元四人囃子メンバーである茂木由多加氏の急逝の報から、二週間程が経過しました。
既に四人囃子オフィシャルサイトでも茂木氏の死を悼み、茂木氏追悼コーナが設置されました。
氏が歩んできた、数々の音楽活動を佐久間さんが紹介しています。
当サイトも急逝の報から当初1月末に予定していたDaimyoさんの'TOMMY
PERFECT LIVE 7.21'の告知を2月まで延期する等(その節はDaimyoさん、ご迷惑をおかけしました...)、サイトの更新を一時取りやめ、茂木氏が安らかに眠る事を祈らせて頂きました。
4月頃を目処に佐久間さんを中心としたプロジェクトにて、茂木氏の追悼コンサートも企画されているとの事です。
筆者としても、四人囃子の在籍期間こそ短いながら、その天才肌のプレイを残していった茂木氏の作品を大切に後世に伝えていきたいと思っております。
さて、茂木さんの死をいつまでも悔やんでいても仕方ありません。
我らの四人囃子、リマスタリングで生まれ変わった、残りのアルバム二枚、そして昨年春に行われたスモーキー・メディスソとのライブ'Rock Legends'音源を使用した、四人囃子としては現時点での最新アルバムを検証、そして紹介して行きましょう。
昨年の発売以来、今回のリマスタリング盤は大手レコード店では専用コーナが設置される等、かなりの盛り上がりを見せるなか、既に一部では''73四人囃子'、そして最新ライブアルバムは入手困難となっているとの話を聞いています。
先日は、某大手レコード店にて'一触即発'も一時品切れ状態となるなど、四人囃子の音源達は一気に10枚が発売されながら、このCD業界不況のなか、なかなか健闘していると言えましょう。
そんなこんなで、、まず紹介する9枚のリマスタリング盤の残りの2枚、つまり岡井、佐久間、坂下の三氏にて再結成された四人囃子の音源二枚を紹介しましょう。
さて、一端'NEO-N'で終止符を打った四人囃子は、'89年7月にこのアルバム'DANCE'とともに再びシーンに戻ってきました。
このアルバムが出た当時の状況等は、以前紹介した時の文書を見ていただくとして、そこにも書きましたが、筆者はこのアルバムに対して、正直言って四人囃子のアルバムとして認めがたかったのです。
実際、以前紹介した頃、四人囃子のメンバーのある方とお話をしたとき、何故かその点で一致してしまったのも、不思議なものです。
今回の再発でも、紙ジャケになった事が唯一の事件かと思っていました。
しかし、その筆者の思いは、良い意味で完全にうち砕かれました。
今回のリマスタリング作業で、このアルバムは完全に四人囃子のアルバムになってしまったのです。
オリジナル盤とは、見た目は紙ジャケかジュエルケースかの違い程度しかありません。
収録曲だって、特段ボーナストラックが増えた訳でもありません。
しかし、中の音はまったく違っているのです!!!
残念ながら、このアルバムのマスターもオリジナルのマルチは残っていない模様で、当然クレジットもリミックスではなくリマスタリングとなっています。
しかし、今回のリマスタリングでここまでアルバムとしての味わいがオリジナル盤とまったく異なるものに仕上がったのです。
特に、トップの'一千の夜(1000 Night)'の冒頭のユニゾンブレークのフレーズを聴いた瞬間、それが判ります。
オリジナル盤と今回のリマスタリング盤では音圧がまったく違うのです。
これは単に音圧レベルが上がったというより、音色と音圧のレベルが耳障りになるかならないかのギリギリの線で調和して上がっているのです。
そして、もう一つオリジナル盤で一番気になったのは、音のデジタル臭さとドンシャリ的な雰囲気でした。
今回のリマスタリングで、この二点がかなり消えているのです。
元々、このアルバムは殆どデジタルレコーディング、そしてコンピュータのシークエンスを使用した部分も多々あり、そのためデジタル臭さはどうしても出てしかるべきものの筈です。
しかし、今回のリマスタリング作業によって、それらが抑えられ、逆に生の演奏面が表に出てきているのです。
ご存じのとうり、四人囃子というバンドは非常にテクニカルなバンドでありながら、それをうまくオブラートする曲とアレンジで、実は非常に聴きやすい音を出すバンドです。
そうゆう四人囃子らしさが、リマスタリングでこのアルバム'DANCE'にも出てきたのです。
個々の曲を取り上げるのもなんですが、タイトルナンバーの'DANCE'、'I'm In Action'、'眠い月(Nemui-Tsuki)'等の元々曲の良さは光っていたナンバー達が、完全に四人囃子の音となって生まれ変わったのです。
