ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展「江戸の誘惑」報道内覧会&開会式
展覧会場:神戸市立博物館 展覧会期:2006年4月15[土]〜5月28日[日]
ストリート・アートナビ取材:展覧会シーン/Page-1/Page-2/Page-3


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 戸時代は、今と違って時間がゆっくりと流れていました。人々は、四季折々の風物を愛し、 時と場にふさわしく生活を楽しむすべを知っていました。 春は隅田川のほとりでの摘み草や花見、夏は水辺柳蔭(すいへんりゅういん)での納涼、 秋の夜はさやかな月影を愛(め)で、冬の寒さも雪見の楽しみにかえることができました。
 江戸の人々の床しい暮らしぶりを映し出したこれらの浮世絵が、人生にとって欠かせない 大切なものが何なのかを、現代の私たちに問いかけているようです。
右隻(写真上)桜咲くうららかな春の川辺を、起伏に富む岸辺の景色を交えて俯瞰景として描き出したものである。花見に興じる男女、春草摘みを楽しむ一行など、画面に登場する人々は思い思いの格好で、のどかな春の一日を楽しんでいる。
左隻(写真下)青柳が風に吹かれる初夏の庭園での風俗模様を主題とする。葦簾(あしすだれ)が吊り下げられた建物では、女たちが腹這いになったり、縁側で煙管(きせる)をくゆらせたりと、気だるい雰囲気が流れている。池のほとりでは釣りに興じるものなども描かれるが、あるいは高級な料亭、もしくはさる貴人宅の庭園という設定なのかもしれない。水面を吹き渡る清々しい風が体感でき、心地よい季節感がつたわる秀作である。
葛飾北斎「鏡面美人図」(写真左)
 
黒塗りの化粧箱の引き出しを少し開け、柄鏡(えかがみ)を立てて、髪の仕上がりを確かめる女性が後ろ姿を見せています。鼻筋の通った細面のその顔が、鏡いっぱいに収まっています。腰を前に突き出して弓なりに身を反らす姿かたちは北斎特有のものです。画賛:『待人の たよりや夏の 夜みせ前  得器』(日本初公開)
 
葛飾北斎「朱鐘馗図幟(しゅしょうきずのぼり)」(写真右)
縦230センチを超える麻地いっぱいに鐘馗の立ち姿を朱で描いています。5月5日の端午の節句に鯉のぼりと一緒に軒先きに掲げられた幟で、極めて良い保存状態で残っていました。北斎のこれほど大きな幟絵が見つかったのはこれが初めてで、ボストンの浮世絵コレクションの中でも最重要作品のひとつにあげられます。(日本初公開)
◎葛飾北斎は風景画ばかりでなく、画業70年間美人画・役者絵はもちろん、歴史画・花鳥画などにも意欲的な作画活動をつづけ、独自の高い芸術性を示した。

 世絵の浮世とは、広い意味で「いま現代のこの世」、狭い意味では享楽的な世界、すなわち「遊里」のことをさしました。浮世絵は、日常の暮らしとはまったく離れて 特殊な文化を生み出したこの遊里の風俗を、華やかに美しく描き出したものでした。
 遊里の主役である遊女や芸者は、様々な遊芸(ゆうげい)を提供するタレントであり、最先端の流行を発信するファッション・モデルでもありました。江戸の人々は男女ともに、彼女たちにまぶしいほどの憧れの視線を投げかけていたのです。

懐月堂(長陽堂)安知 縁台美人図(写真左)
 
懐月堂安度の弟子である安知は、無背景に描くと言う形式に従って制作を行った。本作品は、遊女を立姿ではなく木製の縁台に座らせている点において異色である。彼女は手紙を口にくわえている。このしぐさは通例嫉妬を表しているが、ここでは誘惑を試みているように見える。彼女はじらすように手紙の端や裏側にちらりと目をあてている。その長くほっそりした左手が量感溢れる着物に包まれた肢体を支えている。
松野親信 立姿遊女図(写真右)
 
右手で褄(つま)をとり、結んだ帯の端を揺らしながら歩む態の遊女を描く。衣裳の模様をみると、茶を基調とした色変わりの地に、雪持ち笹と竹の輪を配しており、原色を用いて誠に大柄なものとなっている。様式化された衣紋線につつまれた、堂々たる体躯の彼女の風格は、元禄末から十年ほど流行した懐月堂派の美人画に酷似し、その強い影響下につくられたことがわかる。

金を主体にした背景に、赤・緑・青を主調とする鮮やかな鳳凰を描いた迫力ある屏風。色彩効果を知り尽くした北斎ならではの華麗な作風で、後期北斎芸術の頂点ともいえる傑作です。(日本初公開)
喜多川歌磨 遊女と禿(かむろ)図(写真左)
 
花魁(おいらん)と呼ばれた吉原の高級遊女と、付き従う禿(かむろ)を描いた一幅である。室内の姿とみえ、盛装した遊女の衣の裾はたっぷりと床に広がり、禿は白い足袋(たび)を履いている。遊女の髷(まげ)は、結び兵庫、あるいは結び立兵庫と呼ばれ、兵庫髷をもじって巻貝のようにしたもので、1770年代から1793年頃まで吉原の遊女の間で用いられたことが錦絵や版本により確かめられる。上部には狂歌師・頭光(つぶりのひかる/1754〜96)の賛が入っている。『居続は 幾世の孫に 帰るらん 桃のこひある 色の源  つふり光』吉原の居続(いつづけ)(朝までに帰らないで、翌日も、場合によっては何日も居続けること)は、幾世の孫の代になって帰るのであろうか。あまりに居心地が良いので、つい帰るのを忘れてしまう。吉原こそ、桃源郷のような色事の源であることよ。といった意であろうか。
歌川豊国 芸妓と仲居(げいぎとなかい)(写真右)
 
裾に梅花を散らした黒の留袖を着て、炬燵(こたつ)に腰をかけ恋文を読むのは芸妓であろう。炬燵に腰をかけるのはいささか行儀が悪いが、一種のポーズと考えてよい。左足の指を曲げて右足の甲に重ねているのは、文に上気し興奮しているさまを表している。それを通りすがりに足を留めて見ているのは仲居(あるいは茶屋女)という設定である。
ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展「江戸の誘惑」報道内覧会&開会式
会場:神戸市立博物館 会期:2006年4月15日[土]〜5月28日[日]
ストリート・アートナビ取材:展覧会シーン/Page-1/Page-2/Page-3
取材日:2006年4月14日 掲載:4月22日 ART SCENE/Street Artnavi
取材・写真・Webデザイン:ストリート・アートナビ 中田耕志
※上記の説明、写真キャプションは展覧会報道資料、展覧会図録を参考にしました。

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