ようやく三国志
かの有名な三国志ですが、通俗小説として一般に知られている三国志演義とは異なっていちおう史実とされている「正史」三国志が存在していることは知られていてもその内容はいまいち知られているとはいえません。天候から人の寿命まで操る道士や全身を鱗に覆われた身長三メートルの蛮人の登場、食べれば豪胆な肝っ玉を得られるという呑邪鬼の肝の存在(これは違う)などはさすがに後代に創作された物語だろうとは思えても、かの悪逆非道な董卓が遷都を決断するほどに恐れた無敵の英雄の存在や、正確極まる知見によって未来すら予言してみせた神算鬼謀の軍師、葛の頭巾に羽の扇を手にした天才軍師、勇猛で知られながら親を裏切り味方を裏切り流浪する羽目になった勇者は誰かと問えばそれを正しく答えられる人は少ないのではないかと思います。もちろんこれらの正答は劉備や諸葛亮や呂布ではありませんし、三国志の華ともいえる一騎打ちも実際はこの時代にはほとんど行われなくなっていた、一方で意外な人物が呂布と一騎打ちをして生き延びていたりもします。
ですが肝心の読み物としての正史三国志は各国各人の個別の評伝で書かれている上に、多少の不整合もあって読みづらい上にわかりやすく盛り上がる展開にあふれているわけでもなく演義に比べて物語としておすすめできる内容ではありません。むしろそれだけ三国志演義は読み物としての完成度が高い。
では正史をもとにして物語のように三国志を綴ってみたらどうなるか、そう思ったからには自分で書いてみることにしてみます。もちろん正史に登場するすべての記録を網羅してもただ冗長なだけで面白いお話になるとも思えませんので、いっそ要約にしてしまおうと思いましてようやく三国志の開幕です。
逝く川の流れに浮かぶうたかたぞ、
浮き沈むますらおのこの姿かも、
成るも、成らぬも、夢のたまゆら。
山、とこしなえに青くして、
夕日の紅、いくそたび?
山賤は、山にして春の風をたのしみ、
漁夫は、水のほとりに秋の月をめず。
時ありてめぐり会えば、
酌みかわす壺のうまざけ。
昔がたりに興味は尽きず。
>其乃一.蒼天が落ちて女装した老人が走るを見る
>其乃二.獣を追い出して野蛮人を呼ぶを見る
>其乃三.戦場に英雄は争わずを見る
>其乃四.逆臣に与した者が言う、逆臣に与した者は死刑だとを見る
>其乃五.ああ、いなごだ・・・を見る
>其乃六.英雄、梟雄、奸雄を見る
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