「 図面を書くだけなのにどうして設計料って高いのですか?」 と素朴な疑問をいただくことがあります。
一度でも設計事務所を利用していただいた方には、充分に価値と費用の効果を理解いただいていると思いますが、設計とは、図面を書く事ではなく、依頼される方との共同作業で生活の場を組み立て、それを建築として実現することなのです。
与えられた敷地に生活の空間を構想し、具体化する事に加えて、契約や工事に関わるマネージメント(予算調整や工事監理等)など全般の取りまとめも設計の仕事です。
図面は、設計の内容を伝える目的と、契約のための書面、つまり手段にすぎず、設計全体の中ではごく一部なのです。
設計は、調査・下調べに始まり、企画設計、基本設計、実施詳細設計、工事監理など、多くの労力をかけ、必要な手順を踏んで完成引渡しまでの全体に関ります。
( ■ 住い創りの流れ も参照下さい、どの手順をおろそかにしても、トラブル、あるいは不備や欠陥に結びつくする事から、歴史の中で時間をかけて築きあげられてきたシステムです。)
全期間は、一般的な木造住宅で1年前後、2年以上に渡ることもまれではありません。
その間、実質作業の延べ日数は、大臣告示第1206号略算方式標準人・日数表(建築士法)によれば、44日(一般木造住宅、工事費2,000万円の場合)となっています。
労働日数で2ヶ月ちょうど(経験的にもほぼ妥当です)、つまり2ヶ月間専門家を、経費込みで雇う費用 が、設計監理料に当たります。
大臣告示略算方式によると、 報酬金額=直接人件費(日額×標準日数)+直・間接経費(直接人件費×1.0)+技術料(直接人件費×0.25) =直接人件費(日額×標準日数)×2.25
(技術料は技術力、創造力の対価として任意に設定するようになっています、一般的には0.25~0.5×直接人件費程度)
日額を2万円(技術者の年収≒450万円と仮定)とした場合、
2万円×44×2.25=198万円
必要な業務を適正に行なえば、このくらいの時間と費用はかかるものですし、一般的に住宅の設計料が、10%程度といわれる根拠をご理解いただけると思います。
設計料はサービスというメーカーや施工会社はたくさんあります。
そこで、無料での設計とはどのようなものかを、少しばかり考えてみましょう。
工事にかける「費用」をそれに値する「価値を生み出す作業」が設計である事を、価値とコストの不思議? の項目で述べてみました。
建設にかける費用が、本当に活かしてに使われるのかどうはまさにこの「設計」にかかっています。
大変な額の予算を、そうしたサービスでの設計によって出来上がった建物の購入にあてられるものでしょうか ???
採算性のないサービスをする企業はないことも考え合わせていただければ、 こうした話は「ただより高いものはない」ことわざ通りであることを理解いただけると思います。
また、どんな場合でも最少限の図面は必要ですし、多くの場合その費用は、工事費に含められていると考えなければツジツマがあいません。
そのような設計で、しかも発注者の立場にたって、監理する者がいない状況が、どのようなものか、およそ結果についてもご想像いただけるのではないかと思います。
(もちろん施工業者の姿勢によっては、そのような形でも、良心的な仕事を残されているケースもあるとはおもいますが)
設計を職業とする建築士の多くは、その責任を充分理解し、設計にかけていただいた費用に見合う、あるいはそれ以上の効果をお返ししようとしているはずです。
(そうでなければ存在の意義はないと思います)
また設計は、薄利多売のきかない仕事であり、妥当な報酬額は、業者との関係に独立性を保ち、建築主の代理者として公正な立場を維持するためにも必要なものなのです。
■ 設計監理の報酬 ・・・ 住いの設計工房 竹内建築設計事務所_岡山