Soft Machine NOISETTE(2000.02.20)

NOISETTE Peter Gabrielのお話を続けようと思った矢先、素晴らしい音源が発掘されました。
一枚は、Pirateの世界ではお馴染みのThe WhoBBCセッション、そしてもう一枚はここのところ正規発売される未発表ライブ音源が多かったにも関わらず、今一つ音質的にも内容的にも満足のいかない音源が多かったSoft Machineの音源です。
今回発掘された音源は、Softsの名作'Third(残念ながら、筆者、現在未保有)'でも使用されたもので、やはり名作の誉れ高い'VolumeTwo'(何で、これまで今手元に無いんやー!!!)発売後に行われた欧州ツアーの音源、しかも幻のクインテットの最初のステージなのです。
The Whoのお話は、又次の機会に書くとして、今回はこの発掘ライブ音源'NOISETTE'について紹介しませう。


NOISETTE Jacket Back Photo 最初に書いたように、この音源が収録されたのは1970年の14日、'Volume Two'発売後のツアーの音源です。
幻のメンバーDavid Allanがクスリの問題で英国に戻れなくなり、三人編成で製作したファーストアルバムがそれなりの成功を収めながらもKevin Ayersが脱退、Hugh Hopperをメンバーに加え'Volume Two'を製作、その後当時のブリティッシュジャズシーンでもっとも注目を集めていたKeith Tippett GroupのメンバーであるElton DeanMarc CharigNick Evans、そしてLyn Dobsonを迎えてツアーを行い、結局四名のうち、Marc CharigNick Evansが離れ、クインテット編成で活動を開始したツアーの音源という訳です。
当時の英国の音楽シーンは、Kith TippettのCENTIPEDECRIMSONのLIZARDにもみられるようにジャズとロックのミュージシャンの交流が非常に盛んでした。
このクインテット編成も数ヶ月しか続かず、結局Lyn Dobsonも離れ、その後しばらくはあの有名な、EltonHopperRatledgeWyattのカルテット編成での活動となるわけです。
とにかく、今回のこの音源はその僅かな時間しか活動しなかったクインテット編成の演奏というわけです。
収録曲は当然、ファースト、セカンド、そして後の'Third'に使用される曲が演奏されているのですけど、かなり密度の濃い演奏です。
まあ、この当時の演奏ですので、モニターがきちんとしている筈もなく、リズムはかなり危なっかしい面もあります。
それでも、十分アレンジされフリーフォームな部分もあり聴き応え十分です。


NOISETTE INNER 1 トップの'EARMONN ANDREWS'と'MOUSETRAP'のジャズ色の濃い演奏は素晴らしい出来ですし、何といっても後にCARAVANがカバーする'BACKWARDS'でのLynの情感たっぷり、でも力みすぎのフルートソロなんか感激ものです。
この音源のそこかしこに登場するHopperのディストーションベースも時代を感じさせながらも、素晴らしい演奏を聴かせてくれます。
(ディストーションベースの名手は、CARAVAN-Hatfield and The NorthにいたRichard SinclairCRIMSONにいたJohn Wetton、そしてこのHopperの三名でしょう)
このバンドの音楽的なリーダは当然Ratledgeなわけですけど、LOWREYのオルガンにファズはかませるは、ワウでまるでシンセのピッチベンドのようなプレーも聞かせます。
何せLOWREYのオルガンですから、正直Hammondなんかより出てくる音はより無機的なものなのですが、ここらのエフェクターの使用により音色のキャラクターの幅を広げています。
時折絡むエレピ(多分ピアネットでしょう)も良くハマっています。
まあ、Hammondを主体とした米国のオルガンジャズと何せLOWREYのオルガンですから、かなり雰囲気が違い、独特のジャズロックを聴かせてくれるわけです。
EltonAltoSaxelloもこの時期のSoftsには欠かせない存在、随所で素晴らしいプレーを聞かせてくれます。
LynSopranoとの絡みは見事です。
この編成の一番の肝なんですね、これ。
さて、Wyattですがここぞというところのプレーはなかなかですが、ちょっとこの編成に着いていけなくなっているような気もします。
(でも当時のSoftsの顔って言ったら、多分対外的にはWyattだったのも事実なのですけど....)
Wyatt自身は元々、もっとポップな人だと思うのです。
つまり、ジャズ色の濃いジャズロックよりもジャズの要素を含んだポップという路線が本当の姿なのではないでしょうか??(確かにジャズスタイルのアルバムへの参加もあったのは事実ですが、ソロアルバムはそんな姿が見て取れます)
結局Wyattは'Third'、'Fourth'を経て脱退(というか首という話も....)する訳ですけど、その辺の伏線なのかも知れませんね。
この後の'Third'、'Fourth'ではよりフリージャズ色を濃くしていきます。
筆者もフリージャズは大好きですけど、Softs Machineの一番充実した姿は、'Volume Two'、'Third'の間なのかなと感じさせる、そんな音源なのでした。

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