3.ジョイント第三号

 

JOINT

献血時問診の改善を求めるジョイント・ステートメント・プロジェクト

Vol.1−No.3(1998年12月22日発行)

 

1)問題は変わらずにある(稲場雅紀)

2)献血問題周辺事情(柳橋晃俊)

3)事務局から

 

 


問題は変わらずにある

日本赤十字社「献血」問題98年取り組みのまとめ

 「ジョイント」第2号を6月に出してから半年がたちました。「共同声明」に賛同して頂いた皆さんには、大変ご無沙汰です。この半年の間、「献血問題はどうなったんだろう」と思い出していただいたりしていれば光栄です。
 実際、「献血時問診の改善を求めるジョイント・ステートメント・プロジェクト」が発足し、共同声明を募り始めてから1年がたちますが、献血の現場においては未だに「ここ1年間に同性とセックスしましたか?」と問診され、YESと答えると献血を受けられないという状態は変わっていません。日赤や厚生省側のかたくなさに憤りを感じると同時に、私たち事務局の力不足にも気づかざるを得ません。
 実際に輸血によるHIV感染が疑われるケースが出現するに及んで、問題は非常に複雑になってきているように見えます。厚生省は、ウイルス量を直接チェックする検査方法を献血血液のスクリーニングに用いられないかと計画しています。また、血液事業法案は今年中は国会に上程されませんでしたが、来年に向けて準備が進んでいるようです。しかし、私たちが要求してきた「献血時問診の問題」は、本来極めて単純な問題です。すなわち、「1年間に同性とセックスをした」人は、男性であろうが女性であろうが、どんなセックスをしたのであろうが、一律拒否するという現在の問診方法は事実上同性愛者を献血から排除するものであり、不適切であるというものです。一見問題は複雑になってきたように見えますが、献血時問診の問題についていえば、問題の所在は全く変わっていません。
 1998年の年末にあたり、東京事務局・札幌事務局とも、今期の活動に関してはこの「ジョイント第三号」でいったん総括することにしたいと思います。しかし、問題が解決されていない以上、今後も継続的にこの問題に注目し、機会を捉えて再び社会に問題提起していきたいと考えておりますので、今後ともご注目・ご支援をお願いします。

 

<1998年の取り組み> 

 献血問題にまともに取り組みたい、という声がいくつかの団体・個人から上がってきたのは1997年、夏頃のことでした。この声を集めて、問題解決に向けての一つの力としていこう、ということで、北海道セクシュアル・マイノリティ協会・札幌ミーティングと動くゲイとレズビアンの会が呼びかけ人となって、札幌事務局、東京事務局を設置し、1997年12月に「献血時問診の改善を求めるジョイント・ステートメント・プロジェクト」を立ち上げることが出来ました。
 このプロジェクトは、各地のレズビアン・ゲイ、性的マイノリティの団体、HIV/AIDSに関わる団体、その他この問題に関心のあるグループなどに呼びかけ、献血時問診に関する共同声明を採択することに目的をおいていました。その後文章の推敲、改善なども各団体にお願いして、1998年4月1日には、共同声明への賛同団体は16団体を数えるに至りました。
 その一方、東京事務局を務める動くゲイとレズビアンの会では、2月25日、厚生省医薬安全局と献血時問診に関しての交渉を行いました。交渉に出席した山本尚子・血液対策課課長補佐は、厚生省は血液の安全性を最優先しており、そのためには多くの人の献血の権利を保障するのではなく、危険因子が少しでもあればそれを排除するという立場から血液行政を進めざるを得ないという立場を明らかにしました。動くゲイとレズビアンの会側は、現在の問診基準は「危険因子の排除」機能も果たしていないと反論、端的な例として、女性間の同性間性行為による感染の例は一例も報告されていないが、これでは1年間の間に同性と性行為を行った女性の献血も排除されてしまうという事実を挙げました。これに対して、山本氏は、現行の問診基準に固執する立場はとらないと発言。しかし、お互いが実務的なレベルで議論を煮詰める作業に着手するには至りませんでした。その後、輸血によるHIV感染の疑いのあるケースなどが報告され、日赤や厚生省でも、この問題に関する具体的な検討を始めているようです。共同声明および東京、札幌事務局では、日赤や厚生省などのこうした動きに関して情報を収集し、問題点は同じながらも、取り組みの方法を練り直す必要に直面し、共同声明の採択および動くゲイとレズビアンの会の交渉以降は、情報収集および取り組みの練り直し作業に集中して、今日に至っています。
 今期の活動はこの「ジョイント第三号」の発行で終了し、具体的な取り組みの方向ができ次第、新たな形で第二期の活動を提起していければ良いのではないかと考えています。

(東京事務局 稲場)

 


献血問題周辺事情

柳橋晃俊(東京事務局)

1 血液事業法 

 去年の12月に、「血液事業のあり方に関する懇談会」が、今後の血液事業のあり方に関する報告書を発表し、それに基づいて、血液事業に関する法整備を進めるため、中央薬事審議会で議論が行われている。報告書は、「安全性確保の具体策」として、

1 ウインドウ・ピリオド危険性の低減
2 新たな技術などの開発とその利用
3 情報の把握、評価、提供、及び対応
4 遡及調査の実施
5 検査目的の献血の防止及びHIV検査結果の通知
6 自己血輸血の推進

