1.献血問題の現状と問題点 

 

<献血問題の現状と問題点>

1.献血問題の現状と問題構制

2.1999−2000年の取り組み

3.問題点の整理

 

<1.献血問題の現状と問題構制>

 

1−1)関係者

@国の機関

a)厚生省医薬安全局血液対策課
b)厚生省→中央薬事審議会血液製剤特別部会/安全技術調査会
c)厚生省→エイズ疫学研究班(厚生科学研究事業)

A血液事業主体

a)日本赤十字社(血液事業部)

 

1−2)問題構制

@同性愛者にとっての問題

1987年の通達で男性同性愛者がエイズとの関連で献血できなくなった。
・一時緩和されたが(1993年)、その後1995年より「血液問題検討会」答申に基づき再び献血不能に(女性同性愛者も含め)

→「同性愛=エイズ」と結び付けられて、合理的な理由なく同性愛者が献血から排除されているということ。

A厚生省・日赤の問題意識

a)厚生省は輸血によるHIV感染の広がり(&薬害・訴訟の展開)を極めて恐れている

b)エイズ疫学研究班傘下の日赤の研究チームなどにより、献血におけるHIV感染についての研究(単なる統計処理だが)が進んでいる。

→結果として判明しているのは、

・日本は献血血液におけるHIV感染血液の割合が他の先進国に比べて非常に高いこと
・献血血液から検出されるHIVのサブタイプはBタイプが多いこと

c)日赤の問題意識

・献血が「検査目的」に利用されているのではないか
・BタイプのHIVは主要にゲイの間で蔓延していることから、検査目的に使っているのはゲイが多いのではないか
・ゲイは献血に於けるHIV感染の主要なリスク要因なのではないか

という形で献血におけるゲイのスティグマ化が進展

d)厚生省の問題意識

・極めて自己防衛的な戦略:「献血の対象をなるべく狭めること」
・ゲイは献血血液のHIV感染の主要なリスク要因として認識されている
・一方、ゲイに門戸を開放することによるメリットはない
・ゲイの献血排除は社会通念上も容認されている(と考えている)

→ゲイに門戸開放をする行政的決定をする必要はないとの認識

 

 

<2.1999年−2000年の取り組み>

 

2−1)厚生省等への提案

@中央薬事審議会「血液製剤特別部会」への提案(1999年6月28日)

・問診票のあり方の改善(セイファーセックス概念を導入した上で、同性愛者の献血に門戸を開く)
中薬審は問診票の正式案の決定を留保することに

A厚生省医薬安全局血液対策課への提案(1999年8月25日)

・献血時問診に関するブレインストーミング提案の提出

B厚生省エイズ疫学研究班主催の検討会議(1999年11月26日)

アカーからの提案:二案(条件付きでゲイの献血門戸開放を行う)
→厚生省・日赤の厳しい反対により却下
→採用は「レズビアンの献血門戸開放」

C中央薬事審議会「血液製剤特別部会」(1999年12月24日)

問診票の改定案を採択→2000年3月25日より一般に使用

 

 

<3.問題点の整理>

 

3−1)残っている問題点

@基本は解決されていない:男性同性愛者の献血門戸開放

 

3−2)現状の障害

@日赤・厚生省の問題認識の問題点

a)ゲイへの一方的な非難(ゲイ悪玉論)

・日赤=献血のHIV感染についての通知・追跡調査→たまたまゲイであるケースがある→大きく取り上げられる
・検出HIVがBタイプが多い=比較考量の問題、Bタイプがゲイに多いのは確立の問題に過ぎない等→科学的実証を欠いている

b)異性愛者男性のリスクも高い

・異性愛者男性:「患者」段階で発見される比率が高い→検査率低い
・しかし、献血から異性愛者男性を閉め出すわけには行かない
・「ゲイの締め出し」は歴史的な背景の中でこっそりと行われ、これ幸いと維持され続けている

c)あえて変える(門戸開放を行う)理由はないとする保守的な思考

・「ハイリスク・グループ」としての集団排除は古典的な考え方→「コンドーム使用」は現場で問えない(??)、学校では聞けない(?)など
・本件では外国の状況が追い風にならない→「あえて変える必要はない」という官僚の論理に敗北してしまう。

 

3−3)現状での目標

@今回の変更点は、コンピュータ処理の変更を行う前のマイナーチェンジ

・コンピュータ・プログラムの変更を伴う大がかりな変更は今年以降に実施→さらに働きかけていくことが必要。

 

3−4)「ジョイント」について

@女性同性愛者の献血解禁について、「ジョイント」参加各団体にこの間の経緯を交えて通知する必要がある

 

[2000年3月29日 アカー・アドボカシー部門ディレクター稲場氏による]

 


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