江戸期の庭瀬城跡、庭瀬往来とも呼ばれる旧岡山藩の官道、少し時代をさかのぼる撫川城跡、寺院・町屋等歴史的遺構が残る、街並み整備区域に指定されている地域にあります。
瓦と漆喰のコントラスト、格子戸や窓格子などの歴史的デザイン要素に支配される旧街並みのイメージと、どのように関わりあうかは外観デザイン上避けて通れない問題です。
こうした歴史によって醸成された街区の持ち味は、単に郷愁を呼び起こすだけでなく、人の心を引き付ける目に見えない魅力を発散しているように思います。
ここでは、形態的な歴史デザインを直接的に踏襲するよりもむしろ、そうした目に見えない力を共有できればと考えています。
おおらかな屋根のもつ安心感、深い軒の懐の深さ、緻密にデザインされた格子や虫籠(むしこ)窓のような制御された内と外との関係など、さりげなく人の気持に働きかける要素に関連性を求めました。
外部からの視線をさえぎり、天空からの光や雨・風、緑の植え込みのあるコート(内庭)からやわらかく拡散する光が、待合室や処置室などへ回り込み、患者さんの動きを、この小コートの周囲をめぐるしつらえにしています。
床は抗菌性能も期待できる天然リノリューム、壁天井は多孔質な天然素材で、やわらかな陰影や音の響きを期待しています。
天井に露出している構造梁は節ありの米松無垢材に自然保護塗装、コストをおさえても自然で素朴な空間であればと考えています。
建築種別 | 医療施設 |
建築用途 | 小児科・内科医院 |
構造・規模 | 木造 2階建て |
その他 |
史跡の掘に2方を囲まれた敷地、右奥に薬局
エントランス・受付
待合室
処置室 正面中央 コートから自然光
夕景 左手の明かりは待合コート、右奥に薬局の灯り
東面堀側 夕景