1.ジョイント第一号

 

JOINT

献血時問診の改善を求める
ジョイント・ステートメント・プロジェクト

Vol.1−No.1(1998年3月09日発行)

 

1)「決まりだから」ってなんだろう。(竹村勝行)

2)献血問題に関する共同声明について

3)献血問題に関する共同声明

4)共同声明への賛同ありがとうございました!

 

 


「決まりだから」ってなんだろう。

竹村勝行

 僕がまだ名古屋に住んでいた時、栄に行ったら献血車がとまっていた。「血液が不足しています!」のオジサンの大きな声に、ヒマな僕はふらっと立ち寄った。「問診票書いてください」そう言われて書いていくと、「同性と性的接触があった方」をチェックするところがあった。僕はその時、彼氏がいたから、もちろんこれは「はい」だった。でも、まだそのころの僕は「自分はゲイだ」と人には言えないドカクレの「ホモ」だったから、ウソをついて「いいえ」に○した。
 でも、採血されながら、何だかとても、とても嫌な気持ちになったので、終わってから問診票を書くところに行って「僕、エイズ関係のボランティアをしているんですけど」とまたウソをついて「これでは同性愛者の方々は献血できないのではないか」とまるで他人事のように担当者に言った。「エイズの危険があるから」などといろいろ僕に言ったが、僕もセーファーセックスについていろいろ担当者に言った(他人事だからなんとでも言える)。そしたら最後に担当者が言った言葉がこれだった。
 「決まりだから」
 「決まりだから」ってなんだろう。そんな僕が僕たちが知らないところで決まった「決まり」なんて僕は知らない。それに、「同性愛者=エイズだから排除しろ」なんてそんな不条理な「決まり」なんて、納得できない。……と、今の僕ならそう思う。でも、当時の僕は、その言葉にあきらめて黙って帰ってしまった。「ホモだから仕方ないか」と思いながら。
 でも、今の僕は蔑まれる「ホモ」じゃなくて、自信を持って生きる「ゲイ」だ。なんだかよくわからない「決まり」で排除されるような軽い人間じゃない。
 だから、「決まり」は僕たちで作る。僕らの「決まり」はそんな捨てゼリフのように言うもんじゃない。論理的で真実に裏打ちされた、説得力のある「決まり」。そんな「決まり」を、みんなで作っていきたいと思う。

(北海道セクシャル・マイノリティ協会札幌ミーティング 献血プロテストチーム代表)

 


「献血問題に関する共同声明」文案を、以下のように改善しました!

 

 昨年末から皆様のもとにお送りしていた「献血問題に関する共同声明(案)」について、各団体から賛同の意志表示とともに有意義なご意見、ご提案を頂きました。それらのご意見、ご提案について呼びかけ団体である北海道セクシャル・マイノリティ協会札幌ミーティングと動くゲイとレズビアンの会において検討を重ねた結果、今回別紙のように「共同声明」を訂正することとなりました。主な改正点は以下の通りです。 

(1)要求項目を一本化しました。

 「共同声明(案)」では、問題点の指摘に合わせて3点の要求を行っていましたが、要求項目を「より『セーファー・セックス』『ハイリスク・ビヘイビア』に留意したものにすること」という一項目に絞りました。これによって、現在の「ハイリスク」グループ中心の問診項目に対し、私たちが求める問診基準を対置しそれを明確に表すことになります。
 「共同声明(案)」にあったあとの2項目の要求も、大きな枠で、この要求項目に含まれていますし、問診項目の部分的手直しではなく、基本的な姿勢の転換を求めているのだということを表明することにもなると考えます。 

(2)問題点の指摘の配列の変更

 現在の問診基準について3つの問題点を指摘していることは変わりませんが、指摘の順序を変えました。これによって「ハイリスク・ビヘイビア」を軽視している現在の問診基準について、基準を支えるポリシー自体の問題点を指摘し、更にそれがどのような影響をもたらすか、具体的記述においてみられる偏見の結果を指摘するという順序に変わりました。
 これは根本的姿勢の問題が、実際の運用においても重要な問題を引き出すということをより明確な形で指摘することになり、小手先の文言の変更ではない姿勢の変更を求めるという私たちの意志をより明確にすることが出来ます。 

