2.アカーの提出文書

 

<アカーの提出文書>

1.1999年6月28日中央薬事審議会血液製剤特別部会に提出された要望書

2.1999年11月26日のHIV疫学研究班主催の検討会議に提出された2つの文書

2−1)献血時問診の問題に関する協議内容の整理

2−2)献血時問診に関する再提案

 

<1.1999年6月28日中央薬事審議会血液製剤特別部会に提出された要望書>

 

厚生省医薬安全局
血液対策課 気付

中央薬事審議会
血液製剤特別部会 御中 

要望書

1999(平成11)年6月28日
動くゲイとレズビアンの会(アカー)
代表 永田雅司

一.はじめに

 私たちは、東京都に事務所をおく同性愛者の団体、「動くゲイとレズビアンの会」と申します。1986年に設立されて以降、同性愛者のための正しい知識の普及、同性愛者のネットワークづくり、エイズの予防啓発活動、エイズ政策への提言活動、等を行っています。

 さて、このたび、貴部会の会合において、全国の日赤血液センターで実施されている献血時の問診票についての見直しが行われると伺いました。
 私たちは同性愛者団体の立場から、かねてから献血者におけるHIV感染の問題において、「献血時の問診票」の在り方を中心に検討をしてきました。
 安全な血液の確保のために、効果的で正確な問診を行う必要があると同時に、問診項目の中に誤解や偏見を招くようなことがあってはならないと考えます。このたびの見直しの際に検討して頂きたい内容を4点にまとめ、ご提案致します。
 よろしくご検討頂けますようお願い致します。

 

二.問診票の構成についての提案

 問診票の目的は、献血者が献血をすることができる状態であるかどうかを正確に聞くことであり、不必要なプライバシーに触れることや倫理的な非難になることは極力さける工夫が必要です。それによって、献血者に不快な思いをさせたり、正確に回答する障壁を少なくすることができると考えられ、具体的には、より客観的、中立的な観点によって項目がグループ分けされて、全体の構成が作られる必要があると考えます。

<提案事項1>

署名や細かいプライバシーに関わる問診を一律に強要しない構成を工夫をする。

<具体案>

 「以下の項目に一つでも該当する人は献血できない」項目をひとまとめにして最初に問診し、その時点で該当する人については、献血を断り、署名は貰わない。また、それ以降の細かい口頭問診を必要とする項目に進まなくてもいいようにする。
 該当しない人については、次の問診に進んでもらい、最終的に口頭の問診をクリアした人のみ署名をしてもらうようにする。

<参考>
「以下の項目に一つでも該当する人は献血できない」項目例

 項目1、2(ビタミン剤等は除く旨記載)、3の内マラリア等、4、8の内ピアスを除く@〜B、9〜14等

[理由]

 現行の問診票においては、問診後に献血が可能となる人も不可能となる人も一律に署名することになっている。しかし献血をお断りする人には署名をしてもらう必要はなく、献血を断られる問診項目に該当し、その上署名する場合、本人にとってプライバシーを明らかにすることになり、かなり精神的重圧(プレッシャー)を伴うと思われる。正確に正直に問診に答えるためには、不必要な個人情報は貰わないことが基本的に重要である。
 前頁の提案のような構成にすると、自分の知られたくない病状、性生活等を不必要に知られずに済み、精神的重圧はかなりの程度軽減されると考える。

<提案事項2>

 期間限定のあるもの(2、4、8、12、13、14の内Bを除くもの等)をグループ化し、順々に聞いていき、次に期間限定がないもの(3の内マラリア等、9〜11、14の内B等)に分けて問診をしていく。

<具体案例>

「この3日間に以下のいずれかに該当することがありましたか。@歯科治療を受けたA……」
「この1年以内に以下のいずれかに該当することがありましたか。@コンドームを使用せずに異性、または同性と性的接触をしたA使用後の注射針を誤って自分に刺したB……」

[理由]

