2.それについての説明
(愛知県赤十字血液センター発行『Donor Mate』No.13 1996年9月)

※現在のものとは質問項目に若干の変更があります。あらかじめご了承下さい。

 

<「より安全な輸血用血液の確保と献血者の健康を守るために」>

問診の意義

献血申し込みの際にご記入いただく問診項目には3つのコンセプトがあります。
一つ目は献血することによって献血者ご自身の健康が損なわれないこと。二つ目は、輸血を受ける患者さんの感染症等の副作用をできるだけ予防すること。三つ目として、献血者ご本人の意思によって献血にご協力いただいていること、の三点です。これは献血者の方々の善意が輸血を必要とする患者さんに有効的にお役立てできるよう配慮したものです。 

輸血用血液となるまでのチェックポイント

血液センターでは、輸血いただく前に血液比重検査、血圧測定、問診などを行い献血者ご自身の健康状態を確認します。そしてこれらの問診で“合格”と判断されれば献血いただくことが可能となります。ここまでの過程は一次スクリーニングの段階です。
この一次スクリーニングを無事通過し献血できたからと言っても献血された血液がただちに輸血用血液となるわけではありません。この後に献血された血液の安全性を確認するため各種の検査を行なっています。この検査段階でのチェックは二次スクリーニングといえましょう。検査項目は血液型を始め梅毒、肝機能、ウイルス検査やHIV抗体検査など輸血用血液としての安全性確認の最大のチェックポイントともいえます。
そしてさらに、二次スクリーニングで全て問題なし、言うなれば“合格点”が付けられた血液について今度は外観上問題が無いかどうか等、三次スクリーニングとして最終段階のチェックが行なわれます。この最終チェックで全く問題なしと判断されて初めて輸血用血液としての“製品”となるわけです。
血液センターでは、このように献血された血液を段階ごとに厳重なチェックを行ない、輸血用の安全性と品質に万全を期しています。 

血液検査は完全ではありません

血液センターが輸血用血液の安全性を確保するために行なっている血液検査方法は世界最高水準にあると言われていますが、それでもなお完全とは言えません。というのは、極まれではありますが輸血による感染症が現在も発生しているという現実です。如何に最高レベルの検査法でチェックしても輸血による感染症を防ぎきることができないということは輸血用血液の安全性確保の面から大変重要な問題となっています。
それではなぜ検査が完全ではないのかという点についてご説明します。これには大きな問題点が二つあります。ひとつは、検査法が確立されているものでも感染の機会があってから抗原や抗体が検出できるまでの間は、残念ながら検査ではチェックすることができません。この検出不能の期間のことを「ウィンドウピリオド」と言います。
次に二つ目としてあげられるのは、現在確認されているウイルスなどの病原体以外、いわゆる「未知の病原体」が存在する可能性があること。そして未知であるがゆえに検査法も確立されていないという点です。

もし、ウィンドウピリオドの時期に献血したら

ウイルスに感染する機会があった方が、このウィンドウピリオドの時期に献血されれば、検査でのチェックをすり抜けて「安全な血液」とみなされ医療機関へ届けられます。そして、その血液が患者さんに使用されると輸血による感染症発症という最悪の事態を招く危険性があります。
例えば、HIV(エイズウイルス)に感染する機会があった方が献血されたと仮定します。HIVは感染の機会があってから6〜8週間は抗体検出不能ですので、万一輸血された日がウィンドウピリオドの期間内であれば、この血液は輸血用血液として利用されることになります。この後の状況は敢えてご説明申し上げるまでもないことと思います。

問診の重要性

このように血液検査では完全にチェックできないということは検査そのものにもやはり限界があると言わざるを得ません。それでは他にどのような方法を用いれば検査でチェックできない部分を補完できるのかを考えなければなりません。このことが、輸血による感染症を最小限に食い止められ、さらに安全な輸血用血液確保のための最大のキーポイントです。
そして、これらの安全性を追求する意味で唯一考えられる方法、それが問診なのです。

問診項目

問診項目は、検査で確認できない部分を補うための項目が含まれています。従いまして、プライバシーに一歩踏み込んだ質問項目もありますが、これも輸血用血液の安全性を確保するためにやむを得ず設けさせていただいたものですので何卒ご理解とご協力をお願いします。

 

<問診票(2)の各項目の説明>

問診票(2)で設定されている各項目について、その設問理由などを解説します。

1.今日の体調はよろしいですか。

献血は基本的に「健康な方」にご協力をお願いしています。熱があったり風邪をひいているなど体調がすぐれない方は献血者ご本人の健康や患者さんの安全性を考えて献血をご遠慮いただいています。