(3)若干の表現の変更

 文意をより明確にするため、又は、正確を期するためにいくつかの語句・表現を修正しました。また、ご提案に基づいて、いくつかの文をご提案の趣旨を損なわない範囲で変更し「共同声明」中に加えました。これらによってより一層私たちの「共同声明」の主旨が明確かつ普遍性をもつものになっています。

 以上のような変更の結果として、今回の「献血問題に関する共同声明(第二次案)」を皆様にお知らせします。

 

献血問題に関する共同声明 最終文案 

 上で述べましたように、献血問題に関する最終文案を以下のようにまとめました。現在、賛同されている団体の皆様で、この文案に大きな問題が存在しているとお感じになった場合には、東京事務局まで修正意見をお知らせください。その場合、なるべく文章の対案をあわせてご提案いただくよう、宜しくお願い申し上げます。なお、提出などに向けたスケジュールがございますので、修正意見の期限は4月1日とさせて頂きますので宜しくお願いします。

献血問題に関する共同声明

 ごった返す駅前や自動車免許の試験場、大学構内などで、私たちはよく、大きな献血車と、血液が足りないという訴えを耳にします。大きな都市の駅舎や近くのビルには、かならず献血ルームがあります。ふと足を止めて、私たちはいろいろなことを考えます。何度も献血している人、献血しようと思いながらもためらってしまう人、まったく気にも止めない人……献血をとりまく人間模様は、さまざまです。
 日本国内の献血事業は日本赤十字社(日赤)主体となって行なわれています。献血事業の生命線は、安全な血液の供給です。この生命線を確保するためと称して、日赤は献血をする人に対して事前の問診を行っています。ところが、この問診項目には、安全な血液を供給する目的にそぐわない内容が含まれているのです。
 日赤は、問診時に、献血をする人が以下のどれかに該当するかどうかを聞いています。

(1)不特定の異性と性的接触をもった
(2)同性と性的接触をもった
(3)エイズ検査(HIV検査)で陽性と言われた
(4)麻薬・覚醒剤を注射した
(5)上記(1)から(4)の該当者と性的接触をもった

 そして、過去1年以内に上記の経験があった人を、献血から排除しています。

 日赤は、この問診基準は「血液の安全な供給」のために不可欠だと言っていますが、私たちはこの問診基準にはいくつかの問題があり、結局のところ、「血液の安全な供給」という目的を阻害することにつながると考えています。私たちは、「安全な血液の供給」のために、これらの問診項目をより適切なものに変えることを求めるものです。
 問診基準の問題点と、私たちの主張は、以下の通りです。

 

問題点1.基準自体が「ハイリスク・グループ」を中心的な基準とし、「ハイリスク・ビヘイビア」(危険な性行為)の観点を軽視しているため、この問診では「血液の安全な供給」にとって必要かつ十分な情報は得られない。

 HIVの感染経路は限られているため、本来問題にすべきなのは「誰と性的接触をしたか」ではなく、「どの様な性的接触をしたか」ということです。HIV陽性の人と性的接触があったとしても、コンドーム等の使用により血液・精液・窒分泌液などが粘膜や傷口と接触しなければ、HIVに感染する確率はかなり低くなります。しかし、「特定の異性」とのみ性的接触をしている場合でも、相手がHIVに感染しているかどうか不明のまま、それらの体液と粘膜が接触するような性的接触をもっている場合は、HIVに感染する可能性があります。
 いっぽう、複数の異性または同性と性的接触をしていても、コンドームの使用など、より安全な性的接触を心がければ、HIV感染の可能性は、特定の異性と安全な性的接触をしている場合と同等です。相手が特定の異性であっても、もし安全な性的接触を心がけていなければ、HIV感染の可能性は、当然不特定多数と安全な性的接触をしている場合よりも高くなります。こうしたことから考えれば、問診の基準は、セックスの相手が同性か異性か、特定か不特定かということではなく、安全な性的接触をしているかどうかという点にたてられるべきであることは、論を待ちません。
 献血時問診の5項目のうち、HIV感染者に関する項目を除く4項目は、旧来の「ハイリスク・グループ」を類型化しているだけです。これでは、HIV感染経路に関する正確な情報をえることができません。そのため、献血者は、自らの行動を省みて、自分は献血をしても大丈夫なのか、それとも控えた方がいいのか、正確に判断できないことになります。さらに、問診する担当者も、HIV感染に関する必要かつ十分な情報が得られないため、HIV感染をしていない献血者を排除するだけでなく、実際にHIV感染の可能性がある献血者をみおとすことにもつながります。