 期間毎に該当するかどうかを聞いていく構成は、この3日間に、この1年以内に○○に該当するかどうかを聞いており、問診される側にもより客観的な質問をされているように感じられ、率直に答えやすいと考えられる。また、現行の14番は、1年間について聞いているが、「Bエイズ検査(HIV検査)で陽性と言われた」ことは1年間とは限らない点など改善すべき点もある。

 

三.「問診項目14」についての提案

 「問診項目14」は、HIV感染の可能性についての問診であり、もっとも重視されているものであると考えます。しかしながら、現行案では、いくつかの問題があり、正確な問診の効果が期待できるとは言えません。下記に「問診項目14」の問題点に沿って「提案」とその「理由」をまとめておきます。

<提案事項3>

1)異性間性的接触にのみ「不特定の」という限定句を設けない。
2)安全な(感染の危険性を少なくする)性的接触について問診を行う。

<具体案>

(現)
不特定の異性と性的接触をもった。
同性と性的接触をもった。

(新)
コンドームを使用せずに異性または同性と性的接触をもった。

[理由1]「問診項目14」は全体として非難と受け取られかねない表現を含んでいるため

例)異性間性的接触と同性間性的接触における「不特定の」という修飾語句の有無
例)血液凝固因子製剤によるHIV感染者に関する項目が含まれていないこと

 過去の問診票の流れから見ても、「問診項目14」は全体としてHIV感染の可能性について正確に問診をしていることにはなっていない。いわゆる「社会的にタブー視されている、あるいは偏見を持たれている行為、集団」(不倫、売春、同性愛、麻薬、エイズ)について問診していることと重なっている。HIV感染の感染リスクの高さについて直接聞くことにもなっておらず、問診の中で「社会的なタブー行為」について聞かれているように感じさせることは、正確な回答を妨げ、問診の効果が発揮できていないことになる。
 また異性間性的接触にはあり、同性間性的接触にはない「不特定の」という修飾語句の有無は、同性愛者の立場から見れば不可解に感じる上に、同性間性的接触は危険というイメージを不必要に大きく与え、正直に答えづらくもさせている。また、女性同性愛者も一律に断る結果となっていることも問題である。

[理由2]@〜Dに当てはまらない人が感染の可能性の低い性的接触をしていたかどうか分からない点について問診ができていない点。

 HIVは性的指向(sexual orientation)により感染する相手を区別しないので、重要なのは安全な(感染の危険性を少なくする)性的接触をしたかどうかにある。例としては、「コンドームを使用せずに異性または同性と性的接触をもった」かどうかを聞くような質問にした方が、同性愛者も答え易く、性感染症に関する認識が薄い異性愛者にも教育効果も期待できると考える。

<提案事項4>

「問診項目14」については、よりきめ細かく対応できるように、問診マニュアル等の分量、質を充実させるべきである。

[理由]

「問診項目14」は、HIV感染についての項目であり、コールバック(自己申告)であらためて取り上げているように、問診票の中でもっとも重視されている。その重要性に比べ問診および、問診を行う問診者の個別対応方法は特に他の項目と分量やマニュアル等が充実していない。「問診項目14」については、よりきめ細かく、対応できるような問診システムを検討する必要が考えられる。

 


 

<2.1999年11月26日のHIV疫学研究班主催の検討会議に提出された2つの文書>

2−1)献血時問診の問題に関する協議内容の整理

 

厚生省医薬安全局血液対策課 御中
日本赤十字社事業局血液事業部 御中

動くゲイとレズビアンの会
代表 永田 雅司

献血時問診の問題に関する協議内容の整理

 時下ますますご清栄のことと存じます。
 さて、当会は、献血時における問診事項および献血とHIVに関わる事項に関しまして、貴省ならびに中央薬事審議会に対して要望書その他の書類を提出し、お話し合いの機会等を持ってまいりました。
 ここに、当会から要請いたしました点について簡単に整理しておきましたので、ご活用頂ければ幸いです。

