え、特にクロムの摂取が不足してしまう傾向にあります。

 玄米はまた、消化が悪いことも知られています。圧力釜で炊いたりして、良く噛んで食べる必要があります。消化の悪いものでは消化酵素が多く消費されることになります。酵素栄養学から言えば、体内の酵素はできるだけ使わないで済ませておきたいわけですが、食べ物の消化に大量の酵素が使われてしまっては長い目で見た場合、良い結果になるとは言えません。“酵素は充電のできないバッテリーのようなもの”と表現されます。つまり一生の間に生産できる酵素の量は有限である、ということです。酵素が尽きれば寿命も尽きる、ということになってしまいます。

 精白米やうどん、白いパンは、ビタミンやミネラル、食物繊維といった重要な栄養素の摂取という面から見ますと、あまり好ましくない食物であると言え、特にクロムの摂取が不足してしまう傾向にあります。これらはまた、GI値が高い食材でもあります。

 現在、低インシュリンダイエットが流行のようですが、ここではGI値と言う言葉が使われています。これは“グリセミック・インデックス”のことで、その食材を食べたときにどれだけ血糖値が上昇するかを表した指数です。ブドウ糖50グラムを食べた時の血糖値の上昇値を100としています。GI値が高いほど血糖値の上昇が早く、それだけインシュリンの分泌も促されることになります。食べものからの糖分は必要な分は肝臓や血管に供給され必要な細胞のエネルギー源として細胞内へ取りこまれたり、残りは肥満細胞に蓄えられます。この時、必要になるのがインシュリンというホルモンです。GI値が高いほどインシュリンの要求が強くそれだけ膵臓の負担も増えてしまいます。
 糖尿病である場合は、GI値が低い食べ物、食べ方、同じ食材でもGI値の低い調理の仕方などを意識しておくと膵臓の負担が少なくなります。
 GI値を低く抑えるためには食物繊維と同時に摂取することをお勧めします。
 食物繊維と一緒に摂ると炭水化物の消化吸収が穏やかとなり、急激な血糖値の上昇を抑制することができます

 植物(野菜)には単にビタミンやミネラルといった既知の栄養素ばかりでなく、「植物由来化学栄養素」とよばれる人体に対して有効と考えられる物質が数多く含まれています。たとえば、ニンニクでは、約100種類に及ぶ植物化学栄養素が含まれていることが知られています。研究が進めば、これらの未だその働きが十分に理解されていない「植物由来化学栄養素」も次第にその有効性が明らかにされていくことでしょう。

 野菜の食べ方では、量を多く取ろうとするとゆでたりして火を通したほうが、たくさん捕れるし、消化吸収も良くなります。また効果的なのが漬物ですが、中でもぬか漬けは、ぬかのもつビタミンB1などの微量栄養素が豊富に含まれるため効果的です。その他の漬物も効果的な場合が多く、積極的に摂取すると良いと思います。野沢菜と緑茶の食べ合わせは、強い抗酸化作用が出るということで注目の食べ合わせの一つです。これを日常的に摂取する長野県では、発ガン率が明かに低いというデータが示されています。

 

 ミネラルバランスを保つ上で特に好ましいと言える食材は、海藻です。海藻の中でも特にひじきはカルシウムや鉄分が豊富に含まれ、しかも吸収の良い形で含まれています。亜鉛の摂取に優れた食材が牡蠣です。亜鉛はまた抹茶にも豊富に含まれます。その他、大豆製品やビール酵母製品にはタンパク質のほか、多くのビタミン、ミネラルが豊富に含まれていますので、積極的に摂取したいものです。ビール酵母は「エビオス錠」が手軽です。大豆製品は、きな粉も最適なものの一つです。きな粉の場合、「黒大豆きな粉」は活性酸素除去の働きも強いのでお勧めのものです。納豆には食物繊維も含まれ、さらにナットウキナーゼという酵素も含まれ、血管にできた血栓を溶かしてくれる働きもある優れものなのです。

 人体にとって深刻な悪影響がある有害金属はできるだけ速やかに排除したいところですが、それを排除する働きのある含硫アミノ酸は、ごま、大豆製品、鰹節、卵黄などに比較的多く含まれます。ダイオキシンの排除も、葉緑素と食物繊維を食べることにより排泄されやすくなります。



