談話室|設計 Note


■ 住む



もし家のもっとも貴重な恩恵はなにかとたずねなれたならば、家が夢想をかくまい、夢みるひとを保護し、われわれに安らかに夢みさせてくれることだと、わたしはいうだろう。

・・・・・もしも家がなかったならば、人間は散乱した存在となるだろう。

天の雷雨にも、生の雷雨にもめげず、家は人間をささえまもる。
家は肉体とたましいなのである。それは人間存在の最初の世界なのだ。

・・・・・人間は家の揺籃のなかにおかれている。
そしてわれわれの夢想のなかでは、いえはいつも大きな揺籃なのである。

・・・・・ 生は幸福にはじまる。それはかくまわれ、まもられ、家のふところに暖かくいだかれてはじまるのだ。

ガストン・バシュラール「空間の詩学」岩村行雄訳

日本人の原初の住い、古代竪穴式住居の中で、中央の火を囲んで輪になった家族の姿を想う時、人間が生活する最低限の家にもかかわらず、人の心を住まわせる豊かさ、バシュラールの家の恩恵、価値が、すでにそこにある事を感じます。

ウサギ小屋といわれた居住面積も徐々に改善されつつあり、 便利で、衛生的で、快適な住宅で生活出来る今日の私たちは、はたして本当に豊かな環境を得たといえるのでしょうか。

住宅がファッションあるいは商品としての価値観が一般的になりつつある現在、もう一度 「住む」 ことを再考する時期にあるのではないでしょうか。