#2.2.ゲイ・バッシングについてA

 

 今年の2月11日早朝、東京都江東区夢の島二の「都立夢の島緑道公園」で、若い男性の虐殺死体が発見された。頭部や顔面などを丸太(立木用の添木で、直径約7センチ、長さ約150センチ)で殴られ、とくに顔面は原形を留めないほどで、死因はこうした外傷性ショックや内臓損傷による失血死であった。ズボンからは8000円入りの財布が無くなっていた。
 被害者は鈴木伸一さん(33)。強盗殺人容疑で16日に江東区の区立中学3年の少年(14)、同区の都立定時制高校1年の少年(15)、更に19日には同区の中野大助容疑者が逮捕された。「遊ぶ金欲しさに襲った」と供述しているが、しかし、これは単なる金目当ての強盗事件ではなかった。
 この「夢の島緑道公園殺人事件」は当初からゲイ・バッシングではないかと噂されていた。それは、この夢の島緑道公園がハッテン場であること、事件が深夜に起こったと思われたこと、状況から犯人が複数であると推測されたことによる。また、アカーによる「ゲイバッシング電話相談」においても、新木場・夢の島周辺はバッシングを受けたとする回答が最も多く寄せられた場所でもあった。そしてこの推測は、捜査が進むにつれ、より確固たる裏付けを得ていった。

 彼らはこれまでに何度も、この「夢の島緑道公園」で暴行・強盗を重ねていたと言う。そしてそのターゲットは、この公園に集まる同性愛者達だった。彼らは1月26日にも同じ場所で51歳の会社員に「お前、オカマだろう」と因縁をつけて金を盗ろうとし、警察から事情聴取を受けていた。今回の取調べに対し、「ホモは襲っても警察に届けないから……」と、彼らはこれまでにも、同じように現金を奪う目的で男たちを襲ったことがあるとほのめかしている。
 事件後に週刊誌記者などが地元の少年に取材したところ、次のような言葉が返って来た。「彼らは、あの公園で何度も『ホモ狩り』をやっていた。やった後にはいつも電話があって、その日の稼ぎがいくらだったと自慢していましたから」。しかし、それは今回の事件に関わったとされる3人だけのことではなかった。少年達によれば、緑道公園での“ホモ狩り”=同性愛者を狙う強盗事件は数年前から始まっており、隣の江戸川区や墨田区からも同性愛者を狙う少年達が集まるとのことだった。「これまで被害にあった人は、数百人はいるはず。いくらカツアゲできるかはやってみないとわからないけど、うまくいけば、5〜6万になることもあるみたいっすよ」。
 新聞報道によれば、3月3日にも別の少年4人(今回の事件に関わったとされる3人とは仲間)が強盗容疑(1月10日未明に、同公園の管理事務所やトイレで、男性に殴る蹴るの暴行を加え、現金7千円などを奪った疑い)で逮捕されているが、これもまた“ホモ狩り”であった可能性が強い。

 しかし、彼らが同性愛者を狙うのはどうしてか。「ホモは、俺たちの姿を見ると、逃げるんすよ」「ホモは、脅せば大抵すぐに金を出すんです。しかも、警察に被害届を出さない。バッドを持っていくやつらもいる。公園は木で遮られているから、周りから見えないし、叫んでも誰も助けに来っこないっすから」。彼らは、同性愛者達が、同性愛者であることによる社会的差別故に事件を表沙汰に出来ないことを知っていて、金を奪うターゲットにしているのである。
 更にある少年は、「“ホモ狩り”は3〜4年前に始まったんじゃないかな。でも、単にカツアゲが目的じゃない。あいつらは俺達を見ると内股で走って逃げ出すから、それを追い駆け回すのが楽しいんだよ。3人も、それが狙いだったんだろ」と言い、狙いが単に金ではないことも示唆された。それは学校内でのいじめや近年目立ってきたホームレスをターゲットとした凶悪犯罪の場合にも似た心理である。ホームレスを襲った高校生らは、「ホームレスは虫けらで生きていてもしょうがない人間」「ごみ。世の中でいらん人間」と供述し、「ゲーム感覚」で襲っていたと言う。“ホモ狩り”をしていた少年達にも、そうした感覚があったのではないか。

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