の6項目を提言している。

 「ハイリスク・グループ」からの献血血液によるHIV感染を防止するための問診強化は1980年以降行われており、1995年にも改めて問診強化の報告書が出されている。この報告書では、「同性と性的接触を持ったもの」は、HIVに感染している危険性がある者としては例示されていない。今年上半期の献血件数に対する献血血液のHIV陽性件数は10万件0.867件で、先進国の水準としては、流行レベルから見てかなり高い数値のようである。当然ウインドウ・ピリオドの間に献血された血液がある可能性も出てくるから、新たなスクリーニング技術の導入(ウイルスを直接調べる検査の導入など)や血液需要の抑制、HIV検査体制の改善(より検査を受けやすくする)等が検討・提言されているが、問診が、スクリーニングの補助的手段としての機能を持つことから考えれば、こちらについてもまだまだ検討の余地がある。

 

2 ハイリスク・ビヘイビア

 98年2月に行われたアカーと厚生省との交渉でも、HIV感染の危険がある人をあらかじめ献血対象者からはじくための問診項目が、ハイリスク・グループを問題にしているのか、ハイリスク・ビヘイビアを問題にしているのかが問題になった。
 厚生省の認識では、現在のHIV感染に関する問診項目はハイリスク・ビヘイビアを問題にしたものであり、ハイリスク・グループを問題にしたものではないということであるが、1980年代以降広められてきた誤った情報、偏った情報の是正が十分とは言えない状態であり、問診項目がハイリスク・ビヘイビアに基づいていると言えるかどうか疑問である。例えば、「同性と性的接触を持った人」という項目では、女性同士で性的接触を持った場合でも献血不適格ということだが、女性同士の性的接触によるとみられる感染は日本ではこれまで一例も報告されていないし、世界的に見ても極めて稀である。このことは、とりもなおさず「同性と性的接触を持った人」というのは、以前の問診にあった男性同性愛者という項目を単純に言い換えたに過ぎないことを示してはいないだろうか。問診において具体的な性行動について聞くことは出来ないという意見もあるが、それは献血時問診がプライバシーを保護する体制になっていないというだけのことではないだろうか。
 思考経済の問題も含めて、「経済性」の問題を考慮する必要性は認められるべきだが、そうした経済性を導入する十分な合理性や目的適合性がなければ、差別を助長する可能性は常につきまとわざるを得ない。もし、男性同性愛者のHIV感染率が高いのだとすれば、それは「集団におけるHIV感染の流行を分析するとき、HIV感染の広がりがある社会的要因に強く影響されていることが分かる。それは、即ちその社会に存在する差別の大きさ、強さ、そして性質である」のだから。
 私たちは、この問題について、安全な血液の供給という目的を厚生省や日本赤十字社と共有できるからこそ、正面から取り組んでいるのである。来年は血液事業法も国会に上程されることと思われる。それが、安全な血液供給、平等な血液供給にとって実りある成果をあげられるようにしていきたいものである。

 


<札幌事務局より>

 みなさま、報告が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。
 札幌事務局では、とりあえず厚生省側の出方を見極めてから行動しようということで、目立った動きは行っておりませんでした。アカーと厚生省との交渉などによって、日赤=厚生省側もこの事態を妥当と考えているわけではなく、何らかの対策を講じようとしているという事がわかり、その後の実際の活動は、かなり静かなものとなっています。
 現状は膠着状態という感じで、札幌も含めて地方のグループ活動をどうしていけばいいかが、今後の活動の課題となっていくと思いますが、当面は厚生省などの動きを見ながらより具体的な活動が必要となったときに検討するという形で、いいのではないかと考えています。
 しかし、この会報をお読みになっておわかりのとおり、現在献血によってHIV感染が起きた疑いのあるケースがいくつか散見されます。このような状況から考えて、厚生省の側が今後、私たちの献血の制限を一層強化する可能性もあります。こうした行政側の態度を牽制するためにも、献血プロテストの全国ネットワークは意義があるものだと考えています。地方で活動する私たちとしては、全国的な世論の盛り上げとして日々の活動の中で、例えばビラを作成してイベントの際に参加者に配布するなど、世論の形成を促していくことも出来るのではないかと考えます。
 今後も様々な活動を通して、献血問題もリンクさせて行なっていきたいと考えています。

 

<東京事務局より>

[プロジェクト来年以降の活動]

 1998年もあとわずか。このプロジェクトも、本年の活動はこの「ジョイント」第三号発行にて終了いたします。
 今後の活動についてですが、来年一月には通常国会が再開されます。列島を覆う不況や自自連立のかまびすしい報道にかき消されがちですが、「血液事業法」の国会上程など、献血をめぐる情勢は次回通常国会でも動きそうです。こうしたことを見据えて、東京事務局としては通常国会開始と同時に、献血問題をめぐる情報の収集や調査の活動を開始していきたいと考えています。また、重要な情報等に関しましては、随時まとめて「ジョイント」の形にして流していきたいと思っておりますので、その際はよろしくご高覧お願い申しあげます。
 ではまた来年お会いしましょう。

 


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