今回の9枚のリマスタリング盤の中で、一番期待されていなかった(所謂アナログからのCDと違い、CDの再発と言われても仕方の無い)アルバムが、もっともリマスタリングによって良くなったと筆者は思わざる負えません。
オリジナル盤の生まれた頃のテクノロジー的問題と現在の状況には大きな隔たりがあるのも事実です。
また、当時の音の流れがオリジナル盤の音を生んだとも言えましょう。
加えて、オリジナル盤のプロデューサは当時も今も泣く子も黙る名プロデューサ/佐久間さんでした。
先日、大二さんとお話する機会があったのですが、今回の9枚のリマスタリングは大二さんが中心で行ったそうです。
これは筆者の推測でしかありませんが、以前'四人囃子のリーダは大二だよ'と佐久間さんはおっしゃっていました。
もしかするとその言葉の意味は'岡井大二というフィルタ'を通す事が四人囃子のサウンドとなる鍵なのかも知れません。
以前にもオリジナル盤は佐久間さんのプロデュースによって'四人囃子らしさを無くす'というのがテーマだったのでは??と書きました。
しかし、やはり四人囃子は四人囃子としてのサウンドであって欲しいのは一ファンの心理です。
今回のリマスタリングの結果は、四人囃子の秘密の一端が覗けたような気が筆者はするのです....
さて、お次は'89年秋のリユニオンコンサートの模様を納めた'Full House Matinee'です。
こちらの方はどうかというと、うーん、ちょっと評価が難しいです。
というのも、元々がライブ音源であり、オリジナル盤もそこそこの音質に仕上がっていましたので、劇的な変化があるかな??と思わせます。
ところが、こちらも音圧のレベルがあがり、リズム隊が強調された仕上がりとなっていまして、ここでも'岡井大二フィルタ'は健在です。
特に中域の張り出しに違いを感じる次第です。
それと、オリジナルのダブルタイプのジュエルケースより、こちらの紙ジャケは非常にすっきりとしており、ジャケットのデザイン性を筆者は非常に気に入っています。
ただ一つ残念だったのは、こちらの方は是非ボーナストラックを入れて、リユニオンコンサートをフルセットで再現して欲しかったですね??
特に、某深紫の名曲のラストをパクってライブを締めくくった'Good
Good'は是非収録して欲しかった(^^)なー。
それと、収録時間の関係で難しいかもしれないですけど、当日の曲順どうりでの収録曲順の変更もやって欲しかったな。
オリジナル盤と同期に発売されたLDは途中を端折っているとはいえ、当日の曲順に近かったですものね??
さて、ラストを飾るのは既に市場でも品薄状態になっているという昨年春のスモーキー・メディスソとのツアーからのライブアルバム。
当初、2002年4月27日のTVテーピングされた日の音源のみで発売されるという話もありましたが、結果的には同5月2日の渋谷公会堂音源を織り交ぜた形でのお目見えとなりました。
ライブ音源ですので、一日のみの収録ですとどうしてもメンバーも満足の行く演奏だけを収録するのは無理がありますので、公式盤としての発売ですから、それも致し方ないでしょう。
ただ、二日間の音源が混ざっているとは言っても、違和感はありません。
さて、種明かしをしていくと冒頭の'おまつり'は5月2日の音源です。
TV放映されたにも関わらず、ベストなほうの演奏を収録したということなのでしょう。
二曲目の'空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ'も5月2日の演奏。
4月27日の演奏ではギターとシンセのユニゾン前のフレーズにモリさんがたまにやるYesの'Close
To The Edge'のフレーズを挟んでいますが、5月2日は普通に演奏してますんで。
三曲目は'泳ぐなネッシー(Part-1)'。
このツアーでは'ネッシー'の間に今は亡き茂木氏の'カーニバルがやってくるぞ'を挟むという、面白い趣向が施されました。
こちらの3パートは全て4月27日のものです。
4月27日の'泳ぐなネッシー(Part-2)'はTV収録に緊張したのか(^^)、メンバーのコミカルパートでの'パララッパララ'が入っていません。
個人的には5月2日の'パララッパララ'付きに差し替えても良いかな??とも思ったのですけど、さすがに曲の流れを考えるとそうも行かなかったのでしょう。
お次都合六曲目の'レディ・バイオレッタ'、これも4月27日音源。
確かにモリさんの後半のギターソロはこちらの方が安定しているかも??