 

2.この3日間に注射や服薬をしましたか。

注射や服薬をされている献血者ご本人の健康状態を確認するための設問です。また、体内に残存する薬の成分が輸血を受ける患者さんに望ましくない影響を与えないかなども併せて確認する確認するもので、献血者ご本人の健康状態、症状や薬の種類(点眼、点鼻薬含む)等によって献血できる場合とご遠慮いただく場合があります。基本的には、医療機関で注射や服薬をされている方はお控えいただくのが適当かと思います。
一般的には次のような判断基準をしています。
ビタミン剤・ミネラル剤・消化剤・漢方薬・アレルギー性鼻炎・便秘薬・点眼剤・点鼻薬・外用薬などは当日の服薬や使用でも献血は可能ですが、薬の種類や症状、健康状態によっては献血をご遠慮いただく場合があります。
沈痛解熱剤・抗生物質・ホルモン剤等の注射や服薬の場合は、3日間経過後であれば献血は可能です。この場合でも献血者ご自身の症状や健康状態をみて献血可否の判断がなされます。
血圧や尿酸を下げる薬を服用中の場合はご本人の身体への影響を考えて献血をご遠慮いただいております。

 

3.今までに次の病気にかかったことがありますか。または現在かかっていますか。

(1)心臓病

今までに心筋梗塞や狭心症の発作を起こしたことのある方、弁膜症、心筋症や治療を必要とするような方は献血をお断りしています。

(2)肝臓病

この肝臓病に関しては、過去に肝炎にかかったことがあるかどうかの確認を意図しているものです。肝炎にかかったことがある場合、その肝炎の種類が何型の肝炎であったかによって献血可否の判断が変わります。

(3)A型肝炎

この肝炎のウイルスが血液中に存在する時期は、肝炎を発症する前と急性肝炎発症時期だけです。従って慢性化しませんので、治って6ヶ月間を経過していれば献血にご協力いただけます。

(4)B型肝炎

この肝炎は、B型肝炎ウイルスに乳幼児期に感染し、10〜30才頃までに持続感染状態(キャリア)から発症する場合と、成人期に初めて感染し急性B型肝炎を発症する場合の2つに大別されます。
キャリアからの発症の場合では、肝炎がおさまっていても血液中にウイルスが持続して存在していますので献血をお断りしています。もしキャリアの方が献血されても、この血液が輸血用血液として利用されることはありません。この場合、検査で陽性と判明したときは献血者の方にお知らせしています。
成人初感の場合では、感染後体内に抗体ができてウイルスがなくなりますので治った後6ヶ月間経過していれば献血にご協力いただけます。

(5)C型肝炎

C型肝炎は慢性化することが多く、ウイルスが持続して存在している可能性が高いので献血をお断りしています。この場合、B型肝炎ウイルスキャリアと同様に献血されても輸血用血液として利用されることはありません。また検査で陽性と判明したときは献血者の方にお知らせしています。

(6)その他の肝炎

A、B、C型の他にも輸血により感染する可能性のある肝炎ウイルスが報告されています。これらの肝炎ウイルスの検査法はまだ確立されていませんので、何型の肝炎かがはっきりしない場合には献血をお断りしています。
なお、肝炎をおこした時に黄疸が出た場合は、その原因がA型またはB型の急性肝炎によるものとはっきりしていれば、治った後6ヶ月間経過していれば献血にご協力いただけます。また、胆石によるものであることが明確であれば同様にご協力いただけます。

(7)マラリア

マラリアにかかったことがある場合、その後長期間、発熱や発作などの症状がみられなくても体内にマラリア原虫が存在している事があります。マラリア原虫は赤血球を介して伝播する可能性がありますので献血をお断りしています。

(8)がん、血液疾患、脳卒中

献血者保護の立場から献血を御遠慮いただいております。

(9)けいれん

献血中の万一の事故を未然に防止するため、献血をお断りしています。これは薬によってけいれんを抑えている場合も同様です。なお、小児期における熱性けいれんであれば献血にご協力いただくことができます。

(10)腎臓病

慢性腎炎やネフローゼ症侯群と診断されている方は献血をご遠慮いただいています。なお、小児期の急性腎炎やネフローゼ症侯群で完全に治っていれば献血にご協力いただけます。

