談話室|設計 Note


■ 素材と材料



ある偉大なアメリカの詩人が、かつて建築家にたずねた「あなたの建物は、どんな太陽のかけらを所有しているのか、部屋にはどのような光が入って来るのか。」あたかも太陽は建物の壁にぶつかるまで自らの偉大さにきずかないのだと言わんばかりであった

ルイス・カーン

人が生き、生活する空間を構成する素材は、光であり、風でありたいと思います。

けっして床材であったり、天井材ではありません。

床や天井、壁は、光や風を導くための手段と考えます。
これらは人が生きるうえで最も貴重で、無償にし最も贅沢な要素です。

与えられた敷地での光と風の中に、いかに生活空間を組み立てるかが設計の最初のステップであり設計全体の最重要課題です。

間取りを決めて、部屋に窓を開ける方法とはこの点で決定的に異なります。

現実に生活空間を成立させるためには、材料の選択も重要な問題です。
近年特に建材が健康に及ぼす影響が、社会問題化するに至り、ホルムアルデヒド等の化学物質による、シックハウス、シックビル症候群に対する健康住宅化が叫ばれています。

その一方で、旧来の日本家屋を造ってきた大工さん、左官さん等は、ひたすら木を削り、土を塗り、自然素材で問題のない住宅を造り続けています。

(こうした職種が、建築・住宅生産流通システムに組み込まれるなかで、独自の仕事を続けることは困難な状況になりつつ有りますが、一部に本来の仕事を継続する努力があるものも事実です)

空間を創るための材料は、けっして高価なものである必要はなく、廉価な材料でも人の感覚を欺かないもの、旧来の木や土等のように、出来れば呼吸し、温湿度環境を和らげられるものであれば良いと考えています。