七曲目'なすのちゃわんやき'、その後の'一触即発'の二曲も4月27日音源。
(すんませんでした。'なすちゃ'は5月2日の音源のようです。森園閣下のフレーズ、坂下さんのハモンドソロの音が違いました。それと決定的なのは、森園閣下がソロ後のテーマで早く終わるのが無いですんで...かぶせは無さそう...2003.05.26訂正。なんで勘違いしたんだろ???)
4月27日の'なすちゃ'から'即発'は間髪入れずにモリさんのフィードバックから繋がれて演奏されましたが、何故かインデックス打ちの為か、このアルバムでは曲の継ぎ目というか切ったのが判ります。
(ちょっと気になりますね??これ??)
ただ、だからといって'なすちゃ'が5月2日版というわけではありません。
(ですんで、'なすちゃ'は5月2日版なんで切れ目があるのでしょう...2003.05.26訂正)
個人的には5月2日版'即発'のモリさんのギターソロの方が気にいっているのですが....
ラストはアンコールで演奏された'CYMBALINE'。
著作権の関係で収録は無理かな??と思っていましたが、権利問題は何とかクリアー出来た(何せ、相手があのRoger Watersですからね??)ようです。
こちらも4月27日音源。
この日、佐久間さんがコーラス、唄ってなかったんだよなー...
(あ、何故して個々の曲の日付が特定出来るのかは詮索しないよーに^^)
このライブアルバム、多分殆どかぶせは行わず、素のままのようです。
ミックスダウンは佐久間さんのDog house studio、マスタリングは別のところで行われていますが、作業は佐久間さん中心ではなく、大二さんが中心で行ったようです。
ちなみに内ジャケのステージ写真、メンバーの顔が塗りつぶされたみたいになってますけど、これ大二さんのデザイン(おいたかな??)。
メンバーのサインから一文字とって、それを顔の部分に重ねたそうです。
ちょっと気がつかない人も居たのでは??
ただ、大二さん曰く、あんまし評判が良くないとか(^^)。
また、ブックレットの写真、モリさんや佐久間さんは良い写真が沢山あって選ぶのが大変だけど、大二さん自身の写真は逆に良いのが少なくて(??)苦労したとか??
しかし、演奏内容、音質ともに昨年春のツアーのライブがどれだけ質が高いものだったか(まあ、当日会場に居た人はPAに不満を持った方も多かったでしょうけど...今回のライブアルバムの方はマルチにラインで録ってますし、後で細工も出来るわけですが)が良く判ると思いますし、売れ行きの良さもお判り頂けたのではないでしょうか??
四人囃子の再発、そして新録ライブは、業界でもかなりの反響を呼んでいるようですし、販売店の方の力も入っているようです。
実際、何枚かは既に入手困難となっています。
やはり、良いものは後世に残すべきであり、どの時代でも良い物を嗅ぎ分けられる人達は、実は沢山いるのです。
ここのところ、音楽業界は元気がありません。
昨年はミリオンセラーも少なく、業界自体が冷えてきているのは不況のせい、違法コピーのせいだけでしょうか??
今回の四人囃子の再発とその反響を考えると、供給サイドも考え方を変えるべき時、売れ線ではなくて'70年代のような良質な作品が次々と生まれてきた背景を、もう一度見つめ直す必要があるんじゃーないか??そんなことを考えさせてくれます。
最初に書いたように残念ながら四人囃子の2003年は、茂木氏の死去という悲しい知らせから始まってしまいました。
しかし、メンバーは皆、元気に活動を繰り広げています。
再び、四人囃子として集い、素晴らしい演奏を聴かせてくれる事を祈って、今回はペンを置くこととしましょう。
それではまた(^^)/。