どのような治療をするの?
病気には、局所の訴えがそこだけの問題である場合と全身が関わって局所症状が出ている場合とがあります。症状が長期間変わらない場合はもともと末端の冷えが強い、風邪をひきやすい(体が冷えやすいことを意味します)、全身の過労が休養等で取り切れていない等、全身との関わりあいが強いと考えられますので、「お腹」で全体像を診断し、治療をする必要があります。
さて、「腹」は全身の血液(東洋医学では"気"と言います)循環に重要な場所であり、お腹を調整することによって体全体の気の循環を良好にします。普段はあまりお腹を意識される事はないと思いますが、これは肩にコリや痛みがあるのと同じようにお腹にもコリや痛みが出てくるのです。体の健康レベルが下がってくると、お腹を圧した時にも"コリや痛み"が現われてきます。 あらゆる病気の原因として現われたお腹のコリや痛みを取り除いていくことが、体の冷えや疲労を取り除いていく力になっていきます。お腹を調節することは、体を全身的に調整する力になるということです。お腹のコリや痛みを取る方法は、お腹にハリ等の治療を加えるのではなく、背中のツボに治療した後、手足のツボに治療を加えていきます。
この治療が終了した後、問題のある患部へとアプローチしていきます。
治療後の疲労感やだるさ?
局所だけの治療であれば、治療後の疲労感やだるさはほとんどありませんが、全身調整を目的とする治療によって、「お腹」を調節すると、体の内部がかなり動いていきます。その治療によって体は良い方向に動く訳ですが、長期間にわたって偏った体は簡単に良い方向に行こうとはせず、今までの「安定していた悪い状態」へと戻ろうとします。今迄の体の偏りの強い人ほど、治療によって悪い状態をくずされ、その反動として疲労感やだるさなどの症状が出てきます。これは自分の体で老廃物を除去している過程、つまり「デトックス効果」であると理解して下さい。この「デトックス効果」は全身治療でなくては得られないものです。治療を二回、三回と重ねる際、そのだるさや疲労感はなくなっていきます。そして、治療による「だるさ、疲労感」がなくなってくれば、それだけ体内の毒素が出切って、体力がついてきたとみることができるのです。
治療の間隔はどう考える?
病気はある程度回復してその人の中で治る力(自然治癒力)が備わることができるようになれば、少し体調を悪くしたとしても自分の力で治ることができますが、そこまでになるには「三歩進んで二歩下がる」「三歩進んで一歩下がる」というように今までの固定していた悪い方へ戻ろうとします。この戻ってしまうかどうかは今の症状が固定してしまっているか、まだそこまではないかによって変わります。ずーっと放っておいた病気・症状は戻る力が強いため ある程度根気よく治療しないと元に戻っていまうことになるのです。 一般に、強い症状や長く患っている状態では、一週間に2回の治療が必要と思われます。症状が収束してくれば週に一回、症状が悪い方向に戻らなくなれば隔週という具合に考えて下さい。あとは自分で治すように自宅養生に努めるという安心が得られれば、治療を一旦中断して結構です。ただ、自覚症状が感じなくなったとしても、私が診て患部に形態的な異常が触診される場合は、まだ完全に治っていませんので、もう少し治療をお続けになって下さい。
治療では何を使うのか?
「ハリ・灸」というと、以前は年配の方の受けるものであるとか、医者ではどうにもならない病気だけを対象にする、という印象があったかと思います。
現在、ハリ・灸の治療が臨床・研究の立場から多大な効果が評価され、それは幅広く多くの方に認識されているところです。しかし、「ハリ」は痛い、体の中でどうなっているか想像するだけで恐ろしい…、「灸」は熱そうだし、皮膚を大きく焼いてひどく痕が残っては困る…等の印象があるようです。
「鍼(ハリ)」は、「ひびき」を得て、良い効果を促すことは確かですが、個々人の感受性を無視して強い刺激を与えることは治療効果がマイナスになります。ハリは受ける方の感受性に合わせて刺激を加え、それに対する体の反応を診て、治療効果があるかどうかを判断していくもので、必ず刺さなければならないというものではありません。「痛がる」、「こわがる」方には、"刺さらない棒"のようなハリで治療しますので、安心して受けられます。これは「ていしん 金是鍼」といってツボを圧すものであり、特に過敏な方、小児、体の抵抗力がなくなった重症な時に対して使うハリです。体力のある方には、銀製やステンレス製のハリを使います。 また、これらのハリは、滅菌済みのものを使用し、一回の治療の都度廃棄しておりますので、感染の危険性はありません。
「灸(きゅう)」は、一般には直接モグサを皮膚に置いて熱を加えると共に、モグサを燃やした時に出てくる物質によって治療効果を促します。多少、痕が残ることがありますが、徐々に消えていきます。馬油(ばーゆ)や紫雲膏(しうんこう)などをつけておくと、より早く消えていきます。病気が頑固なものに限り、強い刺激を必要とする場合があることは確かです。灸もハリと同様、個々人の感受性に合わせることが治療になりますので、「痕は絶対にイヤだ」とか「熱くてどうしても我慢できない」という方には、温かい効果でかつ浸透力のある"間接灸"(温灸など)を使用します。皮膚が一時赤くなる程度で、気持ちのよい温熱効果が得られます。ただ、"直接灸"に比べ、治療時間が掛かりますので、ポイントをいくつかに絞ってツボの選択をします。
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