●旅行を終えて、、、
成田空港から入国審査を通過し、早朝の京成ライナーに乗る。時間が8時半を過ぎていることもあり、東京行きのラッシュアワーがもう済んでいる時刻。ここから3週間前の逆転再生が始まるのだ。カタコト電車が動き出し、しばらくボーっと外を眺めていたら(実際に時差ぼけでもあったのだが。)窓からの光景は、紛れもない、のどかな、そしてどこにでもある、ごくありふれた日本の田園風景があった。農家が畑を耕し、水田に青々と米が生っている。小道に軽トラが走り、街を通りすぎると、ベビーカーを押しているお母さん達を見かける。そう、どこにでもある風景。
しばらくたつと、成田山が見えてきた。雄大な、お寺の屋根やら、五重塔やらに、突然車内で”オーッ”という歓喜の声が聞こえてくる。一緒に乗っていた外国人の一団であった。彼らは、その後、止まる駅の名前をローマ字でゆっくり読みながら、爆笑していた。彼らにとっては変わった名前なんだろう。 不思議と、20日間の長きに渡った旅行も、こうもあまりにも一般的で日常的な、そしてどことなく平和なシーンを見ていたら、全くどこにも行っていなかったのではないかという感覚があった。
いままで、自分がいままで見てきたヨーロッパの街々が余りにも別世界な、夢のような世界だったのだろうか。唯一、旅をずっと伴してくれた、20kgもの荷物が手にかかる重さだけがすべての現実を物語っているかの様だ。頑丈だった、このカバンもついには取手が破けてしまっている。無事に帰れたんだ。

●夢を見た
数日後に、不思議な夢を見た。
場所はなぜかウィーンなのだ。僕らは、市営のバスにのっている。バスはどんどん市街を離れ、徐々に山に向かっていく。その山は住宅街となっており、クネクネとした道に沿って、バスがどんどん登って行くが、道路の両側は住宅の塀が高く建てられ、全く景色を見ることは出来ない。
すると、突然景色は開かれ、眼下にはウィーン市街が一望できるのであった(きっとこの辺はナポリで見た風景と重なっているのだろう)。
そこで突然、僕らはバスを降りるのであった。余りにも突然に。バスはいってしまい、僕らの前に、着物を着た日本人が数人ちょうど開けている景色の隙間に吸いこまれるように、階段を降りていくのが見えた。なぜ和服なのか良くわからないが、僕らは当然のように後をついて行くのであった。階段を降り右手に鋼鉄製の真っ黒な門があり既に、僕らを待っているかのように開かれている。そこを入ると、玉砂利で敷かれた広場があり、その全面に黒幕で作られた舞台があり、そこで先程僕らの前を歩いていた和服の人達が日舞を舞っているのであった。
観客は僕らしかいない。全くにして空白な空間。
しばらくして僕らは楽屋を目指す。黒幕の間をとおり、真っ暗な廊下を渡って、光が無くなり、廻りが真っ暗になり本当に何も見えなくなったときに、眠りから起きてしまった。
一体、何のか、何の意味のある夢だったのだろうか。
しばらく、夢と現実の間をフラフラしている内に、段々と意識が戻ってきた。
そうなんだ。ながきに渡って見知らぬ国を見て感じて、そして触れてきたことを。
実はこの夢がきっかけで、何とかこの旅行をもう一度記憶の中で旅をしてみて、しっかりと記憶の中に刻みつけようと思ったのだ。あるいは、そのように、自分にそうしろと言いかけていたのかもしれない。
そして書き終えたいま思ったことが一つ、僕は今日本という国で育ち、日本という国が好きで、そして自分自身が日本人であるということを、、、
そしてまた固く誓うのであった。 また、旅に出るぞってね。





 

 


飛行機の外は
段々と暮れてくる。

 


そして、一日中
飛行機に乗っていると
そのうちに日が
開けてくるのであった。