(11)糖尿病

インシュリンや血糖降下剤などの薬剤で血糖をコントロールされている方は献血者保護の観点から献血をご遠慮いただいています。なお、病状にもよりますが食事療法のみの場合は献血にご協力いただくことができます。

(12)結核

治癒後5年間経過すれば献血にご協力いただけます。

(13)ぜんそく

数年近くも発作が出ていないような方であれば献血は可能ですが、時々発作が起こるような方は採血中の事故防止のため献血をご遠慮いただいています。

(14)アレルギー疾患

薬や食べ物のアレルギー疾患で治療を必要とするような重い症状がある場合、また過去に治療を受けていたことがある方は献血をお断りしています。

(15)乾せん

乾せんは、赤いかさかさした皮疹を特徴とする頻度の高い慢性皮膚疾患です。伝染することはなく、この疾患そのものには問題ありませんが、この皮膚疾患の治療薬の中で「チガソン」という薬剤を服用中の方、或いはこれまでに服用したことがある方はこの薬の成分が長く体内にとどまりますので献血をお断りしています。この薬を処方する場合は、医師から十分な説明を受けたのちに投与されるのが一般的なようです。なお、乾せんがあっても「チガソン」を服用したことのない方は献血にご協力いただけます。

(16)梅毒

梅毒は粘膜や血液から感染します。過去にかかったことがある方、現在治療中の方を含め献血をお断りしています。

(17)その他

以上の項目以外にこれまで大きな病気や現在治療中の病気、または持病はないかなどをご記入いただく欄です。主な例をあげさせていただきました。

・大手術・複雑骨折

〜輸血を受けた可能性のあるような大手術の場合は献血をお断りしています。また複雑骨折をされてから6ヶ月間経過していない方も献血をお断りしています。なお、単純骨折、ヘルニア、痔核、虫垂切除術、扁桃腺切除術などの小手術の場合は経過が良好であれば献血にご協力いただくことができます。

・皮膚疾患

〜病院で治療を必要とするような疾患、露出した感染創(ジクジクした傷口)や、やけどが治っていないような場合は献血をご遠慮頂いております。

・痛風

〜治療のため薬を服用中の方は献血をお断りしています。

・リウマチ熱

〜心臓障害が疑われますので献血をお断りしています。また現在治療中の方や予防する意味で薬を服用中の方も同様です。

 

4.次の病気にかかっていましたか。

(1)伝染性単核球症

この病気はウイルスによって感染します。この原因となるウイルスは輸血によって感染する可能性がありますので、病気が治ったあと6ヶ月間は献血をご遠慮ください。

(2)はしか(麻疹)・風疹・おたふくかぜ

これらの病気もすべてウイルスによって感染します。発疹や腫れがひいたあと3週間経過していれば献血にご協力いただくことができます。

 

5.この1ヶ月間に発熱を伴う食中毒様の激しい下痢をしましたか。家族にA型肝炎やリンゴ病(伝染性紅斑)を発症した人はいますか。

下痢の原因が暴飲暴食とか風邪による場合と推定できれば献血にご協力いただけます。極まれですが、食肉などを通して消化器官に細菌が入り込み、これが原因で激しい下痢を起こすことがあります。これらの細菌の中でも「エルシニア菌」といわれる細菌は血液中にかなり長い間存在し、また低温を好み1〜4℃でも増殖するため4〜6℃で保存している赤血球製剤はエルシニア菌にとって理想的な環境となります。海外でこの細菌の輸血による感染例が報告されており、もし下痢の原因がはっきり分からないような場合は1ヶ月間は献血をご遠慮下さい。
次に家族がA型肝炎やリンゴ病を発症された方がいる場合についてご説明します。
A型肝炎は経口感染するもので、生ガキを代表とする貝類が主な感染源です。感染すると肝炎発症前後の1〜2週間糞便中にA型肝炎ウイルスが排泄されます。ですから1ヶ月以内に家族にA型肝炎を発症した人がいる場合は生活を共にしている方も感染している可能性がありますので、献血にご協力いただくためには1ヶ月以上経過していることが条件となります。
リンゴ病(伝染性紅斑)は主に小児の疾患でウイルス感染症のひとつです。膵液の飛沫で容易に家族内感染を起こしますが、感染しても多くの場合は無症状で経過します。このウイルスを持つ人の血液を輸血することは、患者さんの疾患によっては大変危険性が高いとされています。ご家族にリンゴ病を発症された方がいる場合は前述のA型肝炎の場合と同様に1ヶ月間経過していることが条件となります。 

 