9・毛髪分析

 毛髪分析とは髪の毛に含まれる微量のミネラルを分析することにより、どのようなミネラルの摂取状況であるかを知ることができます。そこから予想される健康上の問題を、実際の病気になる前に見つけ出そうとするものです。アメリカでは広く健康診断の手段として定着していますが、不思議と日本では全く普及していないのが現実なのです。アメリカは1977年にガンや高血圧、心臓病などの疾病の増加原因を調べるため、通称マクガバンレポートと呼ばれる国民の栄養調査の結果をまとめました。その調査は世界中に及び日本の食事と健康状態の調査も行われたようです。この結果、その当時の日本の食事は高繊維食であり、当時のアメリカの食事内容と比較するとはるかに健康的であったようです。このため、今でも日本の食事は健康的であると思っている人がいますが、現在の食生活は当時のアメリカと同様な食事生活になっているという事実を真剣に認識すべきであると思います。

 マクガバンレポートのおかげで現在のアメリカでは、広く国民の意識としてビタミンやミネラルの重要性が認識されて、毛髪分析という検査が実際の医療現場において取り入れられています。日本ではなぜ医学診断として認められないのでしょうか?はなはだ疑問です。日本国内ではなかなか実施機関が見つかりませんが、アメリカの検査機関へはどなたでも日本から手軽に毛髪分析を申し込むことができます。しかも日本語で解説までしてくれるところがあります。是非、予防医学の実践の一つとして実施しておきたい検査です。



10・真剣に症状改善・根治を目指すには、積極的な栄養素摂取が望まれます。

 “低脂肪の食生活とウエイトリフティングが糖尿病を抑える”も参照してください。


食事で注意する点

・白い食品(精白米、うどん、精白小麦粉)は避ける

・米は7分、5分つき米、全粒小麦粉のパン

・亜鉛の摂取のために、牡蠣を食べる

・良質なタンパク質の摂取のため、ゆで卵を食べる

・食物繊維を摂取する(海藻やこんにゃく、納豆など)

・ミネラル摂取のため、ひじきを食べる。

・ビタミンB群など有効な栄養素が豊富なレバ刺しを食べる

・ビタミンCを毎食後1000mg程度摂取する。

・抗酸化栄養素を摂取する。

・OPC(オリゴメリックプロアントシアニジン)の摂取

・色の濃い野菜(黒豆、黒ごま、トマト、ナス、ブルーベリー、緑黄色野菜、ひじき、などなど)


 ここでは、糖尿病改善の手助けに主眼を置いていますが、基本的な考えは一般的な健康維持の場合と同じものです。

  理想的には、普段の食事から必要な栄養素を全て摂取できれば良いのですが、現実問題としてなかなか思うようにならないと思います。そこで、不足していると思われる栄養素を確実に摂取するには、栄養補助食品(サプリメント)を利用するのが最も確実で、かつ合理的な方法であると思います。

 この場合は、あくまで食事つまり栄養素の補助ですか、基本はしっかりした食事が前提としてあることを忘れないでください。この上で、有効な栄養素をきちんと補うことを目的に利用するのです。

 選択の基準は、あくまで食品なのですから、

 1・化学合成された工業品は避け、天然素材・低温加工処理であるものが基本。

 2・合成保存料などを含まない。

 3・栄養素はわずかで、かつ味付けされた、お菓子にしか思えないものは避ける。

 4・目的にあった栄養素が含まれていること。

 5・価格が適正であること。高品質、低価格が基本。

 糖尿病を積極的に改善・根治を目指すためには、インスリン抵抗性増加を抑制する栄養素とすい臓の機能を高める栄養素を積極的に摂取することを考えます。本来は食事から摂取すべきですが、食事からのみでは十分な量の摂取が難しい場合、的確なサプリメント(栄養補助食品)を利用すれば、効率的にしかも経済的に「栄養素」を確実に摂取することができます。インスリンの投与を受けている場合は、インスリンの必要量が低下するという場合もあるかもしれませんから、この場合は、担当医師と調整することが必要であると思います。

 また、積極的な活性酸素対策も忘れることはできません。


 「健康が一番!」では、糖尿病における栄養素の補給には...こちらの栄養補助食品をご提案させていただいております。(情報はアメリカに開設したHPによりご覧いただけます。)

 活性酸素対策、微量ミネラル・ビタミンなど、必須栄養素を上手に摂取しましょう。


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