あきのN.Y.お芝居観て歩記 ′99 vol.1

しょうちゃん(以下S)「お帰りなさ〜い。帰った日だと言うのに、 来店ありがとうございます。」

アキ(以下A)「こんなに長い事やってもらったんだもの。お土産 くらいもってこなきゃ。それと、集金もあるしね。」

S(小声で)「集金が第一目的よ、きっと。」

A「何か言ったかしら? はい、お土産。しょうちゃん黒が好きだか ら、黒のTシャツにしたわ。」

S「ありがとうございま〜す。ところでアキさん、どうでした?ニュー・ ヨークは。また観劇三昧だったんでしょ?」

A「それがとっても寒くてね。風邪ひいちゃったわよ。まあ、風邪にもめ げずに今回も芝居三昧。5本ほど観て来たわ。3本がプレビューで、2本 が旧作。」

けん(以下K)「それじゃ、タキシードなんかは持っていかなかった んだ。」

A「今回はね。話題の新作だったんだけど、プレビューだしね。」

K「よく一緒にタキシード着て初日に観に行ったよね。」

A「そうね。懐かしいわね、あの頃。帰りにバーにくりだしてね。ちょっ とスターきどり、だったかしらん?」

S「その時からなんですね、アキ様のスターきどりは。」

A「何言ってるのよ。そんなに気どってません。ちょっとだけそんな気分 になれたかなって言う自己満足に決ってるじゃないの。まあ、似合う事は 似合うんだけどね。」

S(小声で)「始まったわ、始まったわ。アキ様の自慢話が。」

A「何か言った?」

S「いえ、何にも。ところで、お芝居の話し。早くしてくださいよ。」

K「そうだよ、何、観てきたんだっけ?」

A「本当の意味での新作は1本だけ。あと、リヴァイヴァルが2本とロン グランが2本かな。」

S「ロングランは何を?」

A「今年のトニー賞を取った<Fosse>と批評家には散々叩かれたけ ど観客には評判が良い<Jekyll & Hyde>の2本よ。」

S「聞いた事あります。」

A「今年のトニー賞をTVでみた人は分ると思うけど、<フォッシー >の方はと言うと、ダンスを中心としたレビューなのよね。だから、英語 が分らなくても十分に楽しめるわよ。ただ、セットがいまいちなのと、音 楽を中心に聞きたい人にはちょっと物足りないかもしれないわ。でも、ダ ンスの技術はそれはもう<素晴らしい>の一言につきるわね。」

K「トニー賞で演ってた様に、ボブ・フォッシーのショーからいろいろ見 せてくれるのかな?」

A「そうなの。あの時は、最後のシーンだったかしら?確かベニー・グッ ドマンの〃シング、シング、シング〃のシーンだったわよね。」

K「そうそう。凄かったよね。TVで観てても凄かった。」

A「3部構成になっててね、フォッシーが演出したり、振付けたりした作 品の集大成とでも言ったら良いのかしら。皆も知っている<スウィート・ チャリティー>、<キャバレー>、<シカゴ>、<ダンシン>をはじめ、 ライザ・ミネリのショーからのナンバーや、ボブ・ホープのTVスペ シャルからのナンバーといった盛沢山のショーなの。3部構成だけど、あ っと言う間におわちゃうのね。」

S「ところでアキ様。ご注文がまだ.....」

A「あっ、そうだった。つい話しに夢中になってたわね。カンパリの水割 で。しょうちゃんも何か飲んで。」

S「は〜い。いただきま〜す。」

K「<ジキル アンド ハイド>のほうはどうだったのよ。」

A「こっちの方はね、逆にダンスはほとんど無いのよ。セットも大がかり なのはなくて、歌で聞かせるミュージカルね。何しろ歌が良いわ。沢山聴 かせ所があってね。歌には感動したのよ。話しは分ってるでしょ。あの有 名な<ジキル博士とハイド氏>。自分の内面にある本性を引き出す薬を自 分を実験台として作りあげて、ハイドというもう一つの自分を目覚めさせ るんだけど、次第にハイドの方に蝕まれていって最後には悲劇を迎える訳 なんだけどね。」

S「面白そうじゃないですか。」

K「役者なんかも実力ありそうだしね。」

A「キャストは初演の時とはだいぶ変っててね。主だったところで変って ないのはジキル博士の無二の親友で、アドバイザーであり弁護士である役 を演った、ジョージ・メリット位かしらね。もっとも、主役のジキルとハ イドを演ってる人は、初演時にマチネ公演で主役を演っていたロバート・ エヴァンと言う人だたんだけど。」

S「じゃあ、少しキャストとしては下がっているんですかね。」

A「それがそうとも言えないのよ。初演のキャストはCDでしか聴い たことがないんだけど、みんな素晴らしかったわね。歌に関しては、今回 観た中でも感動した方だわよ。何しろさっきも言ったけど、曲が良いのか しら、本当に感激ね。今でも歌いたくなっちゃうわよ。」

K「相当良い出来だったんだ。」

A「それがちょっとね。」

S「どういう事なんですか?」

A「演出の仕方にもっと工夫がほしかったわね。」

K「というのはどの辺りで?」

A「ソロで歌う場面がとっても多いのよ。だからなんて言うか、コンサー ト形式のオペラを観ている様だったの。もっと考えられないのかしらって 。」

S「なんですか?コンサート形式のオペラって?」

K「しょうちゃんはオペラ観たことないんだね。コンサート形式のオペラ っていうのはね、セットも衣装もなしにオーストラの前で歌手がスタンデ ィングでただ歌っているわけね。まあ、CDを生で聴いてると思って いればいいんだよ。」

S「そういう事か。また一つ勉強になっちゃったな〜。」

A「それからチープなマジック・ショーを見ている様な所もあってちょっ とね。」

K「マジック・ショーは<美女と野獣>にまかせておけばってか?」

A「ほんとよ。<オペラ座の怪人>みたいなのよ。」

K「歌がいいだけじゃやっぱり駄目なのかもね。」

A「そうね。でも、このミュージカルなら、もっと練り上げていけば本当 に何時までもロングラン出来る作品になると思うんだけどね。」

K「僕も観てみたくなっちゃったな。」

S「リヴァイヴァルと新作の方はどうだったんですか?」

K「あっ、いけねえ。電車無くなっちゃうや。アキちゃんその話しはまた 今度聞かせてよ。」

A「わかったわ。じゃあ、また今度ね。」

S「ありがとうございます。ケンさんは、ちょうど二千円です。おやすみ なさい。」

K「じゃあまた今度ね。」

A「そうね、今度。気を付けてよ。お休み。ありがとね。」

K「それじゃ、また。」

と言う事で、この続きは次回につづく。



*登場人物は全て仮名です。



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#13 〃分りやすいって素晴らしい〃の巻
#12 "芸術の秋だよね"の巻 その2
#11 "芸術の秋だよね"の巻 その1
#10 "夢をみようよ"の巻
#9 "暑い時は映画館"の巻
#8 "劇場へ行こう!"の巻
#7 "戦争はおそろしいよね"の巻
#6 "あんたも漫画がすきなのね"の巻
#5 "あんたの涙は.....?"の巻
#4 "安心が一番"の巻
#3 "本当に生はいいんだから"の巻
#2 "小さいことはいいことだ"の巻
#1 アキのニューヨークお芝居観て歩記