6.この1年間に予防接種を受けましたか。

予防接種による血液への影響を考えて確認するものです。予防接種を受けたあと献血できない期間は次の通りです。

予防接種

・24時間:インフルエンザ・日本脳炎・コレラ・B型肝炎・百日ぜき・A型肝炎・狂犬病・破傷風トキソイド
これらの予防接種は生ワクチンではありませんので、接種後無症状で発熱も無ければ24時間経過していれば献血は可能です。
※【動物に噛まれたあと狂犬病ワクチンを接種した場合は1年間献血できません】

・4週間:黄熱・麻疹(はしか)・ポリオ・おたふくかぜ・風疹(三日はしか)・水痘(みずぼうそう)・BCG
これらは生ワクチンですので、接種後4週間の経過が必要です。

抗血清

・3ヶ月:破傷風・蛇毒・ジフテリア

・1年間:抗HBs人免疫グロブリン
※【針刺し事故などで予防的にB型肝炎ワクチンと抗HBs人免疫グロブリンを併用した時は1年間の経過が必要です】

 

7.この1年間に海外旅行をしましたか。それはどこですか。海外に住んでいたことはありますか。それはどこですか。

この質問は、日本には流行していないマラリアなどの感染症の可能性についてうかがうものです。

(1)マラリア

マラリアは熱帯及び亜熱帯の地域で流行がみられ、その流行域はWHOから指定されています。年間発生数は3〜5億人と推定され、世界的にみると患者数の最も多い重大な疾患です。日本では海外でマラリアに感染して発症する例が年間百数十例と報告されています。献血可否の判断は旅行地や一時的な滞在、或いは居住などによって大きく異なります。

・流行地への旅行

マラリア感染危険地域であるアフリカの中央部と南米アマゾン川流域に旅行された場合は、旅行期間にかかわらず帰国後1年間は献血できません。上記以外の地域への海外旅行は、通常の観光旅行で都市やリゾート地でのホテルで1ヶ月以内の滞在であれば帰国後発熱がなければ献血にご協力いただけます。ただし、辺境の地への探検ツアーや研究、取材、国際協力事業などで農村部や奥地へ旅行された方は、マラリアに感染する例が増えてきていることから、帰国後1年間は献血できません。

・流行地内居住

居住経験のある方は感染している可能性がありますので、帰国後3年間は献血をお断りしています。

・流行地内滞在

流行地内での野外調査研究などの活動を経験した方や医療行為などにより患者と接する機会があった方はマラリア感染の可能性もありますので、その状況に応じて帰国後1〜3年間は献血をお断りしています。

(2)バベシア症・アフリカトリパノソーマ症・シャーガス症

あまり聞き慣れない病名だとは重いますがいずれも原虫性の疾患です。日本ではほとんどみられない疾患ですが海外で輸血による感染例がありますので、これらの病気にかかったことがある方は献血をお断りしています。

 

8.この1年間に次のいずれかに該当することがありましたか。

この質問項目はウイルスなどに感染する機会がなかったかどうかを確認するためのものです。いずれかに該当した場合、ただちに献血ができないということではなく、内容によって献血可否の判断が変わります。

(1)ピアスをした

病院や専門店で使い捨ての器具を使用して穴をあけた場合は、その部位がきれいに治っていれば、穴をあけた日から1ヶ月後に献血にご協力いただくことができます。しかし、ピアスの穴を友人同士等で安全ピンや針などを用いてあけた場合は、消毒など衛生的な条件も悪くウイルス感染の可能性もありますので1年間は献血をお断りしています。

(2)いれずみをした、使用後の注射針を誤って刺した

この場合もウイルス感染の可能性がありますので1年間は献血をお断りしています。

(3)肝炎ウイルス保有者(キャリア)と性的接触等親密な接触があった

B型やC型の肝炎ウイルスはキャリアとの性的な接触によって感染することがあります。夫婦の場合、そのほとんどが結婚後1年以内に感染しますが、それ以降に感染することは極めて少ないようです。B型肝炎ウイルスキャリアの配偶者の場合では、感染し発症しても抗体ができますので、結婚後1年を経過していれば献血にご協力いただくことができます。
C型肝炎ウイルスキャリアの配偶者では、感染すると配偶者の方もキャリアになる可能性がありますので原則的には献血をお断りしていますが、感染しないで結婚後1年以上経過していれば献血にご協力いただくことができます。

 

