明治異聞録SUMMONER'S REPORT
pic  世は文明開化の時代。開国とそれに伴う異国文化の急速な流入はまるで季節外れの台風のように東の果てにある島国を席巻していたが、時代の変化を受け入れた人々はそれこそ「新しいものはすべからく善である」とでも言わんばかりの勢いで自分と彼らの世界を日々変質させていた。
 真新しい技術や知識の数々は彼らが暮らしていた世界がごくちっぽけな辺境でしかなかったことを人々に思い知らせたが、それは彼らに野心と向上心を与える刺激となりこの国に技術と知識をもたらした者が人々を軽んじてもよい理由にはならなかった。勤勉な人々は遅れていることを自覚して走るどころか跳ぶ勢いですべてを貪欲に取り込もうとする。ある意味では彼らは尋常な人々ではなかった。世界が急速に変わっていく中で、そこには多くのひずみが生まれたが彼らはそのひずみすらも世界に先んじて解析を試みた。

 論理回路と呼ばれている理論がある。それは不可知の力を引き起こして時間や空間に干渉する現象とそれを実現する機構の双方を指していたが、より端的にいえば超常現象をもたらす技術を総称して呼ばれていた。例えば異界の不可思議な化け物を呼び出すことができる、例えば一般法則を無視した力を武器や道具に与えることができる、例えば自らを転じて超人的な肉体や力を宿すことができる。
 これらの現象は古くから御伽噺の世界に数多く存在して、人の全身に鱗や剛毛が生えて怪物のように変化したり、立ち並ぶ茸の輪の中心で妖精の隠れ里への入り口を見出したり、暗闇に青く光る剣で岩をチーズのように両断したりと枚挙に暇がない。それらのほとんどは種も仕掛けも存在するジェヴォーダンの獣でしかなかったが、本当に獣が存在した例もありそれを引き起こすのが論理回路「ゲート」である。

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