3.ジョイント第三号
JOINT 献血時問診の改善を求めるジョイント・ステートメント・プロジェクト Vol.1−No.3 (1998年12月22日発行)
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<1998年の取り組み>
献血問題にまともに取り組みたい、という声がいくつかの団体・個人から上がってきたのは1997年、夏頃のことでした。この声を集めて、問題解決に向けての一つの力としていこう、ということで、北海道セクシュアル・マイノリティ協会・札幌ミーティングと動くゲイとレズビアンの会が呼びかけ人となって、札幌事務局、東京事務局を設置し、1997年12月に「献血時問診の改善を求めるジョイント・ステートメント・プロジェクト」を立ち上げることが出来ました。
このプロジェクトは、各地のレズビアン・ゲイ、性的マイノリティの団体、HIV/AIDSに関わる団体、その他この問題に関心のあるグループなどに呼びかけ、献血時問診に関する共同声明を採択することに目的をおいていました。その後文章の推敲、改善なども各団体にお願いして、1998年4月1日には、共同声明への賛同団体は16団体を数えるに至りました。
その一方、東京事務局を務める動くゲイとレズビアンの会では、2月25日、厚生省医薬安全局と献血時問診に関しての交渉を行いました。交渉に出席した山本尚子・血液対策課課長補佐は、厚生省は血液の安全性を最優先しており、そのためには多くの人の献血の権利を保障するのではなく、危険因子が少しでもあればそれを排除するという立場から血液行政を進めざるを得ないという立場を明らかにしました。動くゲイとレズビアンの会側は、現在の問診基準は「危険因子の排除」機能も果たしていないと反論、端的な例として、女性間の同性間性行為による感染の例は一例も報告されていないが、これでは1年間の間に同性と性行為を行った女性の献血も排除されてしまうという事実を挙げました。これに対して、山本氏は、現行の問診基準に固執する立場はとらないと発言。しかし、お互いが実務的なレベルで議論を煮詰める作業に着手するには至りませんでした。その後、輸血によるHIV感染の疑いのあるケースなどが報告され、日赤や厚生省でも、この問題に関する具体的な検討を始めているようです。共同声明および東京、札幌事務局では、日赤や厚生省などのこうした動きに関して情報を収集し、問題点は同じながらも、取り組みの方法を練り直す必要に直面し、共同声明の採択および動くゲイとレズビアンの会の交渉以降は、情報収集および取り組みの練り直し作業に集中して、今日に至っています。
今期の活動はこの「ジョイント第三号」の発行で終了し、具体的な取り組みの方向ができ次第、新たな形で第二期の活動を提起していければ良いのではないかと考えています。
(東京事務局 稲場)
1 血液事業法
去年の12月に、「血液事業のあり方に関する懇談会」が、今後の血液事業のあり方に関する報告書を発表し、それに基づいて、血液事業に関する法整備を進めるため、中央薬事審議会で議論が行われている。報告書は、「安全性確保の具体策」として、
1 ウインドウ・ピリオド危険性の低減
2 新たな技術などの開発とその利用
3 情報の把握、評価、提供、及び対応
4 遡及調査の実施
5 検査目的の献血の防止及びHIV検査結果の通知
6 自己血輸血の推進
の6項目を提言している。
「ハイリスク・グループ」からの献血血液によるHIV感染を防止するための問診強化は1980年以降行われており、1995年にも改めて問診強化の報告書が出されている。この報告書では、「同性と性的接触を持ったもの」は、HIVに感染している危険性がある者としては例示されていない。今年上半期の献血件数に対する献血血液のHIV陽性件数は10万件0.867件で、先進国の水準としては、流行レベルから見てかなり高い数値のようである。当然ウインドウ・ピリオドの間に献血された血液がある可能性も出てくるから、新たなスクリーニング技術の導入(ウイルスを直接調べる検査の導入など)や血液需要の抑制、HIV検査体制の改善(より検査を受けやすくする)等が検討・提言されているが、問診が、スクリーニングの補助的手段としての機能を持つことから考えれば、こちらについてもまだまだ検討の余地がある。
2 ハイリスク・ビヘイビア
98年2月に行われたアカーと厚生省との交渉でも、HIV感染の危険がある人をあらかじめ献血対象者からはじくための問診項目が、ハイリスク・グループを問題にしているのか、ハイリスク・ビヘイビアを問題にしているのかが問題になった。
厚生省の認識では、現在のHIV感染に関する問診項目はハイリスク・ビヘイビアを問題にしたものであり、ハイリスク・グループを問題にしたものではないということであるが、1980年代以降広められてきた誤った情報、偏った情報の是正が十分とは言えない状態であり、問診項目がハイリスク・ビヘイビアに基づいていると言えるかどうか疑問である。例えば、「同性と性的接触を持った人」という項目では、女性同士で性的接触を持った場合でも献血不適格ということだが、女性同士の性的接触によるとみられる感染は日本ではこれまで一例も報告されていないし、世界的に見ても極めて稀である。このことは、とりもなおさず「同性と性的接触を持った人」というのは、以前の問診にあった男性同性愛者という項目を単純に言い換えたに過ぎないことを示してはいないだろうか。問診において具体的な性行動について聞くことは出来ないという意見もあるが、それは献血時問診がプライバシーを保護する体制になっていないというだけのことではないだろうか。
思考経済の問題も含めて、「経済性」の問題を考慮する必要性は認められるべきだが、そうした経済性を導入する十分な合理性や目的適合性がなければ、差別を助長する可能性は常につきまとわざるを得ない。もし、男性同性愛者のHIV感染率が高いのだとすれば、それは「集団におけるHIV感染の流行を分析するとき、HIV感染の広がりがある社会的要因に強く影響されていることが分かる。それは、即ちその社会に存在する差別の大きさ、強さ、そして性質である」のだから。
私たちは、この問題について、安全な血液の供給という目的を厚生省や日本赤十字社と共有できるからこそ、正面から取り組んでいるのである。来年は血液事業法も国会に上程されることと思われる。それが、安全な血液供給、平等な血液供給にとって実りある成果をあげられるようにしていきたいものである。
<東京事務局より>
[プロジェクト来年以降の活動] 1998年もあとわずか。このプロジェクトも、本年の活動はこの「ジョイント」第三号発行にて終了いたします。
今後の活動についてですが、来年一月には通常国会が再開されます。列島を覆う不況や自自連立のかまびすしい報道にかき消されがちですが、「血液事業法」の国会上程など、献血をめぐる情勢は次回通常国会でも動きそうです。こうしたことを見据えて、東京事務局としては通常国会開始と同時に、献血問題をめぐる情報の収集や調査の活動を開始していきたいと考えています。また、重要な情報等に関しましては、随時まとめて「ジョイント」の形にして流していきたいと思っておりますので、その際はよろしくご高覧お願い申しあげます。
ではまた来年お会いしましょう。
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