1/署名について

(問題点)現状では全ての人が署名する形となっており、献血希望者によってはプライバシーの侵害を恐れる場合があり、問診の正確性を害することにつながっている。

(提案)署名は、問診が終わり、献血が可能と判断された人のみが行う形とすべきである。

2/質問項目の順序について

(提案)質問項目を以下の順序に並べることで、より効率的・合理的に問診が可能になる。また、「署名」についての問題も解決できる。

@期間限定無しに一律排除するもの
A期間限定付きで排除するもの(期間の長いものから順番に)
B問診の対象とするもの

3/女性と性的接触をもった女性の献血について

(問題点)現在まで、女性同士の性的接触によってHIVが感染した事例は一例も報告されていないが、現状の問診票ではこれについても一律排除となっている。

(提案)女性同士の性的接触の経験者については献血が可能となるように、問診票を改訂する。

4/男性と性的接触をもった男性の献血について

(問題点)現状では、セイファーセックスを心がけている男性についても排除されることになり、異性間性的接触をもった人との間で不合理な格差が設けられている。

(提案)例:以下の人については献血の対象としない。(1年以内)

・コンドームを使用せずに、不特定の異性と性的接触を行った人
・コンドームを使用せずに、不特定の男性と性的接触を行った男性
・コンドームを使用せずに、上記の人と性行為を行った人

5/献血に関する教育・啓発の実践について

(問題点)現状では、献血の趣旨が国民一般に必ずしも正しく理解されているとは言えず、検査目的での献血につながっている。

(提案)献血の促進だけでなく、血液の用途や、問診等の必要性について国民一般に広く共有されるように教育・啓発につとめる。

6/オルタナティブな検査機会の提供について

(問題点)現状では、保健所等の検査が適切な場所・時間帯に行われておらず、献血がその代用にされてしまう危険性がある。

(提案)オルタナティブな検査機会の提供がなされるべきである。

以上

(本件担当:稲場、菅原)

 


 

2−2)献血時問診に関する再提案

 

厚生省医薬安全局血液対策課 御中
日本赤十字社事業局血液事業部 御中 

動くゲイとレズビアンの会
代表 永田 雅司

献血時問診に関する再提案

 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 さて、以前よりお話し合いを行っておりました献血時問診に関しまして、以前の提案に加えまして、以下の要領で別途提案を作成いたしました。ご検討のほどお願い申しあげます。

(旧提案1)1999年8月25日「献血に関する討議・調整事項」にて提案
 問診票の記述を以下のようなものとする。

14 この一年間に次のいずれかに該当することがありましたか。

@コンドームを使用せずに、不特定の異性と性的接触をもった。(この質問は、全ての人が対象です)
Aコンドームを使用せずに、不特定の男性と性的接触をもった。(この質問は、男性のみが対象です)
Bエイズ検査(HIV検査)で陽性と言われた。
C麻薬、覚醒剤を注射した。
D@〜Cに該当する人と性的接触を持った。

 

(新提案1)問診票の記述を以下のようなものとする。

14 この一年間に次のいずれかに該当することがありましたか。

@不特定の異性と性的接触を持った。(この質問は、全ての人が対象です)
A不特定の男性と性的接触を持った。(この質問は、男性のみが対象です)
Bエイズ検査(HIV検査)で陽性と言われた。
C麻薬、覚醒剤を注射した。
D@〜Cに該当する人と性的接触を持った。

 

(新提案2)問診票の記述を以下のようなものとする。

14 この一年間に次のいずれかに該当することがありましたか。

@不特定の異性と性的接触を持った。(この質問は、全ての人が対象です)
Aコンドームを使用せずに、男性と性的接触を持った。(この質問は、男性のみが対象です)
Bエイズ検査(HIV検査)で陽性と言われた。
C麻薬、覚醒剤を注射した。
D@〜Cに該当する人と性的接触を持った。 

以上

 


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