9.今までに輸血や臓器の移植を受けたことがありますか。

この項目に該当する場合は献血をお断りしています。血液を介して感染するウイルスなどの病原体には現在でもまだ解明されていない未知のウイルスなどが存在する可能性があることを最初にご説明しています。輸血や臓器移植を受けた方全員が何らかのウイルスに感染しているわけではありませんが、少なからず、輸血も臓器移植も経験のない方よりは感染の危険性が高いという基本的な観点に立っています。献血をお断りする理由はあくまでも万一の危険性を考えての措置であることをご理解ください。

 

10.B型やC型の肝炎ウイルス保有者(キャリア)と言われたことがありますか。

ウイルスの持続的感染者の方を「キャリア」と定義付けています。ウイルスキャリアかどうかは検査によって概ねチェックできますが、キャリアでもウイルスの量が少なくなると検査で見逃される可能性があります。輸血を受ける患者さんへのウイルス感染を防ぐため、この項目に該当する場合は献血をお断りしています。
成人期にB型肝炎ウイルスに感染した場合は、一過性の急性肝炎で治り、またキャリアになることはありませんが、免疫抵抗力の低い乳幼児期に感染するとキャリアになる率が高いことが知られています。
C型肝炎ウイルスについても一過性感染と持続性感染とがありますが、この両者を完全に区別できる検査法が確立されていませんので、C型肝炎にかかったことがある方や抗体が陽性と言われた方については献血をお断りしています。

 

11.今までに人由来成長ホルモンの注射や脳外科手術を受けたことがありますか。

この質問は最近話題になった狂牛病(CJD クロイツフェルト・ヤコブ病)の原因とされるプリオン感染の可能性を判断する項目です。CJDは人口200万人に対し1人程度のごくまれな病気で発病原因なども不明です。これまでに人由来脳下垂体ホルモンの投与や硬膜移植、角膜移植を受けた方の一部に海外でCJD発症の報告があります。CJD感染についてはまだ未知の部分が残されており、輸血による感染も明確には証明されていませんが、慎重を期して人由来成長ホルモンの投与を受けた方の献血をお断りしています。
なお、硬膜移植を伴わない脳外科手術の場合は献血にご協力いただくことができます。

 

12.この3日間に抜歯をしましたか。

抜歯によって口の中に存在する菌 (口腔内常在菌)が血液中に入り込み菌血症を起こす可能性がありますので、歯を抜いたあと3日間は献血をお断りしています。

 

13.女性の方: 現在妊娠中、または授乳中ですか。この6ヶ月間に出産、早流産をしましたか。

献血者ご自身の健康への影響を配慮し妊娠中の方や出産、早流産の後6ヶ月間は献血をお断りしています。また、母乳により授乳中の方は出産後1年間は献血をご遠慮ください。

 

14.この1年間に次のいずれかに該当することがありましたか。

この質問項目は献血者の方々にとって失礼極まりない質問と思われるかも知れませんが、安全な輸血用血液を確保するためには、大変重要な意味を持つものなのです。質問の意図としてはHIV感染の危険性を判断するための必須確認項目としています。HIV感染の危険性や先に説明しましたウィンドウピリオド期における検査チェックが不能であることなどを考慮し、この問診に該当する方の献血はお断りしています。プライバシーに踏み込んだ質問ではありますが事情をご理解ください。

 

15.エイズ検査(HIV検査)を目的とした献血をお断りしています。その理由をご理解いただいていますか。

血液センターでは、HIV抗体検査を献血された血液全部について実施していますが、これはあくまでも輸血用血液としての安全性を確認するために行う諸検査項目の一つとして検査しているもので、その検査結果も献血者の方に一切お知らせしていません。もし、ウィンドウピリオド期にある方が検査目的で献血されれば、その血液は「陰性」とみなされ病院へ届けられることになります。そして輸血を受けた患者さんがエイズに感染するという最悪の事態を招くことになってしまいます。従って、このような事態を防止するために感染が危惧される方の献血をお断りしているものです。
なおエイズの検査は保健所で無料で匿名の検査を受けることができます。エイズに関するご相談や検査は最寄りの保健所にお問い合わせください。

 

以上のように問診の15項目それぞれの持つ目的や基本的な考え方などをご説明しましたが、基本的ラインの説明ですので、問診個々に該当したときなど具体例については「一次スクリーニング」としての献血可否判断として最終的には献血会場の検診医が行います。
患者さんは元より国民からも信頼されるより安全で良質な輸血用血液を確保することが血液センターに課せられた使命です。どうか皆様方のご理解とご協力をお願いします。

 


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