〃芸術の秋だよね〃の巻 その2

あき(以下A)「いらっしゃい、かっちゃん。」

かつみ(以下K)「こんにちは。ビールお願いします。」

ゆき(以下Y)「めずらしいね、ビールなんてさ。」

K「そうですか?最初の一杯はビールからっていうじゃないですか。」

Y「そうか。かっちゃんも大人っぽい事言うようになったんだ。」

K「からかわないで下さいよ。」

A「何?そのパンフレット。」

K「ああ、さっき〃I Got Merman"観てきたんですよ。」

Y「よく取れたね、俺なんかさ、全然取れなくってさ、絶対行きたかった のにな〜。」

K「それは残念でしたね。でも、本当に完売らしいですよ。あきちゃんは 行かないんですか?」

A「そんな訳ないでしょ。もう、ちゃんと初日に観てきました。」

Y「ねえ、どうだったのよ。」

K「すっごく良かったです。一度観てみたかったんですよね。なんたって 〃伝説のミュージカル〃ですからね。」

Y「やっぱね〜。本当、残念でしょうがないって言うの。」

K「もう会場に入った途端、何か、空気って言うのかな、違うんです。シ ョーが始まったら、観客もノリノリでね。出てる女優、3人も個性豊かだ ったし。」

Y「へ〜。でさ〜あ、かっちゃんはどっちのキャストで観たのよ?なんか 2つあるって言うじゃん。」

K「勿論、オリジナル・キャストですよ。諏訪マリー、田中利花、中島啓 江の3人です。この3人ですよね、あきちゃん。」

A「そうね、やっぱりこのオリジナル・キャストは観ておかなきゃね。」

Y「へ〜。そんな、良いの?」

K「そりゃ、そうでしょ。3人がそれぞれにエセル・マーマンを演じるん ですけど、これって、すごく良いアイデアですよね〜。」

A「そうね、ある時はひとりで、ある時は3人でって、マーマン像を作っ ていくのよね。とても良いアイデアよね。」

K「何しろ飽きさせないんですよ、お客さんを。楽しくて、楽しくて。笑 ったり、泣いたりで。」

Y「あ〜、もう。ほんとに悔しいわ。もっと焦って取ればよかった、チケ ット。で、あきちゃん、どうだったのさ。」

A「勿論、楽しかったわよ。アッシ、初演から観てるでしょ。だから、今 回のステージはね、良かったとばっかしは言ってられないのよね。なにか 、3人共、歳取ったなって感じちゃったのも事実。それと、気負いが、最 初の方少し見えちゃって。でもね、やっぱりオリジナル・キャストの凄さ って言うのかしら。この3人でなきゃねって感じたのも事実なの。」

K「宮本亜門って、すごいですよ。ね〜、あきちゃん。」

A「そうね、だけど、アッシはね、彼はこれ一本だと思うのよね。後のも 、一応は全部観たんだけど、これ観れば良いって感じ。それだけ、初演の 時は、ショックだったものね。」

Y「益々残念でならないな〜。チケットあまってないかな。」

K「それだったら、地方公演に行ったらどうですか?」

Y「でもさ、地方公演って、セカンド・キャストなんでしょ。あきちゃん もオリジナル・キャストって言ってるしさ。」

A「そうなんだけどね、今回のセカンド・キャストは結構良いかもよ。再 演の時のセカンド・キャストはオリジナルの二番煎じだったんだけど、今 回は、と言っても、前回も演ってるんだけどね、ひと味違うのね、オリジ ナルと。だから観に行ってみたら?」

Y「そうか、じゃあ行ってみようかな。」

K「そうですよ。観ないとソンソン。プログラムによると、来年の3月ま で、いろんな所、廻るみたいだし。」

A「そうね、行けそうな所があったら、連絡してみれば。それだけ、観る 価値はあると思うけど。」

Y「そうだね、でも3月までは長いな。その前に何か観に行きたいな〜。 あきちゃん、お薦め、何かない?」

A「そうね、アッシが観たい物で構わない?」

K「それだったら僕も聞きたいです。」

A「ミュージカルじゃないんだけどね、フランスの作家で、ロベール・ト マっていう人がいるんだけど、彼の書いた〃罠〃っていうの、とっても面 白い芝居だと思うわ。ひとりの男を巡るサスペンスなんだけどね、脚本が しっかりしているので、だれが演っても面白いと思うけど。」

Y「いいじゃん、いいじゃん。それから?」

A「そうね、朗読劇とでも言うのかな?白石加代子の〃私の選んだ<百物 語>〃、朗読でここまで出来る人って、なかなかいないわよ。」

K「ミュージカルではないんですか?」

A「ミュージカルって言えるかどうか分らないけど、〃ブレヒト・オペラ 〃も面白そうね。ブレヒトという一人の人間を、彼を取り巻く人々を通し て、彼の芝居で唄われた歌と共に綴っていく、と言うやつなんだけど。」

K「ちょっと変っていて面白そうですね。」

A「そうそう、映画では、ブルース・ウィルスが心理学者を演じる〃シッ クス・センス〃や、色と音の両方をリニューアルした、〃風と共に去りぬ 〃も見逃せないわよ。」

Y「そんなにあるのか?まあ、何か探して行ってくるか。」

A「あら、タツ(以下T)、いらっしゃい。」

T「何、盛り上がってるのよ。」

Y「〃I Got Merman〃の話しから、いろんな芝居や映画の話しだよ 。」

T「やだ、あきちゃん、また舞台に上がったの?」

A「今回は上がってないわよ。」

K「それって、あのシーンですか?」

T「そうそう、あのシーン。あきちゃんたら、初演の時からもう何回も上 がってるのよ。」

K「ひゃ〜。観たかったな〜。」

A「やめてちょうだい。もういいじゃないその話し。恥ずかしくなっちゃ うわ。」

Y「何だ、何だ?俺だけ分んないじゃン。早くチケット頼まなきゃな。」

K「早く観に行ってくださいよ。ゆきさんも舞台に上がれるかもしれませ んよ。」

Y「えっ!ほんと?早速チケット買いにいこうっと。」

A「まあ、何でもいいから、頑張ってね。」

T「でも、今でも思い出すと笑っちゃうわ。あのシーン。ア、ハハハ。」

K「本当にね。ウ、フフフ。」

A「あんたら、いい加減にしなさいよ。それより、お代りは?」

K「怒られないうちに、ビールもう一本お願いします。」

A「あいよっ!」

(おわり)
*登場人物は、全て仮名です。
今回紹介した芝居、映画は

*I Got Merman     27日まで
               銀座博品館劇場

*罠      9日〜24日
                パルコ劇場

*私が選んだ<百物語>  16日まで
                新国立劇場小劇場

*ブレヒト・オペラ   22日〜11/2
                新国立劇場小劇場

*シックス・センス   30日〜

*風と共に去りぬ         9日〜
             
                                以上です



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#11 "芸術の秋だよね"の巻 その1
#10 "夢をみようよ"の巻
#9 "暑い時は映画館"の巻
#8 "劇場へ行こう!"の巻
#7 "戦争はおそろしいよね"の巻
#6 "あんたも漫画がすきなのね"の巻
#5 "あんたの涙は.....?"の巻
#4 "安心が一番"の巻
#3 "本当に生はいいんだから"の巻
#2 "小さいことはいいことだ"の巻
#1 アキのニューヨークお芝居観て歩記