◆10月の最後に暴れ龍を二度も見た。最初は大阪市立美術館で開催されていた、円山応挙の『雲龍図』そして、月末にギャラリー白で出会った善住芳枝の『青龍図』だ。片や中国絵画の影響を受けながら日本独自の写生画を切り開いた作品。勿論、比較のしようもないが、善住氏は神の化身としての龍を西洋の手法と水墨の勢いで現代美術として表現した。
善住氏の作品の80%は、キャンバスを寝かして、絵具を落したり、まいたり、或いはベニヤ板の小片でストロークを描いたり、或いは雑巾で「バーン」と行った時に出来上がっている。後の20%は立て掛けてから始まる。
タイトルの台風の名前は日本の台風名ではなく、インターネットで見つけたアジアの台風名だ。『Sanvu(珊瑚)』『Vongfong(すずめ蜂)』等は広大で蒼い大平洋やどこかオリエンタルな語感がある。
作品に取り組む時、形とか構成とかがあるわけではなく最初に色や配色はある。ときには不安を感じるが「えいやー」と描く。濁りを気にせず好き勝手な方向にストロークする。絵具があらぬ方向へ飛び散ろうがそういう情況の中で自分のテンションが上がるのを実感する。
訪れた男性に作品の印象を聞いてみる。
「キャンバスに向かって元気に描いている姿を連想する。」「色彩が豊富で、線と面のからみ合いが力強い、以前は線のからみが少なかったが自由奔放に、出て来い出て来いと行った感じで今回は従来にない色が出て来た。画面から掘り起こす。或いはひっぱり出している。」「絵を作るのではなく本人の持っている内面を引き出している」と的確に応えてくれた。
善住芳枝氏の作品は大作になればなるほど、例えばギャラリーの壁面の周囲全部に描く時その才能がほとばしり真に大風となり『雲龍』が生まれる。
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