 

問題点2.「ハイリスク・グループ」とされた人に対する誤解や偏見を助長し、問診に正確に答えることに躊躇したり、HIV検査自体を避けるという「潜在化」を招く危険がある。

 日赤が献血から排除する対象としている同性愛者などは、かつてHIV/AIDS政策の中で「ハイリスク・グループ」と呼ばれていました。日赤がこの人々を献血から排除する目的は、「ハイリスク・グループ」を排除することでHIVに感染している血液の混入を避けることにあると思われます。
 しかし、特定の人々を「ハイリスク・グループ」とすることは、歴史的にこれらの人々を「HIV感染の確率が高い」として差別・排除の対象とすることとつながってきました。この問診項目は、まず、特定の人々を「ハイリスク」とすることで、これらの人々のHIV感染率が高く、「危険」なのではないかという誤解をもたらす問題点を持っています。
 さらにそのことは、それまでにもあったこれらの人々への差別とも相まって、これらの人々を潜在化させるという悪しき効果をもたらしてきました。
 「潜在化」とは、社会的な差別から身を守るために、性的指向などの自らの属性や、HIV感染の事実を隠さなければならなくなることです。あるいは、差別から身を守るために、HIV検査自体を避けるという潜在化もあります。実際にこういう状況に追い込まれた人が数多くいます。「ハイリスク・グループ」とされた人々は、自己の不利益を恐れて、献血の問診時にも自分の属性や性行動について正確に申告できなくなってしまいます。
 結局、差別的な、または差別を疑わせるような問診項目は「血液の安全な供給」の妨げになってしまうのです。

 

問題点3.問診項目は同性間性的接触と異性間性的接触の間に格差をつけるなど合理的根拠に欠ける基準である。

 問診項目において、異性間性的接触には「不特定」との限定がついているのに、同性間性的接触については何らの限定もついていません。ここからは、同性間性的接触は異性間性的接触に比べてHIVに感染する確率が高い行為であるという認識が感じられます。しかし、日本赤十字社が「同性と性的接触すること」それ自体がエイズ発症の原因となると考えているのでもなければ、このような認識には何ら合理的根拠がありません。異性間で特定のパートナーと性的接触をする場合に比べて、同性間で特定のパートナーと性的接触をする場合の方がHIVに感染する確率が高いということを示す実証的データは一つもありません。そもそも、「不特定」と言っても、何をもって不特定とするかわかりません。
 この問題に限らず、ここに挙げられた5つの項目のうち、HIV感染者に関する項目を除けば、日本においてこれらの人々を特別に「ハイリスク・グループ」と規定する実証的データはありません。「血液の安全な供給」という目的を達するためには、「科学的」正確さに基づいて議論することが不可欠であり、「ハイリスク・グループ」に基づく基準の合理性には疑問があります。

 

 以上の問題点は、結局のところ、問診基準が「ハイリスク・ビヘイビア」より「ハイリスク・グループ」に着目しているところから生じています。
 従って、私たちは、日本赤十字社に対して、献血時問診の項目の性的指向や職業などの献血者の属性とHIV感染に関連があるかのように受け取られる基準を改め、問診内容をより「セーファー・セックス」「ハイリスク・ビヘイビア」に留意したものにすることをもとめます。
 また私たちは、献血時問診を改善することで、献血事業からHIV/AIDSに関連する差別・偏見の要素を取り除き、かつ血液の安全供給を実現するため、努力を続けていきたいと考えています。

以上

 


共同声明への賛同ありがとうございました!

呼びかけ団体

動くゲイとレズビアンの会
北海道セクシュアル・マイノリティ協会札幌ミーティング

 

賛同団体

(1998年3月09日現在 50音順)

 


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